第223話 星命
ー/ー 翌日の朝、実に快適な野宿を終え、二人は数時間ばかし道を下っていた。
獰猛な獣がいたような気もしたが、ミモザの魔具によって出会うこともなかった。
簡易ベッドの魔具やら、結界魔法の魔具やら、なんでもありすぎる超絶便利魔具の数々に、パエニアも心強さを覚えつつも、自分の存在意義を見失いそうだった。
視界の端には相変わらずも世界樹が見えており、方角を見失うこともなく着々と前へ前へと進行していく。
やがて、開けたところへと差し掛かると、その大きな建造物が視界に入った。
こんな森の中には不釣り合いとしか言いようのない石造りの神殿は、コロナリアを象徴する聖域であり、重要な巡礼地のひとつ。
「ここが女神の泉か」
泉というからには、森に囲まれた中にぽっかりと小池があるような印象だったが、小高い丘の上に設けられた神殿が鎮座しており、その上から川のように湧き水が流れ落ちてきていた。あたかも石と水の織り成す芸術品のよう。
女神のために設けられた水浴びの巨大な浴槽とでもいえばいいのだろうか。
聖地コロナリアの信者たちが定期的にこの場を訪れ、保全や修繕しているらしく、古い時代からあるとは思えないほど綺麗に整っている。
そこかしこに水の流れる神殿は思いのほか大きく、それだけで一つの城のようにも見えたくらい。曰くこの泉の源泉は世界樹の根本にあるらしく、その根っこを伝ってここから湧き出しているらしい。
「この泉で体を清めれば、女神の加護を得られると言われています。ロータスさんはお告げでこの地に呼び出され、水を浴びたときに女神様と謁見し、剣を授かったって学校では教わりましたね」
「そういえばそんなこと言ってた気がするな」
お告げで呼び出された話はネルムフィラ魔導士学院でも何度も聞かされた。
勇者ロータスとともに行動していた一行がわざわざ水浴びするロータスのために、こんなところまでぞろぞろとついてきたと思うとシュールな光景ではある。
普通に剣を渡すだけならもう少し違う方法もあったような気もしないでもないが、女神とこの世界の繋がりは世界樹以外にないため、必然と女神と接触するにはこの泉を訪れなければならないのが一応のルールだ。
「で、どうすんだ? この上の泉を見ていくのか?」
パエニアはその石段を見上げる。世界樹ほどではないが、結構な高さはあった。
聖地を巡礼する修行僧たちは厳かにこの階段を上っていくのだろう。
ただでさえここに来るまでも一苦労ではあるのだが。
「世界樹に向かうなら身を清めるのが通過儀礼なので、浴びていきましょう」
「マジかよ……しょうがねえなぁ」
パエニア自身そこまで信心深いわけでもなかったが、ここまで来てスルーするのもさすがに忍びないと思ったのか、しぶしぶ覚悟を決める。
ここまでの道のりのことを思えば、たかだか数百段程度の石段など、ものの数ではないだろう。そう自分に言い聞かせるように、石段を上がり始めた。
流れてくる泉のせせらぎを耳にしながら、一歩一歩の高い石段を踏みしめる。
上に行くにつれ、辺りは白く濃い霧に包まれていき、あたかも雲の中を登っているかのような気分になる。
天空に至るほどの高度はないはずだったが、その神秘的なまでに真っ白な空間は、あたかも天界に届いているようにも思わされる。
ようやくして、階段の切れ目にたどり着く。
そこは、雲の中に浮かんで見えるほど、白い霧に包まれた泉があった。
いつの間にか別の世界に迷い込んでしまったようにも錯覚する。
その場に立っているだけでも、身も心も全て綺麗に洗い流されてしまいそうなほど澄み切った空気に満ちており、ミモザもパエニアもしばらく圧倒され動けなかった。
本当にこんなところで水浴びをしていいものだろうかと少々迷いつつも、ミモザは恐る恐る泉の端に手を付け、ちゃぷちゃぷと手を洗い始める。
そんなものでいいのか、と疑問を持ったパエニアだったが、さしもの自分もここで泉の中に飛び込むような勇気もなく、ミモザと同じように泉の水で手をすすぐ。
