SCENE163 ゴーレムは意外と強かった
ー/ー 私は廃鉱山ダンジョンで、侵入者どもの様子を見守っている。
「色、配信しているか?」
「もちろんですよ。こんな違法行為、放っておけるかっていうんですよ」
私たちが見守る中、色は機転を利かせてリベリオンどもの行動を配信しているようだ。
奴らの違法行為の実態を知らしめるには確かにいいだろう。
だがな、状況を見ているとかなり劣勢になってきているようだ。このまま放っておけば、奴らは死ぬことになるだろう。
[くそっ! 硬すぎる]
[どうします? このままじゃ武器がなくなっちまいます]
[魔法使いも連れてきたが、まさか不意打ちでノックアウトされるとは思ってなかったぜ。くそが!]
配信の翻訳機能のおかげか、奴らの会話が全部わかる。こういう時、こういう機能はとても助かるな。
それにしても、そうか。倒れている連中は魔法使いの連中か。で、物理職しかいなくなって、物理攻撃の通じないゴーレムに苦戦していると。はっ、実にいい気味じゃないか。
もう後がないと見たのか、リベリオンの連中は気絶している連中を置いて逃げ出そうとする。
だがな、それは問屋が卸さないというものだ。
走ってきた連中の足に、私はすっと足を引っかけてやる。
[うげっ!]
[あでぇっ!]
慌てていて足元を見ていないから、こうもたやすく引っかかって転ぶんだよ。勝手なことをする連中にはちょうどいい罰というものだ。
色が配信しているコメントも、笑いの反応がたくさん流れている。
「剛力さん、色、猪川、兎波、そいつらのことを頼みますよ。気絶している連中も含めて」
「ああ。衣織はどうするんだ?」
こけた連中のことは放っておいて、私は剛力さんたちに任せて奥へと進んでいく。
「ああ、ラティナが心配したらいけないから、ロックウェル伯爵の様子を確認に行くんですよ」
「そっか。こっちのことは任せておけ」
剛力さんから許可も出たことだし、私は奥へと進んでいく。
さっきまで侵入者と戦っていたゴーレムも、私に対しては攻撃を入れてこない。敵意はないし、ロックウェル伯爵の意思が反映されているからな。放っておいても安全とみなされているってことだ。
私はボス部屋へと入る。
正面には、ラティナの父親であるロックウェル伯爵が陣取っていた。
「おお、これは衣織殿」
警戒していた雰囲気が、私の姿を見た瞬間に一気に緩んだ。さすがはダンジョンマスターといったところか。
「無事でなによりだな。侵入者はゴーレムと私たちの手で全滅させておいた。全部で五人でいいのかな」
「ええ、敵意を持った侵入者は、全部で五人で合っています。わざわざすみませんな」
さっきまでの緊張感が嘘のように、それは緩い雰囲気になっている。
「なあに、友人の家族なんだ。助けない理由なんてのはないよ」
感謝を示してくるロックウェル伯爵に、私ははにかむようにしながら答えている。
伯爵が死ねばラティナが悲しむし、ラティナが悲しめば瞬にも影響は絶対出る。だからこそ、助けるというものだ。
「それにしても衣織殿」
「なにかな?」
「今回の侵入者について、何かご存じなことはあるのですかな?」
「ああ、ちょっと説明させてもらうよ」
ロックウェル伯爵が興味を示したので、私は正直嫌なんだがしっかりと説明させてもらったら。あんなならず者どものことを話すのは、本当に気が滅入るってもんだ。
以前にぶっ潰したパラダイスの連中もだがな。ああ、思い出しても腹が立つ。
私が苛立ってきているのを感じたのか、ロックウェル伯爵は心配そうに私を見ている。
「すまない。ちょっと前にあった嫌なことを思い出してな」
「そうですか。でしたら、あまり無理に説明いただく必要はありませんよ。今ので大体は理解できましたからね」
「さすが伯爵だな」
私に気を遣ってくれるあたり、さすがはお偉いさんだと思うな。人心掌握に長けている。
まったく、付き合えば付き合うほど、モンスターとは何かと考えさせられるものだ。
私たちはダンジョンに出る怪物を問答無用でモンスターと呼んでいる。だが、これまで会ってきた一部のモンスターは、私たちと同じように言葉を操り、考えたり、気持ちを慮ったりする。姿こそ人ではないが、心をしっかりと持った者たちだ。
ダンジョンマスターやその近くにいる者たちは、姿が違うだけで私たちと何が違うというのだろうか。
「衣織殿?」
「ああ、すまない。ダンジョンやモンスターとは一体何なのか、ちょっと考えてしまってな」
「確かに、そうでしょうね。私どもとしてはただのモンスターと一緒にしてもらっては困るのですが、衣織殿たちからしたら、どちらも脅威には変わりありませんからね」
本当にこうやって話が通じてしまうのだから、私としてもモンスターとは区別したくなってくるというものだ。
いろいろと思うところはあるが、今は保護ダンジョンを攻略しようとしたならず者どもの対処の方が先だな。
ロックウェル伯爵と話を終えた私は、ボス部屋の外へと出る。そこには、色の能力でぐるぐる巻きにされたギルド『リベリオン』の連中が座っていた。暴れないように手足もしっかりと縛ってある。やりすぎかもしれないが、こうでもしないと安心できないからな。
私たちは、ダンジョン管理局の警備隊の連中がやってくるまで、ひとまずボス部屋の前で待機を続けた。
これで問題が解決すればいいんだがな。
なんともいえない不安を、私たちは抱えていた。
「色、配信しているか?」
「もちろんですよ。こんな違法行為、放っておけるかっていうんですよ」
私たちが見守る中、色は機転を利かせてリベリオンどもの行動を配信しているようだ。
奴らの違法行為の実態を知らしめるには確かにいいだろう。
だがな、状況を見ているとかなり劣勢になってきているようだ。このまま放っておけば、奴らは死ぬことになるだろう。
[くそっ! 硬すぎる]
[どうします? このままじゃ武器がなくなっちまいます]
[魔法使いも連れてきたが、まさか不意打ちでノックアウトされるとは思ってなかったぜ。くそが!]
