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SCENE170 決まったのならやるしかない

ー/ー



 セイレーンさんから提案されたのは、まさかのダンジョンマスター同士の合同配信だった。
 というか、年末までもう二日くらいなんだけど、これ大丈夫なのかな。
 携帯電話を改めてのぞいた僕は、日付を見てびっくりだった。準備期間なんてありもしないじゃないか。

「どうかなさいましたか、プリンセス」

 僕の様子が気になったバトラーが、心配そうに声をかけてくる。

「うん、セイレーンさんから電話があって、一緒に配信しないかって言ってるんだ。どうしたらいいと思う?」

「ほほぅ。それは面白いですね」

 僕が話をすると、バトラーはあごに手を当てながら、興味深そうにゆっくりと首を縦に振っている。

「それでしたら、谷地殿たちに聞かれてみてはいかがですかな。ここはダンジョン管理局の管理下にございますから、相談に乗って下さると思いますぞ」

「そっか。それじゃ早速そうしよう。時間がなさすぎるもんね」

 僕は、バトラーの意見に従って、すぐに管理局へと電話をかけた。
 しばらくすると、谷地さんと日下さんの二人がボス部屋までやってきた。

「ウィンクさん、どうかなさったんですか?」

「はい、実はですね……」

 僕はセイレーンさんから持ち掛けられた話について、二人に詳しく説明する。
 そしたら、二人ともまさかというような表情で僕たちを見ていた。

「いや、それはまた前代未聞ですな」

「でも、いいとは思いますよ。ダンジョン自体は分からないことが多いですし、ダンジョンボスの経験者が揃いますから、話題性は十分にあります」

 谷地さんはちょっと難しい顔をしているようだけど、日下さんの方は乗り気のようだ。こうも反応に違いが出るというのは、実に面白い感じがするな。

「でも、それなら向こうの管理局にも話をしておいた方がいいんじゃないかな」

「いえ、それは現実的ではありませんよ」

 谷地さんの言葉を日下さんが否定している。
 理由は、横浜ダンジョンのボス部屋まで、管理局がたどり着いたことがないからだ。ボス部屋にたどり着いたのは、高志さんただ一人しかいない。連絡を入れるならば、彼の方が普通じゃないのかなって思う。

「向こうは多分セイレーンさんがどうにかしていると思いますので、任せておいた方がいいんじゃないでしょうかね」

「そうですね。ただ、当日にはちゃんと確認を入れた方がいいと思いますよ」

「分かっていますよ」

 日下さんが確認を入れてくるので、僕はこくりと頷いて話を受け入れている。こういう時、やっぱりダンジョン管理局の人たちは頼りになるなぁ。
 僕がダンジョン管理局の人たちを見ていると、スピアさんが声をかけてくる。

「ハイ、シュン。さっきのセイレーンとかいうモンスター、どこのダンジョンのボスなの?」

「セイレーンさんは、横浜ダンジョンのボスモンスターですよ」

「よ、横浜?!」

 僕が質問にすんなり答えると、スピアさんはものすごく驚いていた。やっぱり、横浜ダンジョンって海外の人にも有名なんだな。

「世界最高峰クラスの難易度を誇る横浜ダンジョン?! そこのボスと面識があるの?」

「ええ、まあ。ちょっといろいろと偶然が重なりましてね。知り合いになれたんです」

「すごいわ。ああ、私も一度行ってみたいなぁ……」

 僕が話をしていると、スピアさんはなぜかうっとりとした表情を浮かべている。
 そういえば、スピアさんは世界中のダンジョンへ行ってみたいとか言ってたっけ。だったら、興味を持つのは当然かぁ……。
 いいなぁ、人間だと自由にダンジョンを行き来できるから。僕も来年まで待てば、探索者としてあちこちに行けたんだろうなぁ。
 ああ、ダメだ。こんなことを考え始めたら、なんだか悲しくなってきちゃうな。

「……シュン?」

 僕が泣きそうにしていると、スピアさんが顔を覗き込んでくる。
 いけない。ダンジョンマスターとして、僕は堂々としていなきゃ。泣くわけにはいかないと、僕はぐっと歯を食いしばると、顔を上げてスピアさんの方を向く。

「なんでもありませんよ。さあ、配信をするのなら、それに向けて準備をしませんとね」

「ええ、そうね。私は何をすればいいのかしら」

 にっこりと笑顔を浮かべて話し掛けると、スピアさんはちょっと困ったかのような表情を浮かべながらも、やれることはないかと聞いてくる。
 なので、僕はスピアさんにはとあることをお願いしておいた。ダンジョンマスターになってから三か月だから、まだまだ知らない人は多いだろうからね。
 僕のお願いは、スピアさんはすぐに了承してくれた。自分じゃなきゃできないねって、すごく納得してくれていたみたいだ。

 こうして、世界初のダンジョンマスターによる合同配信へ向けて準備が始まった。
 とにかく時間がないので、正直いって眠る時間すら惜しい感じだ。でも、元人間である僕にしてみれば、睡眠はちゃんととらないと大変なことになっちゃうもん。
 なので、配信について知っているバトラーやラティナさんにも手伝ってもらう。

 ダンジョンマスターでありながら配信を初めて行った僕と、純粋な異界出身でありながら初めて配信を行ったセイレーンさん。
 僕たち二人による、世界初の合同配信。その始まりまでもう少しだ。
 絶対成功させるからね。えいえいおーっ!


