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SCENE166 新しい武器を携えて

ー/ー



 僕のダンジョンにギルド『リベリオン』にいたスピアさんがやって来てから一週間くらいが経った。
 あれからというもの、僕のダンジョンに作った迷路などへの挑戦者が来るようになっていた。ちょっと分かりにくい場所にあるとはいえ、人が来るようになったのは嬉しい限りだ。

「よう、瞬。久しぶりにきたぞ」

「あっ、衣織お姉さん」

「こ、こんにちは……」

 衣織お姉さんが久しぶりにやってきた。後ろにはスピアさんも一緒にいる。なんだか、最初に見た時と随分感じが違うな。どうしたんだろ。
 僕がスピアさんをじっと見ていると、衣織お姉さんはにっこりと笑っている。

「ああ、スピアのことは気にすんな。ちょっとばかり百鬼夜行で面倒を見てやったら、つつましやかになってしまってな。なあに、ちょっとばかりお説教してやっただけだ」

 衣織お姉さんは笑っていたけれど、なんだか聞くのが怖くなってくるな。なんだろう、本当にやめておいた方がよさそうだ。

「本当に、この間は申し訳ありませんでした」

 僕が困惑しているところに、スピアさんが頭を下げて謝ってきた。多分、出会った時にボウガンで攻撃したことを謝っているのだろう。

「僕は気にしてないからいいですよ。これからは仲良くしましょう」

「はい。許してくれて、本当にありがとう……」

 僕が微笑みながら話し掛けると、スピアさんは泣き始めてしまった。ああもう、どうしたらいいんだろう、これ……。

「ウィンク様は人気者ですね」

「しかも、なんだか無自覚のようですわ。これがラミア族の力ですか」

「ええ、これがプリンセスの魅力なのです」

 僕の後ろでは、バトラーたちが何かしみじみに言っている。だけど、僕は反応できないまましばらく困惑し続けていた。

「そ、そうだ。衣織お姉さん」

「なんだ、瞬」

 困った僕は、話題を思い切って切り替えることにした。
 衣織お姉さんに話しかけると、ものすごく真顔なままで反応している。うわっ、失敗しちゃったかな。
 ええい、構うものか。とにかく話題を変えなくちゃ。

「衣織お姉さんたちは、今日はなんできたの」

「ああ、そうだったな。これをお披露目に来たんだよ。ほら、スピアも出すんだ」

「わ、分かりました」

 衣織お姉さんが声をかけると、スピアさんと一緒に何かを取り出した。
 二人が取り出したのは、なんとも真新しい武器だった。衣織お姉さんは槍、スピアさんはボウガンだった。そういえば、二人とも武器を失ってたんだっけか。

「どうだ。ラティナの親父さんに新しく作ってもらった武器だ。以前に使っていた槍をベースに、新しく作ってもらったんだ。伯爵がいうには、前の槍は完全に死んでいたそうだからね」

「まあ、お父様の作品ですのね。確かに、ロックウェル家の魔力を感じます」

 取り出された二人の武器を見て、ラティナさんが手を合わせながら目をキラキラとさせていた。自分のお父さんの作った武器を目にしたからなんだろうな。
 それにしても、ラティナさんのお父さんって武器を作れたんだ。すごいなぁ……。