配信の翻訳機能のおかげか、奴らの会話が全部わかる。こういう時、こういう機能はとても助かるな。
それにしても、そうか。倒れている連中は魔法使いの連中か。で、物理職しかいなくなって、物理攻撃の通じないゴーレムに苦戦していると。はっ、実にいい気味じゃないか。
もう後がないと見たのか、リベリオンの連中は気絶している連中を置いて逃げ出そうとする。
だがな、それは問屋が卸さないというものだ。
走ってきた連中の足に、私はすっと足を引っかけてやる。
[うげっ!]
[あでぇっ!]
慌てていて足元を見ていないから、こうもたやすく引っかかって転ぶんだよ。勝手なことをする連中にはちょうどいい罰というものだ。
色が配信しているコメントも、笑いの反応がたくさん流れている。
「剛力さん、色、猪川、兎波、そいつらのことを頼みますよ。気絶している連中も含めて」
「ああ。衣織はどうするんだ?」
こけた連中のことは放っておいて、私は剛力さんたちに任せて奥へと進んでいく。
「ああ、ラティナが心配したらいけないから、ロックウェル伯爵の様子を確認に行くんですよ」
「そっか。こっちのことは任せておけ」
剛力さんから許可も出たことだし、私は奥へと進んでいく。
さっきまで侵入者と戦っていたゴーレムも、私に対しては攻撃を入れてこない。敵意はないし、ロックウェル伯爵の意思が反映されているからな。放っておいても安全とみなされているってことだ。
私はボス部屋へと入る。
正面には、ラティナの父親であるロックウェル伯爵が陣取っていた。
「おお、これは衣織殿」
警戒していた雰囲気が、私の姿を見た瞬間に一気に緩んだ。さすがはダンジョンマスターといったところか。
「無事でなによりだな。侵入者はゴーレムと私たちの手で全滅させておいた。全部で五人でいいのかな」
「ええ、敵意を持った侵入者は、全部で五人で合っています。わざわざすみませんな」
さっきまでの緊張感が嘘のように、それは緩い雰囲気になっている。
「なあに、友人の家族なんだ。助けない理由なんてのはないよ」
感謝を示してくるロックウェル伯爵に、私ははにかむようにしながら答えている。
伯爵が死ねばラティナが悲しむし、ラティナが悲しめば瞬にも影響は絶対出る。だからこそ、助けるというものだ。
「それにしても衣織殿」
「なにかな?」
「今回の侵入者について、何かご存じなことはあるのですかな?」
「ああ、ちょっと説明させてもらうよ」
ロックウェル伯爵が興味を示したので、私は正直嫌なんだがしっかりと説明させてもらったら。あんなならず者どものことを話すのは、本当に気が滅入るってもんだ。
以前にぶっ潰したパラダイスの連中もだがな。ああ、思い出しても腹が立つ。
私が苛立ってきているのを感じたのか、ロックウェル伯爵は心配そうに私を見ている。
「すまない。ちょっと前にあった嫌なことを思い出してな」
「そうですか。でしたら、あまり無理に説明いただく必要はありませんよ。今ので大体は理解できましたからね」
「さすが伯爵だな」
私に気を遣ってくれるあたり、さすがはお偉いさんだと思うな。人心掌握に長けている。
まったく、付き合えば付き合うほど、モンスターとは何かと考えさせられるものだ。
私たちはダンジョンに出る怪物を問答無用でモンスターと呼んでいる。だが、これまで会ってきた一部のモンスターは、私たちと同じように言葉を操り、考えたり、気持ちを慮ったりする。姿こそ人ではないが、心をしっかりと持った者たちだ。
ダンジョンマスターやその近くにいる者たちは、姿が違うだけで私たちと何が違うというのだろうか。
「衣織殿?」
「ああ、すまない。ダンジョンやモンスターとは一体何なのか、ちょっと考えてしまってな」
「確かに、そうでしょうね。私どもとしてはただのモンスターと一緒にしてもらっては困るのですが、衣織殿たちからしたら、どちらも脅威には変わりありませんからね」
本当にこうやって話が通じてしまうのだから、私としてもモンスターとは区別したくなってくるというものだ。
いろいろと思うところはあるが、今は保護ダンジョンを攻略しようとしたならず者どもの対処の方が先だな。
ロックウェル伯爵と話を終えた私は、ボス部屋の外へと出る。そこには、色の能力でぐるぐる巻きにされたギルド『リベリオン』の連中が座っていた。暴れないように手足もしっかりと縛ってある。やりすぎかもしれないが、こうでもしないと安心できないからな。
私たちは、ダンジョン管理局の警備隊の連中がやってくるまで、ひとまずボス部屋の前で待機を続けた。
これで問題が解決すればいいんだがな。
なんともいえない不安を、私たちは抱えていた。
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