第12話【フリーダムロッカー】
ー/ー「皆さん今日は!歴代最高のSKYSHIPSをお見せします!!どうか全力でぶつかって来てくださ~~~いッ!!!」
SKYSHIPSボーカル『才禍結衣』の叫びによって開演。その先陣を切ったのは、ドラムだった。
フィルインから繋いだ、恐ろしく早い強烈な4つ打ち。
彼女、曇紫音の腕の動きは高校3年生の女子のそれではなかった。
超高速、超強力。超絶怒涛のドラムソロ。
その圧倒的なドラムを軸に、高速スラップとパワーコードのストロークにストリングスの音色を掛け合わせ、結衣の美しくも強い歌声でこのフロアにいる人間の意識を掻っ攫っていく。
4人のメンバーそれぞれ、めちゃくちゃにやっているように見えて、要所要所で来る強めの一発が綺麗にシンクロしている。その体の揺れ、髪の揺れ、シールドの揺れさえ、まるでプロのダンサーの舞を見ているかのよう。
フロア前方は全員が手をステージに掲げ、ステージ上の4人と熱気を送り合っていた。
「……やば……」
緋は思わず言葉を零した。
鳴り続ける爆音。手を高く掲げ飛び跳ねる観客たち。
手拍子を煽るバスドラの音。リズムに一切のズレさえ許さない。観客に休む暇も与えず、ノンストップで繰り広げられる波のような盛り上がり。
スモークが、目まぐるしく色を変え続ける照明を浴びてフロアを七色に彩る。
「下北ァッ!!」
ステージ中央、結衣は観客以上に休む暇なくノンストップで歪んだパワーコードを掻き鳴らし続け、歌い続け、煽り続けていた。
「みんな全力で遊ぶぞ~~~~ッ!!」
音止まぬまま被せられたシンバル4カウント、そして結衣はマイクから口を離しブースターを踏む。
ここまでパワーコードでバッキングに務めていたギターが、早弾きとカッティングを絡めたギターソロへ。
柵へ足をかけ、前のめりになりながら、柔らかい鉄がたゆんで光り輝く様子を見せびらかす。
そしてフロアの熱狂にも負けないソロを終えると擦り切れたピックをフロアに放り投げ、即座にマイクスタンドのピックホルダーからピックを抜き取りラスサビに備える。
まずは歌唱。ここまで暴れ散らしていたドラムが燃え尽きたように消えるが、この一瞬だけだった。
──超火力の爆弾が爆発した瞬間だけ音が消えるような、そんな一瞬。
大爆発そのものと言っていい爆音がぶっ放され、地響きで人が飛んだかと錯覚する。
実際は人の体が音に合わせて動いただけ。
緋と蒼の体も例外なく、無意識に頭が縦に揺れていた。
叫ぶような歌声が響き、激しく暴れ散らかすようなアウトロ。
最後の一撃を放ち結衣がピックを投げ、曲が終わるかと思われたが、ギターの残響の裏でドラムは鳴り止まずに転調、否、既に次の曲のイントロまでの繋ぎへ。
ハイハットの裏拍。
結衣はしゃがみこみペットボトルを手に取って一瞬で水をがぶ飲みし立ち上がると、両手を上げ後ろに風を送るように煽る。
「Hi! Hi! Hi! Hi!」
フロアの冥界で蠢くような手が、ステージ上の結衣の動きに合わせて一体感を得ていく。
「この調子で2曲目もっとブチ上げていきます!『MAZI!!』で行きましょ~~うッ!!」
「~~~~ッ!!」
「カモン下北ァ!!」
ピックを持った結衣は体を反らせ、前に首を振りながら右足を上げギターを蹴り上げるようにしながら右手を振り下ろし爆音を撒き散らす。
恐ろしく速く恐ろしくテクニカルなドラムに重ねられる歪んだスラップ。これだけ聴けばメタルのような迫力があるがキーボードはキャッチーなメロディで誰でも親しみやすい。
ボーカルは叫ぶような歌声だが、一切がなりは無く凛とした声でよく通る透明感がある。
そしてなにより、フロアを、人間を支配するカリスマ性のようなものを持ち合わせている。
ボーカル、才禍結衣の、ギラギラとした赤紫の瞳が。怖いもの知らずの勢いと野心のほか、ライブを全力で楽しんで、遊んでやろうという、まるでテーマパークに来た子供のような純粋さを秘める。
上げさせる手、上げられた手。フロアとステージを繋ぐ、耳とスピーカーを繋ぐ、視覚からの情報。
