SCENE167 遅れてきたパーティー
ー/ー 衣織お姉さんとバトラーの模擬船が終わってくつろいでいると、ダンジョン管理局の谷地さんと日下さんがやってきた。
「あれっ、お二人が来られるなんて、今日は何かありましたっけ」
やってきた二人に、僕はつい首を傾げてしまう。
その僕の姿を見た衣織お姉さんは、なんともいえない感じの驚いた表情を見せている。本気で言ってるのかというような表情だ。
「衣織お姉さん、どうしてそんな顔をすんですか」
僕は腰に手を当てながら、ちょっと厳しい口調で聞いてしまう。
衣織お姉さんはあちこちに視線を向けながら、最終的に僕の方をじっと見てきた。
「瞬、携帯電話をよく見てみろ。日付、何日だ?」
「えっ?」
僕は慌てて携帯電話を取り出して日付を確認してみる。見た瞬間に、言っていた意味がよく分かった。
「ちょっと、過ぎちゃってないかな?」
「まぁ遅れてもいいだろう。もう数日もすれば年も明けるし、次はいつ来れるか分かったもんじゃない。いろいろあったせいで、私もすっかり忘れていたくらいだからな」
確かに、最近もいろいろありすぎたもんね。
それにしても、僕の方もすっかり忘れていたのはびっくりだよ。モンスターになっちゃったからなのかな。なんともいえない気分だよ。
「そんなわけで、衣織さんからの依頼もあって、急きょ用意したんですよ、これ」
「このくらいは経費で落とせるから、あんまり気にしないでくれよ」
「そういうこと言わないで下さい、谷地さん」
ダンジョン管理局の二人が何かを言い合っている。僕はおかしくてちょっと笑うと、バトラーに頼んで紅茶を淹れてもらうことにした。もちろん、バトラーは快諾していたよ。
ちょっと人数がいるので、僕とラティナさんとアルカナさんでテーブルと椅子を用意する。
ちなみにだけど、今僕のダンジョンにいる人数は八人だ。だから、切り分けるのはとても楽に済みそうだね。
うん、何の話かって?
ここまで話していてわからないんだったら困ったものだと思うよ。
これから僕たちが行うのは、ちょっと遅れたクリスマスパーティーだ。こういうことは、僕がダンジョンマスターになってから、実に初めてのことだよ。
「まあ、何が始まりますの?」
「なんでしょうかね。わたくしたちには、よく分かりません」
ラティナさんとアルカナさんはよく分からないみたいだ。異界の出身者の二人には、確かにまったく理解不能なことだよね。
「昔の偉人の誕生日なんだよ。今ではこうやって、お祭りになっちゃってるんだけどね」
「まあ、そうなのですね」
「こちらの世界にもそういう日がありますのね。あたくしのリッチモンド侯爵家にも、そのような日があることは覚えておりますわ。ただ、こちらの世界じゃいつになるのか分かりませんし、ダンジョンの中では日付感覚がなくなりますから、すっかり祝うことを忘れておりましたけれど」
ラティナさんにはないみたいだけど、アルカナさんにもそういう日はあるらしい。世界は違っても、そういう概念はあるんだなと、僕はびっくりしたよ。
そうやって話をしている間に、バトラーは紅茶を淹れ終わり、日下さんはケーキを切り分け終わっていた。
「谷地さん、そっちの箱は?」
「ああ、こっちはあれですよ」
「あれ?」
谷地さんがごまかすように言うものだから、僕は何かなと首をこてんとさせてしまう。
「もったいぶるなよ。中身はチキンだよ」
「ああ、言わないで下さいよ。せっかく、行列に並んで仕入れてきたフライドチキンなのに」
衣織お姉さんにばらされて、谷地さんはなぜか悔しそうに発言している。そんなに隠す理由って何だろうな。
「並んできたって……。五分も並ばなかっただろうが。クリスマスも終わって、今は通常営業なんだからな」
