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SCENE165 頼れるゴーレム

ー/ー



 ひと晩実家で過ごした私は、スピアを連れて廃鉱山ダンジョンに向かう。
 廃鉱山ダンジョンに入る前に、私たちは一度、ダンジョン管理局に寄る。スピアのやつに現実を見せないといけないからな。
 ダンジョン管理局には剛力さんたちがいる。昨日のことでまだ処理が残っているらしい。

「おお、衣織。またこっちに来たのか。って、その子は?」

 剛力さんが私に気が付くと声をかけてくる。同時にスピアのことにも気が付いたようだ。剛力さんが怖かったのか、スピアは私の後ろに隠れる。

「こいつは瞬のダンジョンに入ってきてたリベリオンギルドの子だ。瞬の命を狙ったらしいが、失敗してバトラーにボコボコにされたらしい」

「そうか。あそこにも入り込んでいたか。面倒な連中だな……」

 私の話を聞いて、剛力さんは表情を曇らせている。やはり、リベリオンの連中は厄介極まりないってことなんだろうな。世界で十数か所の保護ダンジョンを潰してきたという実績は、本当のようだな。

[わ、私は本当に抜けるからね。私の目標は、ダンジョンがないと達成できないから。本当に考え直したからね?]

 スピアは必死に私に訴えかけてくる。
 瞬を襲った時に、ダンジョンは壊すべきとか言い放ったらしいから、どこまで本気なのか疑わしいな。
 疑わしいから私は睨みつけてやる。スピアは涙目になって一歩どころか三歩くらい引いていた。やれやれ、怖がり過ぎというものだろうが。

 剛力さんと話を終わらせ、私はスピアも連れて廃鉱山ダンジョンへと入っていく。
 ボス部屋の前には巨大で屈強なガーディアンゴーレムが立っている。何度見ても大きいが、私に対して襲い掛かってくることはない。
 ところがだ、どうやらスピアは敵認定をされたようで、ゴーレムはスピアに襲い掛かり始めた。

[いやぁ。怖い怖い、無理無理ーっ!]

 スピアは泣き叫んで座り込んでしまった。
 ちっ、しょうがないな。私は仕方なく、ゴーレムを押さえつける。

「悪いが、こいつも連れてロックウェル伯爵に会わないといけないんだ。頼むから通してもらうぞ」

 力比べであれば、私の方が不利だ。だが、ここでこいつを殺させてしまうわけにはいかないから、攻撃してくるのなら本気で戦わさせてもらう。
 ところが、ゴーレムはすぐに動きを止めていた。どうやら話が通じたらしい。
 おとなしくなったゴーレムは、脇にどいて私たちが進めるように道を開けてくれた。

「よし、進めるようになったな。行くぞ」

[は、はい……]

 私の呼び掛けに、スピアは涙目で返事をしている。よっぽど怖かったんだな。
 とりあえず、私たちはボス部屋にとたどり着く。

「おお、衣織殿。昨日ぶりではありませんか。今日はどうなさったんですかね」

「ロックウェル伯爵。実は頼みがあって来たんだ」

「ほうほう、それはどのようなことですかな」

「私の槍を修理してもらいたいんだ。鉱石のエキスパートであるあなたなら、もしかしたらできるかと思いましてね」

「……見せていただけますかな」

 どうやら聞いてくれるようなので、私は砕けた槍をロックウェル伯爵に差し出す。
 見た瞬間、あまりにもひどい砕けようにロックウェル伯爵は言葉を失っていた。

「いくらなんでもこれは酷いですな。こうなったら、一から作った方が早いくらいですね」

「そんなに酷いか」

「ええ。もはや完全に槍が死んでいますからね。どこでこうなったんですか」

「樹海ダンジョンだ。アンデッドが巣くっているダンジョンのダンジョンコアを破壊しようとしたら、こうなったんだ」

 槍が壊れた時の状況を話すと、ロックウェル伯爵はしばらく黙り込んでしまった。モンスターだからこそわかる何かがあるってことなのだろう。
 槍をじっくりと見たロックウェル伯爵は、再び私に目を向けてくる。

「……なるほど。では、槍は私に預からせて下さい。我が一族の名に懸けて、新しい槍をこしらえさせて頂きます。ご希望がありましたら、お聞きしますよ」

「そうか。ならば……」

 どうやら思う通りの形にしあげてくれるらしい。それならばと、私は形状についていろいろと注文を付けることにした。伯爵の方もかなり真剣に聞いてくれている。
 私たちの様子を見ていたスピアは、予想だにしていない状況だったのか、言葉もなくただ立っていた。

「そちらのお嬢さんも、何かご希望がありましたらお聞きしますよ」

[そ、それだったら……]

 話を振られると、スピアはようやく反応をしていた。
 どうやら、モンスターにはこちらの言語の違いはまったく関係ないようだな。まったく、どういう風になっているのか、謎が増えるばかりだな。
 スピアの方は、持ってきたボウガンを差し出していた。これが瞬を狙って、バトラーに破壊されたっていうボウガンか。ダンジョン仕様にはなっているが、実にしょぼい基本的なボウガンだな。

「では、お預かりしました。完成にはそうですね、七日ほどをいただきましょうか。鉱石の選定からいろいろとしなければなりませんからね」

「分かった。それなら、七日後にまた来させてもらうよ」

「ええ、楽しみ待っていて下さい」

 装備についてロックウェル伯爵に任せた私たちは、廃鉱山ダンジョンを後にする。
 ダンジョンという場所の現実を知ったスピアは、しばらくの間ぶつぶつとつぶやいているようだった。
 これで、少しは考えを改めてくれるだろうかな。
 私は、淡い期待を抱いたのだった。


