ep147 魔剣使いvs狂戦士⑧

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 嵐の後の静けさか。
 太陽の下、大地の上に風の音だけが聞こえる。
 あれは……
 気がつかなかった。俺たちの周りには、いつの間にかカレンとアイ以外にも街の者たちがわらわらと集まっていた。皆、固唾を呑んで見守っていた。
 そんな中、エレサの声が響いた。

「く、クロー!!」

 トレブルとブーストもつづく。

「だ、ダンナぁ!」

 俺もジェイズもまだ二本の足で立っている。
 お互いボロボロだ。もう自傷による回復はできないし、奴の自らの血による強化もほとんど機能していない。
 両者まさに満身創痍。

「クロー。なんでテメーはそこまでして戦う」

 おもむろにジェイズが口をひらいた。

「シヒロを返してもらう。それだけだ」

「そんなにあの娘が大事か? テメーの女ってことだよな?」

「違う。だが、俺はシヒロの同行を受け入れた。危険なことはわかった上でだ。だから、俺には責任がある。最期までシヒロを守らなければならない責任が」

「それって、テメーの女ってことじゃねえのか? てゆーか嫁だろそれ。完全に」

「なんでそうなる」

「……まあいい。オレがとやかく言うこっちゃねえな。ヤボってもんだ。まったく、つくづくおろしれえヤツだなテメーは」

 ジェイズはなかば呆れたように微笑した。
 その時、横目でエレサの悲しそうな顔がチラッと見えた。

「ところでよ」とジェイズ。
「まだ闘れるよなぁ?」

 再び奴の眼がギラついたが、俺の返事はひとつだ。

「お前を倒して、シヒロを取り返す!」

 俺は奴へ突っ込んだ。奴も正面から向かってきた。よもやお互い疾さもなければ力もなく、技も何もなかった。
 俺はただ相手を斬り、ジェイズはただ俺を殴った。効いているのかどうかもわからない。痛いのかどうかもわからない。
 闘いに酔いしれる?
 俺はただ〔狂戦士〕との死闘に、もはや完全にハイになっていた……。
 
「ボス!!」
 
 異変が起こった。アイが突然、闘いの中断を促すような緊急的な声調を発した。
 ジェイズの動きがピタッと止まる。俺もつられて止まった。

「上を見ろ!」

 アイの言葉に俺とジェイズは首を上げる。すると、予想外の光景が目に入った。

「魔物の…大群?」

 どこかで見たような光景……そうだ、これはサンダースで見た光景だ。つまり、アイツの仕業か!?

「この趣味ワリー感じは…」
 ジェイズが不快感をあらわにした。
「あのクソヤローだな」

「キラースか?」

「だけならいいんだがな」

「?」

「クロー。お前とのケンカはいったんお預けだ」

 アイがジェイズのもとへやってきた。

「ボス。これはおそらく」

「ああ、呑み込む気だな。ヘッドフィールドごと」

「クロー! だいじょうぶ!?」

 エレサが駆け寄ってきた。
 それに遅れてトレブルとブーストが、カレンもやってきた。

「キラースめ。何を企んでいる」
 カレンが言う。
「だがその前に……やはりとんでもない男だな、お前は」

「そう…なのか?」

「は? 相手はあのジェイズキングだぞ?」
 半ば呆れ気味のカレン。
「兄様…勇者様ですら一目置いているぐらいなんだぞ? どうしてお前はそんなに自分自身へ無頓着なんだ」