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 セイレーンさんから提案されたのは、まさかのダンジョンマスター同士の合同配信だった。
 というか、年末までもう二日くらいなんだけど、これ大丈夫なのかな。
 携帯電話を改めてのぞいた僕は、日付を見てびっくりだった。準備期間なんてありもしないじゃないか。
「どうかなさいましたか、プリンセス」
 僕の様子が気になったバトラーが、心配そうに声をかけてくる。
「うん、セイレーンさんから電話があって、一緒に配信しないかって言ってるんだ。どうしたらいいと思う?」
「ほほぅ。それは面白いですね」
 僕が話をすると、バトラーはあごに手を当てながら、興味深そうにゆっくりと首を縦に振っている。
「それでしたら、谷地殿たちに聞かれてみてはいかがですかな。ここはダンジョン管理局の管理下にございますから、相談に乗って下さると思いますぞ」
「そっか。それじゃ早速そうしよう。時間がなさすぎるもんね」
 僕は、バトラーの意見に従って、すぐに管理局へと電話をかけた。
 しばらくすると、谷地さんと日下さんの二人がボス部屋までやってきた。
「ウィンクさん、どうかなさったんですか?」
「はい、実はですね……」
 僕はセイレーンさんから持ち掛けられた話について、二人に詳しく説明する。
 そしたら、二人ともまさかというような表情で僕たちを見ていた。
「いや、それはまた前代未聞ですな」
「でも、いいとは思いますよ。ダンジョン自体は分からないことが多いですし、ダンジョンボスの経験者が揃いますから、話題性は十分にあります」
 谷地さんはちょっと難しい顔をしているようだけど、日下さんの方は乗り気のようだ。こうも反応に違いが出るというのは、実に面白い感じがするな。
「でも、それなら向こうの管理局にも話をしておいた方がいいんじゃないかな」
「いえ、それは現実的ではありませんよ」
 谷地さんの言葉を日下さんが否定している。
 理由は、横浜ダンジョンのボス部屋まで、管理局がたどり着いたことがないからだ。ボス部屋にたどり着いたのは、高志さんただ一人しかいない。連絡を入れるならば、彼の方が普通じゃないのかなって思う。
「向こうは多分セイレーンさんがどうにかしていると思いますので、任せておいた方がいいんじゃないでしょうかね」
「そうですね。ただ、当日にはちゃんと確認を入れた方がいいと思いますよ」
「分かっていますよ」
 日下さんが確認を入れてくるので、僕はこくりと頷いて話を受け入れている。こういう時、やっぱりダンジョン管理局の人たちは頼りになるなぁ。
 僕がダンジョン管理局の人たちを見ていると、スピアさんが声をかけてくる。
「ハイ、シュン。さっきのセイレーンとかいうモンスター、どこのダンジョンのボスなの?」
「セイレーンさんは、横浜ダンジョンのボスモンスターですよ」
「よ、横浜?!」
 僕が質問にすんなり答えると、スピアさんはものすごく驚いていた。やっぱり、横浜ダンジョンって海外の人にも有名なんだな。
「世界最高峰クラスの難易度を誇る横浜ダンジョン?! そこのボスと面識があるの?」
「ええ、まあ。ちょっといろいろと偶然が重なりましてね。知り合いになれたんです」
「すごいわ。ああ、私も一度行ってみたいなぁ……」
 僕が話をしていると、スピアさんはなぜかうっとりとした表情を浮かべている。
 そういえば、スピアさんは世界中のダンジョンへ行ってみたいとか言ってたっけ。だったら、興味を持つのは当然かぁ……。
 いいなぁ、人間だと自由にダンジョンを行き来できるから。僕も来年まで待てば、探索者としてあちこちに行けたんだろうなぁ。
 ああ、ダメだ。こんなことを考え始めたら、なんだか悲しくなってきちゃうな。
「……シュン?」
 僕が泣きそうにしていると、スピアさんが顔を覗き込んでくる。
 いけない。ダンジョンマスターとして、僕は堂々としていなきゃ。泣くわけにはいかないと、僕はぐっと歯を食いしばると、顔を上げてスピアさんの方を向く。
「なんでもありませんよ。さあ、配信をするのなら、それに向けて準備をしませんとね」
「ええ、そうね。私は何をすればいいのかしら」
 にっこりと笑顔を浮かべて話し掛けると、スピアさんはちょっと困ったかのような表情を浮かべながらも、やれることはないかと聞いてくる。
 なので、僕はスピアさんにはとあることをお願いしておいた。ダンジョンマスターになってから三か月だから、まだまだ知らない人は多いだろうからね。
 僕のお願いは、スピアさんはすぐに了承してくれた。自分じゃなきゃできないねって、すごく納得してくれていたみたいだ。
 こうして、世界初のダンジョンマスターによる合同配信へ向けて準備が始まった。
 とにかく時間がないので、正直いって眠る時間すら惜しい感じだ。でも、元人間である僕にしてみれば、睡眠はちゃんととらないと大変なことになっちゃうもん。
 なので、配信について知っているバトラーやラティナさんにも手伝ってもらう。
 ダンジョンマスターでありながら配信を初めて行った僕と、純粋な異界出身でありながら初めて配信を行ったセイレーンさん。
 僕たち二人による、世界初の合同配信。その始まりまでもう少しだ。
 絶対成功させるからね。えいえいおーっ!