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59-①.最初の異物は、汚物として

ー/ー



 王城の庭園に、規律正しく並ぶ白い甲冑を纏う騎士団。バルコニーには、正義と強さの象徴、勇者『蒼き聖剣のソウゴ』……両隣には聖女セリハ、聖盾のティオ、癒し手のフォンゼル。

 天に剣をかざし、ソウゴは宣言する。

「今、世界に危機が訪れている!立ち上がるのは正に今だ!王都を守る騎士団達よ!僕と共に!魔族の魔の手から人々の命を守るためその力を奮って欲しい!!」

 ウオォォォォォオオッ!!!

 騎士たちを鼓舞すると、出現した魔族の圧力に負けることの無い程の、勇ましさと熱気を帯びた雄叫びで大気を揺らしていた。
 隊列を組み、城下町を凱旋しながら王都の外へ……ソウゴを先頭に、迎え撃つ態勢を整え、整列していく。

 これがこの世界の正史なら、なんら問題もない、正当な交戦になるだろう。

「あぁ……絶望が迫ってくるね」
「それを止めるのが私たちの役目、打ち払い、世界を壊させない……ちょっと、早く構えなさいよ」
「聖女様、気が立っているのかもしれませんが……もう少し言葉を慎むべきですよ」
「……ふん」

 王都を囲う壁の上に、いつものようにセリハはティオに冷たく当たる。今回は、フォンゼルもここに配置されていた為、ティオを気にかけ肩に手を添えた。

「……気になさらずフォンゼル様。彼女はあれが素であるのだからね」
「ティオ君……?」

 いつものティオの、陽気な反応は返ってこなかった。代わりに触れたのは、ティオの冷めきった死んだ瞳と声色。

「フォンゼル様は」
「あ、はい?」
「ソウゴを守りたい?それとも、この世界を守りたい?どちらなのか、教えて頂けるだろうか」
「もちろん…………世界です。それは、ソウゴの願いでもありますから」

 フッと、馬鹿にしたようにため息と笑いを混ぜた息を吐くティオ。

「……なんです?」
「あぁ失礼。本心は違う癖に、よく言えたものだと……そう、そうだね……ふふ……そう……」
「なにを……ティオ君?様子がおかしい……どうしたんですか?ティオ君?!」
「僕の事なんかほっといてくれていいんですよフォンゼル様。ほら、もうあんなに近くに……あ〜あ、下ばかり見ているから……」

 有翼の魔物が物凄い速さで頭上を通過していく……それはまるで、ミサイルのようだった。
 王都の町中に向かって無数に振り注ぎ、建物も人も破壊していく。

「あ〜あ……セリハ、なにしているんだい?今ので相当な数の一般市民の命が消えてしまったよ?」
「そんなところでベラベラ喋ってるくせになに偉そうに言ってるわけ?さっさと魔力をよこしなさい!」

 ヒステリックに喚き出すセリハ。
 セリハのそんな姿を見たのも、フォンゼルは初めてだった。セリハの言葉を無視し、ティオは困惑しているフォンゼルに話しかけ続ける。

「王都の守りの特性を理解して、その身をそのまま武器として……なかなか知恵をつけてきたみたいだ。ねえ?フォンゼル様」
「そ、の様ですね……第二波が来る前に対応出来る様にしましょう」
「そうしてください」

 投げやりなティオの発言。まるで協力しようとしていない。そう思えるような言葉を吐いた。

「ティオ君……どうしてそんな事を言うんですか?君らしくない」
「僕らしさ?そんなもの、たかだか半年も一緒にいたか分からないようなあなたに、なにが分かるというんだい?」
「それは……そうかも知れませんが……それでも、今の君は……」
「おや?フォンゼル様?僕にかまっている暇はないのでは?」

 ティオの移した目線の先を追い、ハッとして地上を覗き見る。

 都から聞こえた破壊音に、隊列が乱れ、がむしゃらで無茶苦茶な地上戦が始まっていた。
 ソウゴもそれに巻き込まれ、思うように立ち回りが出来ずにいる様子が目に入った。

「くっ……!一度ここから離れます!!」

 すぐさま飛び降り、最中にエンシェントドラゴンに姿を変えたフォンゼル。

「はは!世界を守りたい?…………馬鹿馬鹿しい。結局あんたも自分の為にしか、咄嗟に動こうとしないじゃあないか」

 最前線を裂きながら飛び、エンシェントドラゴンは、ソウゴを背に乗せた。戦線の乱れを正そうと、騎士団員たちをソウゴに鼓舞させながら戦場を飛び回り続けた。

「……ちょっと!」

 パシッ!と、ティオの頬が音を鳴らす。

「無視するなんて、いい度胸してるわね」
「別に無視なんてしていないさ?君にはもう僕は必要ないだろう?今までひとりで王都の守護を担っていたじゃないか?……あぁ、なにかい?処女では無くなったから神聖さが失われでもしたのかな?」
「っ!」

