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38話 本物の愛(1)

ー/ー



「ねえ、真?」
「うん?」
「真はどこまで、私の本性を知ってるの?」

 指輪の警告音が鳴り響く中、突然始まった会話に俺達は度肝を抜かれてしまう。
 早く指輪を抜いてと叫びたくなるが、それを決めるのは命を懸ける三上さんで、外野の俺達は何も口出し出来るはずもない。
 それが、立会人という立場なんだから。

「本性じゃなくて、本心だろ? うーん、正直なところ全然分かってないと思うけど、頑張ってるなーとは思ってたかな?」
「二人で映画に行った時、サスペンスとかも良いねって言ってくれたのは?」
「どう見ても恋愛系とか好きそうじゃないのに、愛莉ちゃんに合わせてるようだったから。それにあれ、華が好きだって言ってたドラマの映画化だったんだろ?」
「パフェ、一緒に食べてくれたのも?」
「ムリして笑ってたから」
「私達は旅行に行かないって、断ってくれたのも?」
「愛莉ちゃんの誘いに、顔引き攣ってたからなー」

 同じクラスメイトとして遠目から見ていた側からしたら、二人は仲が良く互いに想い合っているように見えた。だからこそ誰も気付かなかった、三上さんの本心。
 好きではない相手と共に過ごすなんて、どれほどの思いだったのか。自分に好意がないと分かっている相手と過ごすなんて、どれほどの思いだったか。
 そんな二人の思いが初めて交わり、それが一つ一つの思い出に変わっていく。
 唇をキュッと噛み締めた三上さんは、爆発に巻き込まないようにと端に寄った成宮くんに詰めていく。

「やめてくれ。爆発する条件はあと二つ。まだ分かってないんだ」
「真は外してくれた!」
「あれは、たまたま上手くいっただけかもしれないから!」

 廊下に出て行こうとする成宮くんの腕を両手で掴む三上さんは全体重をかけていて、本気で成宮くんを引き止めたいのだと見て取れる。
 今、廊下に出たら、ゲーム放棄とみなされて成宮くんの指輪は爆発するだろう。
 だからこそ、必死に。

「分かった! 爆発の条件を当てて、問題ないって証明したら良いんでしょう! だからお願い、五分で良いの! タイマーを止めてぇー!」

 息を切らせて懇願した相手は、成宮くんじゃない。主催者にだった。

『ふふ、まあ良いでしょう。カウントダウンを止めて差し上げます。その代わり、対価はどのように払うつもりで?』
「対価……?」
『それはそうですよぉ。貴重な時間を割くのですから、それなりの面白みがないと視聴者が離れてしまうじゃないですかぁ? ゲームというのは、リスクとリターンが同一だからこそ盛り上がるものです。ノーリスク、ハイリターン。世の中、そんな甘くないですからねぇ?』

 どこまでもこちらをバカにするような物言いに、ワナワナと怒りのような感情が湧いてくる。
 それを言えばハイリスク、ノーリターンのゲームを強要されている俺達には何も思わないのかよ?
 喉元まで出た言葉を声に出さないのは、俺が臆病者だからだ。
 この命と秘密を握られているということは、現実の死と社会的な死の両方を握られているということ。
 反発なんて、出来るはずがなかった。

「分かりました。当てられなかったら、私も真と一緒に死にます。だから、五分ください」
「華!」

 成宮くんの指輪から放たれていた警告音は鳴り止み、不気味な赤い光りもピタッと止まってくれた。
 しかし、それは解放ではない。
 たった五分の猶予期間。
 成宮くんは指輪を外してもらえなければ、死ぬ運命。
 三上さんは「指輪の爆発するルール」を当てなければ、成宮くんと死ぬ運命。
 そんなギリギリの状態でゲームは再開された。命を賭けた戦いが。


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「ねえ、真?」
「うん?」
「真はどこまで、私の本性を知ってるの?」
 指輪の警告音が鳴り響く中、突然始まった会話に俺達は度肝を抜かれてしまう。
 早く指輪を抜いてと叫びたくなるが、それを決めるのは命を懸ける三上さんで、外野の俺達は何も口出し出来るはずもない。
 それが、立会人という立場なんだから。
「本性じゃなくて、本心だろ? うーん、正直なところ全然分かってないと思うけど、頑張ってるなーとは思ってたかな?」
「二人で映画に行った時、サスペンスとかも良いねって言ってくれたのは?」
「どう見ても恋愛系とか好きそうじゃないのに、愛莉ちゃんに合わせてるようだったから。それにあれ、華が好きだって言ってたドラマの映画化だったんだろ?」
「パフェ、一緒に食べてくれたのも?」
「ムリして笑ってたから」
「私達は旅行に行かないって、断ってくれたのも?」
「愛莉ちゃんの誘いに、顔引き攣ってたからなー」
 同じクラスメイトとして遠目から見ていた側からしたら、二人は仲が良く互いに想い合っているように見えた。だからこそ誰も気付かなかった、三上さんの本心。
 好きではない相手と共に過ごすなんて、どれほどの思いだったのか。自分に好意がないと分かっている相手と過ごすなんて、どれほどの思いだったか。
 そんな二人の思いが初めて交わり、それが一つ一つの思い出に変わっていく。
 唇をキュッと噛み締めた三上さんは、爆発に巻き込まないようにと端に寄った成宮くんに詰めていく。
「やめてくれ。爆発する条件はあと二つ。まだ分かってないんだ」
「真は外してくれた!」
「あれは、たまたま上手くいっただけかもしれないから!」
 廊下に出て行こうとする成宮くんの腕を両手で掴む三上さんは全体重をかけていて、本気で成宮くんを引き止めたいのだと見て取れる。
 今、廊下に出たら、ゲーム放棄とみなされて成宮くんの指輪は爆発するだろう。
 だからこそ、必死に。
「分かった! 爆発の条件を当てて、問題ないって証明したら良いんでしょう! だからお願い、五分で良いの! タイマーを止めてぇー!」
 息を切らせて懇願した相手は、成宮くんじゃない。主催者にだった。
『ふふ、まあ良いでしょう。カウントダウンを止めて差し上げます。その代わり、対価はどのように払うつもりで?』
「対価……?」
『それはそうですよぉ。貴重な時間を割くのですから、それなりの面白みがないと視聴者が離れてしまうじゃないですかぁ? ゲームというのは、リスクとリターンが同一だからこそ盛り上がるものです。ノーリスク、ハイリターン。世の中、そんな甘くないですからねぇ?』
 どこまでもこちらをバカにするような物言いに、ワナワナと怒りのような感情が湧いてくる。
 それを言えばハイリスク、ノーリターンのゲームを強要されている俺達には何も思わないのかよ?
 喉元まで出た言葉を声に出さないのは、俺が臆病者だからだ。
 この命と秘密を握られているということは、現実の死と社会的な死の両方を握られているということ。
 反発なんて、出来るはずがなかった。
「分かりました。当てられなかったら、私も真と一緒に死にます。だから、五分ください」
「華!」
 成宮くんの指輪から放たれていた警告音は鳴り止み、不気味な赤い光りもピタッと止まってくれた。
 しかし、それは解放ではない。
 たった五分の猶予期間。
 成宮くんは指輪を外してもらえなければ、死ぬ運命。
 三上さんは「指輪の爆発するルール」を当てなければ、成宮くんと死ぬ運命。
 そんなギリギリの状態でゲームは再開された。命を賭けた戦いが。