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 ひと晩実家で過ごした私は、スピアを連れて廃鉱山ダンジョンに向かう。
 廃鉱山ダンジョンに入る前に、私たちは一度、ダンジョン管理局に寄る。スピアのやつに現実を見せないといけないからな。
 ダンジョン管理局には剛力さんたちがいる。昨日のことでまだ処理が残っているらしい。
「おお、衣織。またこっちに来たのか。って、その子は?」
 剛力さんが私に気が付くと声をかけてくる。同時にスピアのことにも気が付いたようだ。剛力さんが怖かったのか、スピアは私の後ろに隠れる。
「こいつは瞬のダンジョンに入ってきてたリベリオンギルドの子だ。瞬の命を狙ったらしいが、失敗してバトラーにボコボコにされたらしい」
「そうか。あそこにも入り込んでいたか。面倒な連中だな……」
 私の話を聞いて、剛力さんは表情を曇らせている。やはり、リベリオンの連中は厄介極まりないってことなんだろうな。世界で十数か所の保護ダンジョンを潰してきたという実績は、本当のようだな。
[わ、私は本当に抜けるからね。私の目標は、ダンジョンがないと達成できないから。本当に考え直したからね?]
 スピアは必死に私に訴えかけてくる。
 瞬を襲った時に、ダンジョンは壊すべきとか言い放ったらしいから、どこまで本気なのか疑わしいな。
 疑わしいから私は睨みつけてやる。スピアは涙目になって一歩どころか三歩くらい引いていた。やれやれ、怖がり過ぎというものだろうが。
 剛力さんと話を終わらせ、私はスピアも連れて廃鉱山ダンジョンへと入っていく。
 ボス部屋の前には巨大で屈強なガーディアンゴーレムが立っている。何度見ても大きいが、私に対して襲い掛かってくることはない。
 ところがだ、どうやらスピアは敵認定をされたようで、ゴーレムはスピアに襲い掛かり始めた。
[いやぁ。怖い怖い、無理無理ーっ!]
 スピアは泣き叫んで座り込んでしまった。
 ちっ、しょうがないな。私は仕方なく、ゴーレムを押さえつける。
「悪いが、こいつも連れてロックウェル伯爵に会わないといけないんだ。頼むから通してもらうぞ」
 力比べであれば、私の方が不利だ。だが、ここでこいつを殺させてしまうわけにはいかないから、攻撃してくるのなら本気で戦わさせてもらう。
 ところが、ゴーレムはすぐに動きを止めていた。どうやら話が通じたらしい。
 おとなしくなったゴーレムは、脇にどいて私たちが進めるように道を開けてくれた。
「よし、進めるようになったな。行くぞ」
[は、はい……]
 私の呼び掛けに、スピアは涙目で返事をしている。よっぽど怖かったんだな。
 とりあえず、私たちはボス部屋にとたどり着く。
「おお、衣織殿。昨日ぶりではありませんか。今日はどうなさったんですかね」
「ロックウェル伯爵。実は頼みがあって来たんだ」
「ほうほう、それはどのようなことですかな」
「私の槍を修理してもらいたいんだ。鉱石のエキスパートであるあなたなら、もしかしたらできるかと思いましてね」
「……見せていただけますかな」
 どうやら聞いてくれるようなので、私は砕けた槍をロックウェル伯爵に差し出す。
 見た瞬間、あまりにもひどい砕けようにロックウェル伯爵は言葉を失っていた。
「いくらなんでもこれは酷いですな。こうなったら、一から作った方が早いくらいですね」
「そんなに酷いか」
「ええ。もはや完全に槍が死んでいますからね。どこでこうなったんですか」
「樹海ダンジョンだ。アンデッドが巣くっているダンジョンのダンジョンコアを破壊しようとしたら、こうなったんだ」
 槍が壊れた時の状況を話すと、ロックウェル伯爵はしばらく黙り込んでしまった。モンスターだからこそわかる何かがあるってことなのだろう。
 槍をじっくりと見たロックウェル伯爵は、再び私に目を向けてくる。
「……なるほど。では、槍は私に預からせて下さい。我が一族の名に懸けて、新しい槍をこしらえさせて頂きます。ご希望がありましたら、お聞きしますよ」
「そうか。ならば……」
 どうやら思う通りの形にしあげてくれるらしい。それならばと、私は形状についていろいろと注文を付けることにした。伯爵の方もかなり真剣に聞いてくれている。
 私たちの様子を見ていたスピアは、予想だにしていない状況だったのか、言葉もなくただ立っていた。
「そちらのお嬢さんも、何かご希望がありましたらお聞きしますよ」
[そ、それだったら……]
 話を振られると、スピアはようやく反応をしていた。
 どうやら、モンスターにはこちらの言語の違いはまったく関係ないようだな。まったく、どういう風になっているのか、謎が増えるばかりだな。
 スピアの方は、持ってきたボウガンを差し出していた。これが瞬を狙って、バトラーに破壊されたっていうボウガンか。ダンジョン仕様にはなっているが、実にしょぼい基本的なボウガンだな。
「では、お預かりしました。完成にはそうですね、七日ほどをいただきましょうか。鉱石の選定からいろいろとしなければなりませんからね」
「分かった。それなら、七日後にまた来させてもらうよ」
「ええ、楽しみ待っていて下さい」
 装備についてロックウェル伯爵に任せた私たちは、廃鉱山ダンジョンを後にする。
 ダンジョンという場所の現実を知ったスピアは、しばらくの間ぶつぶつとつぶやいているようだった。
 これで、少しは考えを改めてくれるだろうかな。
 私は、淡い期待を抱いたのだった。