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10話 カンファレンス(1)

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 五十畳ほどの広さがある職員室。長方形型の部屋には、勉強机のような独立した引き出し付きの机が職員一人一人に与えられており、向き合うように十台ほど並べてある。
 そんな並びが職員室には三ヶ所あり、何故そんな配置にしているかというと、ひだまり療育園では二十五人の保育士が勤めており、職員を三グループに分けているからだ。
 療育園に来る子は人の多さに落ち着かなかったり、ザワザワした環境から先生の話を聞き逃してしまう子が多い。だからこの療育園では基本的に一クラス九人以上にならないようにしている。

 またクラス決めは年齢別が基本だけど、発達段階でも分けている。
 例え年長さんだったとしても、重度の知的障害を抱える子は午後からの就学支援のクラスには合わず、負担がかかる。だから年少さんのクラスに入り、基本的生活の基盤を作る訓練を続ける。
 こうやって一人一人に合わせた支援を目指している。

 三グループあると、食堂の使用時間や園庭やプレイルームの使用が被らないように事前に時間を決めておかなければならない。
 そうゆう手間はあるけど、やはりこれだけの先生が居るのは心強く、色々な考えや意見を交わすことが出来るのでここに就職出来て良かったと思っている。


「これより青柳凛ちゃんのカンファレンスを始めます。よろしくお願いします」
 声が小さく情けない震え声が、小さく響いて広い部屋へと消えていく。
 年に二回ある、支援計画書の作成。当然ながらただ関わっているのではなく、短期目標と長期目的を立て、その実現の為にどのような支援をしていくのかを考えていかなければならない。
 作成にはまずご家族の要望を聞き、それをこちらの意見と擦り合わせ、支援計画を立てていく。

 誰かと一緒に遊ぶまでの概念は大体二歳ぐらいの成長段階から出てくるけど、パンダ組の子は実年齢三歳だけど精神年齢はだいたい一歳から二歳前ぐらい。まだ誰かと遊ぶまでは成長していないから、パンダ組の療育は基本一対一で行うことが多い。
 子供一人に保育士一人と決まっていて、子供を不安にさせない為に基本は同じ保育士が担当するのが園の方針。

 また担当保育士の私観により支援がブレないように、カンファレンスはグループ全員で行い、ケアを共有していくと決まっている。
 今日十月十五日は凛ちゃんのカンファレンス日と決まっていて、昨日の夜から頭の中でシュミレーションをしていたけど、やはり本番は心臓がバクバクと音を鳴らしてしまう。

「凛ちゃん。この半年で成長しましたね?」
 このグループの主任である斉藤先生が、黙ってしまった私の代わりに話を進めてくれた。
 主任は普段の療育に対してメインに担当しないが子供達全体を見ていて、保護者さんとの懇談は担当保育士だけでなく主任が付くと決まっている。また他のグループの主任と密に連絡を取って時間割を決めていて、食堂で別の班と一緒になってしまうなどの予定が被らないように調整してくれている。
 また保育士の有給や病欠の時に臨時で担当し、子供一人に対して一人の保育士が担当する園の方針を変えないようにしている。

 グループには、責任者の役割がある主任。
 小林先生みたいな担当の子供を持たない進行役メインで、子供が担当の先生を叩くなどのトラブルの時にいち早く対応してくれる。
 このひだまり療育園が開設された十年前から勤められていて、教室をまとめてくれる大ベテラン先生。

 筧先生みたいな子育て経験があり、育児相談しやすいベテラン先生。
 子供達のお母さんと同世代ぐらいで、現役子育て中であることから変わりゆく育児法を知っているママさん先生。
 そして、まだ勉強中の身である新人と中堅の間となる私が一番経験が浅い。他の先生の声掛けや対応を見て、一つずつ身に付けている。

「凛ちゃんは親子教室の頃から来てくれていますが、初めは泣いて暴れてお母さんも苦労されていました。でも今はだいぶ慣れてくれて、癇癪も減りました。他者への関心もありませんでしたが、みんなが部屋から出ていくと体を起こし悲しそうな表情をしています。そこで部屋に行こうと話すと安心したような、嬉しそうな顔をしていましたし、まだ一緒に活動は出来ませんが、みんなとは一緒に居たいという気持ちは芽生えていると思います」
 気付けば声が弾んでいて、声色を下げる。
 すると他の先生も、「今日はスコップを片付けられていたね」とか、「靴を大切に出来たよね」とか肯定の言葉が湧き出てくる。
 他の子を担当している先生も凛ちゃんを見てくれていて、成長も感じてくれている。その事実に温かな気持ちが、ブワッと湧いていた。