 反対側の頬も、セリハに打たれるティオ。

「こんなところで、そんなこと言わないでちょうだい!下品よ!!」

 見下すように、蔑みながらセリハを鼻で笑う。

「下品?堕ちた魔族とまぐわったと思えば、今度は勇者に股を開いて……聖女じゃなくて性女だろう君は?僕なんかより、よっぽど下品な女じゃないか」
「あ、あの時の私は!汚されたのよ?!好きでああなったわけじゃないし!それに、この体は生まれ変わったの!ノーカンよ!」
「僕は知ってるよ?自分から舌を絡ませ、その口で咥え込み、体をよじり、腰を動かし、快感に悶え……喜びを感じて楽しんでいただろう?」

 セリハの顔が、みるみる真っ赤になっていく。

「あっはははは!!その反応、しっかり覚えているってことじゃあないか!そうかそうか、なるほど……生まれ変わったのは、処女膜だけだ?」
「黙ってよ!!」

 今度は拳が飛んできた。だが、顔スレスレのところで受け止め、生気のない瞳でセリハを見つめた。

「僕だって、こんなことはしたくはなかったよセリハ」

 ティオの瞳の色が変わるのを、セリハは見た。その色は様々で、瞳の奥に吸い込まれていっていた。

「僕はなんでも『見える』し、『見せる』事もできる……」
「ティ……オ……?」

 羞恥と怒りで、衝動的に動いていたセリハの顔色が変わる。それは、周りの状況が変化したせいでもあった。

 聖女を守る。その任を受け、セリハの周辺を守護していた騎士団達が次々と体を裂かれていき、血を噴き出し、発火して焼失していく。

「あ……え……なんで?」

 ティオに拳を掴まれたまま、体をこわばらせ、震え始めるセリハ。

「新生魔族……面白い生き物のようだね?人の様に、誰かを愛する心を持って、繁殖しているらしいよ?」
「……なにを言って――」
「そうですよね?魔王グリゼルダ……さん」

 空に向かって声を投げるティオ。直後、ふたりのすぐ横に火球が勢いよく落ちてきた。

「おかしな人間……それを知ってどうするつもりだ?」
「おや、話せる方の様で安心しましたよ……早速で申し訳ありませんが、10体ほど僕にお貸しいただけないだろうか?」
「……聖女の位置を『見せた』のはお前か。ふっ……良いだろう、褒美として貸し与えてやる」
「ありがたきお言葉、感謝いたします……さあ、セリハ?」
「きゃあ!!」

 乱暴にセリハを振り投げ、血で濡れた石の床に転がした。すぐに、セリハを囲むように集まり始める魔物達。人のかたちに近い種もいれば、動物に近いもの、ゼリー状の不定形な姿を持つものもいた。

「今ね?彼らが『見ている』セリハの姿は同種のメス……とても『魅せられ』ているんだよ?」

 生臭い、嗅いだことのない臭い息がセリハに迫る。興奮した荒々しい息、液体を先端から滴らせた生殖器をむき出しにして近づき、逃げ場をなくしていく。

「や……めて……なん……ま、魔法!……あれ?なんで?……なんで出ないの?……いやっ!!ひっ!やめて!!いやああああ!!」

 うごめく魔物の塊。その中でなにが行われているのかは、漏れ出す声と粘液と、体液が混ざり合う水音で明らかだ。

「美しくないことをさせてくれたものだ……おい、人間。このまま殺すつもりではなかろうな?」
「そんなことはするつもりはないですよ?彼女はこの行為が大好きなだけ。僕は喜んでもらうためにしているだけなのだからね」

 地上戦にかかりきりになり、都からの民たちの悲鳴にかき消され……ソウゴもフォンゼルも、セリハの状況に一切気づいていなかった。

「僕にはすべて『見えて』いるのでね?命を取るのはあなた……魔王グリゼルダが担うのが相応しい」
「偉そうに……まるでゼンの様な奴だな」
「おお!やはり魔族はゼクスと通じていたのだね?それは素晴らしい!僕にとってそれは褒め言葉だ!」

 ズボッと隙間から、セリハの片脚が突き出した。僅かにもがき不自然に動いていたはずが、内側に締め付ける動きをし始めている。

「そう言うのなら、涙ぐらい隠す努力をしろ、人間」

 最初は嫌がる声も聞こえていた。
 それも徐々に変わって、甘くすがる、求める声へと変わっている。
 目と耳で、セリハを感じたティオ……自分の股間が熱くなるのと同時に、自分の頬を熱が流れ落ちるのを感じた。


