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SCENE169 年の瀬の大提案

ー/ー



 翌日、僕の携帯電話が鳴る。
 画面を確認してみたら、横浜ダンジョンのセイレーンさんみたいだった。

「あら、お電話ですか?」

「うん。セイレーンさんからみたいだよ」

「まあ、セイレーン様ですか?」

 僕が携帯電話を見ていると、ラティナさんがひょっこりと顔を出してきた。
 電話の相手について話すと、ラティナさんは両手を合わせて表情をぱあっと明るくしている。前に電話をしていた時もだったけれど、ラティナさんはセイレーンさんとはとても仲がいい感じだったもんね。

「セイレーン様からですの?」

「なんだ、モンスターが電話を持っているっていうの?」

 僕の声に、アルカナさんとスピアさんまでが反応している。食いつきすぎでしょ、みんな。
 僕の周りがにぎやかになっているんだけど、いつまでも待たせるわけにはいかないので、僕は電話に出る。

『まったく、いつまで待たせますの! あたしからの電話にすぐに出ないとは、万死に値しますわよ』

 電話に出るなり、セイレーンさんから思いっきりお叱りを受けてしまった。相変わらず厳しい人だなぁ。
 でも、異界の公爵家の令嬢だっていうし、このくらい厳しい方が当然なのかな。

「セイレーン様、お久しぶりです。ラティナです」

『あら、ラティナ様。まだそこにいますのね』

「はい。ゴーレムであるわたくしは重いですから、運搬するのも一苦労です。せっかくここまで来たのですから、わたくしはここでしばらくお世話になり続けます」

『そう……。でも、その方が話はしやすいですからそれで構いませんわ』

 ラティナさんが語れば、セイレーンさんはとても納得したようだった。
 これでようやく僕が話ができると思ったんだけど、そこに割り込んできた人物がいた。

「ワオッ! この電話の向こう側にいるのはモンスターなのね。すごいわ、ジャパン。モンスターもフォーンを持つ時代が来たのね!?」

 スピアさんががっつりと僕の手をつかんでいる。

『な、なんですの、この声は!?』

 大声ではしゃぐスピアさんの声に、セイレーンさんがものすごく驚いている。
 さらに僕の手から携帯電話を奪おうとして、ものすごい力を入れている。僕が力で負けるってどういうことなの?!

「アウチッ!」

 そこに、バトラーの拳が入る。

「プリンセスが痛がっているではありませんか。お前はまだ自分の立場が分かっておらぬようですな……」

 うわぁ……。バトラーが激おこだよ。
 バトラーの怒りの鉄拳を食らったスピアさんは、出会った時のフルボッコの件を思い出して、ものすごく涙目になっている。やっぱりあれはトラウマになるよね、死にかけたんだから。

『ちょっと、ウィンク様。今の女の声はなんなのです?』

 電話口からは、セイレーンさんの戸惑う声が聞こえてくる。
 とにかく事態収拾はおいておいて、僕はセイレーンさんと話をする。

「今の人は国外からやってきた探索者の人ですよ。ちょっといろいろあって、今はダンジョンに居候しているんです」

『そうなのですわね。無名だった割りには、いろんな人が集まってきますわね』

「まあ、衣織お姉さんのおかげかなぁ……。あの人、ものすごく強くて有名ですからね」

『なるほどですわ』

 僕がごまかし気味に話していると、セイレーンさんはものすごくすんなり分かってくれたみたいだ。元々聡明なところがあるから、多分僕のいうことを裏まで読んでくれてると思う。
 お互いにダンジョンマスターなので、直接会えないのが残念だよね。

