ep142 魔剣使いvs狂戦士③

ー/ー



『クロー様』

『……お前か!』

『クロー様の周囲の〔スピリトゥス〕にちょっとした細工を施しました。あの男は貴方に不気味な何かを察知して距離を取ったのでしょう』

『よ、よくわからないが、とりあえず助かった!』

『さて、応援を呼びかけましょうか』

『応援? トレブルたちを呼ぶってことか?』

『はい』

『呼べるのか?』

『この距離なら可能です』

『でも、アイツらを呼んだところで……ジェイズに対抗できそうな力を持っているとしたら、エレサぐらいしか……』

『肉の壁ぐらいにはなるでしょう』

『お前…!』

『勇者の妹は手を出せない。ならば彼らを呼ぶしかないでしょう? ほんの時間稼ぎぐらいはしてくれるはずです』

『待て!』

『……』

『やめろ!』

『……これは困りましたね』

『なんだよ? アイツらがどうかしたのか?』

『どうやら街のギャングどもに囲まれて宿屋から出られないようです』

『わかるのか!?』

『今のワタクシならば、この距離であれば〔スピリトゥス〕を通じて把握できます』

『今のワタクシ? いや、そんなことはいい! とにかく状況を教えろ!』

『……クロー様と〔狂戦士〕がぶつかり合って生じた魔力の乱れにダークエルフが気付いたようでしたが、すでにギャング共に取り囲まれていたみたいですね』

『クソ! 街のギャングどもとは酒も酌み交わしたのに!』

『それとこれとは話が別でしょう。これは個人の感情の問題ではないですから。むしろギャング共は正当です。貴方ならわかるでしょう?』

『ああわかった! わかったよ! それでアイツらに危険は!?』

『他人の心配をしている場合ではないでしょう?』

『いいから教えろ!』

『今のところは』

『そうか……』

『で、貴方はどうするのです?』

『ジェイズを、倒す…』

『その状態で?』

『だって、やるしかないだろ』

『貴方の心が折れていない事が確認できました。よろしい。であればワタクシも最大限協力しましょう』

『なにかやってくれるのか?』

『戦うのはあくまでクロー様です。でなければ意味がないですから』

『意味?』

『いいですか? ワタクシの話をよく聞いて理解してください。今からあの男の魔術について、現時点で分かった事を説明します』

『えっ? あ、ああ! 頼む!』

『あの男の使う魔法は錬金魔法。錬金魔法と聞くと物を作り出す魔法をイメージしますよね?』

『実際、岩や鋼鉄を作り出して攻撃してきたしな』

『それはいわば表面的な力です。貴方は自分の攻撃にあの男が微動だにしなかったのを不思議に思ったでしょう?』

『そうだよ! 奴は〔ニュンパギャッシュ〕すら平然と受け止めた』

『あの男は、己の身体にも錬金魔法を施すことができるのです。それがあの男の錬金魔術の正体』

『どういうことだ?』

『あの男は貴方の剣を受け止める際、己の身体の一部を錬金魔法で強化したのです。さらには足元にも錬金魔法を施し、まさしく地に足をつけて微動だにしなかったという訳です』

『身体の一部? 体全体ではなく?』

『おそらく通常の敵であればそれも行うのでしょうが、クロー様の〔魔導剣〕はあらゆる魔法を斬り裂く。ですので実際に剣を受け止める拳には魔法は施さなかったのでしょう。一見豪快に見えて緻密にクロー様への対策を講じてきています』

『理屈はわかったが、そんな簡単にできるもんなのか?』

『発想、創造、応用、魔術のオンオフの切り替え等、すべてが恐ろしく高度な技術です。ちなみに、あの男は踏み込む際に自らの足元にバネのように弾く物質を作り出し、踏み込みのスピードを格段に高めました』

『だから急に奴のスピードが速くなったのか!』

『それも敢えて遅いスピードを見せてから行うことにより、より速く感じさせたのです。これについては技術というより練度』

『そういうことだったのか』

『そして貴方に攻撃を当てる瞬間には拳にも錬金魔法を施し強化した。まさに高度な技術と練度を備えた戦闘スタイル。彼は戦士としても超一流といって良いでしょう』

『敵ながらすごいな……』

『はい。それにあのような錬金魔法の使い方はおそらく他者には真似できない。己の肉体への負荷があまりに多すぎます。しかしあの男はそれに耐えうる肉体の強さを備えている。まさしく唯一無二とも言える特殊技能』

