第5話 重力の奇術師

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 謁見とアリスの奇妙な出来事から数日、アリスがリベルの拠点を調べてきてくれるので、定期的に拠点を潰しながら自分達の強化を行っていた。そして、[永氷(アイシクル)()支配者(ドミネーター)]を応用し、剣を生成する練習をしていた。

 セイの[運命(ディメンション)()支配者(ドミネーター)]は強力だが手加減が難しい。それにあまり複雑な事をすると、魔力の減りがかなり速くなってしまうのだ。なので基本的に体術と剣を中心に戦っていけたらいいなと思ったわけだ。

 人間の筋力や体力はほぼスキルの等級に比例する。もちろんセイも例外ではなく、基礎的な身体能力は常人のそれを大きく上回っている、が身体強化の神話級スキル[闘神降臨]には遠く及ばない。聞いた話では「ただの拳で山をいくつか消せる」そうだ。

 もちろんセイも[闘神降臨]を取得しようとしたが、
 『現在[闘神降臨]には所有者が存在しており、取得ができません。神話級以上の等級のスキルは、同じスキルを同世界線の2人以上が持つ事は出来ません』
 とのことだった。

だったらやることは簡単だ。
 [運命(ディメンション)()支配者(ドミネーター)]で俺の身体能力を改ざんする!
 「俺の身体能力を限界まで上昇させる!」
 『了承。マスターの筋力、素早さ、および動体視力を人間族の上限まで上昇させます』

 ほかにも自分自身を強化するチートはあるはずだが、思いつかなかったので、システムに頼ってみることにした。
 「システム、他にも俺を強化するチートがあれば()()俺にかけてくれ」
 『了承しました。[運命(ディメンション)()支配者(ドミネーター)]で能力プリセットを作成します。
 [物理攻撃完全無効]、[魔法攻撃完全無効]、[精神攻撃完全無効]、[状態異常完全無効]、[概念崩壊耐性]を起動しました』

 『[スキル無効化無効]を起動しました。[スキル無効化無効スキル無視スキル無効]を起動しました。[スキル無効化無効……』

 「俺でもちょっと何言ってるか分からなくなってきた。まるで小学生が考えたかのようなチートだ。ただ、こういうのが結局一番強かったりするんだよなぁ」
 『先ほど起動した能力はコピーし、ゴッドシステムを経由し他人への譲渡が可能です』
 セイは迷わず一瞬で決めた。
 「アリスに譲渡だ!」
 これで晴れてアリスもチーターの仲間入りだ。

 それからというもの、リベルの拠点潰しは順調だった。
 ある日、セイ達は少し大きめの拠点潰しをしていた。いたのは約120人、もちろん全滅だ。
 すると奥の方から声が聞こえてきたのだった。
 「なんの音ですか…? 誰か助けていただけませんか?」
 そこ牢に閉じ込められていたのは、礼儀正しそうな緑髪の青年だった。
 他にも牢はあったが、醜い姿で息途絶えていたり、モンスターのように暴走していた子供もいた。その中で無事と思われるのはその緑髪の青年だけだった。

 セイはすぐ剣で牢を切り刻み、青年を助け出した。
 「あ、ありがとうございます!」
 自己紹介をしてもらおうとしたが、青年は牢の仲間達を埋葬してくれないかと懇願してきた。流石にセイは鬼ではなかった。暴走した子供は苦痛を感じぬようひと思いに切り、全員分の遺体を埋葬した。

 「僕の我儘を聞いていただき、ありがとうございます。ここの子供は産まれた時から一緒でして……」
 しかし俺は疑問に感じた。
 「産まれた時から…? じゃあスキルは持っていないのか?」
 「はい……産まれた時らずっと一緒でした。
 スキルとは…一体何でしょう? 牢の外の人たちが不思議な力を持っていましたが……」
 セイは、同情しながら説明した。
 「ああ。それがスキルだ」
 「……」
 「……」
 青年は少し考えた後、口を開いた。
 「それは今から僕でも手に入れる事はできますか……!」
 (本来は無理だ。最初のスキルを12歳までに受け取らなければ、そもそもゴッドシステムを入れる事が出来なくなる。彼はどう見ても10代後半。

 だが……)
 『マスターからの譲渡なら可能です』
 (だよなぁ……)
 「俺からの譲渡ならスキルを手に入れる事はできる」
 青年は目を輝かせた。
 「本当ですか!」

