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最接近4日後 余震

ー/ー



リュックの中身を確認し終えた後、ユウゴは座り込んだまましばらく黙って考えた。
喉は焼けるように乾いている。
胃は空っぽで、体に力が入らない。
ユズも同じだ。
数日間の昏睡の影響が、全身に残っている。

ユウゴは、ペットボトルの一本を手に取ると、迷いなくユズに差し出した。
「貝塚…これ、持ってて。貝塚の分」

ユズは目を丸くした。
「え…でも…」
「オレはもう一本あるから」

ユズは唇を震わせ、ゆっくりとペットボトルを受け取った。
「ありがとう、佐野くん…」

ユウゴはもう一本のペットボトルを手に取り、キャップを捻る。
「とりあえず、少しだけ」

ユズもユウゴに倣い、キャップを開ける。
二人は同時に、水を口に含んだ。
冷たさが喉を通る瞬間、全身が震えた。

「…っ…生き返る…」
思わず、といった感じでユズが声を漏らす。
少しだけ、と思ったが、ユウゴが気付いた時にはペットボトルの1/3程が無くなっていた。胸に違和感を感じて、慌ててキャップを閉める。

違和感が通り過ぎるの待ってから、ユウゴはさらにリュックから羊羹を一つ取り出し、包みを破った。
それを慎重に半分に折る。

「これも…糖分補給。
 半分ずつ食べよう」

ユズは驚いたように目を見開いた。
体の衰弱とは裏腹に、あまり空腹は感じていなかったが、ユウゴは半分をユズに渡し、もう半分を自分の口に入れた。
甘さが舌の上に広がり、頭がじんわりと温かくなる。
ユズも、どこか安心したような顔でもぐもぐと口を動かしている。
「…羊羹、こんなに甘かったんだ…」

「これで、少しは歩けそうだよな」
ユウゴの言葉に、ユズは小さく頷いた。
甘いものを食べたことで、少し気持ちが上向いた気がする。

「小学校に行ってみようよ。
 街がこんなだから、みんな避難所にいると思う。
 お母さんも…」
掠れてはいるが、さっきより力がこもる声でユズが言った。

「うん。
 オレと母さんも、小学校に避難するつもりだったんだ」

二人は頷きあい、立ち上がる。
ユウゴはリュックを背負うと、先に立って歩き始めた。

小学校へ向かう道は、ウルゴスがやって来る前とはまるで別の世界だった。
通学路だった道の両側には、崩れた家屋がいくつも並んでいる。
無傷で建っている建物は一つも見当たらない。
あちこちで細く立ち上る黒煙は何が燃えているのか、時折嫌なにおいが鼻を衝く。

人であふれていた通りは、地面が盛り上がり、砕けたガラスや瓦礫で埋め尽くされている。
「誰もいない…。
 みんな、避難所にいるのかな」
ユズが不安そうに言った。

「多分な…
 小学校は頑丈だから、大丈夫だよ」
ユウゴは自分に言い聞かせるように言う。

二人は、瓦礫の散らばる道を歩き続ける。
風が吹くたびに、何かの破片がカラカラと鳴る。
それ以外の音は、何も聞こえない。

ユウゴが、目の前の瓦礫を踏み越えようとした時だった。
突然―

地面がうねった。

大地が、巨大な何かに殴られたように跳ね上がる。
「うわ!!」
「きゃ!!」

二人は同時に悲鳴を上げ、倒れ込むように地面に手をついた。
次の瞬間、地面が激しく揺れ始める。
アスファルトが波のようにうねり、瓦礫の山がけたたましい音を立てて崩れ落ちる。

ユウゴは地面に這いつくばり、両手で頭を庇う。
ユズの方を気にする余裕は無かった。
砂埃が舞い上がり、胸が苦しくなる。
どすん、と岩のようなものがすぐ近くに落ちてきた。
―そんなのが頭に当たったら!
考えたくもないことが脳裏に浮かび、全身に鳥肌が立つほどの恐怖に襲われる。

「お、お母さん!!」
ユズの悲鳴が聞こえる。
ユウゴは瓦礫が飛んでくる恐怖に抗いながら叫ぶ。
「大丈夫!!絶対大丈夫だから!!」
最早、正気を保つための叫びだった。

揺れは長く、永遠に続くように感じられた。
やがて、地面の震えが少しずつ弱まり、静けさが戻ってきた。
砂埃で白く濁った空気の中、ユウゴはゆっくりと顔を上げた。
「…貝塚…大丈夫…?」

