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第36話 試験初日の反省会と信頼できる協力者

ー/ー



 週が開けて、月曜日―――。

 名和リッカが、またなにか良からぬことを考えているのではないか……という不安で試験勉強が手につかず、中間試験の初日の出来は、上々とは言えるものではなかった。

(最低限、平均点さえ取れていれば……)

 比較的得意な古典と歴史総合の科目で、後ろ向きな気持ちになっているあたりで、初日の試験に対するオレ自身の手応を感じ取ってほしい。

 そんな中、人影もまばらになった教室で、帰り支度をしようとカバンの中身を確認していると、おもむろに教室のドアが開いた。

 もしかして、いま最も警戒すべき相手が、周囲に生徒が少ないことを確認して戻って来たのか……と身構えたが、あらわれたのは、オレの予想とは異なり、二人の生徒だった。

「ゴメンね、睦月(むつき)……私のせいで……」

「大丈夫だよ、小春(こはる)。机を確認したら、すぐに帰ろう」

 そんなことを話し合いながら、吹奏楽部の浜小春と大島睦月が教室に入ってきた。
 二人で会話をしながらも、オレの存在に気づいた大島が、たずねてくる。

「あら? アナタ、まだ残ってたの?」

「あぁ、ちょっと試験初日の反省会をしていたところだ。もう、帰るよ。やっぱり、他人との勉強会なんて慣れないことはするもんじゃないな」

 週末の図書館で、怪しげなアプローチを仕掛けてきた相手のことを思い出しながら答える。

 すると、オレの言葉に反応した大島は、
 
「もしかして、名和さんに、葉月が久々知のことを諦めずにアプローチしようとしていることがバレてるの?」

と、たずねてきた。

「いや、それについては、正直よくわからない。ただ、オレは土曜日に図書館に行って、名和と上坂部と久々知の四人で試験勉強をしたんだ」

 オレの返答に、大島は、「へぇ……」と答えたあと、

「クラスのメンバーとは群れないあなたにしては珍しいわね」

と、付け加える。

「ああ、名和がオレと上坂部を呼び出して、『転校前の学校とはテストの傾向が違うかも知れないから、対策を教えてほしい』と言ってきたから、それに付き合ったんだよ」

 オレが、そう答えると、大島は「あら、そうなの」と、つぶやくだけだったが、一方の浜は、なにかに気づいたような表情でたずねてきた。

「ねぇ、もしかして、なんだけど……立花くんが、名和さんに呼び出されたのって、先週の朝、授業が始まる前に、教壇のところで、『四葉ちゃんにお悩み相談をしたのは――――――なにを隠そう、このオレだ!』って、自分から話をしたことと関係あるのかな?」
 
 名和と上坂部の微妙な関係については、大島にしか話していないはずなのだが……。
 普段はおっとりとしているクラスメートからの鋭い問いかけに面食らったオレは、適当に言い繕うことも出来ず、頬をかきながら、「あぁ、それはどうなんだろうな……」と、曖昧に答えた。

 正直なところ、名和リッカの謎ムーブのせいで忘れかけていたとは言え、先週の朝のことだって、オレにとってはあまり思い出したくない事柄なのだが……。

 ただ、控えめな性格の女子生徒は、上ずるような声で、オレに語りかけてきた。

「そ、それって、立花くんが上坂部さんを守ってあげようとしたってことだよね? 白草四葉ちゃんの動画の相談主は、実は上坂部さんなんじゃないか? って、女子の間ではウワサになってたし……」

「い、いや、上坂部を守ろうとか、そんな大層なモノじゃないよ……オレが、勝手に動画のコメント欄に相談の内容を書き込んだのは事実だし」

「でも、上坂部さんが誤解されそうになってるって思ったからこそ、あんな風に、自分から、ホントのことを言ってくれたんだよね!?」

 普段の教室では大人し目な振る舞いを目にすることが多い浜小春が、ずいぶんと食い気味に、そして、熱心に、オレの意志を確認してこようとする。

「ん……まあ、そういうふうにも言えるのかな?」

 あまり強く否定すると、こちらの事情を問い詰めて来そうな感じだったので、あいまいでありながらも肯定的なニュアンスで答えると、

 「やっぱり……」

小柄なクラスメートは、どこか嬉しそうな表情で、胸をなでおろすような仕草を見せた。

 すると、そんな親友のようすを見ながら、珍しく大島睦月がクスクスと笑みを漏らす。
 これまた、普段はあまり見られない、クールビューティーなクラスメートの表情を不思議な想いで眺めていると、

