SCENE159 安心と心配
ー/ー アルカナさんはまだ落ち着きそうにない。ラティナさんが一生懸命泣き止ませようとしているけれど、まったく状況は変わりそうになかった。
僕はどうしようもないので、衣織お姉さんに話しかけることにしたよ。
「衣織お姉さん。持っている武器はその太刀だけ? 槍も持ってなかったっけか」
僕が問いかけると、衣織お姉さん表情が暗くなる。なんか、悪いこと聞いちゃったかな。
僕がどう反応していいのか困っていると、衣織お姉さんが槍を見せてくれた。
「あ……」
それを見た僕は、こんな言葉しか出てこなかった。
そこにあったのは、砕けてしまって使い物にならなくなった槍だった。
「衣織のやつが、樹海ダンジョンのコアを破壊するために使ったんだが、抵抗にあって砕けてしまったのさ。ダンジョンコアは簡単に壊れるようなもののはずなんだが、樹海ダンジョンはそうではなかったらしい」
衣織お姉さんと一緒にやってきた男性が、僕に事情を話してくれた。
「そうなんですか……。あの槍、衣織お姉さんが探索者を始めてからずっと持ってるって話だったから、それでこんな風になってるんですね」
僕は男性の言葉を聞いて、悲しい表情で衣織お姉さんを見ている。
衣織お姉さんはまったくの無言で、反応を示す様子はなかった。
「あっ、そういえばみなさんはどういった方々なんですか? 一応自己紹介しておきます。僕は三枝瞬っていって、今はこのダンジョンのマスターをしています。今はウィンクって名乗ってますけど」
僕は自己紹介をしながら、衣織お姉さんの仲間たちに話しかける。
「そういえば自己紹介をしていなかったな」
僕からの質問を受けながら、男性は首筋をかいている。
「俺は剛力要という。百鬼夜行というギルドのマスターをしている。衣織にはかなり世話になっているぞ」
衣織お姉さんのギルドのマスターなのか。それにしても、体の大きさのせいでかなり圧迫感を感じる。これが上位クラスの探索者なんだな。
他の人も説明してくれたけれど、みんな衣織お姉さんのギルドの仲間だったんだな。それを聞いたら、僕はすっごく安心した気がするよ。
「あの……」
自己紹介が終わったところで、ラティナさんが声をかけてくる。
「どうしたんですか、ラティナさん」
「衣織様の槍でしたら、お父様に頼んでみればよいのではないでしょうか」
「ラティナさんのお父さんに?」
僕は首をこてんと倒してしまう。
「はい。ゴーレム族ですし、わたくしのロックウェル家は異界の鉱山を多く押さえております。鉱石の扱いには長けておりますので、もしかしたらと思うんです」
「となると、廃鉱山ダンジョンか。今は俺のところが管理に関わっているから大丈夫だとは思うが、そういうことなら急いだ方がいいかな」
「どういうことなんですか?」
剛力さんが何か気になることを言っているので、僕は詳しく聞いてみることにする。
「ああ。あのダンジョンはいろんな金属を生み出してくれることが分かったからな。この日本だと貴重な金属の産出地だ。大事にしなきゃいけないのは、分かるな?」
「はい、それくらいでしたら僕も分かります」
剛力さんが確認してくるように聞いてくるので、僕は頷きながら答えている。
でも、剛力さんの表情は険しいままだ。どういうことなのか気になるので、僕は視線をそらさずに向き合ったままでいる。
「そういう利点のことを考えずに、ダンジョンだけを攻略しようと考えるやつらがいるんだ。それこそ、あのパラダイスのようなならず者連中だな。自分が目立つことしか考えていない」
「なるほど……。ダンジョンの中に入ってしまえば、管理局の影響も小さいですもんね」
「そうだ。そして、その管理局の通達も平然と無視するやつもいる。前の訪問からも時間が経っているし、このあとすぐに行くことにするか。アルカナは無事に届けられたんだしな」
剛力さんは視線をちらりと僕の後ろへと向ける。そこにはアルカナさんを一生懸命なだめるバトラーの姿があった。
話を終えた剛力さんは、衣織お姉さんたちを引きつれてダンジョンから引き揚げていく。その姿を僕たちは手を振って見送っていた。
「ふぅ……」
衣織お姉さんたちが帰った後、バトラーがなぜかため息をついていた。
「どうしたの、バトラー」
「あ、いえ。なんでもございませんよ、プリンセス」
「……? 変なバトラーだなぁ」
僕が声をかけると、どういうわけかバトラーは驚いたような表情をして答えていた。あからさまに激しい動揺だった。
「あの分ですと、バトラー様は何か隠してらっしゃいますね」
「あ、やっぱりかな。さっき、衣織お姉さんから詰められた後、話題が変わった後にほっとしていたみたいだし」
僕はラティナさんと話をしている。
だけど、僕たちはバトラーのことを追及する気にはなれなかった。何か大事なことを隠していると思われるけれど、なんだか聞くのが怖い気がするんだよね。だから、今はそっとしておいた方がいい気がするんだ。
「気にはなりますが、今はアルカナ様の方ですね。あの分ですと、ずいぶんと怖い思いをされたようですからね」
「あ、そうだね。人を殺してきちゃっているのは同情できないけど、ダンジョンマスターだからしょうがないかな。そういうことを言っていたら、復活できるとはいえ、セイレーンさんもかなり殺しちゃってますからね」
「そうですね。とりあえず、アルカナ様には落ち着けるようにわたくしがついていますね」
「お願いしますね、ラティナさん」
アルカナさんのことはラティナさんに任せて、僕は一人で椅子に座って、しばらくぼーっとくつろいでいた。
剛力さんが言っていたことは気になるけれど、今の僕にできることは何もないからね。
ラティナさんのお父さんの無事を、遠くのダンジョンから祈るばかりだった。
