ep138 キラース

ー/ー



「で、なんでこんな所なんだ」

「私に聞くな」

 俺もカレンも憮然とした。そこは今朝、まさに俺とジェイズが飲み合った酒場だった。そんな所に四者が集まったわけだ。

「まあそうカタくなんな」

 ジェイズはテーブルに足を乗っけてどかっと座っていた。
 横に立っているアイがため息をついた。

「あたしこそ聞きたいぞ、ボス。なんでここなんだ」

「場所なんかどーでもいいだろ? それにここなら魔剣使いにも説明しやすいしな」

「大事な話をする場所ではないだろ」

「大事なハナシはまた場所を変えてするさ」

「……もうボスの好きにしてくれ」

「それにしても、ひさしぶりだよなぁ〜カレン嬢」

 ジェイズがカレンに視線を移した。

「ああ。兄様とは会ったみたいだがな」

「なんだ知ってたか」

「なぜ〔フリーダム〕なんぞに入った」

「ここじゃ大事なハナシはしねえ。アイとの会話聞いてたろ?」

「じゃあいつどこでする?」

「まあ焦んな。そんじゃあ揃ったところで行くか」

 ジェイズはおもむろに立ち上がるとドアへ向かって歩きだした。
 やや苛立ってカレンが呼び止めようとするも、俺が彼女を制する。

「どこへ行くんだ?」

 俺からジェイズへ尋ねた。
 ジェイズは返答することなく歩いていくが、
「キラースのところだ」とアイがジェイズに代わって鋭い目で言った。
 俺とカレンは何も口にせず、ゆっくりと彼らに付いていった。




「マジでヒマだったぜ、まったくよ〜」

 キラースが俺たちの前を歩いている。その前をジェイズが歩いている。
 俺たちはキラースを解放してから、五人連れ立ってどこかへ向かい街路を進んでいた。

「そんでどこ行くんだよ? 狂戦士さんよ」

 キラースが質問した。それは俺たちも同様に抱えている疑問だ。

「そろそろだな」

 ジェイズは質問に答えず、ある地点まで来て立ち止まった。

「ああ? なんもねえぜ?」

 キラースの反応のとおり、そこは廃屋ぐらいしか残っていないただの街外れだった。
 すでに空は暗く、月明かりだけが妙にまぶしく辺りを照らしていた。
 
「キラース。テメーはなんの用があってここに来た?」

 ジェイズはゆっくりと振り向く。

「用? まあそりゃーあれだ。ヘッドフィールドに何か協力できないかって思ってよ」

 キラースはへらへらしながら答える。

「テメー。死ぬ覚悟あんのか?」

「ああ?」

 転瞬、ジェイズはスッと手を伸ばすと、指一本でキラースの額をぱちんと弾いた。

「!!」

 一瞬だった。キラースはロケットのような勢いで猛烈に何十メートルも吹っ飛んだ。さらに吹っ飛んだ先でドガァァァンと爆発した。
 
(ただのデコピンであのキラースが、まさに赤子の手をひねるように簡単にブッ飛ばされた?)

 俺は眼前の光景に驚愕する。

「汚ねえ足で生意気にヘッドフィールドの土を踏んでじゃねえよクロヤローが」

 ジェイズが嫌悪感たっぷりに吐き棄てた。が、次の瞬間にボガァァァンとジェイズの手が爆破した。
 
「ほう? 意外と頑張るじゃねえか」  

 だがジェイズにはかすり傷ひとつついていない。どうやら攻撃を受けた瞬間にキラースがジェイズの手に爆破魔法を仕掛けたようだった。しかしジェイズにはダメージのかけらも与えられていない。

