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SCENE157 復活のための場所

ー/ー



 樹海ダンジョンを攻略した翌日、私は瞬のダンジョンへとやってきた。
 今回は私一人ではなく、ダンジョンを攻略した百鬼夜行の五人そろっての訪問だ。

「こんな奥まったところにダンジョンがあるとはな……」

「ああ、ここが瞬のダンジョンだ。私の実家のすぐそばなんでな、迷わずにここに来れるよ」

「ほう、そうなんだな」

 私は剛力さんと話をしている。

「ちょ、ちょっと待って下さいよ。なんで俺が、こんなのを背負わないといけないんですかね。他の二人は軽そうな人形なのに!」

「いつも大量のものを運んでいるくせにだらしがないな。それに、こんなのとか、重いとか、女性に対して失礼だぞ、色」

「だったら、自分たちで持って下さいよね」

 後ろからやってきた色が文句を言っている。
 色が背負っているのは、樹海ダンジョンのダンジョンマスターであるアルカナの体だ。ちなみに、彼女の命ともいえる宝石は私が持っている。
 そう、今日ここまでやってきたのは、ラティナとの約束を果たすためだ。
 樹海ダンジョンのダンジョンマスターだったアルカナは、ラティナとは友人だったらしいからな。それで、ここまで連れてきたんだ。
 ダンジョンから脱出するのに少し手間取ったらしいが、無事に体と本体を持ち出すことができた。ダンジョンコアを破壊しても、この通り、両方とも無事だった。
 あとは、よそのダンジョンに入って、意識を復活させられれば成功というわけだ。
 それで、瞬のダンジョンへとやってきたわけだが、実に今はかなり緊張してしまっている。
 入口でダンジョン管理局のチェックを受けて入るのが通常なのだが、この日の私たちはそのチェックをすっ飛ばすことができた。
 なぜか。
 入口まで瞬が迎えに来ていたからだ。ダンジョンマスターが直々にやって来るというのは、普通ありえない話だが、ここは特殊なダンジョンだからな、こういうことは起きるものなんだ。
 瞬に迎えられて、私たちはボス部屋までやってくる。私以外は実に初めて訪れる場所だから、なんとも物珍しそうに眺めている。

「実にシンプルなダンジョンだな」

「まあ、そうですね。ここはあくまでも初心者向けにしていますからね。だから、僕のところにも来やすいようにしているんです」

「なるほど」

 剛力さんの感想にも、瞬はすらすらと話をしている。本当なら探索者を警戒したいところだろうが、私と一緒にいたからか安心しているみたいだな。

「おや、衣織殿、いらしていたのですか」

「ああ、さっき着いたところだ」

「左様でしたか。では、お飲み物だけでもご用意しましょうか?」

「ありがたいが、まずは先にこっちだな。ラティナを呼んできてくれないか?」

「おや、アルカナ様ではございませんか。承知致しました、少々お待ち下さいませ」

 バトラーはアルカナの姿を確認すると、一度下がっていく。ラティナの姿が見えないから、呼びに行ったようだ。

「あの蛇のモンスター、かなり強そうだな」

「ああ、実際強い。私ですら勝てない相手だ。ここではよく稽古をつけてもらっているんだ」

「ほう……。すごいな」

 さすが剛力さん。バトラーの強さを一瞬で見抜いていた。
 ラティナが出てくるまでの間、私たちはアルカナの体と、その手下の人形を地面へと置く。
 本体となる宝石が体から離れているために、ものすごく力なくだらりと腕を垂れてしまっている。
 しばらく待っていると、ようやくラティナが姿を現した。

「申し訳ございません。大変お待たせいたしました」

「いや、突然こっちがやってきたんだ。すぐに対応できなくても文句は言わないさ」

「ありがとうございます」

 ラティナは、ゴーレムの体でありながらもしっかりと貴族令嬢らしい動作を取っている。ごつごつとした体だというのに、本当に動きはとても滑らかだ。

「そうだ、ラティナ。この子を知っているか?」

「はい。リッチモンド侯爵家のご令嬢であるアルカナ様です。幼い頃からお付き合いをさせていただいております」

 私が聞くと、ラティナはものすごくすらすらと答えていた。それだけ交流があるってことなんだろうな。
 確認が取れたところで、私はカバンにしまい込んでおいた宝珠を取り出す。傷がつかないように、きれいな布でしっかりくるんである。
 宝珠を取り出すと、ラティナにも確認してもらう。

「はい、これは間違いなく、わたくしたちのような魔法生物系のモンスターが持つ核といわれるものです。これを傷つけられると、力が大幅に弱まりますし、最悪死に至ります。大切なものですので、普通はこのように覆うなどして傷がつかないようにしております」

「ふむふむ」

「これを預けられるということは、それだけ信用をして下さっているということです。なにせ、命そのものですからね」

 ラティナにこう言われると、ちょっとむずがゆく感じるな。
 瞬はいいとして、モンスターにまで信用されるというのは、探索者としてはちょっと失格かなと思うところがあるからな。
 よし、いよいよ覚悟を決めて、私はアルカナに向かい合う。
 ここでアルカナを蘇らせられなければ、ここまでやってきた意味もなくなってしまう。実に緊張の一瞬だ。
 アルカナの宝珠は、胸部にある。鎖骨の中間地点ほどに、宝珠がついていたくぼみがはっきりと見える。

 さあ、うまくいってくれよ?

