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転落

ー/ー



 廃都ジパング・メトロエリシアを激しく揺らした大地震は、ザナの小さな体をあっというまに死地へと投げ出した。

 10年間最下層の採掘屋として必死で磨いてきた技術も知識も、自分の限界を超えた力の前には何の意味もない。

 滑落する身体をなんとかコントロールして急所を守り、突き出た岩に肩から衝突したまでは良かったが、強打して握力を失った右手から大事なピッケルがすっぽ抜けてどこかへ飛んで行った。

 都市深層の浄化槽へつながる大穴の縁が目前に迫っても、勢いをとめる手段なんかあるわけがない。確実な死の気配が頭の芯から背筋を走って、全身を凍らせるように広がった。

『――ああ、またこの景色だ』

 だからそれは、人生の最後に見るという走馬灯のような記憶だったのだろう。やけにゆっくりと感じる落下の最中、少年はまだ動く左手を虚空(こくう)に伸ばして過去の幻影を掴もうとしていた。

***

 ザナが最初の『転落』を経験したのは、ほんの7~8歳の頃の話だ。

 今もよく覚えている。場所は奇しくも同じような都市の浄化槽の真上だった。

 アカデミアの所有する飛行船から何者かに突き落とされたそのときも、やはり自分が如何にちっぽけで頼りない存在であるか思い知らされた。

 ザナを大事に育ててくれた周りの女性たちは、いつも彼が社会にとって必要な適性を持つ素晴らしい男の子であるかを嬉しそうに語ってくれたし、少年も期待に応えようと精いっぱい努力していた。

 同世代の男の子の中でも特に優秀だと(おだ)てられ、将来は最高の栄誉を得て都市の守護を担う掛け替えのない存在になるのだと疑いもしていなかった。

――僕は選ばれた、とてもすごい男の子なのだ!

 だがそんなことが飛行船から放り出されて落下するこの状況で、何の役に立つというのだろう? あるいはもっとそれ以前に、何故僕には誰かの悪意に抗う力が無かったのだろう?

 上手く言葉にできないなりに、あの頃の幼いザナはそんなことを考えながら落ちていた。
 
 もしこの状況から助かったら、奇跡か何かが起きたら……実は落っこちた先には柔らかなクッションかトランポリンか何かがあって、ぼよよーんって助かったら!

「二度と誰にも、俺の命は握らせない!」

 ザナは左腕を前方に向けて突き出し、袖口に仕込んだ廃棄ウインチの安全装置を弾き飛ばす。
 
 同時に鋭い破裂音と共に射出された【パイル・アンカー】が、浄化槽の直上に張り巡らされた巨大な残骸を濾し取るための強固な防護網(グレーチング)にガッチリと引っ掛かった。

 極細のワイヤーが限界まで軋み、ザナの体が空中で振り子のように大きく振られ――やがて宙吊りとなった。

 額から流れ出た血が左目に入って視界が赤黒く染まる。幼いころには不可能だった窮地からの自力脱出を果たしたものの全く笑えない。

 状況は依然危険なままだ。廃棄口の大穴の底は遥か下。遠目には堆積(たいせき)した残骸によって緩やかなすり鉢状だが、足場は悪く見た目以上に危険であり落下すれば即死は免れないのではないか。

「全く、こんなとこまであの時と同じでなくてもいいのに」

 飛行船から落ちたあのとき、ザナは奇跡的に助かりはした。 だが奇跡の代償は、とても高くついたのだ。

 それはもう社会的に即死したといっても過言ではなく、おそらくは奇跡の代償として、この次元航行都市社会で最も重視される適性を失った。

 FRAME(フレーム)適性の消失によるAIS(無能)判定を受け、重要な社会インフラであるFRAMEの力を全く使えない役立たずとなり、汚れた世界を這いずり回る『罪深き者』の烙印を押されたのだ。

 だからウィンチの巻き取り機能は当てにできない。

 このウィンチはクレア級FRAME PACK(フレームパック)の廃材を流用したものなので、本来なら誰でも局所的な重力制御やパワーアシストで楽々体を持ち上げられるはずだが、ザナにはそんな便利機能は使えない。

