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61-②.再臨する異形、戯れの果てに

ー/ー



「はぁ」

 まとわりつくファインに、大きなため息を吐くゼン。

「ゼン〜ありがとう〜〜……あ、え、いいの?」
「少し、焦りすぎたからな」

 ファインの失くした腕が元に戻っている……『破壊』された事実の『破壊』し……ファインの頭をゴンッと殴る。

「痛い……ホントに、ごめん、ゼン」
「もういい。それに、よくよく考えたら、先に喧嘩売ったのは俺だ」
「ゼン〜〜!」
「とはいえ、ちょっかい出したお前も悪い、できる事だけでどうにかしろ」

 ゼンの口ぶりで、自分の体質は失われていることを察するファイン。だが、先ほどまで感じていた不安はない。素直に、どう立ち回れるかを考えている。

「……ゼン……貴様……っ」
「小細工してたんだなフース?なかなかおもしれぇことしてくれて感謝するぜ?」
「……感謝される覚えはない」
「はっ!受け取ってくれなんて、言ってねぇが?」
「小賢しい……っ!!」

 手を出そうにも、利き手はボロボロ。ならばと、振りかざしたのは頑丈さと殺傷力が上がっている太い尻尾。

「おいおい、そりゃお前のチンコじゃねーのか?厳つさはちょっとうらやましいが、喜ばすのにゃ向かなそうだなぁ」
「ふんっ!!」
「……チッ!」
「幼稚な物言い、怒るにも足りぬ……もはや繁殖は不要、我は唯一の種となり最強の個となったのだ!」

 軽く顔にかすめながらも、直撃は避けたゼン。フースはあえて距離をとり、尻尾を揺らして誘っているようだった。

「たぶんゼンにあんなのが付いてたらさすがのクロエちゃんも考えると思うなぁ?」
「心配するところはそこかよ?調子、戻ってきたみいだなファイン」
「ん~~……どうだろ、やっぱりわかんない?」
「はっ!なら、面白いもんを『見せて』やる」

 チラリと地上の森に視線を送るゼン。
 その後すぐ、ファインは目に違和感を感じる。不快な違和感ではないそれに、温かさを感じ、森を見る。

「行くな」
「ええ?!でも……」
「そいつは、今は、関係ない」

 姿を見せず、力を『見せ』た。それで十分だとゼンは言っている。静かに笑って、フースを睨み『見る』。

「……どうやって死ぬか、相談は終わったか?」
「待ってくれてたなんて親切だネ?」
「こちらもどう殺すか、考えていたまでよ!!」

 ゼンとファインに突っ込んでいくフース。尻尾を遅れずに寄り添わせながら鋭く硬い先端を突き刺す。
 直線的な攻撃は以前と変わらない。だが、その尻尾が厄介だった。

 ふたりの間を抜けて空振りをしたと思わせ、割ける尻尾。それぞれが意思を持っているように、ゼンとファインを追いかける。

「はっ!おもしれっ!」
「器用なことするようになっちゃって……っ!」
「ふたりして逃げるだけかっ!」

 追いかけ続ける尻尾。さらに細かく分裂し、細くなり速度を上げ迫っていく。長さもどんどん伸びている。更にフースは、閃光を飛ばしてくる。

「威力だけで飛ばしてたタオゼントの攻撃手段だったものを、フースが操ることで精密さが増してるのか」
「ゼンだけ余裕なのずるいなぁ……」
「んなこと言ってるお前もよゆーだろうが」
「……っちぃ!!いちいち癇に障る!!」

