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#4 「あれ……?」

ー/ー



 ハラリハラリと舞う桜の花弁が、僕の肩にそっと乗る。
 校門とその道中に植えられた桜の木々は、予知夢で見た通り「九分咲き」。


「みんな、もうちょっと寄ってね~」
「だってさ。オリオン、もっと真ん中に寄ってよ。僕が見切れちゃう」
「やめろ伯雅(はくが)、そんなに強く押すな……」
「ほらほら七香(ななか)も。もうちょっとオリオンの方に詰めなさいって」
「ちょ、ちょっと晴蘭(せいらん)……!」
「フフッ、良い感じよ。じゃあ撮るわね~」


 記念撮影をしている四人の生徒は、僕と同じ一年A組に振り分けられていた。
 ここもやはり、予知夢の通り。


 撮影の邪魔にならないように通り抜けて校門を潜ろうとすると、同じく新入生と思しき女子生徒が目に入った。
 背丈は僕より少し低いくらいで、髪は長く、眼鏡を掛けている。


 外見的には特に目を引く要素は無いのだが、校門手前に立ったまま、何故かそこを動こうとしないあの彼女も、先程の四人と同じく一年A組だったが、名前が出て来ない。
 クラスの自己紹介では最後に名乗り、名前に「吉」の字が入っていたのは憶えているが──


「……吉川さん、だったっけ? 吉田さん、でもなくて──あっ、思い出した。吉野さんだ……!」


 下の名前は忘れたが、それはどうでもいい。
 予知夢の中では、中に入らないのかと声を掛けたが、余計なお世話だったらしく、大丈夫だと断られた。


 だったら無視してあげるのが優しさだ。


 門前に立つ吉野さんの真横を素通りして、僕は敷地内へ。


 それからは特に何事も無く、迎えた入学式。


「次、新入生代表、豊原伯雅(とよはらはくが)
「はい」


 その次も、


「次、在校生代表。生徒会長、豊原宮子(とよはらみやこ)
「はい」


 ここまでも予知夢の通り。
 全く同じ挨拶の数々を二度も聴くというのは、精神的に少し苦痛を感じずにはいられない。


 場所は教室に移り、担任の挨拶を終え、次はクラスメイトたちの自己紹介。


織辺利恩(おりべリオン)です。宜しく」


 予知夢と全く同じ席順、挨拶、態度。


染井春一(そめいはるかず)です。これから一年、宜しくお願いします」


 僕も夢の中と同じ、無難な挨拶に留める。
 気の利いた挨拶など僕の頭では思い付かない。


徳永晴蘭(とくながせいらん)です。まあ、仲良くして貰えると嬉しいかな」
徳永七香(とくながななか)です。そちらの晴蘭とは従姉妹同士なので、下の名で呼び分けて貰えると助かります」
豊原伯雅(とよはらはくが)です。先程の新入生代表の挨拶ですが、実は全部AIに書いて貰ったものです。──というのは嘘です。ちゃんと自分の頭で考えました」