 ちぎれそうな左腕に力をこめて、ワイヤーを手繰り寄せる。 引き寄せたワイヤーに嚙みついて、もう一度ワイヤーを手繰り寄せる。 これを繰り返して、アンカーの元までたどり着いて体勢を立て直せれば……。

 総重量20kgのバックパックが肩に食い込む。 力が入らない右腕からずり落ちそうだが、貧乏なザナにとって採掘屋としてやっていくための財産の全てであり捨てるという選択肢はない。

 たとえ今の窮地を脱することができたとしても、装備を集めてやりなおす余裕などカスピア・ナフタ(スラム)の下層民にあるはずもない。

 それは死ぬのとなんら変わりはない。そんな考えが、甘かったのかもしれない。グローブの一部が裂ける音とともに、ワイヤーが滑ってしまった。

 手のひらの皮膚に焼けるような痛みを感じたが、ザナはワイヤーを必死で掴みなおす。だがべろりと皮がめくれて出血がひどくなった手では、もはや上り返すことは不可能に思えた。

 再びふらふらと頼りなく宙吊りにされた体は、あの事件以来成長を止めてしまったかのように身長も筋力も伸びていない。元々は同世代の男の子の中で最も背の高かった自分が、成長期を終えようとしている今も160cmをわずかに超える程度。

 無いものねだりしても仕方ないが、つくづく奇跡の代償は高くついていた。

 だが、悔やんでいる時間はない。血まみれの左手は限界を迎え、ワイヤーを握る指が徐々に開き始めていた。眼下に広がるのは、廃棄された無数の残骸がすり鉢状に堆積する浄化槽。力尽きてあそこに墜落すれば、良くて全身の骨が砕け散り、悪ければ肉片すら残らない。

 普通であれば、ただ絶望して死を待つ場面だろう。だが、宙吊りのザナの思考は異常なほどクリアだった。

『――あの時と、同じだ』

 10年前、飛行船から突き落とされた時も、彼は同じように浄化槽の真上から落下した。しかし、あの時ザナは浄化槽の残骸に激突したわけではない。

 さらにその下、都市の最下層部たる未踏の漆黒――深淵(The Abyss Layer)の底まで落ち、そこで『見上げるほど巨大な何かの影』に受け止められて生還したのだ。

 それが神なのか、都市の未知のシステムなのかは今もわからない。だが確かな事実が一つだけある。この廃棄口のさらに奥には、確実に『生還の可能性』が存在する。

 ここで力尽きてゴミのように死ぬくらいなら、もう一度あの奇跡を、自らの意志で掴み取ってやる。

 勢いをつけるためにワイヤーを振り子のように大きく動かしてタイミングを計り、

「……っ!」

――ザナは自らワイヤーを切り離した。

 重力に引かれ、再び絶望的な落下が始まる。少年は空中で必死に身をよじり、肩に食い込む20kgのバックパックの重心を利用して落下姿勢を制御する。そして、激突の瞬間に迫りくる浄化槽の斜面を両足で思い切り蹴りつけ、自らの意志でさらにその奥――底知れぬ深淵を目指して、決死のダイブを敢行した。