「ああ、ゴメンナサイ。小春のようすが可愛らしかったのと、このコが言ったとおりのことだというのがわかったから、ちょっと、可笑(おか)しくて……」

()()()()()()()()()()()()()って、どういうことだ?)

 そんな疑問が表情にあらわれたのだろう、怪訝な顔つきで話しを聞いていたオレのようすに気づいたのか、大島は、さらに言葉を続ける。

「小春は、先週の一件であなたが、ずいぶんと落ち込んでいるようすだったから、心配していたのよ。『立花くん、みんなの前で、あんなこと言って大丈夫かな?』って……私は、教壇でのあなたの()()()の場面を見逃してしまったから、小春を上手く安心させることができなくて……でも、これで、明日からのテストの心配のタネが無くなったわ。忘れ物も、机の中にあったみたいだし、これで心おきなく、テストに取り組めるわね、小春?」

 いつもの教室ではあまり見られない朗らかな表情で語る大島睦月に対して、浜小春は、可愛らしく抗議する。

「もう、睦月! そんなに詳しく話すことないじゃない!」

 真っ赤になって、親友に物申しているクラスメートの姿を眺めながら、オレはワカ姉のサークラ女子への対策に関するアドバイスを思い返していた。

 ・リーダーや信頼できる人に相談する。

 クラス内のリーダー的存在とは言えないものの、自分に対して敵対的な意識を持っていない大島と浜になら、名和リッカに関する相談を持ちかけても大丈夫かも知れない―――と感じた。


