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第13話【かえりみち】

ー/ー



 SKYSHIPSのライブは、言葉では言い表せない程に圧倒的だった。
 白い照明が付けられぼんやりと映し出されたフロア。そこはまるで真夏の外ような熱さ。
 中央前方に集中していた人口が流れ出し、BGMとしてまたアメリカロックが流れ始める。
 1度機材を置いて退場したSKYSHIPSのメンバーが、ステージ上の機材を片付けにまた姿を表した。

「結衣さーん!!ライブもう、超良かったですよ!!」
「さんきゅ!片付け終わったら物販やるから来てよ」
「絶対行きます!!」

 がやがやとした中でも、そんな会話はしっかりと緋のところまで聞こえてきた。

 そしてようやくSKYSHIPSに圧倒されて動けなくなっていた足が動くようになった緋は、すぐ隣にいる蒼に聞いてみる。

「……はぁ。蒼どうだった?SKYSHIPS」
「凄かったわね……」
「ね。……でも、私たちはアレを超えるんだよ」
「……ええ。そうね。超えましょ」
「うん」

 ——リスペクトなどではない、純粋な対抗心。

 それが今、緋の胸の奥で燃えていた。

 早くあのステージに立ち、人を魅了してやまないロックスターになりたい。あそこに立つのは自分で、その場所が。近い未来の職場はそこしかないと、確信にも似た感情が心臓を走らせていた。

「……あ、終さんと霜夜さん!」

 そしてクラスメイトも合流した。

「ふたりはSKYSHIPS楽しめた?」
「うん。なんかこう、やる気出てきた」
「ね。私もすごい元気貰っちゃった。……で、私は遅くなると親が心配するからもう帰ろうと思うんだけど、ふたりはどうするの?」
「ん~」

 特に決めてはいないが、SKYSHIPSのアクトは1番目で、このライブはまだあと2組のアーティストが残っている。

「私たちは……まだ見てこうかな。チケット代もったいないしドリンクチケットもまだ2枚あるし」
「そっか。じゃあ今日はこれで。ありがとう、一緒に来てくれて」
「こちらこそ。誘ってくれてありがと。いい経験になったよ」
「うん。それじゃ終さん霜夜さん、また学校で!」
「うん」
「ええ」

 クラスメイトの子は手を振りながらフロア入口の扉の外へと出て行った。

「……」

 緋はフロアに視線を戻した。人の数はライブ中に比べ随分と減っていた。

「SKYSHIPSだけ見て帰っちゃう人、結構いるのかな」
「みたいね。それだけ人気ってことでしょうけど」

 ステージを正面として左側を見れば、SKYSHIPSの物販コーナーが行列を作っていた。

「繁盛してるね……」
「そうね。バンドの収入ってチケットより物販が主ってどこかで聞いたことがあるし、あれが『売れてるバンド』ってことなんでしょうね」
「買いたくないけどどんなラインナップなのかは勉強のために見ときたいよね」
「冷やかしはちょっと申し訳ないわ……」
「冗談。蒼、飲み物貰って来ようよ」
「そうね。喉カラカラ」

 緋と蒼はドリンクカウンターへ。

 カウンターの奥には、丸いサングラスをかけた、顎髭の長いダンディな雰囲気の男性。
 ノンアルコールのラインナップは、コーラ、ジンジャーエール、アップルジュース、ウーロン茶etc…。

「えっと、アップルを」
「同じのを」

「はぁい、しょしょお待ちを」

 ドリンクチケットを渡して少し待っていると、ふたりの予想よりかなり大きなサイズの紙コップに、バカでかい氷と共に入れられたアップルジュースがふたつお出しされた。

「どうぞ」
「ありがとうございます……」

 ふたりは少し引き気味にそれを受け取り、フロア後方の壁付近に戻った。

「思ってたより倍くらい大きいね」
「そうね。少しびっくりしたわ」

 そしてちびちびとアップルジュースを飲んでいると、半分くらいまで減ったところで二番目のアクトが始まった。

「……」

 人の数はSKYSHIPSのアクト終了時の半分以下になっており、緋は正直可哀想だと思った。しかしながら、やはりSKYSHIPSが圧倒的過ぎたということもあり、なんだかぱっとしない印象で終わってしまった。