 猛烈な風切り音と、(おぞ)ましい浮遊感。
それはやがて致死的な滑落により、物理的衝撃がザナの意識を容赦なく刈り取っていく未来を予感せずにはいられない。

 だが、混濁していく世界の中で、少年は再び『あの時の幻影』を見ていた。

 見上げるほど巨大な、神のような影。 それが落下の衝撃をふわりと相殺し、自分を優しく受け止めてくれる感覚。

『ああ……やっぱり、いた……のか』

 奇跡の再現を確信し、ザナの意識はついに深い闇へと沈んでいった。

***

……はずだった。

『――こんなところに墜ちてきちゃった間抜けなお兄ちゃんはだぁれ?』

そこに見上げるような巨大な神の姿はない。
代わりに頭上から降ってきたのは、鼓膜を直接撫でるような甘ったるい声だ。

激突の衝撃は消え、無傷で目覚めたザナが跳ね起きると、そこは青白い光が妖しく瞬く場所だった。

「ねぇねぇモブっぽい顔のお兄ちゃん、名前はなぁに?」

瓦礫の上にふんぞり返ってザナを見下ろしていたのは、底意地の悪い笑みを浮かべた、自分よりも小柄な少女だ。

『へぇ…ザナっていうんだ。ほんとかなぁ?♡』

ザナはザナ以外の何者でもない。

『お兄ちゃんが『ザナ』なら、とってもすごい(ギガンティックな)才能があるはずだよ! どんな力を秘めているのかな♡』

幼かったザナの大事なものは全て奇跡の代償として失われたはずなのに、

『ふわぁ~ すっごい♡ どこに出しても恥ずかしくないようにぃ、これからもっともっと磨き上げなきゃね~♡』

少女の言葉には確信めいた力が宿っていて、

『ここを通っちゃったらねぇ、
幼い『母』に甘えて とろとろの『バブみ』に溺れちゃうか……
欲望のままに暴れまわって『わからせ』ちゃう外道になるか……』

その怪しげな言葉も、

『お兄ちゃんには 逃れようのない運命……【どちらかを選ぶとき】が来るんだよ♡』

謎めいた預言も、甘やかな誘惑も、

『でもね 選ばないようにしてもいいんだよ?』

不思議とそれは真実を語る託宣のように、ザナの魂に刻まれた。

『大事なものを全て奪われてぇ~
なっさけない、ざぁこざこな負け犬になっても
―― あたしだけは お兄ちゃんと遊んであげるから♡♡

ハハッ♡ あはははははは♡♡』


『AIS』
(アイス)[Axiom-Insensitive Substrate] 公理無感覚基質

公理(Axiom)の変化やF-VESSELによる虚構公理の行使を一切感じ取れない「無感覚(Insensitive)」な人間の分類。

社会的扱い: 深層採掘の肉体労働やFUEL採掘に回される都市最下層民。


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 廃都ジパング・メトロエリシアを激しく揺らした大地震は、ザナの小さな体をあっというまに死地へと投げ出した。
 10年間最下層の採掘屋として必死で磨いてきた技術も知識も、自分の限界を超えた力の前には何の意味もない。
 滑落する身体をなんとかコントロールして急所を守り、突き出た岩に肩から衝突したまでは良かったが、強打して握力を失った右手から大事なピッケルがすっぽ抜けてどこかへ飛んで行った。
 都市深層の浄化槽へつながる大穴の縁が目前に迫っても、勢いをとめる手段なんかあるわけがない。確実な死の気配が頭の芯から背筋を走って、全身を凍らせるように広がった。
『――ああ、またこの景色だ』
 だからそれは、人生の最後に見るという走馬灯のような記憶だったのだろう。やけにゆっくりと感じる落下の最中、少年はまだ動く左手を虚空《こくう》に伸ばして過去の幻影を掴もうとしていた。
***
 ザナが最初の『転落』を経験したのは、ほんの7~8歳の頃の話だ。
 今もよく覚えている。場所は奇しくも同じような都市の浄化槽の真上だった。
 アカデミアの所有する飛行船から何者かに突き落とされたそのときも、やはり自分が如何にちっぽけで頼りない存在であるか思い知らされた。