「その程度でいいのかえ?」
二人が同時にドキリとする。誰もいないと思っていた泉の奥から声がしたからだ。
霧の立ち込める泉の向こう側に、その輪郭が見える。
どうしてさっきは気付かなかったのかと思うほど、くっきりとした姿だ。
白い衣を身にまとう、見るも美しい女性が、そこに立っていた。
もし目がおかしくなっていなければ露出した肌が淡く発光しているように見えた。
「あなたは、女神様、ですか?」
「他に誰と思う。ここは妾の泉じゃ。遠慮せず近こうよれ」
その場から動いたつもりはなかった。
ただ、ミモザもパエニアも気付いた時には両足が膝まで泉に浸かっていた。
いつ足を踏み入れたのかも分からない。
「あ、ああ、ど、どうもこんにちは。はじ、初めまして、女神様」
「くるしゅうないくるしゅうないぞ。ほっほっほ」
雲のように透き通る白い肌。輝いて見えるほどの金色の長い髪。
何色にも染まりそうにない宝石のような光沢の瞳。
何をしなくとも思わず平伏してしまいそうなほどの存在感。
それを女神と呼ばないのなら、何なのだろうか。
ものの一瞬のうちに、疑いようもない女神である確信がついた。
「そなたはミモザ・アレフヘイム。そっちはパエニア・ラクトフロニアだったな」
「わ、私たちのことをご存じなのですか?」
「妾に知らぬことなぞない。特に、あの小娘と繋がりのある者はな」
その言葉に反応し、ミモザはハッとする。
「小娘って、もしかしてフィーさんのことですか?」
「そうそうフィテウマ・サタナムーン。あやつには随分と長いこと面倒掛けられた」
「女神にも迷惑かけてたのか、アイツ」
「いいや、そうではないぞ童。月の民は星命を守る一族として妾に長年仕えてきた。それも数千年前の話。均衡が崩れてしまってきてな。無理をさせてきたのじゃよ」
何の話をしているのかサッパリ理解できないパエニアとミモザは首を傾げる。
「ふむ? そなたらは星命のことを知らぬのか?」
「えっと魔力のことですか? 太古の昔は根源の大半が地下に埋まっていたけれど、星の衝突によって一部が空の月になったという」
「そうじゃ。おかげで大穴が空いてしまい、世界樹も地表に出てしまったのじゃ」
まるで「そんなこと、初めて聞いた」とでも言わんばかりに唖然とするパエニアを横目にミモザは乾いた笑みをほんのりと浮かべる。
実際のところ、おとぎ話レベルであり、ミモザにとっても現実味のない話だった。
そんな何百年何千年単位の話を世間話のように言ってのけるのも女神ならではか。
「空に月が飛んでいってからじゃの。星命は空からも降り注ぐようになり、月の民も次第に肩身も狭くなり……あの小娘の世代ではすっかりお払い箱。まあ、それでも、守護者としては頑張ってもらった方ではあるのう」
「じゃ、じゃあ、なんでロータスに聖剣を渡したんだ。フィーの命を奪う剣を」
恐る恐るパエニアが口を開くが、女神はそれをフッと鼻で笑う。
「そなたは妾のことを恨んでおるのかえ? ならば筋違いというものじゃよ」
パエニアの胸の内を全ておみとおしかのような態度で言ってのける。
「星命はそなたたちの言うところの魔力。この世界の命でもありながら魔法という、新たな技術に昇華され、今でこそ多くの種族が好きに使っておる。しかし本質的には生命に宿る魂の素材なのじゃよ」
「魂の、素材ですか?」
「うむ。生きとし生けるものは皆、星命から生まれ、星命に還る。そうやって、この世界の命は巡る。じゃが、フィテウマは少々長く生きすぎた。それどころか、星命を己の命に変換して生きながらえた。そのせいでちぃとばかし均衡が崩れての」
相変わらずパエニアは頭に「?」を浮かべた表情をしているが、ミモザはどうにか女神の言葉の意図を解釈しようとする。
「だから魔力を――星命を消滅させる女神の聖剣で、一度はフィーさんの命を絶ち、均衡を戻そうとしたのですか?」
「ミモザよ、そなたは賢い子じゃの。その通りじゃ」
