理由
ー/ー 僕は毎晩、君と共に夜の冒険をするようになった。
それは、蛍が輝かせる火垂る袋の群生地であったり、煌びやかな天の川を映しながら流れる清流であったり……子供の頃には出会うことのなかった絶景に遭遇することも多かった。
その度に、君は「何だか、得しちゃったね」と、自らを蝕む病に付随する特典のような言い方をして笑うのだった。
そんな毎日を繰り返していると……永遠に変わらないように思えていた時間は、徐々に経過しているということを、肌で感じられるようになってきた。頬を抜ける夜の風は冷たくなってきたし、耳に入る虫の音も、コオロギや鈴虫の奏でる涼しげなものに様変わりしてきた。
それは夏の終わりと秋の訪れを報せる変化であり、君からも徐々に、やつれている様が見て取れるようになった。
しかし、僕は君が残された時間を使って成し遂げようとしていることを支援した。認知機能が低下し始めて、足元も覚束なくなった君を支えて、夜にはやはり、僕達は冒険に出た。何故なら、君がそうしたいと望んだのだから……。
一しきりの冒険の後には、君は決まって、見た風景を絵に残した。魂を削り、自らを摩耗しながら……君がやつれてゆくにつれて、描く絵は観る者を魅了する力を持つように思えた。そしてそのことは、僕にとって、どうしようもなく遣る瀬無かった。
僕はどうして、『両親』に『息子』としてこの郷へ連れて来られたのだろう? 常に、その意味を考えていた。
自分達が死に至る難病を発症する……自分達の間にできた子供も、いずれ発症する。二人はそのことを知っていたからなのだろうか? そして、外部で施設育ちの僕が、そんな家族の一員となった理由は?
日に日にやつれてゆく君を見る度に、その意味が暗に訴えかけられる気がしたのだった。
それは、蛍が輝かせる火垂る袋の群生地であったり、煌びやかな天の川を映しながら流れる清流であったり……子供の頃には出会うことのなかった絶景に遭遇することも多かった。
その度に、君は「何だか、得しちゃったね」と、自らを蝕む病に付随する特典のような言い方をして笑うのだった。
そんな毎日を繰り返していると……永遠に変わらないように思えていた時間は、徐々に経過しているということを、肌で感じられるようになってきた。頬を抜ける夜の風は冷たくなってきたし、耳に入る虫の音も、コオロギや鈴虫の奏でる涼しげなものに様変わりしてきた。
それは夏の終わりと秋の訪れを報せる変化であり、君からも徐々に、やつれている様が見て取れるようになった。
しかし、僕は君が残された時間を使って成し遂げようとしていることを支援した。認知機能が低下し始めて、足元も覚束なくなった君を支えて、夜にはやはり、僕達は冒険に出た。何故なら、君がそうしたいと望んだのだから……。
一しきりの冒険の後には、君は決まって、見た風景を絵に残した。魂を削り、自らを摩耗しながら……君がやつれてゆくにつれて、描く絵は観る者を魅了する力を持つように思えた。そしてそのことは、僕にとって、どうしようもなく遣る瀬無かった。
僕はどうして、『両親』に『息子』としてこの郷へ連れて来られたのだろう? 常に、その意味を考えていた。
自分達が死に至る難病を発症する……自分達の間にできた子供も、いずれ発症する。二人はそのことを知っていたからなのだろうか? そして、外部で施設育ちの僕が、そんな家族の一員となった理由は?
日に日にやつれてゆく君を見る度に、その意味が暗に訴えかけられる気がしたのだった。
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