第38話【反逆編】アレスの屈辱が世界を救う!?秘密兵器『プロキオン』
ー/ー第38話【反逆編】アレスの屈辱が世界を救う!?秘密兵器『プロキオン』
――ゴォォォォォォン!!
〝ジャンクヤード・ヘルメス〟の朝は、鶏の鳴き声ではなく、ボイラーが蒸気を吐き出す荒々しい轟音で始まる。
かつての〝世界を救う勇者〟と〝世界を滅ぼす闇の勇者〟が、ススにまみれ、少女たちと肩を並べて〝内職〟に励んでいた。
「……ふふ。アレス様、顔が真っ赤ですよ」
アレスはもはや闇の勇者の面影もなく、必死にハンドルを回し続けていた。
「笑わないでください、セレネさん」
その横では、セレネと少女たちが、スクラップから回収した銅線を丁寧にコイル状に巻き直している。
「……でも、不思議ですね。こうして指先を動かして、みんなで一つのものを作っていると、自分が〝データ〟の一部じゃなくて、ちゃんとここにいる実感が湧いてくる……」
その時、少女の一人、かつて魔王城の地下で震えていたミモザが、おずおずとテラに近づいてきた。
「あの……テラお姉ちゃん。これ、使って」
差し出されたのは、色とりどりの端切れを編み込んで作った〝剣のグリップ〟だった。
「魔法は使えないけど……これがあれば、手が滑らないかなって。みんなで、お姉ちゃんの剣が少しでも使いやすくなるように作ったの」
テラはその無骨な、だが温かい手作りの装飾を受け取った。
魔法で生成された伝説の装備に比べれば、ただのゴミ同然の布切れだ。
だが、テラはそれを、錆びついたガイアセイバーの柄に、不器用な手つきで硬く、硬く巻き付けた。
「……最高だ。どこの勇者が持ってる伝説の剣よりも、強そうじゃねえか」
テラがそう言って笑うと、少女たちはパッと顔を輝かせた。
〝綺麗なウソ〟で塗り固められた政府の保護施設では、決して見ることのできなかった本当の笑顔だった。
※※※
「……いい?これからボクが君たちの体にかけるのは、魔法じゃない。ただの〝過負荷(オーバーロード)〟だ」
魔法のシステムから切り離されたテラとアレスにとって、この数日間は無力な肉体を再認識するための地獄のような日々だった。
魔法の補正が消えたテラの腕では聖剣を振ることもできず、アレスの指先からは闇の雷など一切出てこない。
「……これは?」
「覚えてる?だいぶ前、ボクが君に〝疲れをとる〟だとか言ってサポートウェアを付けたこと」
メルクリアが作業台に並べたのは、鈍い光を放つ機械のパーツ。外骨格物理ブースター〝プロキオン〟だった。
「……あのアレス君の絶望的なまでの不運と、それに耐えうる異常な頑丈さのデータ。あれがあったからこそ、この〝プロキオン〟は完成したんだ」
アレスは驚きに目を見開いた。
自分がかつて味わった屈辱や実験台の日々が、今、自分たちを救う鍵になったのだ。
「君の苦労は無駄じゃなかったってことさ!」
その動力ユニットがテラの右腕から肩にかけてボルトで固定される。
テラの筋肉の動きを読み取り、高圧蒸気ピストンを爆発的に作動させることで、人間の限界を超えた剛力を引き出す仕組みだ。
「……重てぇ。だが、最高だ。世界の綺麗なウソをぶち壊すには、これくらいの負荷が必要だ」
以前のような全知全能感はない。
ただ、少女たちが一針一針縫って作ってくれたグリップのザラついた感触と、ずっしりとした鉄の冷たさが、彼女の右腕に生きている実感を伝えてくる。
アレスの両脚には、踏み込みの速度を物理的に倍増させる〝プロキオン〟の脚部フレームが装着された。
そしてアレスが自らの肉体でハンドルを回し、血の滲む思いで蓄電した電力は、魔剣の刀身へ送られている。
「自分の力で回した電気が、剣に伝わってくる。魔王様に与えられた力じゃない……これは、僕自身の力だ!」
抜刀の瞬間に摩擦によって一気にスパークさせることで、闇の魔力ではなく、純粋な高電圧が敵の魔導回路を物理的に焼き切る仕組みだ。
「……少女たちの乗船、完了しました。ヘルメス号、いつでも出せます」
工房の奥で待ち受けるのは、脱出ポッドに重厚な鉄板を継ぎ接ぎして作り上げた、メルクリア特製の黒鉄装甲車〝ヘルメス号〟。
四輪のゴムタイヤが大地を掴み、ピストンが物理的にクランクを回す、泥臭い馬力の塊だ。
「メルクリア、出すぞ!……世界をぶん殴りに行くんだ!」
「了解!全シリンダー、圧力上昇!行け、ヘルメス号ッ!」
――ゴォォォォォンッ!!
工房の裏口が跳ね上がり、凄まじい爆音と共に黒鉄の巨体が飛び出した。
魔法の光ではない。
石炭を燃やし、真っ黒な煙を吐き出しながら、ヘルメス号は重力に抗うように大地を爆走し始めた。
――ゴォォォォォォン!!
