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第九話 お勉強の時間です!

ー/ー



 エストリヤとの戦いの後、4人はオスワルド邸に戻っていた。

 「アタイ......自由がモットーなのに首輪かけられちゃった......」
 エストリヤは奴隷という名目で屋敷に来たのもあり、アリア専属の召使いとして、不自由が無いのに自由の利きにくい何とも矛盾した立場になってしまった。

 「まぁまぁエストリヤ、奴隷と言っても私はあなたを束縛するつもりはありませんよ。

 必要な時を除いて、あなたは自由にしてください」

 アリアの言葉に泣いて膝にしがみつき崇めているエストリヤに皆苦笑する。

 雑談も程々に4人は庭に赴く。
 先ほどの戦いで頻繁に聞こえた声の発動条件を知ることで自分の個性をより具体的に把握したいというルークの希望だった。

 先ほどのエストリヤとの戦いで、ルークは驚異的な身体能力を見せたが、本人はその時の記憶が無いのだと言う。

 得体の知れない個性を実戦に用いる事は危険だという事で、ルークは3人と手合わせをする事にした。

 「稽古とはいえ実戦形式だ。
 殺す気で行くからお前もそのつもりでかかってこい」

 初手はレオ、基本に忠実で洗練された動きをしている。

 ルークは見慣れた動きに対応する。
 普段と違い、動きに殺気が籠もっているが落ち着いて対処すれば普段の稽古と変わらない。

 レオとの対戦ではルークの能力は発動しなかった。

 「次は私ですね! ルーク様との手合わせは久しぶりなので楽しみです!」

 アリアが剣を握ると可憐な少女の面持ちは消え、冷たい眼差しでルークを見つめる。

 「個性発動 剛力(ストレングス)

 アリアの全身に気が満ち力強く剣を握る。

 剛力は筋力を向上させる単純な個性だが、
 そこから繰り出される一撃は象も気絶させる程強力だ。

 上段から連撃を叩き込む剛の剣はルークを追い詰める。
 だがルークも負けていない。剣を振り下ろしてから構え直すまでの僅かな硬直を見逃さず一撃を叩き込む。
 アリアは降参し、試合は終了。今回も個性は発動しない。

 その様子を見ていたエストリヤはある事に気付く。

 「もしかしてフィアンセ君さぁ、君は自分か自分に近しい人間が死ぬ状況じゃないと個性出ないんじゃない?

 頭の何処かで死なないと分かってるから二人と手合わせしても発動しなかったと考えたら自然だよね」

 エストリヤの考えにルークはハッとする。
 初めて個性が発動した時もエストリヤと戦った時もタイミングは必ず自分か自分の側にいる誰かが死に直面した時だ。

 「言われてみれば確かに......というか、前に戦った時にやたら意味深な事言ってたけど俺の個性を知ってたんじゃないのか?」

 「え? アタイが知るわけなくない? ただの勘だよ?」

 エストリヤはキョトンとした顔でルークの予想を否定する。

 勘の割にはずいぶん意味深な事言うな......紛らわしすぎるだろこいつ......。

 その時、ルークの頭の中にあの声が聞こえてきた。

 《警告:後方より危険物が急接近しています

 推奨:後ろに一歩お下がりください》

 声の指示に従って後ろに下がるとルークの目の前を矢が通過する。

 青ざめた顔で矢が飛んできた方向を見るとセナが弓を構えて立っていた。

 「あら? 本当に命が危ない時にだけ発動するようですわね? 殺気も消していましたし気配が気取られた訳でもないのに躱されてしまいました」

 庭掃除中にたまたま会話が聞こえたので試してみたと言うが、あまりにも大胆すぎる行動にルークは肝が冷えていた。

 それからルークを除く4人は個性を詳しく知る為様々な事を試した。

 ナイフの投擲、高所からの突き落とし、燃える小屋に閉じ込める、重りを付けて水中に沈める、猛獣と同じ小屋に入れるなどなど

 「お前ら絶対面白がってるだろ! こんな事やってたら命がいくつあっても足りねぇよ!