ほっほっほ、と女神はあどけない顔で笑ってのける。
「とはいえ、星命を魂に変換するなどという術も厄介なものでの。小娘の魂を世界樹に還元させるのも一苦労じゃった」
「結果として、フィーさんの魂は耐えきれなくなってしまった」
その通り、と言いたげに女神がまたニヤリと微笑む。
「よく分かんねえがフィーは数千年もずっと生き続けて、魔力の管理者、魔王として頑張ってきたけど、逆に魂に魔力を溜め込みすぎて危なくなったから勇者ロータスに魔力を消すように命令した、と?」
「そうじゃ」
「それで、一時はどうにかなったけど、結局無理やり魔力で魂を再生なんてしたから魂が壊れかけててそのまま死んじまったってことか?」
「そなたもなかなか賢いではないか、パエニアよ」
あまり褒められたような気がせず、パエニアも複雑な表情を浮かべる。
「そなたらは、世界樹へと還り、枝葉となったあの小娘に会いにきたのだろう?」
やはり女神。何を言うまでもなく全てを把握し尽しているよう。
「安心するといい。あの小娘の魂は無事世界樹に還元された。この先へと進めば、すくすくと育った枝葉を拝むことができるじゃろう」
そこまで聞いてようやく二人は安堵の表情を見せる。
女神が言うからには間違いない。
聖地コロナリアにまで足を運んでおいて、魂も何もないと言われたら落胆どころの話ではなかっただろう。
「――しかし」
ふと、女神の言葉が曇る。
「今まさに世界樹には脅威が近付いておる。不届きな者が星命の根源を断ち、この世界に叛逆しようとしておるのじゃ」
急に神妙な顔をし、そのようなことを言い放つ。
「そ、そんな、世界樹を? 一体誰がそんなことを……」
「その者の名はロベリア・エリナス。そなたたちも知っておる男じゃよ」
あまりにも意表を突かれた。ここでその名前を聞くとは思ってもみなかったから。
賢者ロベリア。レッドアイズでクーデターを起こした、かつての英雄の名だ。
獰猛な獣がいたような気もしたが、ミモザの魔具によって出会うこともなかった。
簡易ベッドの魔具やら、結界魔法の魔具やら、なんでもありすぎる超絶便利魔具の数々に、パエニアも心強さを覚えつつも、自分の存在意義を見失いそうだった。
視界の端には相変わらずも世界樹が見えており、方角を見失うこともなく着々と前へ前へと進行していく。
やがて、開けたところへと差し掛かると、その大きな建造物が視界に入った。
こんな森の中には不釣り合いとしか言いようのない石造りの神殿は、コロナリアを象徴する聖域であり、重要な巡礼地のひとつ。
「ここが女神の泉か」
泉というからには、森に囲まれた中にぽっかりと小池があるような印象だったが、小高い丘の上に設けられた神殿が鎮座しており、その上から川のように湧き水が流れ落ちてきていた。あたかも石と水の織り成す芸術品のよう。
女神のために設けられた水浴びの巨大な浴槽とでもいえばいいのだろうか。
聖地コロナリアの信者たちが定期的にこの場を訪れ、保全や修繕しているらしく、古い時代からあるとは思えないほど綺麗に整っている。
そこかしこに水の流れる神殿は思いのほか大きく、それだけで一つの城のようにも見えたくらい。曰くこの泉の源泉は世界樹の根本にあるらしく、その根っこを伝ってここから湧き出しているらしい。
「この泉で体を清めれば、女神の加護を得られると言われています。ロータスさんはお告げでこの地に呼び出され、水を浴びたときに女神様と謁見し、剣を授かったって学校では教わりましたね」
「そういえばそんなこと言ってた気がするな」
お告げで呼び出された話はネルムフィラ魔導士学院でも何度も聞かされた。
勇者ロータスとともに行動していた一行がわざわざ水浴びするロータスのために、こんなところまでぞろぞろとついてきたと思うとシュールな光景ではある。
普通に剣を渡すだけならもう少し違う方法もあったような気もしないでもないが、女神とこの世界の繋がりは世界樹以外にないため、必然と女神と接触するにはこの泉を訪れなければならないのが一応のルールだ。
