第9話【私だけの特別】
ー/ー 蒼、緋が自己紹介でバンドをやっていることを言及したことによる反響はそれなりで、音楽、バンド好きのクラスメイトたちがかなり寄ってきてくれた。蒼はあまり人と話すのが得意ではない様子で、助けを求めるように緋の傍に陣取った。
「終さんたちバンドやってるんだ!」
「バンド女子凄いかっこいい!」
「ギター弾けるの!?」
「いつからやってるの?」
「作詞作曲とかもするんでしょ!?凄い!」
「ふたりとも髪さらさら~!いい匂いがする~!」
「顔ちっちゃ、可愛い~!」
「スタイル良いなぁ~羨ましい」
「終さんどうやったらそんなおっぱい大きくなるの?」
「えっと……1人ずつお願い」
バンドと関係ない質問もたくさん飛んできていたが、緋は気にしないことにした。
「終さんはどんな音楽が好きなの?」
「ロックかな。日本のバンドだと[Alexandros]とか」
「わ~いいね、霜夜さんは?」
「わっ、私は……エルレ……」
「結構古いね。解散したんじゃなかった?」
「かっ、活動休止だから」
そんな感じで、休み時間の度に次から次へと繰り出される質問にひとつひとつ答えていく。
クラスメイトとは基本的に緋が喋り、それを、すぐ隣で蒼が見守るという構図だった。
そして昼休み。
「ねぇ、お昼一緒してもいい?」
緋の元に、クラスメイトの女子が集まってきていた。
「え?うん。いいけど」
「ありがと」
緋が返すと、女子3人は周りの机を繋げ始める。
そして緋は弁当箱を机の上に出した。
「うわ終さんお弁当だ、いいな~」
「でしょ。あげないけど」
その時、焦ったような声で緋を呼ぶ者がひとり。
「あ……あ、緋っ!」
蒼だった。蒼は寂しそうな目で緋を見つめていた。
「わっ……私も……」
「当たり前じゃん。一緒に食べよ」
「……ええ」
蒼は椅子だけ自分の席から引っ張り、緋のすぐ横に陣取った。そして弁当箱も緋の弁当箱の隣に並べる。
「蒼、ちょっとくっつきすぎじゃない?」
「いただきます」
「あ、もう……。いただきます」
先に手を合わせ蓋を開ける蒼に続いて、緋も蓋を開けた。
「ふたり仲良いよね。同じバンドの仲間だから?」
「ん~、仲間だからっていうより、一緒にいたいからバンドやろうって決めたみたいな」
緋は卵焼きを口に運びながら答えた。
そして、蒼も同じ卵焼きを食べていることに気付いたクラスメイトがぽつりと呟く。
「あれ、終さんのと霜夜さんのお弁当中身一緒だ」
「あ、うん。これ蒼に作って貰ってて」
「そうなの!?」
「うん」
緋の周りに集まった3人は、緋の言葉に驚いて食べる手を止めていた。
「……緋」
「ん?」
蒼に呼ばれ緋が隣を見ると、蒼は自分の弁当箱からもう1つ残っていた卵焼きを箸で掴み取る。
「あーん」
「あ、うん……」
緋は蒼が差し出してくれた卵焼きを、一口で……は行けなかったので半分齧る。
「おいしい?」
「おいしいよ?」
「よかった」
そう言うと蒼はその残った半分を自分の口に入れた。
「私のも半分あげるね」
「ありがとう」
緋も残っているひとつを蒼に「あーん」と差し出す。蒼もそれをちょうど半分程度食べる。
「ほんと仲良いねふたり」
「ラブラブだ……」
若干引き気味のクラスメイトをよそに、蒼は淡々と食べ進めていた。
◇◇◇
放課後。
さよならを言い解散。
靴を履き替えると、蒼は緋の右腕にくっついた。
「どしたの蒼」
「……」
蒼は下を向いて黙ったまま。
緋が歩き出してみると、蒼も抱きついたまま一緒に歩いた。
バス停まで歩き、バスに乗り、降りてからも、蒼は緋の腕を離さなかった。
そして家へ向かう道の途中で、ようやく蒼は口を開いた。
「……緋が他人とばっかり話してて寂しい」
「ああ……そのことで。うーん……でも無視するわけにも行かないし」
「分かってるけど……。……緋は、私が他の人とばっかり話してても寂しくないの?」
「え……うー……」
緋は眉間に皺を寄せて想像してみる。