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 週が開けて、月曜日―――。
 名和リッカが、またなにか良からぬことを考えているのではないか……という不安で試験勉強が手につかず、中間試験の初日の出来は、上々とは言えるものではなかった。
(最低限、平均点さえ取れていれば……)
 比較的得意な古典と歴史総合の科目で、後ろ向きな気持ちになっているあたりで、初日の試験に対するオレ自身の手応を感じ取ってほしい。
 そんな中、人影もまばらになった教室で、帰り支度をしようとカバンの中身を確認していると、おもむろに教室のドアが開いた。
 もしかして、いま最も警戒すべき相手が、周囲に生徒が少ないことを確認して戻って来たのか……と身構えたが、あらわれたのは、オレの予想とは異なり、二人の生徒だった。
「ゴメンね、|睦月《むつき》……私のせいで……」
「大丈夫だよ、|小春《こはる》。机を確認したら、すぐに帰ろう」
 そんなことを話し合いながら、吹奏楽部の浜小春と大島睦月が教室に入ってきた。
 二人で会話をしながらも、オレの存在に気づいた大島が、たずねてくる。
「あら? アナタ、まだ残ってたの?」
「あぁ、ちょっと試験初日の反省会をしていたところだ。もう、帰るよ。やっぱり、他人との勉強会なんて慣れないことはするもんじゃないな」
 週末の図書館で、怪しげなアプローチを仕掛けてきた相手のことを思い出しながら答える。
 すると、オレの言葉に反応した大島は、
「もしかして、名和さんに、葉月が久々知のことを諦めずにアプローチしようとしていることがバレてるの?」
と、たずねてきた。
「いや、それについては、正直よくわからない。ただ、オレは土曜日に図書館に行って、名和と上坂部と久々知の四人で試験勉強をしたんだ」
 オレの返答に、大島は、「へぇ……」と答えたあと、
「クラスのメンバーとは群れないあなたにしては珍しいわね」
と、付け加える。
「ああ、名和がオレと上坂部を呼び出して、『転校前の学校とはテストの傾向が違うかも知れないから、対策を教えてほしい』と言ってきたから、それに付き合ったんだよ」
 オレが、そう答えると、大島は「あら、そうなの」と、つぶやくだけだったが、一方の浜は、なにかに気づいたような表情でたずねてきた。
「ねぇ、もしかして、なんだけど……立花くんが、名和さんに呼び出されたのって、先週の朝、授業が始まる前に、教壇のところで、『四葉ちゃんにお悩み相談をしたのは――――――なにを隠そう、このオレだ!』って、自分から話をしたことと関係あるのかな?」
 名和と上坂部の微妙な関係については、大島にしか話していないはずなのだが……。
 普段はおっとりとしているクラスメートからの鋭い問いかけに面食らったオレは、適当に言い繕うことも出来ず、頬をかきながら、「あぁ、それはどうなんだろうな……」と、曖昧に答えた。
 正直なところ、名和リッカの謎ムーブのせいで忘れかけていたとは言え、先週の朝のことだって、オレにとってはあまり思い出したくない事柄なのだが……。
 ただ、控えめな性格の女子生徒は、上ずるような声で、オレに語りかけてきた。
「そ、それって、立花くんが上坂部さんを守ってあげようとしたってことだよね? 白草四葉ちゃんの動画の相談主は、実は上坂部さんなんじゃないか? って、女子の間ではウワサになってたし……」
「い、いや、上坂部を守ろうとか、そんな大層なモノじゃないよ……オレが、勝手に動画のコメント欄に相談の内容を書き込んだのは事実だし」
「でも、上坂部さんが誤解されそうになってるって思ったからこそ、あんな風に、自分から、ホントのことを言ってくれたんだよね!?」
 普段の教室では大人し目な振る舞いを目にすることが多い浜小春が、ずいぶんと食い気味に、そして、熱心に、オレの意志を確認してこようとする。
「ん……まあ、そういうふうにも言えるのかな?」
 あまり強く否定すると、こちらの事情を問い詰めて来そうな感じだったので、あいまいでありながらも肯定的なニュアンスで答えると、
 「やっぱり……」
小柄なクラスメートは、どこか嬉しそうな表情で、胸をなでおろすような仕草を見せた。
 すると、そんな親友のようすを見ながら、珍しく大島睦月がクスクスと笑みを漏らす。
 これまた、普段はあまり見られない、クールビューティーなクラスメートの表情を不思議な想いで眺めていると、
「ああ、ゴメンナサイ。小春のようすが可愛らしかったのと、このコが言ったとおりのことだというのがわかったから、ちょっと、|可笑《おか》しくて……」
(|こ《・》|の《・》|コ《・》|が《・》|言《・》|っ《・》|た《・》|と《・》|お《・》|り《・》|の《・》|こ《・》|と《・》って、どういうことだ?)
 そんな疑問が表情にあらわれたのだろう、怪訝な顔つきで話しを聞いていたオレのようすに気づいたのか、大島は、さらに言葉を続ける。
「小春は、先週の一件であなたが、ずいぶんと落ち込んでいるようすだったから、心配していたのよ。『立花くん、みんなの前で、あんなこと言って大丈夫かな?』って……私は、教壇でのあなたの|大《・》|演《・》|説《・》の場面を見逃してしまったから、小春を上手く安心させることができなくて……でも、これで、明日からのテストの心配のタネが無くなったわ。忘れ物も、机の中にあったみたいだし、これで心おきなく、テストに取り組めるわね、小春?」
 いつもの教室ではあまり見られない朗らかな表情で語る大島睦月に対して、浜小春は、可愛らしく抗議する。
「もう、睦月! そんなに詳しく話すことないじゃない!」
 真っ赤になって、親友に物申しているクラスメートの姿を眺めながら、オレはワカ姉のサークラ女子への対策に関するアドバイスを思い返していた。
 ・リーダーや信頼できる人に相談する。
 クラス内のリーダー的存在とは言えないものの、自分に対して敵対的な意識を持っていない大島と浜になら、名和リッカに関する相談を持ちかけても大丈夫かも知れない―――と感じた。