 もう検証は十分だろ! もうやらないぞ!」

 あまりにも過酷すぎる検証にルークは怒る。
 だが、まだ検証し足りないレオはルークに提案する。

 「まだ俺のとっておきが20個ほど残ってるんだが、本当にやらないのか?」

 「やらねぇよ、なんでやると思ったんだよ。
 なんでお前の為にやってるのにみたいな顔してんだよ。絶対面白がってるだけだろお前」

 悪ノリの激しい4人を制し、ルークはこれまでの検証で個性について分かった事をまとめた。

 1.自分または自分に近しい人間が死に直面しないと発動しない
 2.個性の魔力消費は極端に少ない
 3.この個性ほ基本的にナビゲーションするだけだが、ルークが対処出来ない自体になると体の制御を乗っ取る

 「うん......地味じゃないか?」

 ルークの問いかけに4者それぞれフォローを入れる。

 「案ずるな、目立つのは俺だけで十分だ」

 「地味なルーク様も素敵ですよ!」

 「アタイの方が地味だよ。出直してきな」

 「個性に頼る者は総じて弱いので鍛える良い機会かと存じますわ」

 誰一人フォローになっていない事に肩を落とし、「駄目だこいつら」とルークは言った。

 この個性をこの先の戦いでどう役立てれば良いのか......

 レオを王と仰ぎ戦いに身を投じていくのなら自分にも戦か国政で役立つ個性が欲しかったと悔しい思いが胸に満ちる。

 その様子を見たレオはいつもの笑顔でルークの背中を叩く。

 「心配するな。俺がお前を頼ったのはその個性があるからじゃない。

 それに、お前の個性は俺の窮地にも効果を発揮するそうじゃないか?