「それと、瞬。これも渡しておくよ」

 武器を見せてきたかと思うと、今度は紙袋を渡してきた。

「わっ、瞳ってばまた服を作ってきたんだ。本当にどんなペースで作ってるんだよ……」

 大量に入っていた服を見て、僕はびっくりしてしまう。いくらなんでも、早すぎると思う。自分の妹なんだけど、その才能が怖くなってくる。

「ここに来る前に会ったあの女の子、このラミアの妹なのね。元人間って本当だったんだ……」

「やっと信じてくれたか。何度も言っているのにな」

「この目で見たものしか信じないわ」

 目の前で、衣織お姉さんとスピアさんが言い争っている。

「まあまあ、話はそのくらいにしておきましょう。衣織お姉さん、配信しても大丈夫かな」

「ああ、構わないが、何を配信するつもりなんだ?」

 僕が間に割って入ると、衣織お姉さんはきょとんとした顔を僕に向けてくる。

「うん。二人の新しい武器の実演を配信しようと思うんだ。ラティナさんのお父さんの紹介もできるし、そうなれば、廃鉱山ダンジョンの重要性が上がるでしょ」

「ふむ。それはいい考えだな。てことは、あのデコイをぶっ潰せばいいんだな」

「手加減はしてよね。復活するとはいっても、時間がかかるんだから」

「保証はできないな」

 衣織お姉さんは、槍を持つ手に力を込めながら、はっきり言ってくれた。これは本気でやるつもりだよ。
 スピアさんはなんだか困ったような反応をしている。なので、僕がボス部屋の端の方にある白い人形のことを説明してあげた。うん、ものすごく驚いていたね。

「ダンジョンにはこういう利点もあるのね。なるほど、ダンジョンを無差別に潰すのは確かに良くないことだわ」

 僕のダンジョンにあるデコイを見ながら、ダンジョンの有用性を理解してくれたみたいだ。
 僕が配信を始めて、最初の挨拶をした後は、ひたすら衣織お姉さんとスピアさんの新しい武器の威力を見せつけることになった。
 ああ、僕のダンジョンのデコイが一瞬でガラクタになっていく。

「うん、物足りん。バトラー、少し手合わせをしてくれ」

「やれやれ、仕方ありませんな。ロックウェル伯爵様お手製の武器、我がしかと確かめてみせましょう」

 衣織お姉さんはデコイをボロボロにしただけでは足りなかったようで、バトラーに戦いを挑んでいた。
 結果としてはバトラーが勝ったわけだけど、衣織お姉さんは実に満足そうに笑っていた。
 あまりにレベルの高い戦いを見せつけられたスピアさんは、しばらくその場で呆然と立ち尽くしていたみたい。そうなっちゃうよね。僕もそうだったもん。
 新しい武器を試すだけだったはずなのになぁ。衣織お姉さんの血の気の多さには、本当に困ったものだよ。