「全部ばらさないで下さいって言っているのに!」
「あははは……」
目の前で繰り広げられる漫才みたいなやり取りに、僕たちはそろって失笑してしまう。本当におかしすぎるんだもん。
そんなこんなで整ったささやかなパーティーの場。
ここではモンスターも探索者も関係なしに、ただ楽しく笑って過ごしていた。
さすがに、さっきまであの戦いを配信していたので、この身内だけのパーティーは配信しなかったよ。したらしたで、衣織お姉さんが怒ってるだろうからね。
「そういえば、衣織お姉さん」
「なんだい、瞬」
ケーキを頬張りながら、僕は不意に思い出したことを衣織お姉さんに聞いてみる。
「スピアさんと普通に話していたけれど、どうやったの?」
「ああ、それならこれだ」
衣織お姉さんが取り出したのは、ダンジョン管理局が貸し出してくれる翻訳機だった。シールには『貸出』って書いてあるから、一発で分かったよ。もしかして、借りっぱなしなのかな。
だから、衣織お姉さんとスピアさんは、スムーズに会話をしてたのか。スピアさんは自前で翻訳機を持っているみたいだしね。
「ねえ、シュン」
「なんですか、スピアさん」
「あとで、このダンジョンのラビリンスで遊んでみてもいい? なんか手に入るんでしょ?」
「いいですよ。このダンジョンは楽しめて成長できるダンジョンを目指していますからね。心ゆくまで遊んでください」
「やったね」
僕がスピアさんの頼みを了承すると、楽しそうに指をパチンと鳴らしていた。こういうノリが外国人って感じだよね。
でも、衣織お姉さんが睨んでくるから、あんまり僕と手を握ろうとしないでもらいたいな。多分、抱きついたら一瞬ではがしてくるよ。
パーティー自体は楽しめたんだけど、途中からの衣織お姉さんの視線には、ハラハラドキドキだったね。
ちなみにだけど、スピアさんはこのあと迷路に挑戦して、護石一個と服を二着ゲットしていたよ。すごいね。
「あれっ、お二人が来られるなんて、今日は何かありましたっけ」
やってきた二人に、僕はつい首を傾げてしまう。
その僕の姿を見た衣織お姉さんは、なんともいえない感じの驚いた表情を見せている。本気で言ってるのかというような表情だ。
「衣織お姉さん、どうしてそんな顔をすんですか」
僕は腰に手を当てながら、ちょっと厳しい口調で聞いてしまう。
衣織お姉さんはあちこちに視線を向けながら、最終的に僕の方をじっと見てきた。
「瞬、携帯電話をよく見てみろ。日付、何日だ?」
「えっ?」
僕は慌てて携帯電話を取り出して日付を確認してみる。見た瞬間に、言っていた意味がよく分かった。
「ちょっと、過ぎちゃってないかな?」
「まぁ遅れてもいいだろう。もう数日もすれば年も明けるし、次はいつ来れるか分かったもんじゃない。いろいろあったせいで、私もすっかり忘れていたくらいだからな」
確かに、最近もいろいろありすぎたもんね。
それにしても、僕の方もすっかり忘れていたのはびっくりだよ。モンスターになっちゃったからなのかな。なんともいえない気分だよ。
「そんなわけで、衣織さんからの依頼もあって、急きょ用意したんですよ、これ」
「このくらいは経費で落とせるから、あんまり気にしないでくれよ」
「そういうこと言わないで下さい、谷地さん」
ダンジョン管理局の二人が何かを言い合っている。僕はおかしくてちょっと笑うと、バトラーに頼んで紅茶を淹れてもらうことにした。もちろん、バトラーは快諾していたよ。
ちょっと人数がいるので、僕とラティナさんとアルカナさんでテーブルと椅子を用意する。
ちなみにだけど、今僕のダンジョンにいる人数は八人だ。だから、切り分けるのはとても楽に済みそうだね。
うん、何の話かって?
