第38話_冥府八駅会合②
ー/ーきさらぎの視線が――
全員の視線が、束になって燈へとのしかかる。
重い。
息が詰まるような圧。
(……怖い)
足先がわずかに震える。
指先に力が入らない。
言葉が、出てこない。
喉の奥で、何かが詰まっている。
逃げたい。
その一心が、頭の中でぐるぐると回る。
だが――
その中で、ただ一つ。
つきのみやの視線だけが、違っていた。
鋭さも、圧もない。
ただ、静かで暖かくて。
信じている、という色がそこにあった。
燈は、その視線を受け止める。
そして――思い出す。
(お前は、自分の正直な気持ちを伝えればいい)
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
(……私の気持ちを、全部)
ぎゅっと拳を握る。
震えは、まだ止まらない。
それでも――
口を開く。
「私は……ここに来るまで、何者でもありませんでした」
声は、最初わずかに震えていた。
だが、言葉を出した瞬間――
堰を切るように、感情が溢れ出す。
「何もできず、ただ一人で……何もせずに終わる日々……」
視線が揺れる。
過去の記憶が、胸を締めつける。
「けど……」
ぐっと顔を上げる。
「つきちゃんは初めて……こんな私に、居場所を与えてくれた存在なんです」
つきのみやの姿が、視界の端に入る。
その言葉が、確かに届いているのが分かる。
「我儘だってことは、わかっています」
一歩、踏み出す。
声に、強さが宿る。
「けど……つきちゃんと、一緒に居たい……」
胸に手を当てる。
「傍に居てあげたいんです」
息を吸う。
震えながらも、はっきりと言い切る。
「覚悟は、できています」
その瞬間。
室内の空気が、わずかに変わる。
「ふふっ」
あまがたきが、思わず口元を押さえながら笑う。
「あっ、ごめんね!」
柔らかく手を振る。
「すごく、正直な子だなぁって」
その笑顔に、少しだけ空気が緩む。
とこわも、椅子に背を預けながら肩の力を抜く。
そして、にやっと笑う。
「なーんだ、つっきーよりよっぽどまともじゃん!」
「なんだと、とこわ」
つきのみやが、わずかに眉をひそめる。
かたすは、両手を胸の前で組みながら震えている。
「なんと健気で純粋な……!」
目が潤んでいる。
「ま、まぶしすぎて我が闇が……!」
やみが、無言で頭をはたく。
バシンッ。
「姉貴は少し黙ってろ」
「ぐぬぅ……」
かたすが悶絶する。
はいじまも、ぴょこぴょこと近づきながら
「よくわからないけど……」
燈を見上げる。
「お前、あったかそうなのだ!!」
素直な感想だった。
その空気の中で――
ひつかが静かに口を開く。
「きさらぎ様、いかがいたしましょうか?」
全員の視線が、再びきさらぎへ集まる。
きさらぎは、ふっと笑う。
「みんな、随分と甘いわねぇ?」
扇子を、ぱちんと閉じる。
その音が、やけに大きく響く。
「あたしは反対」
空気が、再び冷える。
「この会合における議決は『全会一致』」
ゆっくりと、口角が上がる。
「あら残念」
燈を見下ろす。
「あなた、殺されちゃうわね」
つきのみやが、低く問いかける。
「そんなに、燈が気に入らないのか?」
きさらぎは、ため息をつく。
「はぁ……」
扇子で軽く口元を隠す。
「あたしはね、言葉だけで信用するほど甘くないの」
つきのみやの視線が鋭くなる。
「何が言いたい」
「その覚悟が本物か――」
扇子の先が、燈を指す。
「体で証明なさい」
一拍。
そして。
「そうね……あたしと闘って、勝てば認めてあげてもいいわよ♡」
つきのみやが、机を叩いて立ち上がる。
バンッ!!