「セイレーン様? アルカナですわ」

『アルカナ様? なぜあなたまでこちらにいらっしゃいますの』

 僕が黙り込んだところに、すかさずアルカナさんが割り込んできた。
 本人が話していた通り、どうやらアルカナさんもセイレーンさんとは面識があるようだ。

「あたくしも、ダンジョンマスターにさせられたのですわよ。いろいろあって、生きたままよそのダンジョンに移ってこられましたわ」

『そんなことができますの?』

 アルカナさんの話を聞いたセイレーンさんが驚いている。

「はい。でも、おそらくセイレーン様では不可能な方法ですわ。あたくしはアンデッドだからできたようなものだと思います」

『なるほど、核を外すことで、一時的に仮死状態になったというわけですわね。確かに、あたしにはできないことですわね』

 すごい、一発で理解している。これが公爵令嬢の頭脳なんだ。
 僕は、セイレーンさんのすごさを改めて見せつけられていた。
 僕が感心しているその間、セイレーンさんはアルカナさんと延々としゃべり続けていた。

「ウィンク様、セイレーン様がお話があるそうですわよ」

「えっ、僕に?」

 ようやくアルカナさんとの話が終わったかと思うと、セイレーンさんは僕に話を戻してきた。

「はい、お電話代わりました」

『ようやく、落ち着いて話ができますわね。危うく本題を忘れてしまうところでしたわ』

 僕が再び電話を受け取ると、セイレーンさんはそんなことを言ってきた。
 そういえば、そもそも僕と話するつもりじゃないと電話してこないよね。僕は今さらながらに思ってしまう。
 とりあえず、どういう理由で電話をしてきたのか、僕は黙ってセイレーンさんの話を聞くことにする。

『なんでも、こちらの世界はそろそろ年が変わるそうではないですの』

「そうですね。もう年末年始ですけれど、それがどうかしたんですか?」

『ちょうどよろしいと思いません? あたしたち二人で、世界初のダンジョンマスターによる年越し配信を行うというのは』

 思わず問い返してみたら、セイレーンさんから思わぬ提案が飛び出してきた。
 そう、そもそもモンスターが配信するだけでもおかしいというのに、年越しに双方のダンジョンを配信でつなげてしまおうというものなのだ。
 まさかの提案に、僕は思わず黙り込んでしまうしかなかった。


