口裂け 2
ー/ー 幽ヶ崎霊禍という物々しい名前にふさわしく、彼女の言動は粗暴そのものだった。
数分の遅刻なんてかわいいものだ。今でこそ先生がいるから抑えられているが、休み時間には暴言や恫喝が口から飛び出す。方向性は違えど、亘よりも他人を寄せ付けない性格だった。
しかし、そんな粗暴さの裏で、人の心の動きに対する敏感さを兼ね備えているのもまた事実だった。暴言の相手は選ぶし、恫喝内容は一線を越えない。霊禍はそういうバランス感覚を持っていたし、度を超えたトラブルを起こしたこともなかった。亘は霊禍のそういう部分を信頼していたし、それと同時に恐れていた。
「新学期なのに嫌な話題になっちゃうけど、学校付近で不審者が出たそうです」
先生がそう話すのを、霊禍は頬杖をつきながら聞いていた。
「コートを着た長身の女性が⋯⋯ナイフを持って徘徊していたらしいです。今のところ誰も被害に遭ってはいないようですが、みなさん今日はなるべく複数人で帰るようにしてください」
霊禍がニヤリと笑ったのを見て、亘はなんとなくこれからの展開を察した。
「亘、今日は不審者探しに行くぞ」
朝の会が終わってすぐ、霊禍がそう切り出した。
「どうして?」
「どうしてもクソもあるかよ。コート着た刃物女なんて、どう考えても口裂け女だろ」
「それは分かる。だけど、その不審者が幽霊ってわけでもないんじゃないか? 通報が入ったってことは、一般人にも見えてるわけだし。
ただの不審者が相手なら、対応すべきなのは僕たちじゃなくて警察だ」
霊禍はため息をついた。
「師匠が言ってたぜ。『常に最悪を想定しろ』ってな」
師匠。『沈黙の三年間』の直後に、霊禍と亘に戦い方を教えた人物。霊禍には、師匠の格言を自分に都合よく引用する癖があった。
「もし、不審者の正体が幽霊だった場合、とんでもないことになるぞ。
一般人にも見えるレベルの幽霊で、見た目は都市伝説そのまま。要するに、集合タイプの幽霊がバカクソ強くなってるってことだ」
「⋯⋯なるほど」
亘の中にはまだ少しの迷いがあった。しかし、霊禍の決断は、簡単には曲がらない。結局、放課後に昨日の出没地点に行くことになった。
数分の遅刻なんてかわいいものだ。今でこそ先生がいるから抑えられているが、休み時間には暴言や恫喝が口から飛び出す。方向性は違えど、亘よりも他人を寄せ付けない性格だった。
しかし、そんな粗暴さの裏で、人の心の動きに対する敏感さを兼ね備えているのもまた事実だった。暴言の相手は選ぶし、恫喝内容は一線を越えない。霊禍はそういうバランス感覚を持っていたし、度を超えたトラブルを起こしたこともなかった。亘は霊禍のそういう部分を信頼していたし、それと同時に恐れていた。
「新学期なのに嫌な話題になっちゃうけど、学校付近で不審者が出たそうです」
先生がそう話すのを、霊禍は頬杖をつきながら聞いていた。
「コートを着た長身の女性が⋯⋯ナイフを持って徘徊していたらしいです。今のところ誰も被害に遭ってはいないようですが、みなさん今日はなるべく複数人で帰るようにしてください」
霊禍がニヤリと笑ったのを見て、亘はなんとなくこれからの展開を察した。
「亘、今日は不審者探しに行くぞ」
朝の会が終わってすぐ、霊禍がそう切り出した。
「どうして?」
「どうしてもクソもあるかよ。コート着た刃物女なんて、どう考えても口裂け女だろ」
「それは分かる。だけど、その不審者が幽霊ってわけでもないんじゃないか? 通報が入ったってことは、一般人にも見えてるわけだし。
ただの不審者が相手なら、対応すべきなのは僕たちじゃなくて警察だ」
霊禍はため息をついた。
「師匠が言ってたぜ。『常に最悪を想定しろ』ってな」
師匠。『沈黙の三年間』の直後に、霊禍と亘に戦い方を教えた人物。霊禍には、師匠の格言を自分に都合よく引用する癖があった。
「もし、不審者の正体が幽霊だった場合、とんでもないことになるぞ。
一般人にも見えるレベルの幽霊で、見た目は都市伝説そのまま。要するに、集合タイプの幽霊がバカクソ強くなってるってことだ」
「⋯⋯なるほど」
亘の中にはまだ少しの迷いがあった。しかし、霊禍の決断は、簡単には曲がらない。結局、放課後に昨日の出没地点に行くことになった。
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