ep139 開始

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 キラースの姿が見えなくなるのを確認すると、ジェイズがカレンに視線を投げた。

「わりーな、カレン嬢。お前はヤツをぶっ殺したいだろうが、オレにも幹部としての立場がある」

 カレンは吐息をつく。

「ヤツは存在自体が看過できない。だが、今の私は一個人として来ている身だ。今回はお前たちの判断に譲る」

「それは勇者軍の隊長としてではなく、という意味でいいんだな?」

「そうだ」

「ならカレン嬢はオッケーだ」

「は?」

「この場に居ていいってことさ」

「……」

 にわかに場の緊迫感が増した。それは何かの始まりを予感させる空気……。

「待たせたな、魔剣使い」

 満を持したといった具合に、ジェイズが俺のほうを向いた。

「あんたらの目的は俺だろ? ならもうシヒロを解放しろ」

 単刀直入に要求する。俺の目的は依然として変わらない。

「ああ、シヒロちゃんは解放してやるよ」
 ジェイズが応える。
「ただし、条件がある」

「どんな条件だ」

「次の三つのうちどれかだ。
 一、オレの部下になる。
 二、オレにぶっ殺される。
 三、オレをぶっ殺す。
 どうだ? いい条件だろ?」

「……」

「とりあえずお前、オレの部下になれ」

「断ったら?」

「オレと殺り合うしかねえな」

「わかった。それでいこう」

「おいおい待て待て。オレはテメーを殺したくはねえ。テメーのことは話で聞いた時からおもしれーと思っていた。そんで実際会ってみて飲んでみて、やっぱりテメーはおもしれーヤツだ。テメーは他のヤツらとは何か違う」

「オレにとって〔フリーダム〕は敵でしかない。確かにあんたは……あんたも他のヤツらとは違う気がする。でもそれは関係ない。どういう形であれ、俺が〔フリーダム〕に与することはない」

「じゃあやるしかねえな」

「そうだな」

「まあ安心しろ。お前が負けてもシヒロちゃんは解放される」

「……今ひとつ理解できないな。つまり俺はあんたの部下にならないかぎり、あんたとの闘いは避けられない。それならそれで俺は構わない。じゃあシヒロはもう関係ないだろ? 俺が逃げないかぎりは」

「さっきカレン嬢にも言ったが、オレにも立場ってもんがある」

「それだけじゃよくわからないな」

「これ以上は答える義理はねえ」

「それはそうだな」

「お喋りはここまでだ。ヤロー同士シラフで喋ることほどつまらねーもんはねえ」

「……」

 俺とジェイズは一定の距離を空けて向かい合った。

「やはりこうなったか……」

 カレンがため息をついた。
 
「カレン。念のため言っておくが、手出だしはするなよ」

 アイが釘を刺した。
 カレンは彼女に怪訝な目を向ける。

「ならなぜこの場に私も呼んだ?」

「勝手な行動をされるほうが困るからな。この場にいてもらったほうが都合がいい」

「アイ、ひとつだけ聞く。なぜお前たちがフリーダムに与する」

「勘違いするな。ヘッドフィールドは〔フリーダム〕に加わったわけではない。ボスが幹部になっただけだ」

「ではこの街自体はフリーダムとは関係ないのか?」

「現在、ここはフリーダムの保護下にあるといっていい」

「なに?」

「とはいってもヘッドフィールドはあくまで〔狂戦士〕の支配下だ」

「……なぜそんな事態になった?」

 質問するカレンにジェイズが睨みつける。

「そこまでだ。テメーらはとっとと退がってろ」

「……」

 カレンは納得のいっていない様子だったが、アイとともに黙って退がった。
 辺りを静寂が包む。町外れとはいえやけに静かな気がする。嵐の前の静けさというやつか?

「おい魔剣使い」

 ジェイズが俺を呼ぶ。いよいよという感じがしてきた。

「なんだ」

「オレはテメーを楽しみにしてた」

「……」

「だから、とっとと死ぬんじゃねえぞ」

 ジェイズの左拳がうっすらと光った。あれは魔力。奴はどんな能力なんだ?
 しまった。なぜカレンに訊いておかなかったんだ。いや、彼女が俺に教える義理もメリットもないな。俺は自分の力で戦うだけだ。

「〔グラディウス〕」

 魔導剣を顕現させた。その瞬間だ。

「!」

 俺はジェイズに向かって突進する。やると決まれば遠慮なくやるだけだ。
 
「いいねぇ。イキがイイじゃねえか」

 ジェイズは余裕だ。俺をナメているのか?
 構わない。それならそれでナメられているうちに決着をつける。

「特殊技能〔ニュンパギャッシュ〕」

 剣は風を切って奴へ振り抜かれる。このままいけば間違いなく刃は奴に届く。
〔ニュンパギャッシュ〕の一撃は高い威力を誇る。たとえ防御されても崩せるはず。すなわち、どうなるにせよ俺の有利に変わらない!