ステージを彩る照明は激しく点滅し、その中で好き勝手に体を動かして暴れ回りながらも、4人の息は完璧で音も体もタイミングがピッタリ重なるその瞬間が最高に気持ちいい。
そのまま、爆音鳴り響くままのフロアに、人が増えていく。
後から来た人も、思わず前へ前へと詰めてしまう。
そんな様子を、緋は後ろの方から眺め続ける。幸い前方へ前方へと人が詰め寄って行ったために、後方はぎゅうぎゅう詰めということにはならず、人は多いにしろ視界はなんとか確保できた。
SKYSHIPSは止まることなく3曲目、4曲目、5曲目……とどんどん激しい曲を連発していく。その全てが、まず曇紫音というドラマーを軸にした演奏だった。
目にも止まらぬ速さで乱れ打たれる16のビート。それがSKYSHIPSのスタイル。
「……ロック……バンド……」
SKYSHIPSのスタイルは緋のやりたい音楽とはまた違うが、それでも。芯にあるロックに、悔しながら惹かれてしまう。
この間フロアの人数は続々と増えており、気付けば人口密度はかなり上がっていた。人と人との感覚も狭まり、人1人ギリギリ通れるくらいの隙間しか残されていない。冷房がガンガンに聞いていたはずのこの場所も暑苦しいと感じるほどになっていた。
「──ありがとうっ!それじゃぁ……最後。この前披露したばかりの新曲。今、私たちが1番カッコイイと思ってる曲をやって、今日は終わりにします。その脳みそに刻んでいってください!!」
結衣はマイクに手を置いたまま首を回し、1呼吸置いて曲名を告げる。
「───『フリーダムロッカー』!!!」
──放たれたそれは、まさに文字通り“衝撃”的なイントロだった。
ドラムの乱打のそのひとつひとつが強力で、ドラムセットが壊れるんじゃないかというくらいの圧。
大量の花火を一気に爆発させたかのような、恐怖すら感じる激しさ。
それに寄り添うと言うよりも、更にブーストをかけるようなガビガビに歪んだベースのスラップ。炎上と爆発を繰り返すドラムにガソリンをぶちまけに行くような勢い。
更に色とりどりに燃える花火の火薬の如きストリングスのサウンド。その上で酸素を送り、その爆発炎上の勢いをより活性化させていく。
そして、その爆炎を完全に支配し、指揮するフロントマン、ボーカルギターの才禍結衣。
「自由に遊べ~~~~ッ!!」
──その言葉を合図に、人が敷き詰められたフロア中央から人の上半身が上に飛び出した。
──リフト。そして、ダイブ。
フロア後方にいる緋の目にも見える。人が人の上を転がされている。
緋はこのリフトからのダイブという現象について「ほんとにあるんだ……」と少し驚きながらも、実際これだけのライブをされてテンションが上がりに上がれば、飛びたくなってしまう気持ちも分からなくなかった。
そしてなにより、この大勢の観客をここまで熱狂させてみせたSKYSHIPSを見て。そのステージの上でライトに照らされ光り輝く才禍結衣を見て、緋の中に炎が点った。
「……私もやる」
「……?」
ライブの爆音で緋の声がよく聞こえていない蒼は緋を不思議そうな顔で見つめていた。
「私もあんなライブをやる!!」
「やめて緋!ダイブは危ないのよ!?怪我するかもしれないしそれに変なとこ触られるかも」
「あ、ダイブじゃなくてライブね」
──そうして話しているうちに、最後の曲『フリーダムロッカー』もアウトロへ。
「ベース、飯野春!!キーボード、佐倉楓花!!ドラムス!曇紫音!!ボーカル&ギター才禍結衣!!私たちがSKYSHIPSだ覚えとけ~~~~ッ!!!」
激しく鳴らした爆音に次ぐ爆音、そして叩くように弾いたベースとドラムがリズムを取り、4人、大きく体を反らせて最後の一発を全力でぶっ放した。
「──────!!」
拍手喝采に指笛。フロアも負けじと音を出し返していた。
「ありがとうございましたッ!!」
結衣は感謝の言葉と共にピックをフロアへと全力で放り投げた。
……To be continued
──────
おまけ
SKYSHIPSのセトリ
1.NoVa
2.MAZI!!
3.Unlimited!!