ここまで話していてわからないんだったら困ったものだと思うよ。
これから僕たちが行うのは、ちょっと遅れたクリスマスパーティーだ。こういうことは、僕がダンジョンマスターになってから、実に初めてのことだよ。
「まあ、何が始まりますの?」
「なんでしょうかね。わたくしたちには、よく分かりません」
ラティナさんとアルカナさんはよく分からないみたいだ。異界の出身者の二人には、確かにまったく理解不能なことだよね。
「昔の偉人の誕生日なんだよ。今ではこうやって、お祭りになっちゃってるんだけどね」
「まあ、そうなのですね」
「こちらの世界にもそういう日がありますのね。あたくしのリッチモンド侯爵家にも、そのような日があることは覚えておりますわ。ただ、こちらの世界じゃいつになるのか分かりませんし、ダンジョンの中では日付感覚がなくなりますから、すっかり祝うことを忘れておりましたけれど」
ラティナさんにはないみたいだけど、アルカナさんにもそういう日はあるらしい。世界は違っても、そういう概念はあるんだなと、僕はびっくりしたよ。
そうやって話をしている間に、バトラーは紅茶を淹れ終わり、日下さんはケーキを切り分け終わっていた。
「谷地さん、そっちの箱は?」
「ああ、こっちはあれですよ」
「あれ?」
谷地さんがごまかすように言うものだから、僕は何かなと首をこてんとさせてしまう。
「もったいぶるなよ。中身はチキンだよ」
「ああ、言わないで下さいよ。せっかく、行列に並んで仕入れてきたフライドチキンなのに」
衣織お姉さんにばらされて、谷地さんはなぜか悔しそうに発言している。そんなに隠す理由って何だろうな。
「並んできたって……。五分も並ばなかっただろうが。クリスマスも終わって、今は通常営業なんだからな」
「全部ばらさないで下さいって言っているのに!」
「あははは……」
目の前で繰り広げられる漫才みたいなやり取りに、僕たちはそろって失笑してしまう。本当におかしすぎるんだもん。
そんなこんなで整ったささやかなパーティーの場。
ここではモンスターも探索者も関係なしに、ただ楽しく笑って過ごしていた。
さすがに、さっきまであの戦いを配信していたので、この身内だけのパーティーは配信しなかったよ。したらしたで、衣織お姉さんが怒ってるだろうからね。
「そういえば、衣織お姉さん」
「なんだい、瞬」
ケーキを頬張りながら、僕は不意に思い出したことを衣織お姉さんに聞いてみる。
「スピアさんと普通に話していたけれど、どうやったの?」
「ああ、それならこれだ」
衣織お姉さんが取り出したのは、ダンジョン管理局が貸し出してくれる翻訳機だった。シールには『貸出』って書いてあるから、一発で分かったよ。もしかして、借りっぱなしなのかな。
だから、衣織お姉さんとスピアさんは、スムーズに会話をしてたのか。スピアさんは自前で翻訳機を持っているみたいだしね。
「ねえ、シュン」
「なんですか、スピアさん」
「あとで、このダンジョンのラビリンスで遊んでみてもいい? なんか手に入るんでしょ?」
「いいですよ。このダンジョンは楽しめて成長できるダンジョンを目指していますからね。心ゆくまで遊んでください」
「やったね」
僕がスピアさんの頼みを了承すると、楽しそうに指をパチンと鳴らしていた。こういうノリが外国人って感じだよね。
でも、衣織お姉さんが睨んでくるから、あんまり僕と手を握ろうとしないでもらいたいな。多分、抱きついたら一瞬ではがしてくるよ。
パーティー自体は楽しめたんだけど、途中からの衣織お姉さんの視線には、ハラハラドキドキだったね。
ちなみにだけど、スピアさんはこのあと迷路に挑戦して、護石一個と服を二着ゲットしていたよ。すごいね。
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