「ハァァァッ!!」
 
 ガギィィィンと音が大火花のように弾けた。
 
「!」

 刃は確かに届いた。……奴の拳に!
 ジェイズはその手にメリケンサックのような物を装着し、その金属部分で俺の剣を受け止めた。
 
「崩せない!?」

 奴の拳も体も微動だにしない。
 なんだ? やけに重い。
 力が強いのか? 体幹が強いのか? いや、これはそういう問題じゃない。

「そんなもんか? 魔剣使い」

 ジェイズの眼がギロリと光った。
 俺は次撃には移らずいったんサッと跳び退がった。


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次のエピソードへ進む ep140 魔剣使いvs狂戦士


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 キラースの姿が見えなくなるのを確認すると、ジェイズがカレンに視線を投げた。
「わりーな、カレン嬢。お前はヤツをぶっ殺したいだろうが、オレにも幹部としての立場がある」
 カレンは吐息をつく。
「ヤツは存在自体が看過できない。だが、今の私は一個人として来ている身だ。今回はお前たちの判断に譲る」
「それは勇者軍の隊長としてではなく、という意味でいいんだな?」
「そうだ」
「ならカレン嬢はオッケーだ」
「は?」
「この場に居ていいってことさ」
「……」
 にわかに場の緊迫感が増した。それは何かの始まりを予感させる空気……。
「待たせたな、魔剣使い」
 満を持したといった具合に、ジェイズが俺のほうを向いた。
「あんたらの目的は俺だろ? ならもうシヒロを解放しろ」
 単刀直入に要求する。俺の目的は依然として変わらない。
「ああ、シヒロちゃんは解放してやるよ」
 ジェイズが応える。
「ただし、条件がある」
「どんな条件だ」
「次の三つのうちどれかだ。
 一、オレの部下になる。
 二、オレにぶっ殺される。
 三、オレをぶっ殺す。
 どうだ? いい条件だろ?」
「……」
「とりあえずお前、オレの部下になれ」
「断ったら?」
「オレと殺り合うしかねえな」
「わかった。それでいこう」
「おいおい待て待て。オレはテメーを殺したくはねえ。テメーのことは話で聞いた時からおもしれーと思っていた。そんで実際会ってみて飲んでみて、やっぱりテメーはおもしれーヤツだ。テメーは他のヤツらとは何か違う」
「オレにとって〔フリーダム〕は敵でしかない。確かにあんたは……あんたも他のヤツらとは違う気がする。でもそれは関係ない。どういう形であれ、俺が〔フリーダム〕に与することはない」
「じゃあやるしかねえな」
「そうだな」
「まあ安心しろ。お前が負けてもシヒロちゃんは解放される」
「……今ひとつ理解できないな。つまり俺はあんたの部下にならないかぎり、あんたとの闘いは避けられない。それならそれで俺は構わない。じゃあシヒロはもう関係ないだろ? 俺が逃げないかぎりは」
「さっきカレン嬢にも言ったが、オレにも立場ってもんがある」
「それだけじゃよくわからないな」
「これ以上は答える義理はねえ」
「それはそうだな」
「お喋りはここまでだ。ヤロー同士シラフで喋ることほどつまらねーもんはねえ」
「……」
 俺とジェイズは一定の距離を空けて向かい合った。
「やはりこうなったか……」
 カレンがため息をついた。
「カレン。念のため言っておくが、手出だしはするなよ」
 アイが釘を刺した。
 カレンは彼女に怪訝な目を向ける。
「ならなぜこの場に私も呼んだ?」
「勝手な行動をされるほうが困るからな。この場にいてもらったほうが都合がいい」
「アイ、ひとつだけ聞く。なぜお前たちがフリーダムに与する」
「勘違いするな。ヘッドフィールドは〔フリーダム〕に加わったわけではない。ボスが幹部になっただけだ」
「ではこの街自体はフリーダムとは関係ないのか?」
「現在、ここはフリーダムの保護下にあるといっていい」
「なに?」
「とはいってもヘッドフィールドはあくまで〔狂戦士〕の支配下だ」
「……なぜそんな事態になった?」
 質問するカレンにジェイズが睨みつける。
「そこまでだ。テメーらはとっとと退がってろ」
「……」
 カレンは納得のいっていない様子だったが、アイとともに黙って退がった。
 辺りを静寂が包む。町外れとはいえやけに静かな気がする。嵐の前の静けさというやつか?
「おい魔剣使い」
 ジェイズが俺を呼ぶ。いよいよという感じがしてきた。
「なんだ」
「オレはテメーを楽しみにしてた」
「……」
「だから、とっとと死ぬんじゃねえぞ」
 ジェイズの左拳がうっすらと光った。あれは魔力。奴はどんな能力なんだ?
 しまった。なぜカレンに訊いておかなかったんだ。いや、彼女が俺に教える義理もメリットもないな。俺は自分の力で戦うだけだ。
「〔グラディウス〕」
 魔導剣を顕現させた。その瞬間だ。
「!」
 俺はジェイズに向かって突進する。やると決まれば遠慮なくやるだけだ。
「いいねぇ。イキがイイじゃねえか」
 ジェイズは余裕だ。俺をナメているのか?
 構わない。それならそれでナメられているうちに決着をつける。
「特殊技能〔ニュンパギャッシュ〕」
 剣は風を切って奴へ振り抜かれる。このままいけば間違いなく刃は奴に届く。
〔ニュンパギャッシュ〕の一撃は高い威力を誇る。たとえ防御されても崩せるはず。すなわち、どうなるにせよ俺の有利に変わらない!
「ハァァァッ!!」
 ガギィィィンと音が大火花のように弾けた。
「!」
 刃は確かに届いた。……奴の拳に!
 ジェイズはその手にメリケンサックのような物を装着し、その金属部分で俺の剣を受け止めた。
「崩せない!?」
 奴の拳も体も微動だにしない。
 なんだ? やけに重い。
 力が強いのか? 体幹が強いのか? いや、これはそういう問題じゃない。
「そんなもんか? 魔剣使い」
 ジェイズの眼がギロリと光った。
 俺は次撃には移らずいったんサッと跳び退がった。