 ザナを大事に育ててくれた周りの女性たちは、いつも彼が社会にとって必要な適性を持つ素晴らしい男の子であるかを嬉しそうに語ってくれたし、少年も期待に応えようと精いっぱい努力していた。
 同世代の男の子の中でも特に優秀だと|煽《おだ》てられ、将来は最高の栄誉を得て都市の守護を担う掛け替えのない存在になるのだと疑いもしていなかった。
――僕は選ばれた、とてもすごい男の子なのだ!
 だがそんなことが飛行船から放り出されて落下するこの状況で、何の役に立つというのだろう? あるいはもっとそれ以前に、何故僕には誰かの悪意に抗う力が無かったのだろう?
 上手く言葉にできないなりに、あの頃の幼いザナはそんなことを考えながら落ちていた。
 もしこの状況から助かったら、奇跡か何かが起きたら……実は落っこちた先には柔らかなクッションかトランポリンか何かがあって、ぼよよーんって助かったら!
「二度と誰にも、俺の命は握らせない!」
 ザナは左腕を前方に向けて突き出し、袖口に仕込んだ廃棄ウインチの安全装置を弾き飛ばす。
 同時に鋭い破裂音と共に射出された【パイル・アンカー】が、浄化槽の直上に張り巡らされた巨大な残骸を濾し取るための強固な防護網《グレーチング》にガッチリと引っ掛かった。
 極細のワイヤーが限界まで軋み、ザナの体が空中で振り子のように大きく振られ――やがて宙吊りとなった。
 額から流れ出た血が左目に入って視界が赤黒く染まる。幼いころには不可能だった窮地からの自力脱出を果たしたものの全く笑えない。
 状況は依然危険なままだ。廃棄口の大穴の底は遥か下。遠目には堆積《たいせき》した残骸によって緩やかなすり鉢状だが、足場は悪く見た目以上に危険であり落下すれば即死は免れないのではないか。
「全く、こんなとこまであの時と同じでなくてもいいのに」
 飛行船から落ちたあのとき、ザナは奇跡的に助かりはした。 だが奇跡の代償は、とても高くついたのだ。
 それはもう社会的に即死したといっても過言ではなく、おそらくは奇跡の代償として、この次元航行都市社会で最も重視される適性を失った。
 |FRAME《フレーム》適性の消失による|AIS《無能》判定を受け、重要な社会インフラであるFRAMEの力を全く使えない役立たずとなり、汚れた世界を這いずり回る『罪深き者』の烙印を押されたのだ。
 だからウィンチの巻き取り機能は当てにできない。
 このウィンチはクレア級|FRAME PACK《フレームパック》の廃材を流用したものなので、本来なら誰でも局所的な重力制御やパワーアシストで楽々体を持ち上げられるはずだが、ザナにはそんな便利機能は使えない。
 ちぎれそうな左腕に力をこめて、ワイヤーを手繰り寄せる。 引き寄せたワイヤーに嚙みついて、もう一度ワイヤーを手繰り寄せる。 これを繰り返して、アンカーの元までたどり着いて体勢を立て直せれば……。
 総重量20kgのバックパックが肩に食い込む。 力が入らない右腕からずり落ちそうだが、貧乏なザナにとって採掘屋としてやっていくための財産の全てであり捨てるという選択肢はない。
 たとえ今の窮地を脱することができたとしても、装備を集めてやりなおす余裕など|カスピア・ナフタ《スラム》の下層民にあるはずもない。
 それは死ぬのとなんら変わりはない。そんな考えが、甘かったのかもしれない。グローブの一部が裂ける音とともに、ワイヤーが滑ってしまった。
 手のひらの皮膚に焼けるような痛みを感じたが、ザナはワイヤーを必死で掴みなおす。だがべろりと皮がめくれて出血がひどくなった手では、もはや上り返すことは不可能に思えた。
 再びふらふらと頼りなく宙吊りにされた体は、あの事件以来成長を止めてしまったかのように身長も筋力も伸びていない。元々は同世代の男の子の中で最も背の高かった自分が、成長期を終えようとしている今も160cmをわずかに超える程度。
 無いものねだりしても仕方ないが、つくづく奇跡の代償は高くついていた。
