第76話 復学の王子
ー/ー 王都内にある学園に、バタフィー王子は久しぶりに姿を見せる。
婚約者だったクロナが魔族と分かり、その対処のためにあれこれと奔走していたためだ。ただでさえそれだけでも忙しいというのに、親友であるシュヴァルツとその婚約者であるメープルが相次いで死んでしまった。
王都内のみならず王国の立て直しのため、十三歳という年齢ながらにずっと国王とともに対処にあたってきたのだ。
それが一段落したことで、ようやく学園に戻ってこれたのである。
「キャーッ、バタフィー殿下よーっ!」
「バタフィー殿下、ご無沙汰しております」
学園にやってきたバタフィー王子は、学生たちから大人気である。歩いていれば、このように声をかけられてしまう始末。どこにいても居場所が分かってしまう。人気ものゆえの悩みというものだ。
だが、魔族に対して険しい表情を見せるバタフィー王子も、王国民たちに対してはとても柔らかな表情を見せる。もちろん、魔族と化す前のクロナにもそれはとても優しく接していた。だからこそ、今のクロナも正気に戻ったブラナも、バタフィー王子の姿が信じられなかったのだ。
「ふぅ……」
学園内を歩いてきただけだというのに、とある部屋に入ったバタフィー王子は大きく息を吐いていた。
「人気者はつらいね、バタフィー」
「お前に言われても説得力はないな、マルガン」
部屋に入ったバタフィー王子を待っていたのは、シュヴァルツとは別の幼馴染みであるマルガンという男だった。シュヴァルツ同様、バタフィー王子を呼び捨てで呼ぶ数少ない人物である。
マルガンと言葉を交わしたバタフィー王子は、室内の椅子へと腰を掛ける。
「俺のいなかった間に、特に変わったことはなかったか、マルガン」
「学園内はいたって普通さ。ただ、お前がいないことで女子学生たちが、とても寂しくしていたことぐらいだよ」
「はっ、それならば平和だったということだな」
マルガンの報告を聞いて、バタフィー王子は思わず笑いをこぼしてしまう。
バタフィー王子の笑顔を見た瞬間に、マルガンもつられたように笑っている。こうやってバタフィー王子が笑うのは、どのくらい振りなのだろうか。
「だが、シュヴァルツとメープル嬢のことは本当につらい話だ」
「ああ。どちらも将来を有望視されていただけにな……。くそっ、あの黒角の魔族め。絶対殺してやらねばならんな」
シュヴァルツとメープルの話題が出た瞬間、バタフィー王子の表情はとても険しくなっていた。やはり、友人を亡くしたというのがバタフィー王子にとってはかなりショックだったということなのだ。
このバタフィー王子の表情を見た瞬間、マルガンはしまったというような表情をしていた。どうやら、当人としては意識していなかったようだ。
「すまなかったな、バタフィー」
「いや、気にするな、マルガン。それよりも、代わりの聖女を見つけ出し、なんとしてもイクセンの結界を維持しなければならない。報告では、コークロッチヌス子爵領に魔族が出現したらしいからな」
「本当なのか、バタフィー」
バタフィー王子の話した内容に、マルガンは取り乱したかのように騒ぎ立てている。焦るマルガンに対して、バタフィーは静かに頷いていた。
「コークロッチヌス子爵から話を聞いたが、二体の魔族が多くの領民を殺して回っていたそうだ。ただ……」
「ただ?」
バタフィー王子の表情が曇ると、マルガンは心配したかのようにバタフィー王子に近付いている。バタフィー王子は、少しの間沈黙している。
「……ただ、別の魔族がやって来て、襲撃してきた魔族を追い払ってくれたそうだ。なんとも信じられない話だ」
「それは……確かに妙な話ですね。もしかして、縄張り争いのようなものでもあったのでしょうかね」
「分からん。だが、結果として、それなりの被害は出たものの、コークロッチヌス子爵領はなんとか無事だったそうだ。今、王家の方で復旧に向けた調整をしているところだよ」
「お疲れ様でございます、殿下」
さすがに仕事の労いとなると、マルガンもバタフィー王子のことを敬称で呼ぶようである。さすがは王子の友人といったところだろう。
話を終えると、二人はしばらく部屋の中でゆっくりと過ごしていた。
「……そろそろお昼だな」
「そうですね、バタフィー。食堂へと向かいますか」
「ああ」
部屋の中であれこれとして過ごしていたバタフィーたちは、立ち上がって学園の食堂へと向かう。
ところが、食堂へと到着した時だった。バタフィー王子の動きが突然止まってしまう。
「どうかなさいましたか、バタフィー」
マルガンが問いかけるも、バタフィー王子は口を押えたまま、黙り込んでしまっている。一体何があったというのだろうか。
「……離れるぞ」
「バタフィー? ま、待って下さい」
口を押さえたまま食堂から走り去っていってしまうバタフィー王子。マルガンは、バタフィー王子を必死に追いかけていく。
一体、バタフィー王子は、食堂の中に何を感じ取ったというのだろうか。口を押さえてしまうほどとは、まったく想像がつかない。
バタフィー王子は、そのまま元いた部屋まで戻ってきてしまう。その時のバタフィー王子は、とても青ざめた様子で心配になってしまうほどの姿だった。
