第3話 おはよう大惨事

ー/ー



 おはよう世界。
 気持ちの良い朝だ、天気も良い。あぁ本当に、目の前の大惨事すら無かったらそう言えたのに。

「…トーカ?」
「…はい」
「これは何?」
「や、奴が現れたのです!黒くてカサカサと動く不快なあのっ!」
「…なるほど。それで床に剣が突き刺さっていると」

 いや何でだよっ!
 確かに奴は人類の敵だろう。俺だっていきなり目の前に現れたら本気でビビるくらいには。

 だからと言って剣は過剰防衛じゃないか!?
 床!床のひび割れが無いよ!?どんな速度で投げたら木の板が豆腐に入れた包丁みたいになるのさ!!

 流石にこれは叱らないといけないだろう。これが人類の敵だったからこんなテンションで居られるが、もし人間相手だったら…。

「トーカ、これからは無闇矢鱈に剣を出さないこと。もし相手が人間だったらどうする?一応はゴーレムである君の危害は全て俺の責任になる。相手を殺してしまったら?そうなった時、俺はトーカを庇えなくなるかもしれない」
「はい…その通りでございます」
「良いかいトーカ。人間社会で最も大事なのは、敵を作らない事だ。無駄に顰蹙(ひんしゅく)を買って足を引っ張られるのは嫌だろ?その為には自分の武器を隠せ。決して自慢しようとするな。…あれ、何の話だっけ」

 少し脱線してしまったな。
 まあいずれトーカには教えなければならない事だったし、問題無い。

 ゴーレムのトーカは人の目を惹く。その美貌を兼ねれば余計にだ。
 もし彼女の気を引こうと邪魔をする様な奴が現れた時、もしトーカがそいつを『俺の邪魔になる』と判断した場合即座に切り捨てかねない。

 今のトーカはそれだけ人としての倫理観を持ち合わせていない。有るのは俺への絶対的信頼と奉仕精神だけ。

 こうして間違いを犯す事は人間なら当たり前の事だ。かと言ってそれを全て許していると、何をしても赦されるのだと付け上がる人間が出来上がる。

 だから人は叱る。先人が行ってしまった過ちを基に、その道から遠ざけようとする。

「だからねトーカ、家の中では剣を出すのは辞めて欲しいんだ」
「はい…承知しました」

 しょんぼりトーカパート2。
 その顔を辞めてくれ、本当に心が痛い。

 まあ色々言ったが、結局言いたいのは自分の武器を無闇に使うと面倒な事になると言う事だ。
 実際物理的な面倒事がこの大惨事だしな。

「…床、張り替えるか。木材店行くよ」
「責任を持って遂行します…」
「うん、頼むよ」

 そう言えばまだ寝巻きのままだった。
 一旦部屋に帰って外着に着替え、トーカを連れて木材店の方へと向かった。

 大通りへ出ると、人の喧騒と荷車を引く馬の足音が聞こえて来た。まだ朝だと言うのにそこそこ賑わっているな。

 木材店は大通りから何度か路地を曲がった先にある。昔馴染みが働いているため、そこで買うと少し割り引いてくれるのだ。
 木でゴーレムを造る時もかなり利用させて貰ったし、友達様々だな。

 木材店の目の前に到着する。
 朝からノコギリの音が響いている。肉体労働の人達は朝から元気だ。
 敷地に入って人を探す。今言った友達も恐らくもう働いているはず…。

「お、居た。おーいロードン」
「あん…なんだァ、アンフじゃねぇか。どうしたァこんな朝っぱらからァ」
「急用だ、何枚か板材が欲しい」
「おう、そりゃ良いがァ…そっちの、確かトーカちゃんだっかかァ?はどうした、そんなに落ち込んで」
「急用の原因でございます」
「…そうかァ、深くは聞かないでおくわ」

 ロードンは本当に気が効く奴だ。流石俺の昔馴染みなだけある。職人気質で口が堅い。だからトーカの事も相談出来るし商品も信頼出来る。

 詳しくはトーカの為に伏せておくとして、家の床が大変な事になったと言う事をかい摘んで話した。恐らくロードンは察しているだろうが、敢えて触れて来る事は無かった。

 一度奥に引っ込んだロードンが、しばらくして損傷部と同じ大きさの木材を担いで来た。俺の家を設計してくれたのも彼だし、その時の大きさを覚えていたのだろう。

「ん、いつもより安くないか?」
「こらァオマケだ。朝から別嬪さんの顔見せてくれたな。今日も頑張れるってもんだ」
「現金な奴め。ありがたく甘えるよ」
「ロードン様、ありがとうございます」
「いいって事よ。それじゃあ俺ァ仕事に戻るからな。不備があったらまた来い」
「ある訳ないだろ、お前の技量は確かだ」
「ハっ」

 俺の言葉を鼻で笑ってロードンは奥へと帰って行った。本当に腕が立つんだから、照れなくても良いのにな。

 さて木材も手に入ったし、家に帰って張り替え作業と行くか。

 再びトーカを連れて同じ道を辿る。
 そろそろ時刻は昼に差し掛かる。大通りもさっきより賑わっているな。出店の匂いが鼻腔をくすぐって来る。

 グッと堪えて帰宅し、なんとか張り替えを終えた。損傷した元の床材は次のゴーレムの素材にでも使おう。木材は魔法伝導度が高いしな。

 それにしてもこれでやっと言える。
 おはよう世界、気持ちの良い朝だな!


—————

見ていただきありがとうございます!
モチベになりますので、良ければ作品フォロー等の評価よろしくお願いします!