「オイオイいきなりヒデェじゃねえかよ……」

 キラースが痛そうに頭をおさえながらこちらに戻ってきた。さすがに面食らったといった表情をしている。
 ジェイズはキラースを見下すように睨みつける。

「オレの手を爆破させるだけじゃなく、吹っ飛ばされてからも爆破して地面への激突のダメージを減らしやがったな? 相変わらずムダに器用なヤツだ」

「ジェイズさんよぉ。幹部会で『キラースへの制裁』でも決定したのか?」

「残念ながらテメーへの処置、というかテメーについての言及は何もなかったぜ」

「マジか? ちょっと意外だぜ」

「サボった意味なかったな」

「ならなぜオレに攻撃した? いくら自由な〔フリーダム〕でも、幹部同士で殺り合うのは御法度だぜ?」

「殺り合う? かる〜く小突いただけだぜ?」

「……(フザけんな。当たりどころ悪かったらマジでシャレになんねえぞ!)」

「今後、オレがいない間に勝手にヘッドフィールドに足を踏み入れるんじゃねえ」

 ジェイズはドスの効いた低い声で言った。荒々しく鋭い眼は冷酷に座っている。

「わ、わかったわかったわかったよ! そんなに怒るんじゃねえよ!」

 キラースは勘弁してくれと言わんばかりにあたふたとした。

「テメーの言うとおり幹部同士の殺し合いは禁止されているが、ちょっと小突いた拍子に死んじまったんならしょうがねえもんな」

「わかったわかった! マジでわかったぜ! それよりよ!? オレはお前に大事なハナシがあるんだよ!」

「オレにはねえ。とっとと失せろ」

「ちょっと待ってくれよ! これはヘッドフィールドにとってもイイ話だぜ!?」

「ボスの言うとおりにしろ」

 アイがキラースの肩に手を置いた。ジェイズ以上に鋭い眼つきだ。
 キラースは彼女の手を振り払った。

「チッ! なんだよチクショウ! ヘッドフィールドまでくんだりでハナシも聞かねえってなんだ!」

「そのまままっすぐ進めば街から出ていける。さっさと行け」

「わかったよチクショーが! 行けばいいんだろ行けばよ! フザけんじゃねえ!」

 キラースは罵り言葉を吐きながら街外へと立ち去っていった。


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「で、なんでこんな所なんだ」
「私に聞くな」
 俺もカレンも憮然とした。そこは今朝、まさに俺とジェイズが飲み合った酒場だった。そんな所に四者が集まったわけだ。
「まあそうカタくなんな」
 ジェイズはテーブルに足を乗っけてどかっと座っていた。
 横に立っているアイがため息をついた。
「あたしこそ聞きたいぞ、ボス。なんでここなんだ」
「場所なんかどーでもいいだろ? それにここなら魔剣使いにも説明しやすいしな」
「大事な話をする場所ではないだろ」
「大事なハナシはまた場所を変えてするさ」
「……もうボスの好きにしてくれ」
「それにしても、ひさしぶりだよなぁ〜カレン嬢」
 ジェイズがカレンに視線を移した。
「ああ。兄様とは会ったみたいだがな」
「なんだ知ってたか」
「なぜ〔フリーダム〕なんぞに入った」
「ここじゃ大事なハナシはしねえ。アイとの会話聞いてたろ?」
「じゃあいつどこでする?」
「まあ焦んな。そんじゃあ揃ったところで行くか」
 ジェイズはおもむろに立ち上がるとドアへ向かって歩きだした。
 やや苛立ってカレンが呼び止めようとするも、俺が彼女を制する。
「どこへ行くんだ?」
 俺からジェイズへ尋ねた。
 ジェイズは返答することなく歩いていくが、
「キラースのところだ」とアイがジェイズに代わって鋭い目で言った。
 俺とカレンは何も口にせず、ゆっくりと彼らに付いていった。
「マジでヒマだったぜ、まったくよ〜」
 キラースが俺たちの前を歩いている。その前をジェイズが歩いている。