「で、どうすんだ? この上の泉を見ていくのか?」
パエニアはその石段を見上げる。世界樹ほどではないが、結構な高さはあった。
聖地を巡礼する修行僧たちは厳かにこの階段を上っていくのだろう。
ただでさえここに来るまでも一苦労ではあるのだが。
「世界樹に向かうなら身を清めるのが通過儀礼なので、浴びていきましょう」
「マジかよ……しょうがねえなぁ」
パエニア自身そこまで信心深いわけでもなかったが、ここまで来てスルーするのもさすがに忍びないと思ったのか、しぶしぶ覚悟を決める。
ここまでの道のりのことを思えば、たかだか数百段程度の石段など、ものの数ではないだろう。そう自分に言い聞かせるように、石段を上がり始めた。
流れてくる泉のせせらぎを耳にしながら、一歩一歩の高い石段を踏みしめる。
上に行くにつれ、辺りは白く濃い霧に包まれていき、あたかも雲の中を登っているかのような気分になる。
天空に至るほどの高度はないはずだったが、その神秘的なまでに真っ白な空間は、あたかも天界に届いているようにも思わされる。
ようやくして、階段の切れ目にたどり着く。
そこは、雲の中に浮かんで見えるほど、白い霧に包まれた泉があった。
いつの間にか別の世界に迷い込んでしまったようにも錯覚する。
その場に立っているだけでも、身も心も全て綺麗に洗い流されてしまいそうなほど澄み切った空気に満ちており、ミモザもパエニアもしばらく圧倒され動けなかった。
本当にこんなところで水浴びをしていいものだろうかと少々迷いつつも、ミモザは恐る恐る泉の端に手を付け、ちゃぷちゃぷと手を洗い始める。
そんなものでいいのか、と疑問を持ったパエニアだったが、さしもの自分もここで泉の中に飛び込むような勇気もなく、ミモザと同じように泉の水で手をすすぐ。
「その程度でいいのかえ?」
二人が同時にドキリとする。誰もいないと思っていた泉の奥から声がしたからだ。
霧の立ち込める泉の向こう側に、その輪郭が見える。
どうしてさっきは気付かなかったのかと思うほど、くっきりとした姿だ。
白い衣を身にまとう、見るも美しい女性が、そこに立っていた。
もし目がおかしくなっていなければ露出した肌が淡く発光しているように見えた。
「あなたは、女神様、ですか?」
「他に誰と思う。ここは妾の泉じゃ。遠慮せず近こうよれ」
その場から動いたつもりはなかった。
ただ、ミモザもパエニアも気付いた時には両足が膝まで泉に浸かっていた。
いつ足を踏み入れたのかも分からない。
「あ、ああ、ど、どうもこんにちは。はじ、初めまして、女神様」
「くるしゅうないくるしゅうないぞ。ほっほっほ」
雲のように透き通る白い肌。輝いて見えるほどの金色の長い髪。
何色にも染まりそうにない宝石のような光沢の瞳。
何をしなくとも思わず平伏してしまいそうなほどの存在感。
それを女神と呼ばないのなら、何なのだろうか。
ものの一瞬のうちに、疑いようもない女神である確信がついた。
「そなたはミモザ・アレフヘイム。そっちはパエニア・ラクトフロニアだったな」
「わ、私たちのことをご存じなのですか?」
「妾に知らぬことなぞない。特に、あの小娘と繋がりのある者はな」
その言葉に反応し、ミモザはハッとする。
「小娘って、もしかしてフィーさんのことですか?」
「そうそうフィテウマ・サタナムーン。あやつには随分と長いこと面倒掛けられた」
「女神にも迷惑かけてたのか、アイツ」
「いいや、そうではないぞ童。月の民は星命を守る一族として妾に長年仕えてきた。それも数千年前の話。均衡が崩れてしまってきてな。無理をさせてきたのじゃよ」
何の話をしているのかサッパリ理解できないパエニアとミモザは首を傾げる。
「ふむ? そなたらは星命のことを知らぬのか?」
「えっと魔力のことですか? 太古の昔は根源の大半が地下に埋まっていたけれど、星の衝突によって一部が空の月になったという」