 緋も今回ライブを見るにあたり事前にSKYSHIPSについては少し調べてきていた。SKYSHIPSはもう1年近く前から週1以上のペースでどこかしらのライブに出まくっているようで、実際、このライブ頻度だからこそ客足が分散して、ワンマンでの開催にせず対バンという形になっているのだと思われる。対バン相手がこれをどうとらえているのかは緋には分からないが少なくとも、SKYSHIPSのファンを奪えるかもなどと一ミリでも思っていたなら気の毒としか言えない。

 そうしているうちに2組目、3組目のアクトも終わり、今日のライブは終了となった。

「物販やってまーす!」

 SKYSHIPS(バケモン)()ることになってしまった哀れなバンドたちを横目に、緋は2杯目のドリンクであるウーロン茶を喉に流し込む。

「……減らない」

 チケットがもったいないので交換したウーロン茶だが、時間が経つにつれて氷も溶けていくためにコップの中の液体の量はまったく減っていなかった。

「——よう。何飲んでんだ?」

「っ!?」

 突然誰かに話しかけられ、緋と蒼はびっくりして顔を上げた。するとそこには、紫髪のくせ毛のショートカットの少女がいた。身長は蒼より数センチ高いくらい。

「えっ……と……」

 緋は彼女の正体を頑張って思い出す。

「SKYSHIPSの」
「おう。ドラムの(くもり)紫音(しおん)だ。……あ~ウーロン茶かぁ……。コーラだったら欲しかったのになぁ」

 彼女、紫音は腕を組んでため息をつくとともに肩を落とした。

「——あっ、こら紫音。何お客さんにたかろうとしてんの」

 ——そこへ、黒髪ロングのSKYSHIPSボーカルギター、才禍結衣もやってきた。

「あぁいえ、飲みきれなくて困ってたところで、気を聞かせてくれたみたいで。ウーロン茶はお気に召さなかったみたいですけど」
「あぁそいこと。捨てるくらいだったら私たちで分けて飲ませてもらいたいけど……あ、じゃあこうしよう。このデモCDと交換でどうかな?」

 結衣はそういうと、白いCDの入った透明なCDケースを緋に見せた。中のCDには、黒のマジックペンで『フリーダムロッカー Demo』と書かれている。

「あ、じゃあそれで……」
「やった、交渉成立」

 緋と蒼は結衣からCDを一枚ずつ受け取ると、代わりにウーロン茶の入ったコップを結衣に渡した。

「ありがと。たくさん聴いてね。……楓花(ふうか)~!(はる)~!お茶の差し入れ~!」

 そう言って結衣は物販コーナーのその奥の方へと消えていった。

「あいつ……自分からたかんなとか言ってたのに。……まあいいや。ふたりは今日何見に来たんだ?」
「あ、SKYSHIPSです」
「あ、マジか!ありがとう。どうだった?」
「すごかったです」
「だろ、マジで私ら最高だったろ。今一番勢いあるバンドだと自負してる。あ、握手とかいい?しとく?」
「ああ……」

 緋が返事をするより先に、紫音は緋の手を取っていた。かなり体温の高い手だった。

「ほい」
「ひっ……」

 紫音は続けて蒼の手も取り、軽く握手をした。

「ほいで、名前!名前も教えてくれよ」
「え、あ、終(つい)(ひいろ)
「緋か。こっちは?」
「し、あ、よっ、蒼(あおい)……」
「緋と蒼だな。おっけ、覚えた!私ら、毎週どっかのライブハウスでライブやってっからさ。また来れる時来てくれよな!」