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 僕のダンジョンにギルド『リベリオン』にいたスピアさんがやって来てから一週間くらいが経った。
 あれからというもの、僕のダンジョンに作った迷路などへの挑戦者が来るようになっていた。ちょっと分かりにくい場所にあるとはいえ、人が来るようになったのは嬉しい限りだ。
「よう、瞬。久しぶりにきたぞ」
「あっ、衣織お姉さん」
「こ、こんにちは……」
 衣織お姉さんが久しぶりにやってきた。後ろにはスピアさんも一緒にいる。なんだか、最初に見た時と随分感じが違うな。どうしたんだろ。
 僕がスピアさんをじっと見ていると、衣織お姉さんはにっこりと笑っている。
「ああ、スピアのことは気にすんな。ちょっとばかり百鬼夜行で面倒を見てやったら、つつましやかになってしまってな。なあに、ちょっとばかりお説教してやっただけだ」
 衣織お姉さんは笑っていたけれど、なんだか聞くのが怖くなってくるな。なんだろう、本当にやめておいた方がよさそうだ。
「本当に、この間は申し訳ありませんでした」
 僕が困惑しているところに、スピアさんが頭を下げて謝ってきた。多分、出会った時にボウガンで攻撃したことを謝っているのだろう。
「僕は気にしてないからいいですよ。これからは仲良くしましょう」
「はい。許してくれて、本当にありがとう……」
 僕が微笑みながら話し掛けると、スピアさんは泣き始めてしまった。ああもう、どうしたらいいんだろう、これ……。
「ウィンク様は人気者ですね」
「しかも、なんだか無自覚のようですわ。これがラミア族の力ですか」
「ええ、これがプリンセスの魅力なのです」
 僕の後ろでは、バトラーたちが何かしみじみに言っている。だけど、僕は反応できないまましばらく困惑し続けていた。
「そ、そうだ。衣織お姉さん」
「なんだ、瞬」
 困った僕は、話題を思い切って切り替えることにした。
 衣織お姉さんに話しかけると、ものすごく真顔なままで反応している。うわっ、失敗しちゃったかな。
 ええい、構うものか。とにかく話題を変えなくちゃ。
「衣織お姉さんたちは、今日はなんできたの」
「ああ、そうだったな。これをお披露目に来たんだよ。ほら、スピアも出すんだ」
「わ、分かりました」
 衣織お姉さんが声をかけると、スピアさんと一緒に何かを取り出した。
 二人が取り出したのは、なんとも真新しい武器だった。衣織お姉さんは槍、スピアさんはボウガンだった。そういえば、二人とも武器を失ってたんだっけか。
「どうだ。ラティナの親父さんに新しく作ってもらった武器だ。以前に使っていた槍をベースに、新しく作ってもらったんだ。伯爵がいうには、前の槍は完全に死んでいたそうだからね」
「まあ、お父様の作品ですのね。確かに、ロックウェル家の魔力を感じます」
 取り出された二人の武器を見て、ラティナさんが手を合わせながら目をキラキラとさせていた。自分のお父さんの作った武器を目にしたからなんだろうな。
 それにしても、ラティナさんのお父さんって武器を作れたんだ。すごいなぁ……。
「それと、瞬。これも渡しておくよ」
 武器を見せてきたかと思うと、今度は紙袋を渡してきた。
「わっ、瞳ってばまた服を作ってきたんだ。本当にどんなペースで作ってるんだよ……」
 大量に入っていた服を見て、僕はびっくりしてしまう。いくらなんでも、早すぎると思う。自分の妹なんだけど、その才能が怖くなってくる。
「ここに来る前に会ったあの女の子、このラミアの妹なのね。元人間って本当だったんだ……」
「やっと信じてくれたか。何度も言っているのにな」
「この目で見たものしか信じないわ」
 目の前で、衣織お姉さんとスピアさんが言い争っている。
「まあまあ、話はそのくらいにしておきましょう。衣織お姉さん、配信しても大丈夫かな」
「ああ、構わないが、何を配信するつもりなんだ?」
 僕が間に割って入ると、衣織お姉さんはきょとんとした顔を僕に向けてくる。
「うん。二人の新しい武器の実演を配信しようと思うんだ。ラティナさんのお父さんの紹介もできるし、そうなれば、廃鉱山ダンジョンの重要性が上がるでしょ」
「ふむ。それはいい考えだな。てことは、あのデコイをぶっ潰せばいいんだな」
「手加減はしてよね。復活するとはいっても、時間がかかるんだから」
「保証はできないな」
 衣織お姉さんは、槍を持つ手に力を込めながら、はっきり言ってくれた。これは本気でやるつもりだよ。
 スピアさんはなんだか困ったような反応をしている。なので、僕がボス部屋の端の方にある白い人形のことを説明してあげた。うん、ものすごく驚いていたね。
「ダンジョンにはこういう利点もあるのね。なるほど、ダンジョンを無差別に潰すのは確かに良くないことだわ」
 僕のダンジョンにあるデコイを見ながら、ダンジョンの有用性を理解してくれたみたいだ。
 僕が配信を始めて、最初の挨拶をした後は、ひたすら衣織お姉さんとスピアさんの新しい武器の威力を見せつけることになった。
 ああ、僕のダンジョンのデコイが一瞬でガラクタになっていく。
「うん、物足りん。バトラー、少し手合わせをしてくれ」
「やれやれ、仕方ありませんな。ロックウェル伯爵様お手製の武器、我がしかと確かめてみせましょう」
 衣織お姉さんはデコイをボロボロにしただけでは足りなかったようで、バトラーに戦いを挑んでいた。
 結果としてはバトラーが勝ったわけだけど、衣織お姉さんは実に満足そうに笑っていた。
 あまりにレベルの高い戦いを見せつけられたスピアさんは、しばらくその場で呆然と立ち尽くしていたみたい。そうなっちゃうよね。僕もそうだったもん。
 新しい武器を試すだけだったはずなのになぁ。衣織お姉さんの血の気の多さには、本当に困ったものだよ。