〝ジャンクヤード・ヘルメス〟の朝は、鶏の鳴き声ではなく、ボイラーが蒸気を吐き出す荒々しい轟音で始まる。
かつての〝世界を救う勇者〟と〝世界を滅ぼす闇の勇者〟が、ススにまみれ、少女たちと肩を並べて〝内職〟に励んでいた。
「……ふふ。アレス様、顔が真っ赤ですよ」
アレスはもはや闇の勇者の面影もなく、必死にハンドルを回し続けていた。
「笑わないでください、セレネさん」
その横では、セレネと少女たちが、スクラップから回収した銅線を丁寧にコイル状に巻き直している。
「……でも、不思議ですね。こうして指先を動かして、みんなで一つのものを作っていると、自分が〝データ〟の一部じゃなくて、ちゃんとここにいる実感が湧いてくる……」
その時、少女の一人、かつて魔王城の地下で震えていたミモザが、おずおずとテラに近づいてきた。
「あの……テラお姉ちゃん。これ、使って」
差し出されたのは、色とりどりの端切れを編み込んで作った〝剣のグリップ〟だった。
「魔法は使えないけど……これがあれば、手が滑らないかなって。みんなで、お姉ちゃんの剣が少しでも使いやすくなるように作ったの」
テラはその無骨な、だが温かい手作りの装飾を受け取った。
魔法で生成された伝説の装備に比べれば、ただのゴミ同然の布切れだ。
だが、テラはそれを、錆びついたガイアセイバーの柄に、不器用な手つきで硬く、硬く巻き付けた。
「……最高だ。どこの勇者が持ってる伝説の剣よりも、強そうじゃねえか」
テラがそう言って笑うと、少女たちはパッと顔を輝かせた。
〝綺麗なウソ〟で塗り固められた政府の保護施設では、決して見ることのできなかった本当の笑顔だった。
※※※
「……いい?これからボクが君たちの体にかけるのは、魔法じゃない。ただの〝過負荷(オーバーロード)〟だ」
魔法のシステムから切り離されたテラとアレスにとって、この数日間は無力な肉体を再認識するための地獄のような日々だった。
魔法の補正が消えたテラの腕では聖剣を振ることもできず、アレスの指先からは闇の雷など一切出てこない。
「……これは?」
「覚えてる?だいぶ前、ボクが君に〝疲れをとる〟だとか言ってサポートウェアを付けたこと」
メルクリアが作業台に並べたのは、鈍い光を放つ機械のパーツ。外骨格物理ブースター〝プロキオン〟だった。
「……あのアレス君の絶望的なまでの不運と、それに耐えうる異常な頑丈さのデータ。あれがあったからこそ、この〝プロキオン〟は完成したんだ」
アレスは驚きに目を見開いた。
自分がかつて味わった屈辱や実験台の日々が、今、自分たちを救う鍵になったのだ。
「君の苦労は無駄じゃなかったってことさ!」
その動力ユニットがテラの右腕から肩にかけてボルトで固定される。
テラの筋肉の動きを読み取り、高圧蒸気ピストンを爆発的に作動させることで、人間の限界を超えた剛力を引き出す仕組みだ。
「……重てぇ。だが、最高だ。世界の綺麗なウソをぶち壊すには、これくらいの負荷が必要だ」
以前のような全知全能感はない。
ただ、少女たちが一針一針縫って作ってくれたグリップのザラついた感触と、ずっしりとした鉄の冷たさが、彼女の右腕に生きている実感を伝えてくる。
アレスの両脚には、踏み込みの速度を物理的に倍増させる〝プロキオン〟の脚部フレームが装着された。
そしてアレスが自らの肉体でハンドルを回し、血の滲む思いで蓄電した電力は、魔剣の刀身へ送られている。
「自分の力で回した電気が、剣に伝わってくる。魔王様に与えられた力じゃない……これは、僕自身の力だ!」
抜刀の瞬間に摩擦によって一気にスパークさせることで、闇の魔力ではなく、純粋な高電圧が敵の魔導回路を物理的に焼き切る仕組みだ。
「……少女たちの乗船、完了しました。ヘルメス号、いつでも出せます」
工房の奥で待ち受けるのは、脱出ポッドに重厚な鉄板を継ぎ接ぎして作り上げた、メルクリア特製の黒鉄装甲車〝ヘルメス号〟。
四輪のゴムタイヤが大地を掴み、ピストンが物理的にクランクを回す、泥臭い馬力の塊だ。
「メルクリア、出すぞ!……世界をぶん殴りに行くんだ!」
「了解!全シリンダー、圧力上昇!行け、ヘルメス号ッ!」
――ゴォォォォォンッ!!
工房の裏口が跳ね上がり、凄まじい爆音と共に黒鉄の巨体が飛び出した。
魔法の光ではない。
石炭を燃やし、真っ黒な煙を吐き出しながら、ヘルメス号は重力に抗うように大地を爆走し始めた。
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