 紫音はそういうと、さっき結衣が消えていった物販コーナーの奥に向かって消えていった。

「……いきなり手触られるからびっくりした――」

 ——びっくりしたね、と、緋が言い終わるより先に、蒼は緋の手を握った。細い手。最初はほんの少し冷たい、けれど、握ると途端に優しい温もりを帯びる手。

「……どしたの蒼」
「緋の手を触っていいのは私だけなの」
「……うん」
「私の手も緋にしか触ってほしくない」
「まあ……ね。私も蒼以外からのスキンシップは苦手というか好きじゃない」
「……帰りましょ」
「うん。帰ろう」

 ふたりは手をつないだまま、フロアを出た。そして右に進み階段を上る。
 そして扉の外へ。外はもうすっかり暗くなっていた。

「緋」
「ん?」

 蒼は緋の正面に回ると、両手で緋の両手をぎゅっと包み込んで握った。

「ふふっ、なに」
「上書き」
 緋が笑いながら聞くと、蒼はぼそりと呟いた。

「……蒼。そろそろ」
「……まだ上書きしきれてないわ」
「帰ってからじゃだめ?」
「今すぐに対処しないとシミになるわ」
「え、あ、そんなに……?」

 緋が思っていた以上に、蒼にとっては深刻な問題だったらしい。
 仕方がないので蒼が満足するまで手を触り触らせる。何分か経ってようやく蒼は手を離してくれた。

「私がスターになったとしても、この調子じゃ握手は封印かな」
「私しか握っちゃダメな手」
「わかった、握手は封印ね」

 そう言いながら緋は携帯の画面を付けて時刻を確認する。もう9時だった。

「早く帰ろう。寒い」
「ええ。風邪をひいたらいけないわ」

 歩き出す前に、緋と蒼はまた手を繋ぐ。当たり前のように指を絡ませて、ぎゅっと握る。
 互いに離さないように、しっかりと恋人繋ぎをして、歩き出した。



第1章【Scarlet&Skyblue】

——End


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 SKYSHIPSのライブは、言葉では言い表せない程に圧倒的だった。
 白い照明が付けられぼんやりと映し出されたフロア。そこはまるで真夏の外ような熱さ。
 中央前方に集中していた人口が流れ出し、BGMとしてまたアメリカロックが流れ始める。
 1度機材を置いて退場したSKYSHIPSのメンバーが、ステージ上の機材を片付けにまた姿を表した。
「結衣さーん!!ライブもう、超良かったですよ!!」
「さんきゅ!片付け終わったら物販やるから来てよ」
「絶対行きます!!」
 がやがやとした中でも、そんな会話はしっかりと緋のところまで聞こえてきた。
 そしてようやくSKYSHIPSに圧倒されて動けなくなっていた足が動くようになった緋は、すぐ隣にいる蒼に聞いてみる。
「……はぁ。蒼どうだった?SKYSHIPS」
「凄かったわね……」
「ね。……でも、私たちはアレを超えるんだよ」
「……ええ。そうね。超えましょ」
「うん」
 ——リスペクトなどではない、純粋な対抗心。
 それが今、緋の胸の奥で燃えていた。
 早くあのステージに立ち、人を魅了してやまないロックスターになりたい。あそこに立つのは自分で、その場所が。近い未来の職場はそこしかないと、確信にも似た感情が心臓を走らせていた。
「……あ、終さんと霜夜さん!」
 そしてクラスメイトも合流した。
「ふたりはSKYSHIPS楽しめた?」
「うん。なんかこう、やる気出てきた」
「ね。私もすごい元気貰っちゃった。……で、私は遅くなると親が心配するからもう帰ろうと思うんだけど、ふたりはどうするの?」
「ん~」
 特に決めてはいないが、SKYSHIPSのアクトは1番目で、このライブはまだあと2組のアーティストが残っている。