 対空戦闘は初戦のフースにとって、空での動きに慣れているファインとゼン、ふたりを相手にするのは少し酷なようだ。せめてひとり……そう考え、尻尾の動きを変えた。

 ゼンを追わせていた尻尾を反転させ、ファインひとりに絞る。細いムカデの束になった尻尾が前からも襲い、挟まれ捕らわれる。

「だあっ?!」

 尻尾から伝わる。縛り、絡みつかせ、動きを止められたと……笑いながら、ゆっくりと自分の元に引き寄せる。

「まずは……っ?!」
「……あ」

 丸い虫の巣の様になった尻尾を緩ませ、捕らえた獲物の確認をしたフース。その目に映ったのは……。

「フース……」
「タオ……ゼン……ト?」

 番であり、新たな自分を産んだ母でもある者の姿がそこにある。その命を、その力を、喰らった……そこにいるはずがない者の姿。

「はっ!いったいなにを『見た』んだかなあ?」

 フースからの攻撃の手が止んだゼンは、その場に座り、ゆっくりと観察をする事にした。

「ね……フース……赤ちゃん……つくろ?」
「バカな……なぜ……」
「フース?」
「グッ……!」

 目の前のタオゼントに、困惑する。あり得ないのに、分かっているのに、拘束を自然に緩めてしまっている……。

「フース……っ」

 解放されたタオゼントがフースに抱きつく。

「痛かった……苦しかった……慰めて……」
「う…………っ?!……なんだこれは……」
「教えてあげる……」

 フースの意思に関係なく勝手に動く腕……タオゼントの背中に、肩に、しっかりとその身を抱いて離さないでいる。

「ゼンへの憎しみよりも、フースを愛する事のほうが大きかったの……」
「あ……愛……」

 ガッ!とフースの肩を掴み、グッと腕を伸ばしたタオゼント。大きな笑い声を上げながらフースの顔面にタオゼントの顔面を押しつけた。

「ちょ〜〜ウケるよねぇ?!最強?唯一?どこがぁ〜〜???」
「はっ……クソ……理解していた……なのに、なのにっ!」

 ゲラゲラケタケタ……下品に笑うタオゼント。

「壊れたメスの感情は執念深い……フース!お前が意図的に残した自分の意思があるように、タオゼントも己の意思を残した!」

 そっとフースの胸に指を這わせ、ゆっくりとその手でフースの顔を優しく包んでいく。

「愛っていう執着がいちばん厄介……ねぇフース?ほら、ふふ……失った生殖器が疼かない?」
「ふっ……くっ……なぜ動けん……っ!ファインっ!!」
「…………それはお前の中のタオゼントに聞いたら?」

 トントンと、額をつついて笑う。

「女になるのは得意なんだよネ〜……どうだった?色っぽかったデショ?」
「……気色の悪い……なんの為にそんな事を……」
「そんなの、ゼンのために決まってるじゃん!え、うそ、まだわからないの?」