 私は祈るような気持ちで、宝珠をアルカナの胸部にあるくぼみにはめ込んだ。


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次のエピソードへ進む SCENE158 もうめちゃくちゃだよう


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 樹海ダンジョンを攻略した翌日、私は瞬のダンジョンへとやってきた。
 今回は私一人ではなく、ダンジョンを攻略した百鬼夜行の五人そろっての訪問だ。
「こんな奥まったところにダンジョンがあるとはな……」
「ああ、ここが瞬のダンジョンだ。私の実家のすぐそばなんでな、迷わずにここに来れるよ」
「ほう、そうなんだな」
 私は剛力さんと話をしている。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ。なんで俺が、こんなのを背負わないといけないんですかね。他の二人は軽そうな人形なのに!」
「いつも大量のものを運んでいるくせにだらしがないな。それに、こんなのとか、重いとか、女性に対して失礼だぞ、色」
「だったら、自分たちで持って下さいよね」
 後ろからやってきた色が文句を言っている。
 色が背負っているのは、樹海ダンジョンのダンジョンマスターであるアルカナの体だ。ちなみに、彼女の命ともいえる宝石は私が持っている。
 そう、今日ここまでやってきたのは、ラティナとの約束を果たすためだ。
 樹海ダンジョンのダンジョンマスターだったアルカナは、ラティナとは友人だったらしいからな。それで、ここまで連れてきたんだ。
 ダンジョンから脱出するのに少し手間取ったらしいが、無事に体と本体を持ち出すことができた。ダンジョンコアを破壊しても、この通り、両方とも無事だった。
 あとは、よそのダンジョンに入って、意識を復活させられれば成功というわけだ。
 それで、瞬のダンジョンへとやってきたわけだが、実に今はかなり緊張してしまっている。
 入口でダンジョン管理局のチェックを受けて入るのが通常なのだが、この日の私たちはそのチェックをすっ飛ばすことができた。
 なぜか。
 入口まで瞬が迎えに来ていたからだ。ダンジョンマスターが直々にやって来るというのは、普通ありえない話だが、ここは特殊なダンジョンだからな、こういうことは起きるものなんだ。
 瞬に迎えられて、私たちはボス部屋までやってくる。私以外は実に初めて訪れる場所だから、なんとも物珍しそうに眺めている。
「実にシンプルなダンジョンだな」
「まあ、そうですね。ここはあくまでも初心者向けにしていますからね。だから、僕のところにも来やすいようにしているんです」
「なるほど」
 剛力さんの感想にも、瞬はすらすらと話をしている。本当なら探索者を警戒したいところだろうが、私と一緒にいたからか安心しているみたいだな。
「おや、衣織殿、いらしていたのですか」
「ああ、さっき着いたところだ」
「左様でしたか。では、お飲み物だけでもご用意しましょうか?」
「ありがたいが、まずは先にこっちだな。ラティナを呼んできてくれないか?」
「おや、アルカナ様ではございませんか。承知致しました、少々お待ち下さいませ」
 バトラーはアルカナの姿を確認すると、一度下がっていく。ラティナの姿が見えないから、呼びに行ったようだ。
「あの蛇のモンスター、かなり強そうだな」
「ああ、実際強い。私ですら勝てない相手だ。ここではよく稽古をつけてもらっているんだ」
「ほう……。すごいな」
 さすが剛力さん。バトラーの強さを一瞬で見抜いていた。
 ラティナが出てくるまでの間、私たちはアルカナの体と、その手下の人形を地面へと置く。
 本体となる宝石が体から離れているために、ものすごく力なくだらりと腕を垂れてしまっている。
 しばらく待っていると、ようやくラティナが姿を現した。
「申し訳ございません。大変お待たせいたしました」
「いや、突然こっちがやってきたんだ。すぐに対応できなくても文句は言わないさ」
「ありがとうございます」
 ラティナは、ゴーレムの体でありながらもしっかりと貴族令嬢らしい動作を取っている。ごつごつとした体だというのに、本当に動きはとても滑らかだ。
「そうだ、ラティナ。この子を知っているか?」
「はい。リッチモンド侯爵家のご令嬢であるアルカナ様です。幼い頃からお付き合いをさせていただいております」
 私が聞くと、ラティナはものすごくすらすらと答えていた。それだけ交流があるってことなんだろうな。
 確認が取れたところで、私はカバンにしまい込んでおいた宝珠を取り出す。傷がつかないように、きれいな布でしっかりくるんである。
 宝珠を取り出すと、ラティナにも確認してもらう。
「はい、これは間違いなく、わたくしたちのような魔法生物系のモンスターが持つ核といわれるものです。これを傷つけられると、力が大幅に弱まりますし、最悪死に至ります。大切なものですので、普通はこのように覆うなどして傷がつかないようにしております」
「ふむふむ」
「これを預けられるということは、それだけ信用をして下さっているということです。なにせ、命そのものですからね」
 ラティナにこう言われると、ちょっとむずがゆく感じるな。
 瞬はいいとして、モンスターにまで信用されるというのは、探索者としてはちょっと失格かなと思うところがあるからな。
 よし、いよいよ覚悟を決めて、私はアルカナに向かい合う。
 ここでアルカナを蘇らせられなければ、ここまでやってきた意味もなくなってしまう。実に緊張の一瞬だ。
 アルカナの宝珠は、胸部にある。鎖骨の中間地点ほどに、宝珠がついていたくぼみがはっきりと見える。
 さあ、うまくいってくれよ?
 私は祈るような気持ちで、宝珠をアルカナの胸部にあるくぼみにはめ込んだ。