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【1】③

ー/ー



「とりあえず自分で解いてみな。引っ掛かったら訊いて」
「わかった~」
 わたしは遼くんにいろいろ教えてもらいながら、宿題を全部おわらせた。
 本読みも途中で「今の、漢字の読み間違ってない?」って言われたから、すごくまじめに聞いてくれたってことだよね?

「ありがと、遼くん。教えるのうまいね」
「大学生が三年生の勉強教えられない方が困るだろ。六年生なら科目によってはもしか、──あ、ゴメン」
 ベッドの上のスマホに電話、かな? 着信メロディが鳴ってる。
 遼くんはわたしにてのひらを向けてから、スマホを手に取った。

「はい。どうしたの、めぐちゃん。はいはい、えー俺今日オフだから。いや、冗談じゃなくてさ」
 ……めぐちゃん。女の人かな。大学の友達、とか? あんまり楽しそうな感じしないけど──。

「あ、っ!」
 ぼーっとよそ見してたせいで、机の上でトントンしてそろえてた教科書がばらけそうになった。
 あわてて止めたけど、びっくりして電話中におっきな声出しちゃったよ。
 ……ぎょうぎ悪いと思われる、かな。

「ホントに無理なんだ。うん、──じゃあね」
「ゴメンね、じゃましちゃった?」
 わたしの方をチラッと見て、早口で電話を切った遼くんに謝る。……どうしよう。

「いや、気にすんな。最初から断るつもりだったし、ちょうどよかったよ」
 笑ってくれる遼くんに、ちょっと安心した。
 ホントに怒ってないくらい、わたしにだってわかるもん。

「愛って小さいのにきちんとしてるよな。大学でも、そういう気を遣えない奴が居るのに」
「え!? ふつー、だと思う、けど」
「うん、その『普通』ができない子も多いって話」
 ……よくわかんないけど、ほめてもらってるみたいだしうれしい。
 ママがこういうのキビシイんだよ。「うるさいなぁ」とか思ってないで、これからは感謝しよっと。

「最低限の常識ない子って、一緒に居ても疲れるんだよ。愛くらい、──いや、なんでもない」
 遼くんがひとりごとっぽく言う意味も、やっぱりちょっとむずかしい。
 でもわたしが何か悪いんだったら、きっと注意してくれるはずだし。
 だから気にしなくていい、よね?

 わたしはてきとーに納得して、まだ机の上に出したままだった教科書とかをランドセルにしまった。


    ◇  ◇  ◇
「愛、そろそろお母さん仕事から戻って来てる頃じゃないか?」
 宿題おわったあと、二人でおしゃべりしてたとき。遼くんの言葉に時計を見ると、いつの間にか六時過ぎてる。

「……あー、うん。じゃあ帰るね」
 仕方なく立ち上がったわたしに、遼くんも一緒に玄関まで来てくれた。お見送りだと思ってたのに、遼くんもわたしに続いて靴をはいてる。
 なんで? あ、ついでに買い物でも行くのかな?

「もしお母さんがまだだったら、もうちょっとウチにいればいいからさ」
 そっか! わたしが家に入れるかどうか、確かめてくれるんだ。

 外廊下に出たわたしが自分の家のインターホンのボタンを押すのを、遼くんがドアから乗り出すようにして見てる。
 すぐおとなりなんだからそんな心配しなくていいのにね。わたし、そんなちっちゃい子じゃないよ?

 《はい》
 遼くんはスピーカーから聞こえるママの声に安心したみたい。

「ママ、わたし~。カギ開けてよ」
 わたしはインターホンでママとおはなししながら、笑って遼くんに右手をふった。
 遼くんも「またな」って口うごかして、同じようにふりかえしてくれる。


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「とりあえず自分で解いてみな。引っ掛かったら訊いて」
「わかった~」
 わたしは遼くんにいろいろ教えてもらいながら、宿題を全部おわらせた。
 本読みも途中で「今の、漢字の読み間違ってない?」って言われたから、すごくまじめに聞いてくれたってことだよね?
「ありがと、遼くん。教えるのうまいね」
「大学生が三年生の勉強教えられない方が困るだろ。六年生なら科目によってはもしか、──あ、ゴメン」
 ベッドの上のスマホに電話、かな? 着信メロディが鳴ってる。
 遼くんはわたしにてのひらを向けてから、スマホを手に取った。
「はい。どうしたの、めぐちゃん。はいはい、えー俺今日オフだから。いや、冗談じゃなくてさ」
 ……めぐちゃん。女の人かな。大学の友達、とか? あんまり楽しそうな感じしないけど──。
「あ、っ!」
 ぼーっとよそ見してたせいで、机の上でトントンしてそろえてた教科書がばらけそうになった。
 あわてて止めたけど、びっくりして電話中におっきな声出しちゃったよ。
 ……ぎょうぎ悪いと思われる、かな。
「ホントに無理なんだ。うん、──じゃあね」
「ゴメンね、じゃましちゃった?」
 わたしの方をチラッと見て、早口で電話を切った遼くんに謝る。……どうしよう。
「いや、気にすんな。最初から断るつもりだったし、ちょうどよかったよ」
 笑ってくれる遼くんに、ちょっと安心した。
 ホントに怒ってないくらい、わたしにだってわかるもん。
「愛って小さいのにきちんとしてるよな。大学でも、そういう気を遣えない奴が居るのに」
「え!? ふつー、だと思う、けど」
「うん、その『普通』ができない子も多いって話」
 ……よくわかんないけど、ほめてもらってるみたいだしうれしい。
 ママがこういうのキビシイんだよ。「うるさいなぁ」とか思ってないで、これからは感謝しよっと。
「最低限の常識ない子って、一緒に居ても疲れるんだよ。愛くらい、──いや、なんでもない」
 遼くんがひとりごとっぽく言う意味も、やっぱりちょっとむずかしい。
 でもわたしが何か悪いんだったら、きっと注意してくれるはずだし。
 だから気にしなくていい、よね?
 わたしはてきとーに納得して、まだ机の上に出したままだった教科書とかをランドセルにしまった。
    ◇  ◇  ◇
「愛、そろそろお母さん仕事から戻って来てる頃じゃないか?」
 宿題おわったあと、二人でおしゃべりしてたとき。遼くんの言葉に時計を見ると、いつの間にか六時過ぎてる。
「……あー、うん。じゃあ帰るね」
 仕方なく立ち上がったわたしに、遼くんも一緒に玄関まで来てくれた。お見送りだと思ってたのに、遼くんもわたしに続いて靴をはいてる。
 なんで? あ、ついでに買い物でも行くのかな?
「もしお母さんがまだだったら、もうちょっとウチにいればいいからさ」
 そっか! わたしが家に入れるかどうか、確かめてくれるんだ。
 外廊下に出たわたしが自分の家のインターホンのボタンを押すのを、遼くんがドアから乗り出すようにして見てる。
 すぐおとなりなんだからそんな心配しなくていいのにね。わたし、そんなちっちゃい子じゃないよ?
 《はい》
 遼くんはスピーカーから聞こえるママの声に安心したみたい。
「ママ、わたし~。カギ開けてよ」
 わたしはインターホンでママとおはなししながら、笑って遼くんに右手をふった。
 遼くんも「またな」って口うごかして、同じようにふりかえしてくれる。