第15話:聖域への門(前編)
ー/ー 黄金色の蒸気が厚い雲海を突き破り、天を衝く黒鉄の巨塔――ヘリオス本社『クロックワーク・タワー』。
かつて下層(ラット・ポート)の泥の中から見上げていたそれは、もはや単なる建造物ではない。数百万個の真鍮製歯車が外壁を鱗のように覆い尽くし、1秒ごとにその形状を変え、重厚な金属音を響かせながら呼吸を続ける。それは、世界を管理し、搾取し、全ての民の思考を数式へと還元しようとする、巨大な精密機械の「玉座」そのものだった。
塔の裾野に広がる広大な広場を、煤けた黄色い猛獣――ブラスト・ヘヴン号が、エンジン音を荒野に轟かせて爆走していた。
「シグナ、カイル! 振り落とされるんじゃないよ! ここから先はアタシの運転でも避けきれない鉄の雨だ!」
運転席のガラの怒号が、マイクのノイズを突き破って車内に響く。彼女は両手で舵を固定し、過熱した計器類から噴き出す熱い蒸気に顔を焼きながらも、アクセルを床まで踏み抜いていた。
タワーの巨大な真鍮の扉が油圧音を轟かせて開き、中からヘリオスの全戦力が黒い津波となって溢れ出した。何千というポーン隊が、無機質な軍靴の音を響かせて広場を埋め尽くす。
「……120秒で道を拓く。シグナ、君の『野生』を僕の『論理』で加速させるよ」
カイルが端末を叩き、シグナの視界に膨大な戦術情報を投影する。
「前方30メートル、ポーン隊の歩幅に0.5秒の遅滞を確認。……今だ!」
「ハル! 第一換装、ダブルブレード!」
シグナが車上から弾丸のように飛び出した。
『了解! マグネティック・イジェクト、送ります!』
ハルがシグナの背部シャーシから予備兵装を射出する。空中で旋回するシグナの2本の下腕が、重厚な連結ブレードを完璧なタイミングでキャッチした。
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