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33話 裏切り者(2)

ー/ー




「なるほど、私達には化粧は不要ってことね……」

 小春と凛は顔を合わせて、溜息混じりに笑って見せてくる。
 一体、どうゆうことだろう?

「次はおそらく、成宮くんと三上さんカップルになりそうね」

 同意するように小春は頷き、翔はただ聞いていて、またしても俺だけ置いてきぼりだった。

「どうして、分かるんだ? 何か、方式でも見つけたのか?」
「あ……。あくまで予想だから」

 どうにも歯切れの悪い凛は、まだ調査が必要だとスマホに目を落とし、操作している。
 そういえば北条くん達は二回目に自分達が指定される前から順番を察していたようだし、やっぱり何かあるんだ。
 しかし今はそんなことより、情報を集めないと。いつまでも足手まといだなんて、いられるはずもないんだから。

 そうだ。
 どこか情報が少ないと感じた俺は、セーフサーチ設定をオフにし、再度検索をかけてみる。
 するとヒット数は明らかに増え、一つずつのサイトの文章をコピーして翻訳機能を使うと、スマホには穏やかではない単語や文面に溢れてきた。

 閲覧注意と前置きがされているその文章は、吐き気を催すほどの残虐なゲーム内容が記されていた。
 なるほど、そりゃあセーフサーチ機能によりサイトブロックが入るはずだ。
 どこか納得しながら和訳された文章を読んでいく中で気になったのは、警察の介入についてだった。
 普通の犯罪者は警察を嫌う傾向にあるが、このゲームの主催者はむしろ好み、ゲームの手伝いをさせるらしい。
 ゲーム参加者への食事の配給、脱走しそうになる参加者の足止め、ゲームが終わるまで妨害が入らないように警備するなど、信じられない内容だった。
 ……はぁ? 警察が? なんだよ、それ?
 ザワッとしたものが全身に駆け巡り、昼前になり気温も上がっているというのに、鳥肌が立っていた。
 海外の警察がおかしいと思いたかったが、日本でも同じ対応が取られている現状。
 なんだよ、何なんだよ? どこの警察も犯罪者の味方なのかよ、ふざけんなよ! ……ゲームの協力って、それは共犯って言うんだよ!
 スマホを持つ力が強くなってしまいながら和訳された文章を読み進めていくと、俺の考えはどれだけ短絡的だったかを思い知らされていく。

 警察が参加者を救護しようとしたり、手伝いに非協力的だった場合。主催者はゲームを止め、容赦なく参加者全員を殺害する。
 そのような悲惨的な事例は、一つ二つではないらしい。

『君、戻りなさい!』

 小田くんが学校の敷地から出ようとした時、射撃してきたのはその為だったのか。
 小田くんが無傷だったのは威嚇射撃だったから、玄関付近に居た俺を引き止めたのは、ルール違反を起こして指輪を爆発させないようにと、俺達の命を守る為だったんだ。

「なあ、これ」

 この文章にどこか表情が和らいだ凛は、「私達が信じていた正義は、ちゃんと形を変えて存在してくれていたのね」と呟いた。
 俺の中で言語化出来ない気持ちを凛が代弁してくれたようで、目頭が熱くなっていく。
 思わず立ち上がり、窓からの景色を見下ろすと、そこには変わらず校舎内を囲っている機動隊員の姿。
 直射日光が当たる中で、全身黒くて重い隊員服に身を包む、あの人達。
 ここにいる人達は味方だ。
 嬉しいような、安心したような、だけど恐怖が襲ってくるような、絶望するような。ぐちゃぐちゃな感情が、一気に押し寄せてくる。
 警察に見捨てられていなかった希望。日本の秩序は健在しているいう安堵。警察でも対応出来ないほどの組織だという恐怖。俺達はこんな狂ったゲームを続けなければならない絶望。そんな思いが。

 双眼鏡らしき物を使用し、こちらに目を向けていた機動隊。その一人と、視線が合ったような気がした。
 衝動的に、「助けて」と叫びたかった。
 もう四人が殺され、これからまた狂ったゲームが始まってしまう。
 もう嫌だ。人が死ぬ姿を見たくない。頭がおかしくなりそう。俺も無惨に殺される。痛いのは嫌。死ぬのは怖い。頼むから、助けてくれ。
 換気の為に開いていた窓から声を上げようと、手を振ろうとするが、声が出ないように唇を噛み締め、手をグッと握り締める。
 俺が今叫んだところで、状況なんか変わらない。むしろ気持ちを抑えている三人を、動揺させてしまうだけだ。

「何かあった?」
「……いや」

 凛の問いに軽く返して、こちらに視線を送ってくれている機動隊の人達に軽く会釈して、窓から離れる。
 それで良いんだ、それで。
 何か合図を送ってたとか主催者に誤解されるかもしれないから、関わりは持たない方が。
 今こうやって俺が外を眺めている時も、みんなは少しでも情報を得ようと動いているんだから。翔も。