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 天に剣をかざし、ソウゴは宣言する。
「今、世界に危機が訪れている!立ち上がるのは正に今だ!王都を守る騎士団達よ!僕と共に!魔族の魔の手から人々の命を守るためその力を奮って欲しい!!」
 ウオォォォォォオオッ!!!
 騎士たちを鼓舞すると、出現した魔族の圧力に負けることの無い程の、勇ましさと熱気を帯びた雄叫びで大気を揺らしていた。
 隊列を組み、城下町を凱旋しながら王都の外へ……ソウゴを先頭に、迎え撃つ態勢を整え、整列していく。
 これがこの世界の正史なら、なんら問題もない、正当な交戦になるだろう。
「あぁ……絶望が迫ってくるね」
「それを止めるのが私たちの役目、打ち払い、世界を壊させない……ちょっと、早く構えなさいよ」
「聖女様、気が立っているのかもしれませんが……もう少し言葉を慎むべきですよ」
「……ふん」
 王都を囲う壁の上に、いつものようにセリハはティオに冷たく当たる。今回は、フォンゼルもここに配置されていた為、ティオを気にかけ肩に手を添えた。
「……気になさらずフォンゼル様。彼女はあれが素であるのだからね」
「ティオ君……?」
 いつものティオの、陽気な反応は返ってこなかった。代わりに触れたのは、ティオの冷めきった死んだ瞳と声色。
「フォンゼル様は」
「あ、はい?」
「ソウゴを守りたい?それとも、この世界を守りたい?どちらなのか、教えて頂けるだろうか」
「もちろん…………世界です。それは、ソウゴの願いでもありますから」
 フッと、馬鹿にしたようにため息と笑いを混ぜた息を吐くティオ。
「……なんです?」
「あぁ失礼。本心は違う癖に、よく言えたものだと……そう、そうだね……ふふ……そう……」
「なにを……ティオ君?様子がおかしい……どうしたんですか?ティオ君?!」
「僕の事なんかほっといてくれていいんですよフォンゼル様。ほら、もうあんなに近くに……あ〜あ、下ばかり見ているから……」
 有翼の魔物が物凄い速さで頭上を通過していく……それはまるで、ミサイルのようだった。
 王都の町中に向かって無数に振り注ぎ、建物も人も破壊していく。
「あ〜あ……セリハ、なにしているんだい?今ので相当な数の一般市民の命が消えてしまったよ?」
「そんなところでベラベラ喋ってるくせになに偉そうに言ってるわけ?さっさと魔力をよこしなさい!」
 ヒステリックに喚き出すセリハ。
 セリハのそんな姿を見たのも、フォンゼルは初めてだった。セリハの言葉を無視し、ティオは困惑しているフォンゼルに話しかけ続ける。
「王都の守りの特性を理解して、その身をそのまま武器として……なかなか知恵をつけてきたみたいだ。ねえ?フォンゼル様」
「そ、の様ですね……第二波が来る前に対応出来る様にしましょう」
「そうしてください」
 投げやりなティオの発言。まるで協力しようとしていない。そう思えるような言葉を吐いた。
「ティオ君……どうしてそんな事を言うんですか?君らしくない」
「僕らしさ?そんなもの、たかだか半年も一緒にいたか分からないようなあなたに、なにが分かるというんだい?」
「それは……そうかも知れませんが……それでも、今の君は……」
「おや?フォンゼル様?僕にかまっている暇はないのでは?」
 ティオの移した目線の先を追い、ハッとして地上を覗き見る。
 都から聞こえた破壊音に、隊列が乱れ、がむしゃらで無茶苦茶な地上戦が始まっていた。
 ソウゴもそれに巻き込まれ、思うように立ち回りが出来ずにいる様子が目に入った。
「くっ……!一度ここから離れます!!」
 すぐさま飛び降り、最中にエンシェントドラゴンに姿を変えたフォンゼル。
「はは!世界を守りたい?…………馬鹿馬鹿しい。結局あんたも自分の為にしか、咄嗟に動こうとしないじゃあないか」
 最前線を裂きながら飛び、エンシェントドラゴンは、ソウゴを背に乗せた。戦線の乱れを正そうと、騎士団員たちをソウゴに鼓舞させながら戦場を飛び回り続けた。
「……ちょっと!」
 パシッ!と、ティオの頬が音を鳴らす。
「無視するなんて、いい度胸してるわね」
「別に無視なんてしていないさ?君にはもう僕は必要ないだろう?今までひとりで王都の守護を担っていたじゃないか?……あぁ、なにかい?処女では無くなったから神聖さが失われでもしたのかな?」