「ふざけるな!!」
怒気が、室内を震わせる。
とこわが呆れたように肩をすくめる。
「うーわ、認める気ゼロじゃん……」
きさらぎは、涼しい顔で返す。
「反対理由なんて人それぞれでしょ?」
「やらないなら――処分するだけよ」
その言葉が、重く落ちる。
「きさらぎさん、それはいくらなんでも――」
あまがたきが声を上げかける。
だが、その前に。
「……やります」
小さな声。
だが、室内にはっきりと響いた。
全員の視線が、一斉に燈へ向く。
拳を握りしめ、震えながらも顔を上げている。
「なっ……やめろ燈!」
つきのみやが即座に制止する。
「こいつが一体どんな奴か――」
言葉を遮るように。
燈は首を振る。
当然、恐れはある。
顔にも、はっきりと出ている。
だが――
その奥に、確かな覚悟があった。
「大丈夫……」
息を整える。
「もう、やるしかないから」
その言葉に、室内が静まる。
きさらぎが、くすくすと笑う。
「ほら、本人はやるって言ってるけど?」
つきのみやは――
何も言えなかった。
目の前の少女の覚悟を、否定することができなかった。
全員の視線が、束になって燈へとのしかかる。
重い。
息が詰まるような圧。
(……怖い)
足先がわずかに震える。
指先に力が入らない。
言葉が、出てこない。
喉の奥で、何かが詰まっている。
逃げたい。
その一心が、頭の中でぐるぐると回る。
だが――
その中で、ただ一つ。
つきのみやの視線だけが、違っていた。
鋭さも、圧もない。
ただ、静かで暖かくて。
信じている、という色がそこにあった。
燈は、その視線を受け止める。
そして――思い出す。
(お前は、自分の正直な気持ちを伝えればいい)
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
(……私の気持ちを、全部)
ぎゅっと拳を握る。
震えは、まだ止まらない。
それでも――
口を開く。
「私は……ここに来るまで、何者でもありませんでした」
声は、最初わずかに震えていた。
だが、言葉を出した瞬間――
堰を切るように、感情が溢れ出す。
「何もできず、ただ一人で……何もせずに終わる日々……」
視線が揺れる。
過去の記憶が、胸を締めつける。
「けど……」
ぐっと顔を上げる。
「つきちゃんは初めて……こんな私に、居場所を与えてくれた存在なんです」
つきのみやの姿が、視界の端に入る。
その言葉が、確かに届いているのが分かる。
「我儘だってことは、わかっています」
一歩、踏み出す。
声に、強さが宿る。
「けど……つきちゃんと、一緒に居たい……」
胸に手を当てる。
「傍に居てあげたいんです」
息を吸う。
震えながらも、はっきりと言い切る。
「覚悟は、できています」
その瞬間。
室内の空気が、わずかに変わる。
「ふふっ」
あまがたきが、思わず口元を押さえながら笑う。
「あっ、ごめんね!」
柔らかく手を振る。
「すごく、正直な子だなぁって」
その笑顔に、少しだけ空気が緩む。
とこわも、椅子に背を預けながら肩の力を抜く。
そして、にやっと笑う。
「なーんだ、つっきーよりよっぽどまともじゃん!」
「なんだと、とこわ」
つきのみやが、わずかに眉をひそめる。
かたすは、両手を胸の前で組みながら震えている。
「なんと健気で純粋な……!」
目が潤んでいる。
「ま、まぶしすぎて我が闇が……!」
やみが、無言で頭をはたく。
バシンッ。
「姉貴は少し黙ってろ」
「ぐぬぅ……」
かたすが悶絶する。
はいじまも、ぴょこぴょこと近づきながら
「よくわからないけど……」
燈を見上げる。
「お前、あったかそうなのだ!!」
素直な感想だった。
その空気の中で――
ひつかが静かに口を開く。
「きさらぎ様、いかがいたしましょうか?」
全員の視線が、再びきさらぎへ集まる。
きさらぎは、ふっと笑う。
「みんな、随分と甘いわねぇ?」
扇子を、ぱちんと閉じる。
その音が、やけに大きく響く。
「あたしは反対」
空気が、再び冷える。
「この会合における議決は『全会一致』」
ゆっくりと、口角が上がる。
「あら残念」
燈を見下ろす。
「あなた、殺されちゃうわね」
つきのみやが、低く問いかける。
「そんなに、燈が気に入らないのか?」
きさらぎは、ため息をつく。
「はぁ……」
扇子で軽く口元を隠す。
「あたしはね、言葉だけで信用するほど甘くないの」
つきのみやの視線が鋭くなる。
「何が言いたい」
「その覚悟が本物か――」
扇子の先が、燈を指す。
「体で証明なさい」
一拍。
そして。
「そうね……あたしと闘って、勝てば認めてあげてもいいわよ♡」
つきのみやが、机を叩いて立ち上がる。
バンッ!!
「ふざけるな!!」
怒気が、室内を震わせる。
とこわが呆れたように肩をすくめる。
「うーわ、認める気ゼロじゃん……」
きさらぎは、涼しい顔で返す。
「反対理由なんて人それぞれでしょ?」
「やらないなら――処分するだけよ」
その言葉が、重く落ちる。
「きさらぎさん、それはいくらなんでも――」
あまがたきが声を上げかける。
だが、その前に。
「……やります」
小さな声。
だが、室内にはっきりと響いた。
全員の視線が、一斉に燈へ向く。
拳を握りしめ、震えながらも顔を上げている。
「なっ……やめろ燈!」
つきのみやが即座に制止する。
「こいつが一体どんな奴か――」
言葉を遮るように。
燈は首を振る。
当然、恐れはある。
顔にも、はっきりと出ている。
だが――
その奥に、確かな覚悟があった。
「大丈夫……」
息を整える。
「もう、やるしかないから」
その言葉に、室内が静まる。
きさらぎが、くすくすと笑う。
「ほら、本人はやるって言ってるけど?」
つきのみやは――
何も言えなかった。
目の前の少女の覚悟を、否定することができなかった。
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