僕はどうしようもないので、衣織お姉さんに話しかけることにしたよ。
「衣織お姉さん。持っている武器はその太刀だけ? 槍も持ってなかったっけか」
僕が問いかけると、衣織お姉さん表情が暗くなる。なんか、悪いこと聞いちゃったかな。
僕がどう反応していいのか困っていると、衣織お姉さんが槍を見せてくれた。
「あ……」
それを見た僕は、こんな言葉しか出てこなかった。
そこにあったのは、砕けてしまって使い物にならなくなった槍だった。
「衣織のやつが、樹海ダンジョンのコアを破壊するために使ったんだが、抵抗にあって砕けてしまったのさ。ダンジョンコアは簡単に壊れるようなもののはずなんだが、樹海ダンジョンはそうではなかったらしい」
衣織お姉さんと一緒にやってきた男性が、僕に事情を話してくれた。
「そうなんですか……。あの槍、衣織お姉さんが探索者を始めてからずっと持ってるって話だったから、それでこんな風になってるんですね」
僕は男性の言葉を聞いて、悲しい表情で衣織お姉さんを見ている。
衣織お姉さんはまったくの無言で、反応を示す様子はなかった。
「あっ、そういえばみなさんはどういった方々なんですか? 一応自己紹介しておきます。僕は三枝瞬っていって、今はこのダンジョンのマスターをしています。今はウィンクって名乗ってますけど」
僕は自己紹介をしながら、衣織お姉さんの仲間たちに話しかける。
「そういえば自己紹介をしていなかったな」
僕からの質問を受けながら、男性は首筋をかいている。
「俺は剛力要という。百鬼夜行というギルドのマスターをしている。衣織にはかなり世話になっているぞ」
衣織お姉さんのギルドのマスターなのか。それにしても、体の大きさのせいでかなり圧迫感を感じる。これが上位クラスの探索者なんだな。
他の人も説明してくれたけれど、みんな衣織お姉さんのギルドの仲間だったんだな。それを聞いたら、僕はすっごく安心した気がするよ。
「あの……」
自己紹介が終わったところで、ラティナさんが声をかけてくる。
「どうしたんですか、ラティナさん」
「衣織様の槍でしたら、お父様に頼んでみればよいのではないでしょうか」
「ラティナさんのお父さんに?」
僕は首をこてんと倒してしまう。
「はい。ゴーレム族ですし、わたくしのロックウェル家は異界の鉱山を多く押さえております。鉱石の扱いには長けておりますので、もしかしたらと思うんです」
「となると、廃鉱山ダンジョンか。今は俺のところが管理に関わっているから大丈夫だとは思うが、そういうことなら急いだ方がいいかな」
「どういうことなんですか?」
剛力さんが何か気になることを言っているので、僕は詳しく聞いてみることにする。
「ああ。あのダンジョンはいろんな金属を生み出してくれることが分かったからな。この日本だと貴重な金属の産出地だ。大事にしなきゃいけないのは、分かるな?」
「はい、それくらいでしたら僕も分かります」
剛力さんが確認してくるように聞いてくるので、僕は頷きながら答えている。
でも、剛力さんの表情は険しいままだ。どういうことなのか気になるので、僕は視線をそらさずに向き合ったままでいる。
「そういう利点のことを考えずに、ダンジョンだけを攻略しようと考えるやつらがいるんだ。それこそ、あのパラダイスのようなならず者連中だな。自分が目立つことしか考えていない」
「なるほど……。ダンジョンの中に入ってしまえば、管理局の影響も小さいですもんね」
「そうだ。そして、その管理局の通達も平然と無視するやつもいる。前の訪問からも時間が経っているし、このあとすぐに行くことにするか。アルカナは無事に届けられたんだしな」
剛力さんは視線をちらりと僕の後ろへと向ける。そこにはアルカナさんを一生懸命なだめるバトラーの姿があった。
話を終えた剛力さんは、衣織お姉さんたちを引きつれてダンジョンから引き揚げていく。その姿を僕たちは手を振って見送っていた。
「ふぅ……」
衣織お姉さんたちが帰った後、バトラーがなぜかため息をついていた。
「どうしたの、バトラー」
「あ、いえ。なんでもございませんよ、プリンセス」
「……? 変なバトラーだなぁ」
僕が声をかけると、どういうわけかバトラーは驚いたような表情をして答えていた。あからさまに激しい動揺だった。
「あの分ですと、バトラー様は何か隠してらっしゃいますね」
「あ、やっぱりかな。さっき、衣織お姉さんから詰められた後、話題が変わった後にほっとしていたみたいだし」
僕はラティナさんと話をしている。
だけど、僕たちはバトラーのことを追及する気にはなれなかった。何か大事なことを隠していると思われるけれど、なんだか聞くのが怖い気がするんだよね。だから、今はそっとしておいた方がいい気がするんだ。
「気にはなりますが、今はアルカナ様の方ですね。あの分ですと、ずいぶんと怖い思いをされたようですからね」
「あ、そうだね。人を殺してきちゃっているのは同情できないけど、ダンジョンマスターだからしょうがないかな。そういうことを言っていたら、復活できるとはいえ、セイレーンさんもかなり殺しちゃってますからね」
「そうですね。とりあえず、アルカナ様には落ち着けるようにわたくしがついていますね」
「お願いしますね、ラティナさん」
アルカナさんのことはラティナさんに任せて、僕は一人で椅子に座って、しばらくぼーっとくつろいでいた。
剛力さんが言っていたことは気になるけれど、今の僕にできることは何もないからね。
ラティナさんのお父さんの無事を、遠くのダンジョンから祈るばかりだった。
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