【耐えるサリー】
ー/ー 一方、船の一室ではジョージと船員たちが酒を飲みながら騒いでいた。
大きなテーブルの上には大きな皿が並び、皿の上には捌いてもいない魚が積まれている。
「こんな美味いメシは久々だぁ!」
船員の一人が魚を口に放り込む。
他の船員たちも食べたり飲んだりしながら、楽しげに笑っていた。
「あの鬼神族の子ども、どのくらいの値段で売れるかな? 楽しみですね、カシラ!」
船員に声を掛けられたジョージは「ははは」と笑う。
「鬼神族は珍しーいからなぁー、二百万ガルーは行くだろぉう」
ジョージが言うと、船員たちは歓喜の声を上げる。
「あ、コラ有翼人、カシラのグラスが空いてるじゃないか! さっさと酒を入れろ!」
怒鳴った船員の視線の先にはサリーがいた。
翼を細い縄で縛られたサリーは、縄の痛みに耐えながら酒瓶を抱えている。
怒鳴られたことに身を縮めながら、サリーはジョージの隣に行き、グラスに酒を注いだ。
「はっはっは、利口な有翼人だ」
満足そうに言うジョージを横目で見て、サリーはむすっとした表情になる。
(今は我慢の時ですわ、レオール様が助けに来てくれるのですから!)
と、心の中で自分に言い聞かせ、この状況に耐えていた。
「鬼神族といい、有翼人といい、今日は運がいいですね! ちなみに、弱っちそうな人間二人はどうします? サメの餌にでもします?」
船員に聞かれたジョージはリュートを鳴らし、深く呼吸をする。
「それもぉー悪くなぁいなぁ」
機嫌良さげに顔をほんのり赤くして、ジョージが言う。
それを聞いたサリーの目つきが変わった。
酒瓶から手を放す。
床に酒瓶が叩きつけられ、ガシャンという音とともに酒瓶は割れた。
「おい! 何してんだ有翼人! カシラの足が汚れたらどうする!」
船員が顔を真っ赤にし、目をつり上げる。
サリーはそんな船員を見た。
「レオール様を人間と間違えるだけでは飽き足らず、サメの餌にするなんて! 許し難いですわ!」
叫ぶようにサリーが言う。
船員たちは驚いて動きを止めた。
更にサリーは言葉を続ける。
「そもそも、あの方を鬼神族と間違えていますし、私のことも有翼人と間違えていますの! あなたたち、目が節穴過ぎます!」
そこまで言って、サリーはふぅ、と一度息をついた。
船員たちは固まり、サリーを見つめている。
するとジョージは笑い声をあげ、立ち上がった。
そして、サリーの前に立つ。
「君は自分の立場を理解していないようだ……この先、一生甲板の掃除係にしてやってもいいんだぞ」
ずいっとジョージはサリーに顔を近づける。
サリーは怯む様子も見せず、ジョージを睨み返した。
「有翼人ではない……なら、君は何者だ? ハーピーの亜種か?」
と、ジョージに言われてサリーは驚く。
「あなた、本気で言ってますの?」
ここまで来てハーピーの亜種と間違われたことが信じられなかったサリーは、思わず言葉をこぼしてしまった。
途端にジョージの表情が不機嫌そうに歪む。
「お前は死ぬまで甲板の掃除係だ」
怒りを含んだジョージの声に対し、サリーはまゆをつり上げてジョージを睨む。
その時だった。
「失礼します!」
と、声がして、ドアが開いた。
ドア向こうから、網で拘束された船員二人が転がりこむ。
「なぁに事だぁ?」
ジョージがドアの方を見ると、そこには赤い髪に青い瞳をした若者がいた。
そばかすのあるその若者は、ディルだった。
「サリー!」
ディルの後ろからレオールが姿を見せ、レオールはそのまま部屋の中へと入る。
船員たちは立ち上がり、レオールたちを睨む。
「レオール様!」
サリーは嬉しそうに笑顔になり、レオールを見た。
レオールはサリーの翼に食い込む縄を見て、ジョージに鋭い眼差しを向ける。
「サリーに酷いことを……許さんぞ」
レオールが言うと、ジョージは笑い声をあげ、そしてリュートを鳴らした。
「奴らを捕まえろ」
ジョージが言った途端、船員たちが武器を持ってレオールたちに襲いかかる。
ジョージはサリーの腕を掴み、自分の方へと引き寄せた。
ぬるりとしたジョージの体に触れたサリーは、不快感を覚えながらジョージを見上げる。
ジョージはサリーの事を見ることもなく、レオールたちの方に集中していた。
レオールは襲い来る船員たちの攻撃を避けながら、短剣で船員を切りつける。
しかし、浅い傷を負ったところで、船員たちには大したダメージになっていない。
「わわっ、どうしよう!」
怯えながら、ディルは逃げ回る。
それを見たレオールは、剣を持つ船員に視線を向けた。
短剣を握りしめ、レオールはその船員に駆け寄り、剣を持っている腕をきり落とす。
腕を落とされた船員は、さすがに怯んで後方に飛び退いた。
レオールは剣を持ち上げ、吸盤で貼り付く船員の腕を引き剥がし、剣をディルの方に投げる。
「それを使え!」
レオールが言ったのと同時に、剣がディルの目の前に落ちた。
「は、はい!」
ディルは両手で剣を持ち、構える。
船員たちは剣を持ったディルに、構わず襲いかかった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。