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第4話 面倒事は勘弁


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 おはよう世界。
 気持ちの良い朝だ、天気も良い。あぁ本当に、目の前の大惨事すら無かったらそう言えたのに。
「…トーカ?」
「…はい」
「これは何?」
「や、奴が現れたのです!黒くてカサカサと動く不快なあのっ!」
「…なるほど。それで床に剣が突き刺さっていると」
 いや何でだよっ!
 確かに奴は人類の敵だろう。俺だっていきなり目の前に現れたら本気でビビるくらいには。
 だからと言って剣は過剰防衛じゃないか!?
 床!床のひび割れが無いよ!?どんな速度で投げたら木の板が豆腐に入れた包丁みたいになるのさ!!
 流石にこれは叱らないといけないだろう。これが人類の敵だったからこんなテンションで居られるが、もし人間相手だったら…。
「トーカ、これからは無闇矢鱈に剣を出さないこと。もし相手が人間だったらどうする?一応はゴーレムである君の危害は全て俺の責任になる。相手を殺してしまったら?そうなった時、俺はトーカを庇えなくなるかもしれない」
「はい…その通りでございます」
「良いかいトーカ。人間社会で最も大事なのは、敵を作らない事だ。無駄に顰蹙《ひんしゅく》を買って足を引っ張られるのは嫌だろ?その為には自分の武器を隠せ。決して自慢しようとするな。…あれ、何の話だっけ」
 少し脱線してしまったな。
 まあいずれトーカには教えなければならない事だったし、問題無い。
 ゴーレムのトーカは人の目を惹く。その美貌を兼ねれば余計にだ。
 もし彼女の気を引こうと邪魔をする様な奴が現れた時、もしトーカがそいつを『俺の邪魔になる』と判断した場合即座に切り捨てかねない。
 今のトーカはそれだけ人としての倫理観を持ち合わせていない。有るのは俺への絶対的信頼と奉仕精神だけ。
 こうして間違いを犯す事は人間なら当たり前の事だ。かと言ってそれを全て許していると、何をしても赦されるのだと付け上がる人間が出来上がる。
 だから人は叱る。先人が行ってしまった過ちを基に、その道から遠ざけようとする。
「だからねトーカ、家の中では剣を出すのは辞めて欲しいんだ」
「はい…承知しました」
 しょんぼりトーカパート2。
 その顔を辞めてくれ、本当に心が痛い。
 まあ色々言ったが、結局言いたいのは自分の武器を無闇に使うと面倒な事になると言う事だ。
 実際物理的な面倒事がこの大惨事だしな。
「…床、張り替えるか。木材店行くよ」
「責任を持って遂行します…」
「うん、頼むよ」
 そう言えばまだ寝巻きのままだった。
 一旦部屋に帰って外着に着替え、トーカを連れて木材店の方へと向かった。
 大通りへ出ると、人の喧騒と荷車を引く馬の足音が聞こえて来た。まだ朝だと言うのにそこそこ賑わっているな。
 木材店は大通りから何度か路地を曲がった先にある。昔馴染みが働いているため、そこで買うと少し割り引いてくれるのだ。
 木でゴーレムを造る時もかなり利用させて貰ったし、友達様々だな。
 木材店の目の前に到着する。
 朝からノコギリの音が響いている。肉体労働の人達は朝から元気だ。
 敷地に入って人を探す。今言った友達も恐らくもう働いているはず…。
「お、居た。おーいロードン」
「あん…なんだァ、アンフじゃねぇか。どうしたァこんな朝っぱらからァ」
「急用だ、何枚か板材が欲しい」
「おう、そりゃ良いがァ…そっちの、確かトーカちゃんだっかかァ?はどうした、そんなに落ち込んで」
「急用の原因でございます」
「…そうかァ、深くは聞かないでおくわ」
 ロードンは本当に気が効く奴だ。流石俺の昔馴染みなだけある。職人気質で口が堅い。だからトーカの事も相談出来るし商品も信頼出来る。
 詳しくはトーカの為に伏せておくとして、家の床が大変な事になったと言う事をかい摘んで話した。恐らくロードンは察しているだろうが、敢えて触れて来る事は無かった。
 一度奥に引っ込んだロードンが、しばらくして損傷部と同じ大きさの木材を担いで来た。俺の家を設計してくれたのも彼だし、その時の大きさを覚えていたのだろう。
「ん、いつもより安くないか?」
「こらァオマケだ。朝から別嬪さんの顔見せてくれたな。今日も頑張れるってもんだ」
「現金な奴め。ありがたく甘えるよ」
「ロードン様、ありがとうございます」
「いいって事よ。それじゃあ俺ァ仕事に戻るからな。不備があったらまた来い」
「ある訳ないだろ、お前の技量は確かだ」
「ハっ」
 俺の言葉を鼻で笑ってロードンは奥へと帰って行った。本当に腕が立つんだから、照れなくても良いのにな。
 さて木材も手に入ったし、家に帰って張り替え作業と行くか。
 再びトーカを連れて同じ道を辿る。
 そろそろ時刻は昼に差し掛かる。大通りもさっきより賑わっているな。出店の匂いが鼻腔をくすぐって来る。
 グッと堪えて帰宅し、なんとか張り替えを終えた。損傷した元の床材は次のゴーレムの素材にでも使おう。木材は魔法伝導度が高いしな。
 それにしてもこれでやっと言える。
 おはよう世界、気持ちの良い朝だな!
—————
見ていただきありがとうございます!
モチベになりますので、良ければ作品フォロー等の評価よろしくお願いします!