【1】②
ー/ー
「愛ちゃん、ゼッタイひみつにしてね。あの、菜摘ね。河合くんが好きなの……」
学校で、友達のなっちゃんが教えてくれた。
──「ひみつね!」って自分からみんなにしゃべって回る子もいるけど、あれって何なの?
もちろん、なっちゃんはそんな子じゃないし、わたしも誰にも言ってない。
そのときは「へ~。……まぁ河合くんて、他の男子みたいにしょーもないことしないからね」としか思ってなかったけど。
なっちゃんの河合くんへの気持ちって、きっとこういうのなんだ、ってわたしにもやっとわかった。
遼くんは今年大学生になって、学校だけじゃなくてサークルとかアルバイトとかすっごく忙しいみたい。
もともとわたしとはずーっと年が離れてるから一緒に遊んだりすることもないんだけど、ホントに会えなくなっちゃった。
そうなって初めて、わたしは遼くんのこと『お兄ちゃん』だなんて思ってないって気がついたんだ。
好きな人。……大好きな人。
だからちょっとでも遼くんと一緒にいられるように、こういうチャンスは大事にしないとね。
「愛、最近はいろいろ物騒だから気をつけろよ。母さんも基本家に居るけど、今日みたいに出掛ける日もあるし。俺はほとんどこの時間には居ないんだからさ」
きょうは木曜日。
週に一回だけ、サークルもアルバイトもなくて遼くんが夕方に帰って来る日。
他の予定が入ることもあるみたいだけど、毎日遅いと大変だし木曜はできるだけフリーにしてるって前に言ってたから。
「わかってる、ごめんね。でも、遼くんがいてくれてよかったぁ」
「それにしても、キーホルダーに名前なんか書いてないよな?」
思い付いたみたいにきかれて、わたしは堂々と答えた。
「当たり前じゃない。ママに、『落とした時に家がわかるのはあぶないからダメ』って昔っから言われてるもん。わたし、小学校入ってからずっとカギ持って学校行ってるんだよ」
「そうだな。愛んちの小母さんなら、そういうのはきちんとしてるか」
ほっとしたみたいな遼くん。
心配してくれてる、ってことだよね? それはうれしい、けど。
「遼くん、宿題していい? わかんないとこ教えてくれる?」
「ああ、いいよ。算数?」
いきなりのわたしの言葉に遼くんはちょっとびっくりしたみたいな顔はしたけど、すぐにオーケーしてくれる。よかった。
「うん。あとね、国語の本読み聞いて欲しいんだけど。それもいい?」
「構わないよ」
勉強机を使うように言ってもらって、わたしは遼くんの机の上にランドセルから出した教科書とノートを広げた。
遼くんは椅子に座ったわたしのすぐ脇で、椅子の背もたれに手を置いて立って見てくれてる。
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「愛ちゃん、ゼッタイひみつにしてね。あの、|菜摘《なつみ》ね。|河合《かわい》くんが好きなの……」
学校で、友達のなっちゃんが教えてくれた。
──「ひみつね!」って自分からみんなにしゃべって回る子もいるけど、あれって何なの?
もちろん、なっちゃんはそんな子じゃないし、わたしも誰にも言ってない。
そのときは「へ~。……まぁ河合くんて、他の男子みたいにしょーもないことしないからね」としか思ってなかったけど。
なっちゃんの河合くんへの気持ちって、きっとこういうのなんだ、ってわたしにもやっとわかった。
遼くんは今年大学生になって、学校だけじゃなくてサークルとかアルバイトとかすっごく忙しいみたい。
もともとわたしとはずーっと年が離れてるから一緒に遊んだりすることもないんだけど、ホントに会えなくなっちゃった。
そうなって初めて、わたしは遼くんのこと『お兄ちゃん』だなんて思ってないって気がついたんだ。
好きな人。……大好きな人。
だからちょっとでも遼くんと一緒にいられるように、こういうチャンスは大事にしないとね。
「愛、最近はいろいろ物騒だから気をつけろよ。母さんも基本家に居るけど、今日みたいに出掛ける日もあるし。俺はほとんどこの時間には居ないんだからさ」
きょうは木曜日。
週に一回だけ、サークルもアルバイトもなくて遼くんが夕方に帰って来る日。
他の予定が入ることもあるみたいだけど、毎日遅いと大変だし木曜はできるだけフリーにしてるって前に言ってたから。
「わかってる、ごめんね。でも、遼くんがいてくれてよかったぁ」
「それにしても、キーホルダーに名前なんか書いてないよな?」
思い付いたみたいにきかれて、わたしは堂々と答えた。
「当たり前じゃない。ママに、『落とした時に家がわかるのはあぶないからダメ』って昔っから言われてるもん。わたし、小学校入ってからずっとカギ持って学校行ってるんだよ」
「そうだな。愛んちの小母さんなら、そういうのはきちんとしてるか」
ほっとしたみたいな遼くん。
心配してくれてる、ってことだよね? それはうれしい、けど。
「遼くん、宿題していい? わかんないとこ教えてくれる?」
「ああ、いいよ。算数?」
いきなりのわたしの言葉に遼くんはちょっとびっくりしたみたいな顔はしたけど、すぐにオーケーしてくれる。よかった。
「うん。あとね、国語の|本読み《音読》聞いて欲しいんだけど。それもいい?」
「構わないよ」
勉強机を使うように言ってもらって、わたしは遼くんの机の上にランドセルから出した教科書とノートを広げた。
遼くんは椅子に座ったわたしのすぐ脇で、椅子の背もたれに手を置いて立って見てくれてる。