「そうじゃ。おかげで大穴が空いてしまい、世界樹も地表に出てしまったのじゃ」
まるで「そんなこと、初めて聞いた」とでも言わんばかりに唖然とするパエニアを横目にミモザは乾いた笑みをほんのりと浮かべる。
実際のところ、おとぎ話レベルであり、ミモザにとっても現実味のない話だった。
そんな何百年何千年単位の話を世間話のように言ってのけるのも女神ならではか。
「空に月が飛んでいってからじゃの。星命は空からも降り注ぐようになり、月の民も次第に肩身も狭くなり……あの小娘の世代ではすっかりお払い箱。まあ、それでも、守護者としては頑張ってもらった方ではあるのう」
「じゃ、じゃあ、なんでロータスに聖剣を渡したんだ。フィーの命を奪う剣を」
恐る恐るパエニアが口を開くが、女神はそれをフッと鼻で笑う。
「そなたは妾のことを恨んでおるのかえ? ならば筋違いというものじゃよ」
パエニアの胸の内を全ておみとおしかのような態度で言ってのける。
「星命はそなたたちの言うところの魔力。この世界の命でもありながら魔法という、新たな技術に昇華され、今でこそ多くの種族が好きに使っておる。しかし本質的には生命に宿る魂の素材なのじゃよ」
「魂の、素材ですか?」
「うむ。生きとし生けるものは皆、星命から生まれ、星命に還る。そうやって、この世界の命は巡る。じゃが、フィテウマは少々長く生きすぎた。それどころか、星命を己の命に変換して生きながらえた。そのせいでちぃとばかし均衡が崩れての」
相変わらずパエニアは頭に「?」を浮かべた表情をしているが、ミモザはどうにか女神の言葉の意図を解釈しようとする。
「だから魔力を――星命を消滅させる女神の聖剣で、一度はフィーさんの命を絶ち、均衡を戻そうとしたのですか?」
「ミモザよ、そなたは賢い子じゃの。その通りじゃ」
ほっほっほ、と女神はあどけない顔で笑ってのける。
「とはいえ、星命を魂に変換するなどという術も厄介なものでの。小娘の魂を世界樹に還元させるのも一苦労じゃった」
「結果として、フィーさんの魂は耐えきれなくなってしまった」
その通り、と言いたげに女神がまたニヤリと微笑む。
「よく分かんねえがフィーは数千年もずっと生き続けて、魔力の管理者、魔王として頑張ってきたけど、逆に魂に魔力を溜め込みすぎて危なくなったから勇者ロータスに魔力を消すように命令した、と?」
「そうじゃ」
「それで、一時はどうにかなったけど、結局無理やり魔力で魂を再生なんてしたから魂が壊れかけててそのまま死んじまったってことか?」
「そなたもなかなか賢いではないか、パエニアよ」
あまり褒められたような気がせず、パエニアも複雑な表情を浮かべる。
「そなたらは、世界樹へと還り、枝葉となったあの小娘に会いにきたのだろう?」
やはり女神。何を言うまでもなく全てを把握し尽しているよう。
「安心するといい。あの小娘の魂は無事世界樹に還元された。この先へと進めば、すくすくと育った枝葉を拝むことができるじゃろう」
そこまで聞いてようやく二人は安堵の表情を見せる。
女神が言うからには間違いない。
聖地コロナリアにまで足を運んでおいて、魂も何もないと言われたら落胆どころの話ではなかっただろう。
「――しかし」
ふと、女神の言葉が曇る。
「今まさに世界樹には脅威が近付いておる。不届きな者が星命の根源を断ち、この世界に叛逆しようとしておるのじゃ」
急に神妙な顔をし、そのようなことを言い放つ。
「そ、そんな、世界樹を? 一体誰がそんなことを……」
「その者の名はロベリア・エリナス。そなたたちも知っておる男じゃよ」
あまりにも意表を突かれた。ここでその名前を聞くとは思ってもみなかったから。
賢者ロベリア。レッドアイズでクーデターを起こした、かつての英雄の名だ。
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