 だが、悔やんでいる時間はない。血まみれの左手は限界を迎え、ワイヤーを握る指が徐々に開き始めていた。眼下に広がるのは、廃棄された無数の残骸がすり鉢状に堆積する浄化槽。力尽きてあそこに墜落すれば、良くて全身の骨が砕け散り、悪ければ肉片すら残らない。
 普通であれば、ただ絶望して死を待つ場面だろう。だが、宙吊りのザナの思考は異常なほどクリアだった。
『――あの時と、同じだ』
 10年前、飛行船から突き落とされた時も、彼は同じように浄化槽の真上から落下した。しかし、あの時ザナは浄化槽の残骸に激突したわけではない。
 さらにその下、都市の最下層部たる未踏の漆黒――深淵《The Abyss Layer》の底まで落ち、そこで『見上げるほど巨大な何かの影』に受け止められて生還したのだ。
 それが神なのか、都市の未知のシステムなのかは今もわからない。だが確かな事実が一つだけある。この廃棄口のさらに奥には、確実に『生還の可能性』が存在する。
 ここで力尽きてゴミのように死ぬくらいなら、もう一度あの奇跡を、自らの意志で掴み取ってやる。
 勢いをつけるためにワイヤーを振り子のように大きく動かしてタイミングを計り、
「……っ!」
――ザナは自らワイヤーを切り離した。
 重力に引かれ、再び絶望的な落下が始まる。少年は空中で必死に身をよじり、肩に食い込む20kgのバックパックの重心を利用して落下姿勢を制御する。そして、激突の瞬間に迫りくる浄化槽の斜面を両足で思い切り蹴りつけ、自らの意志でさらにその奥――底知れぬ深淵を目指して、決死のダイブを敢行した。
 猛烈な風切り音と、|悍《おぞ》ましい浮遊感。
それはやがて致死的な滑落により、物理的衝撃がザナの意識を容赦なく刈り取っていく未来を予感せずにはいられない。
 だが、混濁していく世界の中で、少年は再び『あの時の幻影』を見ていた。
 見上げるほど巨大な、神のような影。 それが落下の衝撃をふわりと相殺し、自分を優しく受け止めてくれる感覚。
『ああ……やっぱり、いた……のか』
 奇跡の再現を確信し、ザナの意識はついに深い闇へと沈んでいった。
***
……はずだった。
『――こんなところに墜ちてきちゃった間抜けなお兄ちゃんはだぁれ?』
そこに見上げるような巨大な神の姿はない。
代わりに頭上から降ってきたのは、鼓膜を直接撫でるような甘ったるい声だ。
激突の衝撃は消え、無傷で目覚めたザナが跳ね起きると、そこは青白い光が妖しく瞬く場所だった。
「ねぇねぇモブっぽい顔のお兄ちゃん、名前はなぁに?」
瓦礫の上にふんぞり返ってザナを見下ろしていたのは、底意地の悪い笑みを浮かべた、自分よりも小柄な少女だ。
『へぇ…ザナっていうんだ。ほんとかなぁ?♡』
ザナはザナ以外の何者でもない。
『お兄ちゃんが『ザナ』なら、|とってもすごい《ギガンティックな》才能があるはずだよ! どんな力を秘めているのかな♡』
幼かったザナの大事なものは全て奇跡の代償として失われたはずなのに、
『ふわぁ~ すっごい♡ どこに出しても恥ずかしくないようにぃ、これからもっともっと磨き上げなきゃね~♡』
少女の言葉には確信めいた力が宿っていて、
『ここを通っちゃったらねぇ、
幼い『母』に甘えて とろとろの『バブみ』に溺れちゃうか……
欲望のままに暴れまわって『わからせ』ちゃう外道になるか……』
その怪しげな言葉も、
『お兄ちゃんには 逃れようのない運命……【どちらかを選ぶとき】が来るんだよ♡』
謎めいた預言も、甘やかな誘惑も、
『でもね 選ばないようにしてもいいんだよ?』
不思議とそれは真実を語る託宣のように、ザナの魂に刻まれた。
『大事なものを全て奪われてぇ~
なっさけない、ざぁこざこな負け犬になっても
―― あたしだけは お兄ちゃんと遊んであげるから♡♡
ハハッ♡ あはははははは♡♡』
『AIS』
(アイス)[Axiom-Insensitive Substrate] 公理無感覚基質
公理(Axiom)の変化やF-VESSELによる虚構公理の行使を一切感じ取れない「無感覚(Insensitive)」な人間の分類。
社会的扱い: 深層採掘の肉体労働やFUEL採掘に回される都市最下層民。