婚約者だったクロナが魔族と分かり、その対処のためにあれこれと奔走していたためだ。ただでさえそれだけでも忙しいというのに、親友であるシュヴァルツとその婚約者であるメープルが相次いで死んでしまった。
王都内のみならず王国の立て直しのため、十三歳という年齢ながらにずっと国王とともに対処にあたってきたのだ。
それが一段落したことで、ようやく学園に戻ってこれたのである。
「キャーッ、バタフィー殿下よーっ!」
「バタフィー殿下、ご無沙汰しております」
学園にやってきたバタフィー王子は、学生たちから大人気である。歩いていれば、このように声をかけられてしまう始末。どこにいても居場所が分かってしまう。人気ものゆえの悩みというものだ。
だが、魔族に対して険しい表情を見せるバタフィー王子も、王国民たちに対してはとても柔らかな表情を見せる。もちろん、魔族と化す前のクロナにもそれはとても優しく接していた。だからこそ、今のクロナも正気に戻ったブラナも、バタフィー王子の姿が信じられなかったのだ。
「ふぅ……」
学園内を歩いてきただけだというのに、とある部屋に入ったバタフィー王子は大きく息を吐いていた。
「人気者はつらいね、バタフィー」
「お前に言われても説得力はないな、マルガン」
部屋に入ったバタフィー王子を待っていたのは、シュヴァルツとは別の幼馴染みであるマルガンという男だった。シュヴァルツ同様、バタフィー王子を呼び捨てで呼ぶ数少ない人物である。
マルガンと言葉を交わしたバタフィー王子は、室内の椅子へと腰を掛ける。
「俺のいなかった間に、特に変わったことはなかったか、マルガン」
「学園内はいたって普通さ。ただ、お前がいないことで女子学生たちが、とても寂しくしていたことぐらいだよ」
「はっ、それならば平和だったということだな」
マルガンの報告を聞いて、バタフィー王子は思わず笑いをこぼしてしまう。
バタフィー王子の笑顔を見た瞬間に、マルガンもつられたように笑っている。こうやってバタフィー王子が笑うのは、どのくらい振りなのだろうか。
「だが、シュヴァルツとメープル嬢のことは本当につらい話だ」
「ああ。どちらも将来を有望視されていただけにな……。くそっ、あの黒角の魔族め。絶対殺してやらねばならんな」
シュヴァルツとメープルの話題が出た瞬間、バタフィー王子の表情はとても険しくなっていた。やはり、友人を亡くしたというのがバタフィー王子にとってはかなりショックだったということなのだ。
このバタフィー王子の表情を見た瞬間、マルガンはしまったというような表情をしていた。どうやら、当人としては意識していなかったようだ。
「すまなかったな、バタフィー」
「いや、気にするな、マルガン。それよりも、代わりの聖女を見つけ出し、なんとしてもイクセンの結界を維持しなければならない。報告では、コークロッチヌス子爵領に魔族が出現したらしいからな」
「本当なのか、バタフィー」
バタフィー王子の話した内容に、マルガンは取り乱したかのように騒ぎ立てている。焦るマルガンに対して、バタフィーは静かに頷いていた。
「コークロッチヌス子爵から話を聞いたが、二体の魔族が多くの領民を殺して回っていたそうだ。ただ……」
「ただ?」
バタフィー王子の表情が曇ると、マルガンは心配したかのようにバタフィー王子に近付いている。バタフィー王子は、少しの間沈黙している。
「……ただ、別の魔族がやって来て、襲撃してきた魔族を追い払ってくれたそうだ。なんとも信じられない話だ」
「それは……確かに妙な話ですね。もしかして、縄張り争いのようなものでもあったのでしょうかね」
「分からん。だが、結果として、それなりの被害は出たものの、コークロッチヌス子爵領はなんとか無事だったそうだ。今、王家の方で復旧に向けた調整をしているところだよ」
「お疲れ様でございます、殿下」
さすがに仕事の労いとなると、マルガンもバタフィー王子のことを敬称で呼ぶようである。さすがは王子の友人といったところだろう。
話を終えると、二人はしばらく部屋の中でゆっくりと過ごしていた。
「……そろそろお昼だな」
「そうですね、バタフィー。食堂へと向かいますか」
「ああ」
部屋の中であれこれとして過ごしていたバタフィーたちは、立ち上がって学園の食堂へと向かう。
ところが、食堂へと到着した時だった。バタフィー王子の動きが突然止まってしまう。
「どうかなさいましたか、バタフィー」
マルガンが問いかけるも、バタフィー王子は口を押えたまま、黙り込んでしまっている。一体何があったというのだろうか。
「……離れるぞ」
「バタフィー? ま、待って下さい」
口を押さえたまま食堂から走り去っていってしまうバタフィー王子。マルガンは、バタフィー王子を必死に追いかけていく。
一体、バタフィー王子は、食堂の中に何を感じ取ったというのだろうか。口を押さえてしまうほどとは、まったく想像がつかない。
バタフィー王子は、そのまま元いた部屋まで戻ってきてしまう。その時のバタフィー王子は、とても青ざめた様子で心配になってしまうほどの姿だった。
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