「私たちは……まだ見てこうかな。チケット代もったいないしドリンクチケットもまだ2枚あるし」
「そっか。じゃあ今日はこれで。ありがとう、一緒に来てくれて」
「こちらこそ。誘ってくれてありがと。いい経験になったよ」
「うん。それじゃ終さん霜夜さん、また学校で!」
「うん」
「ええ」
 クラスメイトの子は手を振りながらフロア入口の扉の外へと出て行った。
「……」
 緋はフロアに視線を戻した。人の数はライブ中に比べ随分と減っていた。
「SKYSHIPSだけ見て帰っちゃう人、結構いるのかな」
「みたいね。それだけ人気ってことでしょうけど」
 ステージを正面として左側を見れば、SKYSHIPSの物販コーナーが行列を作っていた。
「繁盛してるね……」
「そうね。バンドの収入ってチケットより物販が主ってどこかで聞いたことがあるし、あれが『売れてるバンド』ってことなんでしょうね」
「買いたくないけどどんなラインナップなのかは勉強のために見ときたいよね」
「冷やかしはちょっと申し訳ないわ……」
「冗談。蒼、飲み物貰って来ようよ」
「そうね。喉カラカラ」
 緋と蒼はドリンクカウンターへ。
 カウンターの奥には、丸いサングラスをかけた、顎髭の長いダンディな雰囲気の男性。
 ノンアルコールのラインナップは、コーラ、ジンジャーエール、アップルジュース、ウーロン茶etc…。
「えっと、アップルを」
「同じのを」
「はぁい、しょしょお待ちを」
 ドリンクチケットを渡して少し待っていると、ふたりの予想よりかなり大きなサイズの紙コップに、バカでかい氷と共に入れられたアップルジュースがふたつお出しされた。
「どうぞ」
「ありがとうございます……」
 ふたりは少し引き気味にそれを受け取り、フロア後方の壁付近に戻った。
「思ってたより倍くらい大きいね」
「そうね。少しびっくりしたわ」
 そしてちびちびとアップルジュースを飲んでいると、半分くらいまで減ったところで二番目のアクトが始まった。
「……」
 人の数はSKYSHIPSのアクト終了時の半分以下になっており、緋は正直可哀想だと思った。しかしながら、やはりSKYSHIPSが圧倒的過ぎたということもあり、なんだかぱっとしない印象で終わってしまった。
 緋も今回ライブを見るにあたり事前にSKYSHIPSについては少し調べてきていた。SKYSHIPSはもう1年近く前から週1以上のペースでどこかしらのライブに出まくっているようで、実際、このライブ頻度だからこそ客足が分散して、ワンマンでの開催にせず対バンという形になっているのだと思われる。対バン相手がこれをどうとらえているのかは緋には分からないが少なくとも、SKYSHIPSのファンを奪えるかもなどと一ミリでも思っていたなら気の毒としか言えない。
 そうしているうちに2組目、3組目のアクトも終わり、今日のライブは終了となった。
「物販やってまーす!」
 |SKYSHIPS《バケモン》と演《や》ることになってしまった哀れなバンドたちを横目に、緋は2杯目のドリンクであるウーロン茶を喉に流し込む。
「……減らない」
 チケットがもったいないので交換したウーロン茶だが、時間が経つにつれて氷も溶けていくためにコップの中の液体の量はまったく減っていなかった。
「——よう。何飲んでんだ?」
「っ!?」
 突然誰かに話しかけられ、緋と蒼はびっくりして顔を上げた。するとそこには、紫髪のくせ毛のショートカットの少女がいた。身長は蒼より数センチ高いくらい。
「えっ……と……」
 緋は彼女の正体を頑張って思い出す。
「SKYSHIPSの」
「おう。ドラムの曇《くもり》紫音《しおん》だ。……あ~ウーロン茶かぁ……。コーラだったら欲しかったのになぁ」
 彼女、紫音は腕を組んでため息をつくとともに肩を落とした。