「っ!」
 反対側の頬も、セリハに打たれるティオ。
「こんなところで、そんなこと言わないでちょうだい!下品よ!!」
 見下すように、蔑みながらセリハを鼻で笑う。
「下品?堕ちた魔族とまぐわったと思えば、今度は勇者に股を開いて……聖女じゃなくて性女だろう君は?僕なんかより、よっぽど下品な女じゃないか」
「あ、あの時の私は!汚されたのよ?!好きでああなったわけじゃないし!それに、この体は生まれ変わったの!ノーカンよ!」
「僕は知ってるよ?自分から舌を絡ませ、その口で咥え込み、体をよじり、腰を動かし、快感に悶え……喜びを感じて楽しんでいただろう?」
 セリハの顔が、みるみる真っ赤になっていく。
「あっはははは!!その反応、しっかり覚えているってことじゃあないか!そうかそうか、なるほど……生まれ変わったのは、処女膜だけだ?」
「黙ってよ!!」
 今度は拳が飛んできた。だが、顔スレスレのところで受け止め、生気のない瞳でセリハを見つめた。
「僕だって、こんなことはしたくはなかったよセリハ」
 ティオの瞳の色が変わるのを、セリハは見た。その色は様々で、瞳の奥に吸い込まれていっていた。
「僕はなんでも『見える』し、『見せる』事もできる……」
「ティ……オ……?」
 羞恥と怒りで、衝動的に動いていたセリハの顔色が変わる。それは、周りの状況が変化したせいでもあった。
 聖女を守る。その任を受け、セリハの周辺を守護していた騎士団達が次々と体を裂かれていき、血を噴き出し、発火して焼失していく。
「あ……え……なんで?」
 ティオに拳を掴まれたまま、体をこわばらせ、震え始めるセリハ。
「新生魔族……面白い生き物のようだね?人の様に、誰かを愛する心を持って、繁殖しているらしいよ?」
「……なにを言って――」
「そうですよね?魔王グリゼルダ……さん」
 空に向かって声を投げるティオ。直後、ふたりのすぐ横に火球が勢いよく落ちてきた。
「おかしな人間……それを知ってどうするつもりだ?」
「おや、話せる方の様で安心しましたよ……早速で申し訳ありませんが、10体ほど僕にお貸しいただけないだろうか?」
「……聖女の位置を『見せた』のはお前か。ふっ……良いだろう、褒美として貸し与えてやる」
「ありがたきお言葉、感謝いたします……さあ、セリハ?」
「きゃあ!!」
 乱暴にセリハを振り投げ、血で濡れた石の床に転がした。すぐに、セリハを囲むように集まり始める魔物達。人のかたちに近い種もいれば、動物に近いもの、ゼリー状の不定形な姿を持つものもいた。
「今ね?彼らが『見ている』セリハの姿は同種のメス……とても『魅せられ』ているんだよ?」
 生臭い、嗅いだことのない臭い息がセリハに迫る。興奮した荒々しい息、液体を先端から滴らせた生殖器をむき出しにして近づき、逃げ場をなくしていく。
「や……めて……なん……ま、魔法!……あれ?なんで?……なんで出ないの?……いやっ!!ひっ!やめて!!いやああああ!!」
 うごめく魔物の塊。その中でなにが行われているのかは、漏れ出す声と粘液と、体液が混ざり合う水音で明らかだ。
「美しくないことをさせてくれたものだ……おい、人間。このまま殺すつもりではなかろうな?」
「そんなことはするつもりはないですよ?彼女はこの行為が大好きなだけ。僕は喜んでもらうためにしているだけなのだからね」
 地上戦にかかりきりになり、都からの民たちの悲鳴にかき消され……ソウゴもフォンゼルも、セリハの状況に一切気づいていなかった。
「僕にはすべて『見えて』いるのでね?命を取るのはあなた……魔王グリゼルダが担うのが相応しい」
「偉そうに……まるでゼンの様な奴だな」
「おお!やはり魔族はゼクスと通じていたのだね?それは素晴らしい!僕にとってそれは褒め言葉だ!」
 ズボッと隙間から、セリハの片脚が突き出した。僅かにもがき不自然に動いていたはずが、内側に締め付ける動きをし始めている。
「そう言うのなら、涙ぐらい隠す努力をしろ、人間」
 最初は嫌がる声も聞こえていた。
 それも徐々に変わって、甘くすがる、求める声へと変わっている。
 目と耳で、セリハを感じたティオ……自分の股間が熱くなるのと同時に、自分の頬を熱が流れ落ちるのを感じた。