 がっちりと足でフースの腰を挟み込み、タオゼントの特殊な腕を広げ、その腕をフースの腹に飲み込ませる。

「お前が今簡単に殺されちゃいそうになってるいちばんの理由の、愛だよ?」
「がっ……ヴァハッ!」

 グジュグジュと中をかき回して遊ぶタオゼント。意思とは裏腹に、それすらも受け入れてしまうフースの体。

「だいぶ中身も人間に近いんだ?体温……すごいなぁ……まだ死なないの?」
「その顔で……声で……我に……我らに触れるな!!」
「ありゃ……」

 我ら、と……言い換えたことが幸いしたのだろう。ほんの僅か、フースに主導権が移り、タオゼントを引き剥がし、地面に叩きつけた。

「なんだこの苦しさは……不快……我は、我の求めるものは……っ!」
「少しでも認めちまえば、その枷は永遠にまとわりつく」
「分かったような口を……ゼンッ!!」

 腸をかき回された痛みなど感じさせない、素早い動きでゼンに殴りかかるフース。
 最初に対峙した時と同じ様に、ゼンは拳を受け入れる。

「わかってるから、俺は『破壊』を選んだんだよ」
「?!」

 ズンッと……のしかかる様な圧を受け、ゼンの頬にめり込んで接触している拳の威力がチリチリと失われているのを感じ、震える。

「それが俺の強さなんて言い張るつもりはねぇが」

 背後に気配を感じ、振り向くフース。

「痛いよ、フース……やさしくして?」

 タオゼントの姿をしたファインが、甘く耳元で囁く……その声が、ぐらぐらとフースの脳を揺らす。

 タオゼントを拒絶することができない。それほどに、強く刻まれてしまったタオゼントの執着は……本能を凌駕していた。


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 まとわりつくファインに、大きなため息を吐くゼン。
「ゼン〜ありがとう〜〜……あ、え、いいの?」
「少し、焦りすぎたからな」
 ファインの失くした腕が元に戻っている……『破壊』された事実の『破壊』し……ファインの頭をゴンッと殴る。
「痛い……ホントに、ごめん、ゼン」
「もういい。それに、よくよく考えたら、先に喧嘩売ったのは俺だ」
「ゼン〜〜!」
「とはいえ、ちょっかい出したお前も悪い、できる事だけでどうにかしろ」
 ゼンの口ぶりで、自分の体質は失われていることを察するファイン。だが、先ほどまで感じていた不安はない。素直に、どう立ち回れるかを考えている。
「……ゼン……貴様……っ」
「小細工してたんだなフース?なかなかおもしれぇことしてくれて感謝するぜ?」
「……感謝される覚えはない」
「はっ!受け取ってくれなんて、言ってねぇが?」
「小賢しい……っ!!」
 手を出そうにも、利き手はボロボロ。ならばと、振りかざしたのは頑丈さと殺傷力が上がっている太い尻尾。
「おいおい、そりゃお前のチンコじゃねーのか?厳つさはちょっとうらやましいが、喜ばすのにゃ向かなそうだなぁ」
「ふんっ!!」
「……チッ!」
「幼稚な物言い、怒るにも足りぬ……もはや繁殖は不要、我は唯一の種となり最強の個となったのだ!」
 軽く顔にかすめながらも、直撃は避けたゼン。フースはあえて距離をとり、尻尾を揺らして誘っているようだった。
「たぶんゼンにあんなのが付いてたらさすがのクロエちゃんも考えると思うなぁ?」
「心配するところはそこかよ?調子、戻ってきたみいだなファイン」
「ん~~……どうだろ、やっぱりわかんない?」
「はっ!なら、面白いもんを『見せて』やる」
 チラリと地上の森に視線を送るゼン。
 その後すぐ、ファインは目に違和感を感じる。不快な違和感ではないそれに、温かさを感じ、森を見る。
「行くな」
「ええ?!でも……」
「そいつは、今は、関係ない」
 姿を見せず、力を『見せ』た。それで十分だとゼンは言っている。静かに笑って、フースを睨み『見る』。
「……どうやって死ぬか、相談は終わったか?」
「待ってくれてたなんて親切だネ?」
「こちらもどう殺すか、考えていたまでよ!!」
 ゼンとファインに突っ込んでいくフース。尻尾を遅れずに寄り添わせながら鋭く硬い先端を突き刺す。
 直線的な攻撃は以前と変わらない。だが、その尻尾が厄介だった。
 ふたりの間を抜けて空振りをしたと思わせ、割ける尻尾。それぞれが意思を持っているように、ゼンとファインを追いかける。
「はっ!おもしれっ!」
「器用なことするようになっちゃって……っ!」
「ふたりして逃げるだけかっ!」
 追いかけ続ける尻尾。さらに細かく分裂し、細くなり速度を上げ迫っていく。長さもどんどん伸びている。更にフースは、閃光を飛ばしてくる。