 俺たちはキラースを解放してから、五人連れ立ってどこかへ向かい街路を進んでいた。
「そんでどこ行くんだよ? 狂戦士さんよ」
 キラースが質問した。それは俺たちも同様に抱えている疑問だ。
「そろそろだな」
 ジェイズは質問に答えず、ある地点まで来て立ち止まった。
「ああ? なんもねえぜ?」
 キラースの反応のとおり、そこは廃屋ぐらいしか残っていないただの街外れだった。
 すでに空は暗く、月明かりだけが妙にまぶしく辺りを照らしていた。
「キラース。テメーはなんの用があってここに来た?」
 ジェイズはゆっくりと振り向く。
「用? まあそりゃーあれだ。ヘッドフィールドに何か協力できないかって思ってよ」
 キラースはへらへらしながら答える。
「テメー。死ぬ覚悟あんのか?」
「ああ?」
 転瞬、ジェイズはスッと手を伸ばすと、指一本でキラースの額をぱちんと弾いた。
「!!」
 一瞬だった。キラースはロケットのような勢いで猛烈に何十メートルも吹っ飛んだ。さらに吹っ飛んだ先でドガァァァンと爆発した。
(ただのデコピンであのキラースが、まさに赤子の手をひねるように簡単にブッ飛ばされた?)
 俺は眼前の光景に驚愕する。
「汚ねえ足で生意気にヘッドフィールドの土を踏んでじゃねえよクロヤローが」
 ジェイズが嫌悪感たっぷりに吐き棄てた。が、次の瞬間にボガァァァンとジェイズの手が爆破した。
「ほう? 意外と頑張るじゃねえか」  
 だがジェイズにはかすり傷ひとつついていない。どうやら攻撃を受けた瞬間にキラースがジェイズの手に爆破魔法を仕掛けたようだった。しかしジェイズにはダメージのかけらも与えられていない。
「オイオイいきなりヒデェじゃねえかよ……」
 キラースが痛そうに頭をおさえながらこちらに戻ってきた。さすがに面食らったといった表情をしている。
 ジェイズはキラースを見下すように睨みつける。
「オレの手を爆破させるだけじゃなく、吹っ飛ばされてからも爆破して地面への激突のダメージを減らしやがったな? 相変わらずムダに器用なヤツだ」
「ジェイズさんよぉ。幹部会で『キラースへの制裁』でも決定したのか?」
「残念ながらテメーへの処置、というかテメーについての言及は何もなかったぜ」
「マジか? ちょっと意外だぜ」
「サボった意味なかったな」
「ならなぜオレに攻撃した? いくら自由な〔フリーダム〕でも、幹部同士で殺り合うのは御法度だぜ?」
「殺り合う? かる〜く小突いただけだぜ?」
「……(フザけんな。当たりどころ悪かったらマジでシャレになんねえぞ!)」
「今後、オレがいない間に勝手にヘッドフィールドに足を踏み入れるんじゃねえ」
 ジェイズはドスの効いた低い声で言った。荒々しく鋭い眼は冷酷に座っている。
「わ、わかったわかったわかったよ! そんなに怒るんじゃねえよ!」
 キラースは勘弁してくれと言わんばかりにあたふたとした。
「テメーの言うとおり幹部同士の殺し合いは禁止されているが、ちょっと小突いた拍子に死んじまったんならしょうがねえもんな」
「わかったわかった! マジでわかったぜ! それよりよ!? オレはお前に大事なハナシがあるんだよ!」
「オレにはねえ。とっとと失せろ」
「ちょっと待ってくれよ! これはヘッドフィールドにとってもイイ話だぜ!?」
「ボスの言うとおりにしろ」
 アイがキラースの肩に手を置いた。ジェイズ以上に鋭い眼つきだ。
 キラースは彼女の手を振り払った。
「チッ! なんだよチクショウ! ヘッドフィールドまでくんだりでハナシも聞かねえってなんだ!」
「そのまままっすぐ進めば街から出ていける。さっさと行け」
「わかったよチクショーが! 行けばいいんだろ行けばよ! フザけんじゃねえ!」
 キラースは罵り言葉を吐きながら街外へと立ち去っていった。