4.空飛ぶ船
5.挑戦的少女
6.Miracle
7.フリーダムロッカー
SKYSHIPSボーカル『才禍結衣』の叫びによって開演。その先陣を切ったのは、ドラムだった。
フィルインから繋いだ、恐ろしく早い強烈な4つ打ち。
彼女、曇紫音の腕の動きは高校3年生の女子のそれではなかった。
超高速、超強力。超絶怒涛のドラムソロ。
その圧倒的なドラムを軸に、高速スラップとパワーコードのストロークにストリングスの音色を掛け合わせ、結衣の美しくも強い歌声でこのフロアにいる人間の意識を掻っ攫っていく。
4人のメンバーそれぞれ、めちゃくちゃにやっているように見えて、要所要所で来る強めの一発が綺麗にシンクロしている。その体の揺れ、髪の揺れ、シールドの揺れさえ、まるでプロのダンサーの舞を見ているかのよう。
フロア前方は全員が手をステージに掲げ、ステージ上の4人と熱気を送り合っていた。
「……やば……」
緋は思わず言葉を零した。
鳴り続ける爆音。手を高く掲げ飛び跳ねる観客たち。
手拍子を煽るバスドラの音。リズムに一切のズレさえ許さない。観客に休む暇も与えず、ノンストップで繰り広げられる波のような盛り上がり。
スモークが、目まぐるしく色を変え続ける照明を浴びてフロアを七色に彩る。
「下北ァッ!!」
ステージ中央、結衣は観客以上に休む暇なくノンストップで歪んだパワーコードを掻き鳴らし続け、歌い続け、煽り続けていた。
「みんな全力で遊ぶぞ~~~~ッ!!」
音止まぬまま被せられたシンバル4カウント、そして結衣はマイクから口を離しブースターを踏む。
ここまでパワーコードでバッキングに務めていたギターが、早弾きとカッティングを絡めたギターソロへ。
柵へ足をかけ、前のめりになりながら、柔らかい鉄がたゆんで光り輝く様子を見せびらかす。
そしてフロアの熱狂にも負けないソロを終えると擦り切れたピックをフロアに放り投げ、即座にマイクスタンドのピックホルダーからピックを抜き取りラスサビに備える。
まずは歌唱。ここまで暴れ散らしていたドラムが燃え尽きたように消えるが、この一瞬だけだった。
──超火力の爆弾が爆発した瞬間だけ音が消えるような、そんな一瞬。
大爆発そのものと言っていい爆音がぶっ放され、地響きで人が飛んだかと錯覚する。
実際は人の体が音に合わせて動いただけ。
緋と蒼の体も例外なく、無意識に頭が縦に揺れていた。
叫ぶような歌声が響き、激しく暴れ散らかすようなアウトロ。
最後の一撃を放ち結衣がピックを投げ、曲が終わるかと思われたが、ギターの残響の裏でドラムは鳴り止まずに転調、否、既に次の曲のイントロまでの繋ぎへ。
ハイハットの裏拍。
結衣はしゃがみこみペットボトルを手に取って一瞬で水をがぶ飲みし立ち上がると、両手を上げ後ろに風を送るように煽る。
「Hi! Hi! Hi! Hi!」
フロアの冥界で蠢くような手が、ステージ上の結衣の動きに合わせて一体感を得ていく。
「この調子で2曲目もっとブチ上げていきます!『MAZI!!』で行きましょ~~うッ!!」
「~~~~ッ!!」
「カモン下北ァ!!」
ピックを持った結衣は体を反らせ、前に首を振りながら右足を上げギターを蹴り上げるようにしながら右手を振り下ろし爆音を撒き散らす。
恐ろしく速く恐ろしくテクニカルなドラムに重ねられる歪んだスラップ。これだけ聴けばメタルのような迫力があるがキーボードはキャッチーなメロディで誰でも親しみやすい。
ボーカルは叫ぶような歌声だが、一切がなりは無く凛とした声でよく通る透明感がある。
そしてなにより、フロアを、人間を支配するカリスマ性のようなものを持ち合わせている。
ボーカル、才禍結衣の、ギラギラとした赤紫の瞳が。怖いもの知らずの勢いと野心のほか、ライブを全力で楽しんで、遊んでやろうという、まるでテーマパークに来た子供のような純粋さを秘める。
上げさせる手、上げられた手。フロアとステージを繋ぐ、耳とスピーカーを繋ぐ、視覚からの情報。
ステージを彩る照明は激しく点滅し、その中で好き勝手に体を動かして暴れ回りながらも、4人の息は完璧で音も体もタイミングがピッタリ重なるその瞬間が最高に気持ちいい。