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 五十畳ほどの広さがある職員室。長方形型の部屋には、勉強机のような独立した引き出し付きの机が職員一人一人に与えられており、向き合うように十台ほど並べてある。
 そんな並びが職員室には三ヶ所あり、何故そんな配置にしているかというと、ひだまり療育園では二十五人の保育士が勤めており、職員を三グループに分けているからだ。
 療育園に来る子は人の多さに落ち着かなかったり、ザワザワした環境から先生の話を聞き逃してしまう子が多い。だからこの療育園では基本的に一クラス九人以上にならないようにしている。
 またクラス決めは年齢別が基本だけど、発達段階でも分けている。
 例え年長さんだったとしても、重度の知的障害を抱える子は午後からの就学支援のクラスには合わず、負担がかかる。だから年少さんのクラスに入り、基本的生活の基盤を作る訓練を続ける。
 こうやって一人一人に合わせた支援を目指している。
 三グループあると、食堂の使用時間や園庭やプレイルームの使用が被らないように事前に時間を決めておかなければならない。
 そうゆう手間はあるけど、やはりこれだけの先生が居るのは心強く、色々な考えや意見を交わすことが出来るのでここに就職出来て良かったと思っている。
「これより青柳凛ちゃんのカンファレンスを始めます。よろしくお願いします」
 声が小さく情けない震え声が、小さく響いて広い部屋へと消えていく。
 年に二回ある、支援計画書の作成。当然ながらただ関わっているのではなく、短期目標と長期目的を立て、その実現の為にどのような支援をしていくのかを考えていかなければならない。
 作成にはまずご家族の要望を聞き、それをこちらの意見と擦り合わせ、支援計画を立てていく。
 誰かと一緒に遊ぶまでの概念は大体二歳ぐらいの成長段階から出てくるけど、パンダ組の子は実年齢三歳だけど精神年齢はだいたい一歳から二歳前ぐらい。まだ誰かと遊ぶまでは成長していないから、パンダ組の療育は基本一対一で行うことが多い。
 子供一人に保育士一人と決まっていて、子供を不安にさせない為に基本は同じ保育士が担当するのが園の方針。
 また担当保育士の私観により支援がブレないように、カンファレンスはグループ全員で行い、ケアを共有していくと決まっている。
 今日十月十五日は凛ちゃんのカンファレンス日と決まっていて、昨日の夜から頭の中でシュミレーションをしていたけど、やはり本番は心臓がバクバクと音を鳴らしてしまう。
「凛ちゃん。この半年で成長しましたね?」
 このグループの主任である斉藤先生が、黙ってしまった私の代わりに話を進めてくれた。
 主任は普段の療育に対してメインに担当しないが子供達全体を見ていて、保護者さんとの懇談は担当保育士だけでなく主任が付くと決まっている。また他のグループの主任と密に連絡を取って時間割を決めていて、食堂で別の班と一緒になってしまうなどの予定が被らないように調整してくれている。
 また保育士の有給や病欠の時に臨時で担当し、子供一人に対して一人の保育士が担当する園の方針を変えないようにしている。
 グループには、責任者の役割がある主任。
 小林先生みたいな担当の子供を持たない進行役メインで、子供が担当の先生を叩くなどのトラブルの時にいち早く対応してくれる。
 このひだまり療育園が開設された十年前から勤められていて、教室をまとめてくれる大ベテラン先生。
 筧先生みたいな子育て経験があり、育児相談しやすいベテラン先生。
 子供達のお母さんと同世代ぐらいで、現役子育て中であることから変わりゆく育児法を知っているママさん先生。
 そして、まだ勉強中の身である新人と中堅の間となる私が一番経験が浅い。他の先生の声掛けや対応を見て、一つずつ身に付けている。
「凛ちゃんは親子教室の頃から来てくれていますが、初めは泣いて暴れてお母さんも苦労されていました。でも今はだいぶ慣れてくれて、癇癪も減りました。他者への関心もありませんでしたが、みんなが部屋から出ていくと体を起こし悲しそうな表情をしています。そこで部屋に行こうと話すと安心したような、嬉しそうな顔をしていましたし、まだ一緒に活動は出来ませんが、みんなとは一緒に居たいという気持ちは芽生えていると思います」
 気付けば声が弾んでいて、声色を下げる。
 すると他の先生も、「今日はスコップを片付けられていたね」とか、「靴を大切に出来たよね」とか肯定の言葉が湧き出てくる。
 他の子を担当している先生も凛ちゃんを見てくれていて、成長も感じてくれている。その事実に温かな気持ちが、ブワッと湧いていた。