 セイ達は、青年を連れ、一旦家に帰ることにした。人目につかないよう、暗い森の中を歩く。
 「そういえば名前はなんていうんだ?」
 青年はおどおどしながら答えた。
 「ミカ。ミカ・フィンダーと申します。どうか、よろしくお願いします」

 「ではここで、全次元を揺るがす大発見! 【バルトコア】について! ベルクリア研究所所長のブラトさんにお話を伺っていきます!……」
 家に着き、テレビを流し見ながらセイは譲渡するスキルを選んでいた。
 『コピーしたスキルを譲渡することはできません』
 「だがアリスへの譲渡では普通にコピーしていたが……」
 『あれはスキルではなく、マスターのスキルで生成した応用能力です。よって、コピーした上での譲渡が可能でした』
 つまりスキルを譲渡するという事はセイは一つスキルを失うということだが、ミカには一つくらいスキルを与えたいという気持ちが強かった。

 「ミカ、欲しいスキルの系統とかあるか?」
 風呂上がりでほかほかのミカが答える。
 「僕が決めることではないですが……ではできれば魔法系が欲しいです。体の扱いは得意ではないので……」
 「おっ。ぴったりのがあったぞ!」
 『対象者、ミカ・フィンダーにゴッドシステム及びEX伝説級スキル[重力魔法]を付与、譲渡します』

 ミカの耳にシステム音声が聞こえた。
 『ゴッドシステム、インストール完了。譲渡されたスキルを取得します』
 『EX伝説級スキル[重力魔法]を取得しました』
 『あなたの苦痛にあふれた経験に、神が慈悲の心を見せました。スキルがアップグレードされます。』
 『EX伝説級スキル[重力魔法]は神話級スキル[重力(グラビティ)()奇術師(マジシャン)]に進化しました』
 等級の意味をいまいち理解していないミカでも流石に事の凄さには気付いたようで、嬉しそうに俺に伝えた。

