私達は抵抗する!
ー/ー ここは双葉野菜農園。
閑静な住宅街にある、ごく一般的な農園である。
都会で平日でも家族連れで賑わう農園と訊ねれば、大抵一回はこの農園を薦められた。
聞けば、ここで作られた野菜達が、どんな料理にでも合うという、なんとも不思議な理由で薦めているらしい。
また、都会ではあまり見かけない家族総出でするという光景が、野菜を買いに来た人達や、近所の住人達、果ては専業農家を営む人々の心の癒しとなっている。
今は夏野菜と称されるトマトや胡瓜・茄子といったものが、各々の畑を賑わしていた。
さて、小さな子供達を連れた数人の大人達が、今日もまたせっせと野菜畑の世話に明け暮れている。
大人達の指示に従い、子供達は水や肥料を土にやり、時には道具も手渡していた。
そんな子供達も、作業が長引けば手伝うことに飽きてくる。
いつしか皆、狭い畑を行ったり来たりして、大人達が帰る用意をするまでの間、思い思いに時間を潰していた。
その中の一人の女の子の瞳が、真っ赤なミニトマトに釘付けになる。
立ち止まり、ジッと見つめること十数秒、今度は耳を恐る恐る近づけていった。
その姿を見かけた別の家族の、ヨチヨチ歩く男の子も、真似をして胡瓜の葉に鼻を近づかせていく。
そして、何か聞こえたのか驚いてその場から遠退いた。
「ねぇ、ねぇ、トマトが何か言ってるよ!」
不意に女の子がトマトから耳を離し、側にいた祖母に大きな声でそう告げる。
「ほう―、それで何て言っているんだい?」
祖母は雑草を抜きながら、女の子にそう訊ねた。
すると女の子はミニトマトに耳を傾け、小さく頷きながら
「ここから離れたくないって!」
と、周りに聞こえるくらいの大きな声で、抜いた雑草を一纏めにした祖母に伝える。
その声に目を丸くした祖母の手が止まった途端、畑のあちこちにいた子供達から
「ママ、こっちの茄子さんは、ワンワン泣いてる声がする」
「食べられるのが嫌だって、野菜達が怒ってるよ」
と、一斉に悲痛な声をあげた。
困り果てた祖母や他の家族達は、この場を収める為
「分かった、今日はお肉にしましょう」
と、子供達を宥めるように伝える。
その言葉を聞いた瞬間、野菜達の声は嘘のようにピタリと止んだのだった。
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