「——あっ、こら紫音。何お客さんにたかろうとしてんの」
 ——そこへ、黒髪ロングのSKYSHIPSボーカルギター、才禍結衣もやってきた。
「あぁいえ、飲みきれなくて困ってたところで、気を聞かせてくれたみたいで。ウーロン茶はお気に召さなかったみたいですけど」
「あぁそいこと。捨てるくらいだったら私たちで分けて飲ませてもらいたいけど……あ、じゃあこうしよう。このデモCDと交換でどうかな?」
 結衣はそういうと、白いCDの入った透明なCDケースを緋に見せた。中のCDには、黒のマジックペンで『フリーダムロッカー Demo』と書かれている。
「あ、じゃあそれで……」
「やった、交渉成立」
 緋と蒼は結衣からCDを一枚ずつ受け取ると、代わりにウーロン茶の入ったコップを結衣に渡した。
「ありがと。たくさん聴いてね。……楓花《ふうか》~!春《はる》~!お茶の差し入れ~!」
 そう言って結衣は物販コーナーのその奥の方へと消えていった。
「あいつ……自分からたかんなとか言ってたのに。……まあいいや。ふたりは今日何見に来たんだ?」
「あ、SKYSHIPSです」
「あ、マジか!ありがとう。どうだった?」
「すごかったです」
「だろ、マジで私ら最高だったろ。今一番勢いあるバンドだと自負してる。あ、握手とかいい?しとく?」
「ああ……」
 緋が返事をするより先に、紫音は緋の手を取っていた。かなり体温の高い手だった。
「ほい」
「ひっ……」
 紫音は続けて蒼の手も取り、軽く握手をした。
「ほいで、名前!名前も教えてくれよ」
「え、あ、終《つい》緋《ひいろ》」
「緋か。こっちは?」
「し、あ、よっ、蒼《あおい》……」
「緋と蒼だな。おっけ、覚えた!私ら、毎週どっかのライブハウスでライブやってっからさ。また来れる時来てくれよな!」
 紫音はそういうと、さっき結衣が消えていった物販コーナーの奥に向かって消えていった。
「……いきなり手触られるからびっくりした――」
 ——びっくりしたね、と、緋が言い終わるより先に、蒼は緋の手を握った。細い手。最初はほんの少し冷たい、けれど、握ると途端に優しい温もりを帯びる手。
「……どしたの蒼」
「緋の手を触っていいのは私だけなの」
「……うん」
「私の手も緋にしか触ってほしくない」
「まあ……ね。私も蒼以外からのスキンシップは苦手というか好きじゃない」
「……帰りましょ」
「うん。帰ろう」
 ふたりは手をつないだまま、フロアを出た。そして右に進み階段を上る。
 そして扉の外へ。外はもうすっかり暗くなっていた。
「緋」
「ん?」
 蒼は緋の正面に回ると、両手で緋の両手をぎゅっと包み込んで握った。
「ふふっ、なに」
「上書き」
 緋が笑いながら聞くと、蒼はぼそりと呟いた。
「……蒼。そろそろ」
「……まだ上書きしきれてないわ」
「帰ってからじゃだめ?」
「今すぐに対処しないとシミになるわ」
「え、あ、そんなに……?」
 緋が思っていた以上に、蒼にとっては深刻な問題だったらしい。
 仕方がないので蒼が満足するまで手を触り触らせる。何分か経ってようやく蒼は手を離してくれた。
「私がスターになったとしても、この調子じゃ握手は封印かな」
「私しか握っちゃダメな手」
「わかった、握手は封印ね」
 そう言いながら緋は携帯の画面を付けて時刻を確認する。もう9時だった。
「早く帰ろう。寒い」
「ええ。風邪をひいたらいけないわ」
 歩き出す前に、緋と蒼はまた手を繋ぐ。当たり前のように指を絡ませて、ぎゅっと握る。
 互いに離さないように、しっかりと恋人繋ぎをして、歩き出した。
第1章【Scarlet&Skyblue】
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