 「いただいたスキルが神話級になりました! ありがとうございます!」
 セイはもはや何の反応もしなかった。

 「まあこれでリベルの拠点潰しが多少楽になるってことでいいか……」


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 謁見とアリスの奇妙な出来事から数日、アリスがリベルの拠点を調べてきてくれるので、定期的に拠点を潰しながら自分達の強化を行っていた。そして、[|永氷《アイシクル》|の《・》|支配者《ドミネーター》]を応用し、剣を生成する練習をしていた。
 セイの[|運命《ディメンション》|の《・》|支配者《ドミネーター》]は強力だが手加減が難しい。それにあまり複雑な事をすると、魔力の減りがかなり速くなってしまうのだ。なので基本的に体術と剣を中心に戦っていけたらいいなと思ったわけだ。
 人間の筋力や体力はほぼスキルの等級に比例する。もちろんセイも例外ではなく、基礎的な身体能力は常人のそれを大きく上回っている、が身体強化の神話級スキル[闘神降臨]には遠く及ばない。聞いた話では「ただの拳で山をいくつか消せる」そうだ。
 もちろんセイも[闘神降臨]を取得しようとしたが、
 『現在[闘神降臨]には所有者が存在しており、取得ができません。神話級以上の等級のスキルは、同じスキルを同世界線の2人以上が持つ事は出来ません』
 とのことだった。
だったらやることは簡単だ。
 [|運命《ディメンション》|の《・》|支配者《ドミネーター》]で俺の身体能力を改ざんする!
 「俺の身体能力を限界まで上昇させる!」
 『了承。マスターの筋力、素早さ、および動体視力を人間族の上限まで上昇させます』
 ほかにも自分自身を強化するチートはあるはずだが、思いつかなかったので、システムに頼ってみることにした。
 「システム、他にも俺を強化するチートがあれば|常《・》|時《・》俺にかけてくれ」
 『了承しました。[|運命《ディメンション》|の《・》|支配者《ドミネーター》]で能力プリセットを作成します。
 [物理攻撃完全無効]、[魔法攻撃完全無効]、[精神攻撃完全無効]、[状態異常完全無効]、[概念崩壊耐性]を起動しました』
 『[スキル無効化無効]を起動しました。[スキル無効化無効スキル無視スキル無効]を起動しました。[スキル無効化無効……』
 「俺でもちょっと何言ってるか分からなくなってきた。まるで小学生が考えたかのようなチートだ。ただ、こういうのが結局一番強かったりするんだよなぁ」
 『先ほど起動した能力はコピーし、ゴッドシステムを経由し他人への譲渡が可能です』
 セイは迷わず一瞬で決めた。
 「アリスに譲渡だ!」
 これで晴れてアリスもチーターの仲間入りだ。
 それからというもの、リベルの拠点潰しは順調だった。
 ある日、セイ達は少し大きめの拠点潰しをしていた。いたのは約120人、もちろん全滅だ。
 すると奥の方から声が聞こえてきたのだった。
 「なんの音ですか…? 誰か助けていただけませんか?」
 そこ牢に閉じ込められていたのは、礼儀正しそうな緑髪の青年だった。
 他にも牢はあったが、醜い姿で息途絶えていたり、モンスターのように暴走していた子供もいた。その中で無事と思われるのはその緑髪の青年だけだった。
 セイはすぐ剣で牢を切り刻み、青年を助け出した。
 「あ、ありがとうございます!」
 自己紹介をしてもらおうとしたが、青年は牢の仲間達を埋葬してくれないかと懇願してきた。流石にセイは鬼ではなかった。暴走した子供は苦痛を感じぬようひと思いに切り、全員分の遺体を埋葬した。
 「僕の我儘を聞いていただき、ありがとうございます。ここの子供は産まれた時から一緒でして……」
 しかし俺は疑問に感じた。
 「産まれた時から…? じゃあスキルは持っていないのか?」
 「はい……産まれた時らずっと一緒でした。
 スキルとは…一体何でしょう? 牢の外の人たちが不思議な力を持っていましたが……」
 セイは、同情しながら説明した。
 「ああ。それがスキルだ」
 「……」
 「……」
 青年は少し考えた後、口を開いた。
 「それは今から僕でも手に入れる事はできますか……!」
 (本来は無理だ。最初のスキルを12歳までに受け取らなければ、そもそもゴッドシステムを入れる事が出来なくなる。彼はどう見ても10代後半。
 だが……)
 『マスターからの譲渡なら可能です』
 (だよなぁ……)
 「俺からの譲渡ならスキルを手に入れる事はできる」
 青年は目を輝かせた。
 「本当ですか!」
 セイ達は、青年を連れ、一旦家に帰ることにした。人目につかないよう、暗い森の中を歩く。
 「そういえば名前はなんていうんだ?」
 青年はおどおどしながら答えた。
 「ミカ。ミカ・フィンダーと申します。どうか、よろしくお願いします」
 「ではここで、全次元を揺るがす大発見! 【バルトコア】について! ベルクリア研究所所長のブラトさんにお話を伺っていきます!……」
 家に着き、テレビを流し見ながらセイは譲渡するスキルを選んでいた。
 『コピーしたスキルを譲渡することはできません』
 「だがアリスへの譲渡では普通にコピーしていたが……」
 『あれはスキルではなく、マスターのスキルで生成した応用能力です。よって、コピーした上での譲渡が可能でした』
 つまりスキルを譲渡するという事はセイは一つスキルを失うということだが、ミカには一つくらいスキルを与えたいという気持ちが強かった。
 「ミカ、欲しいスキルの系統とかあるか?」
 風呂上がりでほかほかのミカが答える。
 「僕が決めることではないですが……ではできれば魔法系が欲しいです。体の扱いは得意ではないので……」
 「おっ。ぴったりのがあったぞ!」
 『対象者、ミカ・フィンダーにゴッドシステム及びEX伝説級スキル[重力魔法]を付与、譲渡します』
 ミカの耳にシステム音声が聞こえた。
 『ゴッドシステム、インストール完了。譲渡されたスキルを取得します』
 『EX伝説級スキル[重力魔法]を取得しました』
 『あなたの苦痛にあふれた経験に、神が慈悲の心を見せました。スキルがアップグレードされます。』
 『EX伝説級スキル[重力魔法]は神話級スキル[|重力《グラビティ》|の《・》|奇術師《マジシャン》]に進化しました』
 等級の意味をいまいち理解していないミカでも流石に事の凄さには気付いたようで、嬉しそうに俺に伝えた。
 「いただいたスキルが神話級になりました! ありがとうございます!」
 セイはもはや何の反応もしなかった。
 「まあこれでリベルの拠点潰しが多少楽になるってことでいいか……」