──蒼は緋のことなど忘れ、その辺のクラスメイトと仲良さげに話している。それを緋はただ、暗い隅っこから見ているだけ。その時ひとりが蒼に飛びついて──
「やだ!私の蒼に気安く触んないで!」
「触られるつもりはないけど……」
と言いながら蒼は緋の腕を離し、手を掴んで指を指の間に通して握る。
「……でもあれだね。蒼に嫌な思いさせちゃってごめんね」
「あ、謝らないでいいのよ。……でも、なんか……緋が私だけの緋じゃなくなるのが怖くて」
「そんな心配しなくても……」
「……私の友達は緋だけなの」
「友達……蒼も一緒に作れば──」
──緋の手を握る蒼の手に、ギュッと力が入った。
「──そんなことしたら、緋が特別じゃなくなっちゃうじゃない……!」
「……」
ふたりは足を止めた。
「……私は……緋だけは……他とは違う特別な存在だと思ってるの……だから……私の友達は……緋だけなの。緋じゃなきゃ……」
「だから私にも蒼じゃない友達はできて欲しくないってこと?」
「……わがままでごめんなさい」
「……いいよ。謝んないで」
緋も手を握り返す。
「……でも、なんかね。友達はいた方がやっぱりいいと思うからさ」
「……そうよね……」
「だ、だからさ蒼。私と蒼の関係……さ。……友達よりもっと特別なものにするのは……どう?」
「……友達より?」
「うん。例えばさ……こ、恋人……とか」
「する」
「即答じゃん」
「友達より圧倒的に大切な人って響きだもの」
「まあ、友達ってなんか軽いよね」
「だから緋と恋人になる。なりたい」
「うん。ありがとう、蒼」
「こちらこそ……」
そしてふたりは、立ち止まっていたその足を踏み出した。
◇◇◇
そんなその日の夜。
部屋の明かりを消して、いつも通り一緒に布団に入ったふたりは、互いの頬に手を添えた。
「……ちょっとフライングしちゃったけどさ。……ずっと言いたかったこと言わせてよ」
「ええ」
「……ずっと前から好きでした」
「私も。緋のことずっと好きだった」
「私と恋人になってください」
「喜んで」
……To be continued
「終さんたちバンドやってるんだ!」
「バンド女子凄いかっこいい!」
「ギター弾けるの!?」
「いつからやってるの?」
「作詞作曲とかもするんでしょ!?凄い!」
「ふたりとも髪さらさら~!いい匂いがする~!」
「顔ちっちゃ、可愛い~!」
「スタイル良いなぁ~羨ましい」
「終さんどうやったらそんなおっぱい大きくなるの?」
「えっと……1人ずつお願い」
バンドと関係ない質問もたくさん飛んできていたが、緋は気にしないことにした。
「終さんはどんな音楽が好きなの?」
「ロックかな。日本のバンドだと[Alexandros]とか」
「わ~いいね、霜夜さんは?」
「わっ、私は……エルレ……」
「結構古いね。解散したんじゃなかった?」
「かっ、活動休止だから」
そんな感じで、休み時間の度に次から次へと繰り出される質問にひとつひとつ答えていく。
クラスメイトとは基本的に緋が喋り、それを、すぐ隣で蒼が見守るという構図だった。
そして昼休み。
「ねぇ、お昼一緒してもいい?」
緋の元に、クラスメイトの女子が集まってきていた。
「え?うん。いいけど」
「ありがと」
緋が返すと、女子3人は周りの机を繋げ始める。
そして緋は弁当箱を机の上に出した。
「うわ終さんお弁当だ、いいな~」
「でしょ。あげないけど」
その時、焦ったような声で緋を呼ぶ者がひとり。
「あ……あ、緋っ!」
蒼だった。蒼は寂しそうな目で緋を見つめていた。
「わっ……私も……」
「当たり前じゃん。一緒に食べよ」
「……ええ」
蒼は椅子だけ自分の席から引っ張り、緋のすぐ横に陣取った。そして弁当箱も緋の弁当箱の隣に並べる。
「蒼、ちょっとくっつきすぎじゃない?」
「いただきます」
「あ、もう……。いただきます」
先に手を合わせ蓋を開ける蒼に続いて、緋も蓋を開けた。
「ふたり仲良いよね。同じバンドの仲間だから?」
