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#11

ー/ー



 放課後、私達は遊びに行く予定を変更し、自分達に科せられた役割を全うすることになった。
 るんは慎弥君と下校し、ついでに幽霊部員の件を頼むらしく、いち早く学校を出た。
 カオルは舞と一緒に図書室で勉強し、るんと同様、帰り道で演劇の話を切り出すらしい。
 今の舞は、ほとんどの時間を勉強に費やす覚悟で勉強をしているが、そんな舞でも、帰り道で歩きながら単語帳を捲ったりしないだろうから、そのタイミングで切り出すと言っていた。
 クラス一の学力を誇るカオルが図書室で勉強するのも、舞に勉強を教え、貸しを作るのが目的かもしれない。
 二人がうまくやれるかどうかは、特にカオルがうまくやれるかどうかは分からないけれど、私は私の役割を果たさないとならない。塚本先生に断られたら、他に親しい先生がいないので、顧問の先生探しは難しくなってしまう。
 そもそも、保健の先生が部活の顧問になるのは可能なのか?
 そんな疑問が浮かんだ私達はネットを検索し、保健の先生が部活の顧問になることは可能で、実際にそういった例があるのを調べ上げている。
 後は、塚本先生が承諾してくれるのを願うばかりである。
 ノックをして、塚本先生の返事を待ってから保健室に入る。
 いつも朱理が寝ているベッドに視線を向けると、カーテンが閉まっていて朱理の姿は見えなかった。
「あの、塚本先生。頼みたいことがあるんですけど」
 と声をかけると、朱理の特等席になっているベッドのカーテンが勢いよく開き、朱理が嬉しそうに私を見る。
 声を掛けられたわけではなく、カーテンが開かれただけなのだけれど、話の腰を折られた形になった私達は、誰も言葉を発することが出来なくなっていた。
 そんな、しばらく続いた静寂を打破したのは、塚本先生だった。
「頼みって、なに?」
 朱理を一瞥すると、朱理は全てを悟ったように肯く。
 話を進めていいってことだろうと解釈した私は、早速本題を切り出した。
 今度の文化祭で劇をやりたいけれど、クラス単位で行うのは反対にあい不可能だと思うので、友達と一緒に演劇部を立ち上げたいと事情を話す。
 ここまでは、塚本先生には関係のない話なので部外者である。問題はここから。
「塚本先生に、演劇部の顧問になってほしいんです」
 頭を下げ頼むと、塚本先生は『頭を上げて』と言った。
 頭を上げると、塚本先生は複雑な表情を浮かべていた。
「森永さん達がやろうとしている事は立派だし、素敵だと思う。出来るなら協力したいと思うわ。でも、私は保健の先生だから、長い時間保健室を空ける訳にはいかないのよ。
 劇の稽古は、放課後に行うものでしょ。けれど、放課後は部活で怪我をした生徒が治療に来ることが多いの」
「名前だけでもいいんです。演劇部に顧問がいると記されているだけでいいんです。絶対に問題を起こしたりしません。絶対に、迷惑をかけませんから」
「そうね……」
 塚本先生は、顎に手を当て考え込む。
「どうして、そんなに演劇をしたいの?」
 その問いに、明確な返答を用意していなかった。
 どうしても演劇をしたい理由なんて、一つもないから。
「本当は、演劇でなくてもいいんです。卒業するまでに、皆で楽しく、何かをやりたくて」
 塚本先生が、考え込む。


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 放課後、私達は遊びに行く予定を変更し、自分達に科せられた役割を全うすることになった。
 るんは慎弥君と下校し、ついでに幽霊部員の件を頼むらしく、いち早く学校を出た。
 カオルは舞と一緒に図書室で勉強し、るんと同様、帰り道で演劇の話を切り出すらしい。
 今の舞は、ほとんどの時間を勉強に費やす覚悟で勉強をしているが、そんな舞でも、帰り道で歩きながら単語帳を捲ったりしないだろうから、そのタイミングで切り出すと言っていた。
 クラス一の学力を誇るカオルが図書室で勉強するのも、舞に勉強を教え、貸しを作るのが目的かもしれない。
 二人がうまくやれるかどうかは、特にカオルがうまくやれるかどうかは分からないけれど、私は私の役割を果たさないとならない。塚本先生に断られたら、他に親しい先生がいないので、顧問の先生探しは難しくなってしまう。
 そもそも、保健の先生が部活の顧問になるのは可能なのか?
 そんな疑問が浮かんだ私達はネットを検索し、保健の先生が部活の顧問になることは可能で、実際にそういった例があるのを調べ上げている。
 後は、塚本先生が承諾してくれるのを願うばかりである。
 ノックをして、塚本先生の返事を待ってから保健室に入る。
 いつも朱理が寝ているベッドに視線を向けると、カーテンが閉まっていて朱理の姿は見えなかった。
「あの、塚本先生。頼みたいことがあるんですけど」
 と声をかけると、朱理の特等席になっているベッドのカーテンが勢いよく開き、朱理が嬉しそうに私を見る。
 声を掛けられたわけではなく、カーテンが開かれただけなのだけれど、話の腰を折られた形になった私達は、誰も言葉を発することが出来なくなっていた。
 そんな、しばらく続いた静寂を打破したのは、塚本先生だった。
「頼みって、なに?」
 朱理を一瞥すると、朱理は全てを悟ったように肯く。
 話を進めていいってことだろうと解釈した私は、早速本題を切り出した。
 今度の文化祭で劇をやりたいけれど、クラス単位で行うのは反対にあい不可能だと思うので、友達と一緒に演劇部を立ち上げたいと事情を話す。
 ここまでは、塚本先生には関係のない話なので部外者である。問題はここから。
「塚本先生に、演劇部の顧問になってほしいんです」
 頭を下げ頼むと、塚本先生は『頭を上げて』と言った。
 頭を上げると、塚本先生は複雑な表情を浮かべていた。
「森永さん達がやろうとしている事は立派だし、素敵だと思う。出来るなら協力したいと思うわ。でも、私は保健の先生だから、長い時間保健室を空ける訳にはいかないのよ。
 劇の稽古は、放課後に行うものでしょ。けれど、放課後は部活で怪我をした生徒が治療に来ることが多いの」
「名前だけでもいいんです。演劇部に顧問がいると記されているだけでいいんです。絶対に問題を起こしたりしません。絶対に、迷惑をかけませんから」
「そうね……」
 塚本先生は、顎に手を当て考え込む。
「どうして、そんなに演劇をしたいの?」
 その問いに、明確な返答を用意していなかった。
 どうしても演劇をしたい理由なんて、一つもないから。
「本当は、演劇でなくてもいいんです。卒業するまでに、皆で楽しく、何かをやりたくて」
 塚本先生が、考え込む。