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 翌日、僕の携帯電話が鳴る。
 画面を確認してみたら、横浜ダンジョンのセイレーンさんみたいだった。
「あら、お電話ですか?」
「うん。セイレーンさんからみたいだよ」
「まあ、セイレーン様ですか?」
 僕が携帯電話を見ていると、ラティナさんがひょっこりと顔を出してきた。
 電話の相手について話すと、ラティナさんは両手を合わせて表情をぱあっと明るくしている。前に電話をしていた時もだったけれど、ラティナさんはセイレーンさんとはとても仲がいい感じだったもんね。
「セイレーン様からですの?」
「なんだ、モンスターが電話を持っているっていうの?」
 僕の声に、アルカナさんとスピアさんまでが反応している。食いつきすぎでしょ、みんな。
 僕の周りがにぎやかになっているんだけど、いつまでも待たせるわけにはいかないので、僕は電話に出る。
『まったく、いつまで待たせますの! あたしからの電話にすぐに出ないとは、万死に値しますわよ』
 電話に出るなり、セイレーンさんから思いっきりお叱りを受けてしまった。相変わらず厳しい人だなぁ。
 でも、異界の公爵家の令嬢だっていうし、このくらい厳しい方が当然なのかな。
「セイレーン様、お久しぶりです。ラティナです」
『あら、ラティナ様。まだそこにいますのね』
「はい。ゴーレムであるわたくしは重いですから、運搬するのも一苦労です。せっかくここまで来たのですから、わたくしはここでしばらくお世話になり続けます」
『そう……。でも、その方が話はしやすいですからそれで構いませんわ』
 ラティナさんが語れば、セイレーンさんはとても納得したようだった。
 これでようやく僕が話ができると思ったんだけど、そこに割り込んできた人物がいた。
「ワオッ! この電話の向こう側にいるのはモンスターなのね。すごいわ、ジャパン。モンスターもフォーンを持つ時代が来たのね!?」
 スピアさんががっつりと僕の手をつかんでいる。
『な、なんですの、この声は!?』
 大声ではしゃぐスピアさんの声に、セイレーンさんがものすごく驚いている。
 さらに僕の手から携帯電話を奪おうとして、ものすごい力を入れている。僕が力で負けるってどういうことなの?!
「アウチッ!」
 そこに、バトラーの拳が入る。
「プリンセスが痛がっているではありませんか。お前はまだ自分の立場が分かっておらぬようですな……」
 うわぁ……。バトラーが激おこだよ。
 バトラーの怒りの鉄拳を食らったスピアさんは、出会った時のフルボッコの件を思い出して、ものすごく涙目になっている。やっぱりあれはトラウマになるよね、死にかけたんだから。
『ちょっと、ウィンク様。今の女の声はなんなのです?』
 電話口からは、セイレーンさんの戸惑う声が聞こえてくる。
 とにかく事態収拾はおいておいて、僕はセイレーンさんと話をする。
「今の人は国外からやってきた探索者の人ですよ。ちょっといろいろあって、今はダンジョンに居候しているんです」
『そうなのですわね。無名だった割りには、いろんな人が集まってきますわね』
「まあ、衣織お姉さんのおかげかなぁ……。あの人、ものすごく強くて有名ですからね」
『なるほどですわ』
 僕がごまかし気味に話していると、セイレーンさんはものすごくすんなり分かってくれたみたいだ。元々聡明なところがあるから、多分僕のいうことを裏まで読んでくれてると思う。
 お互いにダンジョンマスターなので、直接会えないのが残念だよね。
「セイレーン様? アルカナですわ」
『アルカナ様? なぜあなたまでこちらにいらっしゃいますの』
 僕が黙り込んだところに、すかさずアルカナさんが割り込んできた。
 本人が話していた通り、どうやらアルカナさんもセイレーンさんとは面識があるようだ。
「あたくしも、ダンジョンマスターにさせられたのですわよ。いろいろあって、生きたままよそのダンジョンに移ってこられましたわ」
『そんなことができますの?』
 アルカナさんの話を聞いたセイレーンさんが驚いている。
「はい。でも、おそらくセイレーン様では不可能な方法ですわ。あたくしはアンデッドだからできたようなものだと思います」
『なるほど、核を外すことで、一時的に仮死状態になったというわけですわね。確かに、あたしにはできないことですわね』
 すごい、一発で理解している。これが公爵令嬢の頭脳なんだ。
 僕は、セイレーンさんのすごさを改めて見せつけられていた。
 僕が感心しているその間、セイレーンさんはアルカナさんと延々としゃべり続けていた。
「ウィンク様、セイレーン様がお話があるそうですわよ」
「えっ、僕に?」
 ようやくアルカナさんとの話が終わったかと思うと、セイレーンさんは僕に話を戻してきた。
「はい、お電話代わりました」
『ようやく、落ち着いて話ができますわね。危うく本題を忘れてしまうところでしたわ』
 僕が再び電話を受け取ると、セイレーンさんはそんなことを言ってきた。
 そういえば、そもそも僕と話するつもりじゃないと電話してこないよね。僕は今さらながらに思ってしまう。
 とりあえず、どういう理由で電話をしてきたのか、僕は黙ってセイレーンさんの話を聞くことにする。
『なんでも、こちらの世界はそろそろ年が変わるそうではないですの』
「そうですね。もう年末年始ですけれど、それがどうかしたんですか?」
『ちょうどよろしいと思いません? あたしたち二人で、世界初のダンジョンマスターによる年越し配信を行うというのは』
 思わず問い返してみたら、セイレーンさんから思わぬ提案が飛び出してきた。
 そう、そもそもモンスターが配信するだけでもおかしいというのに、年越しに双方のダンジョンを配信でつなげてしまおうというものなのだ。
 まさかの提案に、僕は思わず黙り込んでしまうしかなかった。