「ん~、仲間だからっていうより、一緒にいたいからバンドやろうって決めたみたいな」
緋は卵焼きを口に運びながら答えた。
そして、蒼も同じ卵焼きを食べていることに気付いたクラスメイトがぽつりと呟く。
「あれ、終さんのと霜夜さんのお弁当中身一緒だ」
「あ、うん。これ蒼に作って貰ってて」
「そうなの!?」
「うん」
緋の周りに集まった3人は、緋の言葉に驚いて食べる手を止めていた。
「……緋」
「ん?」
蒼に呼ばれ緋が隣を見ると、蒼は自分の弁当箱からもう1つ残っていた卵焼きを箸で掴み取る。
「あーん」
「あ、うん……」
緋は蒼が差し出してくれた卵焼きを、一口で……は行けなかったので半分齧る。
「おいしい?」
「おいしいよ?」
「よかった」
そう言うと蒼はその残った半分を自分の口に入れた。
「私のも半分あげるね」
「ありがとう」
緋も残っているひとつを蒼に「あーん」と差し出す。蒼もそれをちょうど半分程度食べる。
「ほんと仲良いねふたり」
「ラブラブだ……」
若干引き気味のクラスメイトをよそに、蒼は淡々と食べ進めていた。
◇◇◇
放課後。
さよならを言い解散。
靴を履き替えると、蒼は緋の右腕にくっついた。
「どしたの蒼」
「……」
蒼は下を向いて黙ったまま。
緋が歩き出してみると、蒼も抱きついたまま一緒に歩いた。
バス停まで歩き、バスに乗り、降りてからも、蒼は緋の腕を離さなかった。
そして家へ向かう道の途中で、ようやく蒼は口を開いた。
「……緋が他人とばっかり話してて寂しい」
「ああ……そのことで。うーん……でも無視するわけにも行かないし」
「分かってるけど……。……緋は、私が他の人とばっかり話してても寂しくないの?」
「え……うー……」
緋は眉間に皺を寄せて想像してみる。
──蒼は緋のことなど忘れ、その辺のクラスメイトと仲良さげに話している。それを緋はただ、暗い隅っこから見ているだけ。その時ひとりが蒼に飛びついて──
「やだ!私の蒼に気安く触んないで!」
「触られるつもりはないけど……」
と言いながら蒼は緋の腕を離し、手を掴んで指を指の間に通して握る。
「……でもあれだね。蒼に嫌な思いさせちゃってごめんね」
「あ、謝らないでいいのよ。……でも、なんか……緋が私だけの緋じゃなくなるのが怖くて」
「そんな心配しなくても……」
「……私の友達は緋だけなの」
「友達……蒼も一緒に作れば──」
──緋の手を握る蒼の手に、ギュッと力が入った。
「──そんなことしたら、緋が特別じゃなくなっちゃうじゃない……!」
「……」
ふたりは足を止めた。
「……私は……緋だけは……他とは違う特別な存在だと思ってるの……だから……私の友達は……緋だけなの。緋じゃなきゃ……」
「だから私にも蒼じゃない友達はできて欲しくないってこと?」
「……わがままでごめんなさい」
「……いいよ。謝んないで」
緋も手を握り返す。
「……でも、なんかね。友達はいた方がやっぱりいいと思うからさ」
「……そうよね……」
「だ、だからさ蒼。私と蒼の関係……さ。……友達よりもっと特別なものにするのは……どう?」
「……友達より?」
「うん。例えばさ……こ、恋人……とか」
「する」
「即答じゃん」
「友達より圧倒的に大切な人って響きだもの」
「まあ、友達ってなんか軽いよね」
「だから緋と恋人になる。なりたい」
「うん。ありがとう、蒼」
「こちらこそ……」
そしてふたりは、立ち止まっていたその足を踏み出した。
◇◇◇
そんなその日の夜。
部屋の明かりを消して、いつも通り一緒に布団に入ったふたりは、互いの頬に手を添えた。
「……ちょっとフライングしちゃったけどさ。……ずっと言いたかったこと言わせてよ」
「ええ」
「……ずっと前から好きでした」
「私も。緋のことずっと好きだった」
「私と恋人になってください」
「喜んで」
……To be continued
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