そのまま、爆音鳴り響くままのフロアに、人が増えていく。
後から来た人も、思わず前へ前へと詰めてしまう。
そんな様子を、緋は後ろの方から眺め続ける。幸い前方へ前方へと人が詰め寄って行ったために、後方はぎゅうぎゅう詰めということにはならず、人は多いにしろ視界はなんとか確保できた。
SKYSHIPSは止まることなく3曲目、4曲目、5曲目……とどんどん激しい曲を連発していく。その全てが、まず曇紫音というドラマーを軸にした演奏だった。
目にも止まらぬ速さで乱れ打たれる16のビート。それがSKYSHIPSのスタイル。
「……ロック……バンド……」
SKYSHIPSのスタイルは緋のやりたい音楽とはまた違うが、それでも。芯にあるロックに、悔しながら惹かれてしまう。
この間フロアの人数は続々と増えており、気付けば人口密度はかなり上がっていた。人と人との感覚も狭まり、人1人ギリギリ通れるくらいの隙間しか残されていない。冷房がガンガンに聞いていたはずのこの場所も暑苦しいと感じるほどになっていた。
「──ありがとうっ!それじゃぁ……最後。この前披露したばかりの新曲。今、私たちが1番カッコイイと思ってる曲をやって、今日は終わりにします。その脳みそに刻んでいってください!!」
結衣はマイクに手を置いたまま首を回し、1呼吸置いて曲名を告げる。
「───『フリーダムロッカー』!!!」
──放たれたそれは、まさに文字通り“衝撃”的なイントロだった。
ドラムの乱打のそのひとつひとつが強力で、ドラムセットが壊れるんじゃないかというくらいの圧。
大量の花火を一気に爆発させたかのような、恐怖すら感じる激しさ。
それに寄り添うと言うよりも、更にブーストをかけるようなガビガビに歪んだベースのスラップ。炎上と爆発を繰り返すドラムにガソリンをぶちまけに行くような勢い。
更に色とりどりに燃える花火の火薬の如きストリングスのサウンド。その上で酸素を送り、その爆発炎上の勢いをより活性化させていく。
そして、その爆炎を完全に支配し、指揮するフロントマン、ボーカルギターの才禍結衣。
「自由に遊べ~~~~ッ!!」
──その言葉を合図に、人が敷き詰められたフロア中央から人の上半身が上に飛び出した。
──リフト。そして、ダイブ。
フロア後方にいる緋の目にも見える。人が人の上を転がされている。
緋はこのリフトからのダイブという現象について「ほんとにあるんだ……」と少し驚きながらも、実際これだけのライブをされてテンションが上がりに上がれば、飛びたくなってしまう気持ちも分からなくなかった。
そしてなにより、この大勢の観客をここまで熱狂させてみせたSKYSHIPSを見て。そのステージの上でライトに照らされ光り輝く才禍結衣を見て、緋の中に炎が点った。
「……私もやる」
「……?」
ライブの爆音で緋の声がよく聞こえていない蒼は緋を不思議そうな顔で見つめていた。
「私もあんなライブをやる!!」
「やめて緋!ダイブは危ないのよ!?怪我するかもしれないしそれに変なとこ触られるかも」
「あ、ダイブじゃなくてライブね」
──そうして話しているうちに、最後の曲『フリーダムロッカー』もアウトロへ。
「ベース、飯野春!!キーボード、佐倉楓花!!ドラムス!曇紫音!!ボーカル&ギター才禍結衣!!私たちがSKYSHIPSだ覚えとけ~~~~ッ!!!」
激しく鳴らした爆音に次ぐ爆音、そして叩くように弾いたベースとドラムがリズムを取り、4人、大きく体を反らせて最後の一発を全力でぶっ放した。
「──────!!」
拍手喝采に指笛。フロアも負けじと音を出し返していた。
「ありがとうございましたッ!!」
結衣は感謝の言葉と共にピックをフロアへと全力で放り投げた。
……To be continued
──────
おまけ
SKYSHIPSのセトリ
1.NoVa
2.MAZI!!
3.Unlimited!!
4.空飛ぶ船
5.挑戦的少女
6.Miracle
7.フリーダムロッカー
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