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「なるほど、私達には化粧は不要ってことね……」
 小春と凛は顔を合わせて、溜息混じりに笑って見せてくる。
 一体、どうゆうことだろう?
「次はおそらく、成宮くんと三上さんカップルになりそうね」
 同意するように小春は頷き、翔はただ聞いていて、またしても俺だけ置いてきぼりだった。
「どうして、分かるんだ? 何か、方式でも見つけたのか?」
「あ……。あくまで予想だから」
 どうにも歯切れの悪い凛は、まだ調査が必要だとスマホに目を落とし、操作している。
 そういえば北条くん達は二回目に自分達が指定される前から順番を察していたようだし、やっぱり何かあるんだ。
 しかし今はそんなことより、情報を集めないと。いつまでも足手まといだなんて、いられるはずもないんだから。
 そうだ。
 どこか情報が少ないと感じた俺は、セーフサーチ設定をオフにし、再度検索をかけてみる。
 するとヒット数は明らかに増え、一つずつのサイトの文章をコピーして翻訳機能を使うと、スマホには穏やかではない単語や文面に溢れてきた。
 閲覧注意と前置きがされているその文章は、吐き気を催すほどの残虐なゲーム内容が記されていた。
 なるほど、そりゃあセーフサーチ機能によりサイトブロックが入るはずだ。
 どこか納得しながら和訳された文章を読んでいく中で気になったのは、警察の介入についてだった。
 普通の犯罪者は警察を嫌う傾向にあるが、このゲームの主催者はむしろ好み、ゲームの手伝いをさせるらしい。
 ゲーム参加者への食事の配給、脱走しそうになる参加者の足止め、ゲームが終わるまで妨害が入らないように警備するなど、信じられない内容だった。
 ……はぁ? 警察が? なんだよ、それ?
 ザワッとしたものが全身に駆け巡り、昼前になり気温も上がっているというのに、鳥肌が立っていた。
 海外の警察がおかしいと思いたかったが、日本でも同じ対応が取られている現状。
 なんだよ、何なんだよ? どこの警察も犯罪者の味方なのかよ、ふざけんなよ! ……ゲームの協力って、それは共犯って言うんだよ!
 スマホを持つ力が強くなってしまいながら和訳された文章を読み進めていくと、俺の考えはどれだけ短絡的だったかを思い知らされていく。
 警察が参加者を救護しようとしたり、手伝いに非協力的だった場合。主催者はゲームを止め、容赦なく参加者全員を殺害する。
 そのような悲惨的な事例は、一つ二つではないらしい。
『君、戻りなさい!』
 小田くんが学校の敷地から出ようとした時、射撃してきたのはその為だったのか。
 小田くんが無傷だったのは威嚇射撃だったから、玄関付近に居た俺を引き止めたのは、ルール違反を起こして指輪を爆発させないようにと、俺達の命を守る為だったんだ。
「なあ、これ」
 この文章にどこか表情が和らいだ凛は、「私達が信じていた正義は、ちゃんと形を変えて存在してくれていたのね」と呟いた。
 俺の中で言語化出来ない気持ちを凛が代弁してくれたようで、目頭が熱くなっていく。
 思わず立ち上がり、窓からの景色を見下ろすと、そこには変わらず校舎内を囲っている機動隊員の姿。
 直射日光が当たる中で、全身黒くて重い隊員服に身を包む、あの人達。
 ここにいる人達は味方だ。
 嬉しいような、安心したような、だけど恐怖が襲ってくるような、絶望するような。ぐちゃぐちゃな感情が、一気に押し寄せてくる。
 警察に見捨てられていなかった希望。日本の秩序は健在しているいう安堵。警察でも対応出来ないほどの組織だという恐怖。俺達はこんな狂ったゲームを続けなければならない絶望。そんな思いが。
 双眼鏡らしき物を使用し、こちらに目を向けていた機動隊。その一人と、視線が合ったような気がした。
 衝動的に、「助けて」と叫びたかった。
 もう四人が殺され、これからまた狂ったゲームが始まってしまう。
 もう嫌だ。人が死ぬ姿を見たくない。頭がおかしくなりそう。俺も無惨に殺される。痛いのは嫌。死ぬのは怖い。頼むから、助けてくれ。
 換気の為に開いていた窓から声を上げようと、手を振ろうとするが、声が出ないように唇を噛み締め、手をグッと握り締める。
 俺が今叫んだところで、状況なんか変わらない。むしろ気持ちを抑えている三人を、動揺させてしまうだけだ。
「何かあった?」
「……いや」
 凛の問いに軽く返して、こちらに視線を送ってくれている機動隊の人達に軽く会釈して、窓から離れる。
 それで良いんだ、それで。
 何か合図を送ってたとか主催者に誤解されるかもしれないから、関わりは持たない方が。
 今こうやって俺が外を眺めている時も、みんなは少しでも情報を得ようと動いているんだから。翔も。