「隊長さんの言うとおりだぜ! マジでバケモンだぜダンナは!」

 トレブルとブーストが興奮気味に重ねてきた。
 正直、俺には今いちピンと来ない。俺はただ…残り少ない人生で、自分ができることをやっているだけだから。

「俺のことはいい。それよりも今大事なのはあの爆破野郎だ」


 俺たちの前に魔物の一頭が降下してきた。つづいて一人の男がパッと飛び降りた。

「よーよーお二人ともご苦労さん!」
 キラースが陽気に歩いてくる。
「いい感じで消耗してくれちゃってなぁ!」

 キラースは俺とジェイズの姿を確認すると、ニヤッと笑った。


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 嵐の後の静けさか。
 太陽の下、大地の上に風の音だけが聞こえる。
 あれは……
 気がつかなかった。俺たちの周りには、いつの間にかカレンとアイ以外にも街の者たちがわらわらと集まっていた。皆、固唾を呑んで見守っていた。
 そんな中、エレサの声が響いた。
「く、クロー!!」
 トレブルとブーストもつづく。
「だ、ダンナぁ!」
 俺もジェイズもまだ二本の足で立っている。
 お互いボロボロだ。もう自傷による回復はできないし、奴の自らの血による強化もほとんど機能していない。
 両者まさに満身創痍。
「クロー。なんでテメーはそこまでして戦う」
 おもむろにジェイズが口をひらいた。
「シヒロを返してもらう。それだけだ」
「そんなにあの娘が大事か? テメーの女ってことだよな?」
「違う。だが、俺はシヒロの同行を受け入れた。危険なことはわかった上でだ。だから、俺には責任がある。最期までシヒロを守らなければならない責任が」
「それって、テメーの女ってことじゃねえのか? てゆーか嫁だろそれ。完全に」
「なんでそうなる」
「……まあいい。オレがとやかく言うこっちゃねえな。ヤボってもんだ。まったく、つくづくおろしれえヤツだなテメーは」
 ジェイズはなかば呆れたように微笑した。
 その時、横目でエレサの悲しそうな顔がチラッと見えた。
「ところでよ」とジェイズ。
「まだ闘れるよなぁ?」
 再び奴の眼がギラついたが、俺の返事はひとつだ。
「お前を倒して、シヒロを取り返す!」
 俺は奴へ突っ込んだ。奴も正面から向かってきた。よもやお互い疾さもなければ力もなく、技も何もなかった。
 俺はただ相手を斬り、ジェイズはただ俺を殴った。効いているのかどうかもわからない。痛いのかどうかもわからない。
 闘いに酔いしれる?
 俺はただ〔狂戦士〕との死闘に、もはや完全にハイになっていた……。
「ボス!!」
 異変が起こった。アイが突然、闘いの中断を促すような緊急的な声調を発した。
 ジェイズの動きがピタッと止まる。俺もつられて止まった。
「上を見ろ!」
 アイの言葉に俺とジェイズは首を上げる。すると、予想外の光景が目に入った。
「魔物の…大群?」
 どこかで見たような光景……そうだ、これはサンダースで見た光景だ。つまり、アイツの仕業か!?
「この趣味ワリー感じは…」
 ジェイズが不快感をあらわにした。
「あのクソヤローだな」
「キラースか?」
「だけならいいんだがな」
「?」
「クロー。お前とのケンカはいったんお預けだ」
 アイがジェイズのもとへやってきた。
「ボス。これはおそらく」
「ああ、呑み込む気だな。ヘッドフィールドごと」
「クロー! だいじょうぶ!?」
 エレサが駆け寄ってきた。
 それに遅れてトレブルとブーストが、カレンもやってきた。
「キラースめ。何を企んでいる」
 カレンが言う。
「だがその前に……やはりとんでもない男だな、お前は」
「そう…なのか?」
「は? 相手はあのジェイズキングだぞ?」
 半ば呆れ気味のカレン。
「兄様…勇者様ですら一目置いているぐらいなんだぞ? どうしてお前はそんなに自分自身へ無頓着なんだ」
「隊長さんの言うとおりだぜ! マジでバケモンだぜダンナは!」
 トレブルとブーストが興奮気味に重ねてきた。
 正直、俺には今いちピンと来ない。俺はただ…残り少ない人生で、自分ができることをやっているだけだから。
「俺のことはいい。それよりも今大事なのはあの爆破野郎だ」
 俺たちの前に魔物の一頭が降下してきた。つづいて一人の男がパッと飛び降りた。
「よーよーお二人ともご苦労さん!」
 キラースが陽気に歩いてくる。
「いい感じで消耗してくれちゃってなぁ!」
 キラースは俺とジェイズの姿を確認すると、ニヤッと笑った。