ユズの方を振り返ると、放心したような顔のユズがかなり間を開けた後、ぎこちなく頷いた。
「…死んじゃうかと思った…」

二人は無意識に手を取り、互いに支え合いながら、ゆっくりと立ち上がった。
街は、さっきよりさらに壊れていた。
瓦礫の山が均され、瓦礫の絨毯の様相を呈している。

「…い、行こう。
 早く、避難所に…」
ユウゴは自分を奮い立たせるように言った。
二人は震える足で、再び歩き出した。


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リュックの中身を確認し終えた後、ユウゴは座り込んだまましばらく黙って考えた。
喉は焼けるように乾いている。
胃は空っぽで、体に力が入らない。
ユズも同じだ。
数日間の昏睡の影響が、全身に残っている。
ユウゴは、ペットボトルの一本を手に取ると、迷いなくユズに差し出した。
「貝塚…これ、持ってて。貝塚の分」
ユズは目を丸くした。
「え…でも…」
「オレはもう一本あるから」
ユズは唇を震わせ、ゆっくりとペットボトルを受け取った。
「ありがとう、佐野くん…」
ユウゴはもう一本のペットボトルを手に取り、キャップを捻る。
「とりあえず、少しだけ」
ユズもユウゴに倣い、キャップを開ける。
二人は同時に、水を口に含んだ。
冷たさが喉を通る瞬間、全身が震えた。
「…っ…生き返る…」
思わず、といった感じでユズが声を漏らす。
少しだけ、と思ったが、ユウゴが気付いた時にはペットボトルの1/3程が無くなっていた。胸に違和感を感じて、慌ててキャップを閉める。
違和感が通り過ぎるの待ってから、ユウゴはさらにリュックから羊羹を一つ取り出し、包みを破った。
それを慎重に半分に折る。
「これも…糖分補給。
 半分ずつ食べよう」
ユズは驚いたように目を見開いた。
体の衰弱とは裏腹に、あまり空腹は感じていなかったが、ユウゴは半分をユズに渡し、もう半分を自分の口に入れた。
甘さが舌の上に広がり、頭がじんわりと温かくなる。
ユズも、どこか安心したような顔でもぐもぐと口を動かしている。
「…羊羹、こんなに甘かったんだ…」
「これで、少しは歩けそうだよな」
ユウゴの言葉に、ユズは小さく頷いた。
甘いものを食べたことで、少し気持ちが上向いた気がする。
「小学校に行ってみようよ。
 街がこんなだから、みんな避難所にいると思う。
 お母さんも…」
掠れてはいるが、さっきより力がこもる声でユズが言った。
「うん。
 オレと母さんも、小学校に避難するつもりだったんだ」
二人は頷きあい、立ち上がる。
ユウゴはリュックを背負うと、先に立って歩き始めた。
小学校へ向かう道は、ウルゴスがやって来る前とはまるで別の世界だった。
通学路だった道の両側には、崩れた家屋がいくつも並んでいる。
無傷で建っている建物は一つも見当たらない。
あちこちで細く立ち上る黒煙は何が燃えているのか、時折嫌なにおいが鼻を衝く。
人であふれていた通りは、地面が盛り上がり、砕けたガラスや瓦礫で埋め尽くされている。
「誰もいない…。
 みんな、避難所にいるのかな」
ユズが不安そうに言った。
「多分な…
 小学校は頑丈だから、大丈夫だよ」
ユウゴは自分に言い聞かせるように言う。
二人は、瓦礫の散らばる道を歩き続ける。
風が吹くたびに、何かの破片がカラカラと鳴る。
それ以外の音は、何も聞こえない。
ユウゴが、目の前の瓦礫を踏み越えようとした時だった。
突然―
地面がうねった。
大地が、巨大な何かに殴られたように跳ね上がる。
「うわ!!」
「きゃ!!」
二人は同時に悲鳴を上げ、倒れ込むように地面に手をついた。
次の瞬間、地面が激しく揺れ始める。
アスファルトが波のようにうねり、瓦礫の山がけたたましい音を立てて崩れ落ちる。
ユウゴは地面に這いつくばり、両手で頭を庇う。
ユズの方を気にする余裕は無かった。
砂埃が舞い上がり、胸が苦しくなる。
どすん、と岩のようなものがすぐ近くに落ちてきた。
―そんなのが頭に当たったら!
考えたくもないことが脳裏に浮かび、全身に鳥肌が立つほどの恐怖に襲われる。
「お、お母さん!!」
ユズの悲鳴が聞こえる。
ユウゴは瓦礫が飛んでくる恐怖に抗いながら叫ぶ。
「大丈夫!!絶対大丈夫だから!!」
最早、正気を保つための叫びだった。
揺れは長く、永遠に続くように感じられた。
やがて、地面の震えが少しずつ弱まり、静けさが戻ってきた。
砂埃で白く濁った空気の中、ユウゴはゆっくりと顔を上げた。
「…貝塚…大丈夫…?」
ユズの方を振り返ると、放心したような顔のユズがかなり間を開けた後、ぎこちなく頷いた。
「…死んじゃうかと思った…」
二人は無意識に手を取り、互いに支え合いながら、ゆっくりと立ち上がった。
街は、さっきよりさらに壊れていた。
瓦礫の山が均され、瓦礫の絨毯の様相を呈している。
「…い、行こう。
 早く、避難所に…」
ユウゴは自分を奮い立たせるように言った。
二人は震える足で、再び歩き出した。