「威力だけで飛ばしてたタオゼントの攻撃手段だったものを、フースが操ることで精密さが増してるのか」
「ゼンだけ余裕なのずるいなぁ……」
「んなこと言ってるお前もよゆーだろうが」
「……っちぃ!!いちいち癇に障る!!」
 対空戦闘は初戦のフースにとって、空での動きに慣れているファインとゼン、ふたりを相手にするのは少し酷なようだ。せめてひとり……そう考え、尻尾の動きを変えた。
 ゼンを追わせていた尻尾を反転させ、ファインひとりに絞る。細いムカデの束になった尻尾が前からも襲い、挟まれ捕らわれる。
「だあっ?!」
 尻尾から伝わる。縛り、絡みつかせ、動きを止められたと……笑いながら、ゆっくりと自分の元に引き寄せる。
「まずは……っ?!」
「……あ」
 丸い虫の巣の様になった尻尾を緩ませ、捕らえた獲物の確認をしたフース。その目に映ったのは……。
「フース……」
「タオ……ゼン……ト?」
 番であり、新たな自分を産んだ母でもある者の姿がそこにある。その命を、その力を、喰らった……そこにいるはずがない者の姿。
「はっ!いったいなにを『見た』んだかなあ?」
 フースからの攻撃の手が止んだゼンは、その場に座り、ゆっくりと観察をする事にした。
「ね……フース……赤ちゃん……つくろ?」
「バカな……なぜ……」
「フース?」
「グッ……!」
 目の前のタオゼントに、困惑する。あり得ないのに、分かっているのに、拘束を自然に緩めてしまっている……。
「フース……っ」
 解放されたタオゼントがフースに抱きつく。
「痛かった……苦しかった……慰めて……」
「う…………っ?!……なんだこれは……」
「教えてあげる……」
 フースの意思に関係なく勝手に動く腕……タオゼントの背中に、肩に、しっかりとその身を抱いて離さないでいる。
「ゼンへの憎しみよりも、フースを愛する事のほうが大きかったの……」
「あ……愛……」
 ガッ!とフースの肩を掴み、グッと腕を伸ばしたタオゼント。大きな笑い声を上げながらフースの顔面にタオゼントの顔面を押しつけた。
「ちょ〜〜ウケるよねぇ?!最強?唯一?どこがぁ〜〜???」
「はっ……クソ……理解していた……なのに、なのにっ!」
 ゲラゲラケタケタ……下品に笑うタオゼント。
「壊れたメスの感情は執念深い……フース!お前が意図的に残した自分の意思があるように、タオゼントも己の意思を残した!」
 そっとフースの胸に指を這わせ、ゆっくりとその手でフースの顔を優しく包んでいく。
「愛っていう執着がいちばん厄介……ねぇフース?ほら、ふふ……失った生殖器が疼かない?」
「ふっ……くっ……なぜ動けん……っ!ファインっ!!」
「…………それはお前の中のタオゼントに聞いたら?」
 トントンと、額をつついて笑う。
「女になるのは得意なんだよネ〜……どうだった?色っぽかったデショ?」
「……気色の悪い……なんの為にそんな事を……」
「そんなの、ゼンのために決まってるじゃん!え、うそ、まだわからないの?」
 がっちりと足でフースの腰を挟み込み、タオゼントの特殊な腕を広げ、その腕をフースの腹に飲み込ませる。
「お前が今簡単に殺されちゃいそうになってるいちばんの理由の、愛だよ?」
「がっ……ヴァハッ!」
 グジュグジュと中をかき回して遊ぶタオゼント。意思とは裏腹に、それすらも受け入れてしまうフースの体。
「だいぶ中身も人間に近いんだ?体温……すごいなぁ……まだ死なないの?」
「その顔で……声で……我に……我らに触れるな!!」
「ありゃ……」
 我ら、と……言い換えたことが幸いしたのだろう。ほんの僅か、フースに主導権が移り、タオゼントを引き剥がし、地面に叩きつけた。
「なんだこの苦しさは……不快……我は、我の求めるものは……っ!」
「少しでも認めちまえば、その枷は永遠にまとわりつく」
「分かったような口を……ゼンッ!!」
 腸をかき回された痛みなど感じさせない、素早い動きでゼンに殴りかかるフース。
 最初に対峙した時と同じ様に、ゼンは拳を受け入れる。
「わかってるから、俺は『破壊』を選んだんだよ」
「?!」
 ズンッと……のしかかる様な圧を受け、ゼンの頬にめり込んで接触している拳の威力がチリチリと失われているのを感じ、震える。
「それが俺の強さなんて言い張るつもりはねぇが」
 背後に気配を感じ、振り向くフース。
「痛いよ、フース……やさしくして?」
 タオゼントの姿をしたファインが、甘く耳元で囁く……その声が、ぐらぐらとフースの脳を揺らす。
 タオゼントを拒絶することができない。それほどに、強く刻まれてしまったタオゼントの執着は……本能を凌駕していた。