 他のクラスメイトの挨拶も、それに対する一同の反応も、やはり予知夢と変わらない。


 そして、最後に自己紹介の順番が回ってきた生徒は──校門前に立っていた彼女。


「……吉野仁香(よしのにか)、です。その……」


 チラリ、と彼女の視線がこちらを向き、僕と眼があった。


「あれ……?」


 ここは予知夢と少し違うような気がしたのだが、僕の気のせいだろうか。


「どうしました?」
「い、いえ、宜しくお願いします……」


 担任教師に急かされた吉野さんが、やや慌てた様子で一礼、着席する。


 帰り際に母とも記念撮影を済ませ、入学式は終わりを迎えた。


 その後も、何もかも予知夢で見た通り。
 帰る途中で交わした母との会話、夕食のメニュー、テレビのニュース──どれ一つとして狂い無し。


 まるで予知能力者になったような気分だが、どうせならこんな面白みの無い入学式などではなく、受験やテスト期間に見たかったな、などと思いながら、その日は眠りに就いた。


 明日は4月2日、始業式だ。


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次のエピソードへ進む #5 「嘘、だろ……」


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 ハラリハラリと舞う桜の花弁が、僕の肩にそっと乗る。
 校門とその道中に植えられた桜の木々は、予知夢で見た通り「九分咲き」。
「みんな、もうちょっと寄ってね~」
「だってさ。オリオン、もっと真ん中に寄ってよ。僕が見切れちゃう」
「やめろ|伯雅《はくが》、そんなに強く押すな……」
「ほらほら|七香《ななか》も。もうちょっとオリオンの方に詰めなさいって」
「ちょ、ちょっと|晴蘭《せいらん》……!」
「フフッ、良い感じよ。じゃあ撮るわね~」
 記念撮影をしている四人の生徒は、僕と同じ一年A組に振り分けられていた。
 ここもやはり、予知夢の通り。
 撮影の邪魔にならないように通り抜けて校門を潜ろうとすると、同じく新入生と思しき女子生徒が目に入った。
 背丈は僕より少し低いくらいで、髪は長く、眼鏡を掛けている。
 外見的には特に目を引く要素は無いのだが、校門手前に立ったまま、何故かそこを動こうとしないあの彼女も、先程の四人と同じく一年A組だったが、名前が出て来ない。
 クラスの自己紹介では最後に名乗り、名前に「吉」の字が入っていたのは憶えているが──
「……吉川さん、だったっけ? 吉田さん、でもなくて──あっ、思い出した。吉野さんだ……!」
 下の名前は忘れたが、それはどうでもいい。
 予知夢の中では、中に入らないのかと声を掛けたが、余計なお世話だったらしく、大丈夫だと断られた。
 だったら無視してあげるのが優しさだ。
 門前に立つ吉野さんの真横を素通りして、僕は敷地内へ。
 それからは特に何事も無く、迎えた入学式。
「次、新入生代表、|豊原伯雅《とよはらはくが》」
「はい」
 その次も、
「次、在校生代表。生徒会長、|豊原宮子《とよはらみやこ》」
「はい」
 ここまでも予知夢の通り。
 全く同じ挨拶の数々を二度も聴くというのは、精神的に少し苦痛を感じずにはいられない。
 場所は教室に移り、担任の挨拶を終え、次はクラスメイトたちの自己紹介。
「|織辺利恩《おりべリオン》です。宜しく」
 予知夢と全く同じ席順、挨拶、態度。
「|染井春一《そめいはるかず》です。これから一年、宜しくお願いします」
 僕も夢の中と同じ、無難な挨拶に留める。
 気の利いた挨拶など僕の頭では思い付かない。
「|徳永晴蘭《とくながせいらん》です。まあ、仲良くして貰えると嬉しいかな」
「|徳永七香《とくながななか》です。そちらの晴蘭とは従姉妹同士なので、下の名で呼び分けて貰えると助かります」
「|豊原伯雅《とよはらはくが》です。先程の新入生代表の挨拶ですが、実は全部AIに書いて貰ったものです。──というのは嘘です。ちゃんと自分の頭で考えました」
 他のクラスメイトの挨拶も、それに対する一同の反応も、やはり予知夢と変わらない。
 そして、最後に自己紹介の順番が回ってきた生徒は──校門前に立っていた彼女。
「……|吉野仁香《よしのにか》、です。その……」
 チラリ、と彼女の視線がこちらを向き、僕と眼があった。
「あれ……?」
 ここは予知夢と少し違うような気がしたのだが、僕の気のせいだろうか。
「どうしました?」
「い、いえ、宜しくお願いします……」
 担任教師に急かされた吉野さんが、やや慌てた様子で一礼、着席する。
 帰り際に母とも記念撮影を済ませ、入学式は終わりを迎えた。
 その後も、何もかも予知夢で見た通り。
 帰る途中で交わした母との会話、夕食のメニュー、テレビのニュース──どれ一つとして狂い無し。
 まるで予知能力者になったような気分だが、どうせならこんな面白みの無い入学式などではなく、受験やテスト期間に見たかったな、などと思いながら、その日は眠りに就いた。
 明日は4月2日、始業式だ。