『俺に…勝てるのか?』

『貴方は選ばれし〔魔導剣士〕。貴方こそが真に唯一無二の存在です』

『でも、すでにダメージが……』

『ワタクシが回復して差し上げましょう』

『お前が?』

『さあ、ワタクシの名をお呼びください』

『は? 名前は無いって言ってなかったか?』

『名はありません。捨てましたからね。しかし、ワタクシを象徴する敬称はあります』

『それは?』

『〔ウェリタス〕』

「ウェリタス……」

 その言葉を口にした瞬間。
 突如、俺の目の前にブワァァァッと凄まじい風が巻き起こる。

「な、なんだ??」

 風は小さな円を描き神秘的に舞い上がる。
 間もなく……円の中心から薄く光る蜃気楼のように人の姿が浮かび上がった。


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『クロー様』
『……お前か!』
『クロー様の周囲の〔スピリトゥス〕にちょっとした細工を施しました。あの男は貴方に不気味な何かを察知して距離を取ったのでしょう』
『よ、よくわからないが、とりあえず助かった!』
『さて、応援を呼びかけましょうか』
『応援? トレブルたちを呼ぶってことか?』
『はい』
『呼べるのか?』
『この距離なら可能です』
『でも、アイツらを呼んだところで……ジェイズに対抗できそうな力を持っているとしたら、エレサぐらいしか……』
『肉の壁ぐらいにはなるでしょう』
『お前…!』
『勇者の妹は手を出せない。ならば彼らを呼ぶしかないでしょう? ほんの時間稼ぎぐらいはしてくれるはずです』
『待て!』
『……』
『やめろ!』
『……これは困りましたね』
『なんだよ? アイツらがどうかしたのか?』
『どうやら街のギャングどもに囲まれて宿屋から出られないようです』
『わかるのか!?』
『今のワタクシならば、この距離であれば〔スピリトゥス〕を通じて把握できます』
『今のワタクシ? いや、そんなことはいい! とにかく状況を教えろ!』
『……クロー様と〔狂戦士〕がぶつかり合って生じた魔力の乱れにダークエルフが気付いたようでしたが、すでにギャング共に取り囲まれていたみたいですね』
『クソ! 街のギャングどもとは酒も酌み交わしたのに!』
『それとこれとは話が別でしょう。これは個人の感情の問題ではないですから。むしろギャング共は正当です。貴方ならわかるでしょう?』
『ああわかった! わかったよ! それでアイツらに危険は!?』
『他人の心配をしている場合ではないでしょう?』
『いいから教えろ!』
『今のところは』
『そうか……』
『で、貴方はどうするのです?』
『ジェイズを、倒す…』
『その状態で?』
『だって、やるしかないだろ』
『貴方の心が折れていない事が確認できました。よろしい。であればワタクシも最大限協力しましょう』
『なにかやってくれるのか?』
『戦うのはあくまでクロー様です。でなければ意味がないですから』
『意味?』
『いいですか? ワタクシの話をよく聞いて理解してください。今からあの男の魔術について、現時点で分かった事を説明します』
『えっ? あ、ああ! 頼む!』
『あの男の使う魔法は錬金魔法。錬金魔法と聞くと物を作り出す魔法をイメージしますよね?』
『実際、岩や鋼鉄を作り出して攻撃してきたしな』
『それはいわば表面的な力です。貴方は自分の攻撃にあの男が微動だにしなかったのを不思議に思ったでしょう?』
『そうだよ! 奴は〔ニュンパギャッシュ〕すら平然と受け止めた』
『あの男は、己の身体にも錬金魔法を施すことができるのです。それがあの男の錬金魔術の正体』
『どういうことだ?』
『あの男は貴方の剣を受け止める際、己の身体の一部を錬金魔法で強化したのです。さらには足元にも錬金魔法を施し、まさしく地に足をつけて微動だにしなかったという訳です』
『身体の一部? 体全体ではなく?』
『おそらく通常の敵であればそれも行うのでしょうが、クロー様の〔魔導剣〕はあらゆる魔法を斬り裂く。ですので実際に剣を受け止める拳には魔法は施さなかったのでしょう。一見豪快に見えて緻密にクロー様への対策を講じてきています』
『理屈はわかったが、そんな簡単にできるもんなのか?』
『発想、創造、応用、魔術のオンオフの切り替え等、すべてが恐ろしく高度な技術です。ちなみに、あの男は踏み込む際に自らの足元にバネのように弾く物質を作り出し、踏み込みのスピードを格段に高めました』
『だから急に奴のスピードが速くなったのか!』
『それも敢えて遅いスピードを見せてから行うことにより、より速く感じさせたのです。これについては技術というより練度』
『そういうことだったのか』
『そして貴方に攻撃を当てる瞬間には拳にも錬金魔法を施し強化した。まさに高度な技術と練度を備えた戦闘スタイル。彼は戦士としても超一流といって良いでしょう』
『敵ながらすごいな……』
『はい。それにあのような錬金魔法の使い方はおそらく他者には真似できない。己の肉体への負荷があまりに多すぎます。しかしあの男はそれに耐えうる肉体の強さを備えている。まさしく唯一無二とも言える特殊技能』
『俺に…勝てるのか?』
『貴方は選ばれし〔魔導剣士〕。貴方こそが真に唯一無二の存在です』
『でも、すでにダメージが……』
『ワタクシが回復して差し上げましょう』
『お前が?』
『さあ、ワタクシの名をお呼びください』
『は? 名前は無いって言ってなかったか?』
『名はありません。捨てましたからね。しかし、ワタクシを象徴する敬称はあります』
『それは?』
『〔ウェリタス〕』
「ウェリタス……」
 その言葉を口にした瞬間。
 突如、俺の目の前にブワァァァッと凄まじい風が巻き起こる。
「な、なんだ??」
 風は小さな円を描き神秘的に舞い上がる。
 間もなく……円の中心から薄く光る蜃気楼のように人の姿が浮かび上がった。