 お前がいざという時に助けてくれるなら、俺は安心して死地に飛び込んでいけるさ」

 その言葉にルークの目頭が熱くなる。

 あぁ......信頼って温かいな。
 特別じゃなくても必要とされるってこんなに嬉しい事だったのか。

 「泣いてるのか?」と聞くレオに、ルークは首を横に大きく振る。

 この個性をいつでも使えるように訓練して、皆の事を守ろう。

 自分の個性は自分だけの物じゃない。そう感じたルークは、これからも個性と向き合い仲間達を守れるぐらいまで使いこなそうと心に誓ったのだった。


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 エストリヤとの戦いの後、4人はオスワルド邸に戻っていた。
 「アタイ......自由がモットーなのに首輪かけられちゃった......」
 エストリヤは奴隷という名目で屋敷に来たのもあり、アリア専属の召使いとして、不自由が無いのに自由の利きにくい何とも矛盾した立場になってしまった。
 「まぁまぁエストリヤ、奴隷と言っても私はあなたを束縛するつもりはありませんよ。
 必要な時を除いて、あなたは自由にしてください」
 アリアの言葉に泣いて膝にしがみつき崇めているエストリヤに皆苦笑する。
 雑談も程々に4人は庭に赴く。
 先ほどの戦いで頻繁に聞こえた声の発動条件を知ることで自分の個性をより具体的に把握したいというルークの希望だった。
 先ほどのエストリヤとの戦いで、ルークは驚異的な身体能力を見せたが、本人はその時の記憶が無いのだと言う。
 得体の知れない個性を実戦に用いる事は危険だという事で、ルークは3人と手合わせをする事にした。
 「稽古とはいえ実戦形式だ。
 殺す気で行くからお前もそのつもりでかかってこい」
 初手はレオ、基本に忠実で洗練された動きをしている。
 ルークは見慣れた動きに対応する。
 普段と違い、動きに殺気が籠もっているが落ち着いて対処すれば普段の稽古と変わらない。
 レオとの対戦ではルークの能力は発動しなかった。
 「次は私ですね! ルーク様との手合わせは久しぶりなので楽しみです!」
 アリアが剣を握ると可憐な少女の面持ちは消え、冷たい眼差しでルークを見つめる。
 「個性発動 |剛力《ストレングス》」
 アリアの全身に気が満ち力強く剣を握る。
 剛力は筋力を向上させる単純な個性だが、
 そこから繰り出される一撃は象も気絶させる程強力だ。
 上段から連撃を叩き込む剛の剣はルークを追い詰める。
 だがルークも負けていない。剣を振り下ろしてから構え直すまでの僅かな硬直を見逃さず一撃を叩き込む。
 アリアは降参し、試合は終了。今回も個性は発動しない。
 その様子を見ていたエストリヤはある事に気付く。
 「もしかしてフィアンセ君さぁ、君は自分か自分に近しい人間が死ぬ状況じゃないと個性出ないんじゃない?
 頭の何処かで死なないと分かってるから二人と手合わせしても発動しなかったと考えたら自然だよね」
 エストリヤの考えにルークはハッとする。
 初めて個性が発動した時もエストリヤと戦った時もタイミングは必ず自分か自分の側にいる誰かが死に直面した時だ。
 「言われてみれば確かに......というか、前に戦った時にやたら意味深な事言ってたけど俺の個性を知ってたんじゃないのか?」
 「え? アタイが知るわけなくない? ただの勘だよ?」
 エストリヤはキョトンとした顔でルークの予想を否定する。
 勘の割にはずいぶん意味深な事言うな......紛らわしすぎるだろこいつ......。
 その時、ルークの頭の中にあの声が聞こえてきた。
 《警告:後方より危険物が急接近しています
 推奨:後ろに一歩お下がりください》
 声の指示に従って後ろに下がるとルークの目の前を矢が通過する。
 青ざめた顔で矢が飛んできた方向を見るとセナが弓を構えて立っていた。
 「あら? 本当に命が危ない時にだけ発動するようですわね? 殺気も消していましたし気配が気取られた訳でもないのに躱されてしまいました」
 庭掃除中にたまたま会話が聞こえたので試してみたと言うが、あまりにも大胆すぎる行動にルークは肝が冷えていた。
 それからルークを除く4人は個性を詳しく知る為様々な事を試した。
 ナイフの投擲、高所からの突き落とし、燃える小屋に閉じ込める、重りを付けて水中に沈める、猛獣と同じ小屋に入れるなどなど
 「お前ら絶対面白がってるだろ! こんな事やってたら命がいくつあっても足りねぇよ!
 もう検証は十分だろ! もうやらないぞ!」
 あまりにも過酷すぎる検証にルークは怒る。
 だが、まだ検証し足りないレオはルークに提案する。
 「まだ俺のとっておきが20個ほど残ってるんだが、本当にやらないのか?」
 「やらねぇよ、なんでやると思ったんだよ。
 なんでお前の為にやってるのにみたいな顔してんだよ。絶対面白がってるだけだろお前」
 悪ノリの激しい4人を制し、ルークはこれまでの検証で個性について分かった事をまとめた。
 1.自分または自分に近しい人間が死に直面しないと発動しない
 2.個性の魔力消費は極端に少ない
 3.この個性ほ基本的にナビゲーションするだけだが、ルークが対処出来ない自体になると体の制御を乗っ取る
 「うん......地味じゃないか?」
 ルークの問いかけに4者それぞれフォローを入れる。
 「案ずるな、目立つのは俺だけで十分だ」
 「地味なルーク様も素敵ですよ!」
 「アタイの方が地味だよ。出直してきな」
 「個性に頼る者は総じて弱いので鍛える良い機会かと存じますわ」
 誰一人フォローになっていない事に肩を落とし、「駄目だこいつら」とルークは言った。
 この個性をこの先の戦いでどう役立てれば良いのか......
 レオを王と仰ぎ戦いに身を投じていくのなら自分にも戦か国政で役立つ個性が欲しかったと悔しい思いが胸に満ちる。
 その様子を見たレオはいつもの笑顔でルークの背中を叩く。
 「心配するな。俺がお前を頼ったのはその個性があるからじゃない。
 それに、お前の個性は俺の窮地にも効果を発揮するそうじゃないか?
 お前がいざという時に助けてくれるなら、俺は安心して死地に飛び込んでいけるさ」
 その言葉にルークの目頭が熱くなる。
 あぁ......信頼って温かいな。
 特別じゃなくても必要とされるってこんなに嬉しい事だったのか。
 「泣いてるのか?」と聞くレオに、ルークは首を横に大きく振る。
 この個性をいつでも使えるように訓練して、皆の事を守ろう。
 自分の個性は自分だけの物じゃない。そう感じたルークは、これからも個性と向き合い仲間達を守れるぐらいまで使いこなそうと心に誓ったのだった。