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SCENE156 樹海ダンジョンのコア

ー/ー



 どのくらい経っただろうか。

(ふぅ……、ダンジョンコアを壊すのは久しぶりだな)

 剛力さんからの連絡を待ち、私はダンジョンコアを前にして大きく深呼吸をする。
 私が脱出を待っている理由は、アルカナをこのダンジョンの影響下から引き離す必要があるからだ。ダンジョン内にその体が残っていれば、ダンジョンコアの崩壊とともに影響を受けてしまい、ダンジョンマスターは死を迎える。それは絶対に阻止しなければならないからだ。

(ラティナと約束したからな。必ず会わせると)

 私は太刀を構えたまま、ずっとその時を待っている。

 ピリリリリ……。

 私の携帯電話が鳴り響く。

「はい、衣織です」

『おう、待たせたな』

 剛力さんの声が聞こえてきた。

「ずいぶんと時間がかかっていましたね」

『ああ、思った以上にダンジョンの拡大が速まっている。それに、アルカナとかいうダンジョンマスターをダンジョンから脱出させるのに、ちょっと手間取ってな』

「何があったんですか」

 剛力さんの話を聞いて、私はつい問いかけてしまう。
 だが、剛力さんは答えなかった。

『早くコアを壊してくれ。このままじゃ、延々とダンジョンから逃げ続けないといけない』

「……分かりました。それじゃ、今から壊すので、通話を切りますね」

『ああ、頼むぞ』

 かなり緊迫した状況のようだ。私は通話を終了させる。
 どうやら、外は大変なことになっているらしい。のんびりしている時間はないので、私はすぐさま太刀を構え直す。
 目を閉じて一度深呼吸をすると、私は改めて目を見開く。

「一撃で決める。これ以上、ダンジョンは広げさせない!」

 身体強化を施し、大きく振りかぶる。

「閃っ!」

 思い切り太刀を振り下ろす。ダンジョンコアを台座ごと壊すためだ。
 私の振り下ろした太刀は、地面へと突き刺さる。確かな手ごたえがあったのは間違いない。

「はあ、はあ……」

 たった一撃だというのに、私の呼吸はかなり乱れている。それだけ、ダンジョンコアを斬ることに力を注いだということだ。
 確かな手ごたえはあったというのに、ダンジョンコアはまったく変化がない。
 まさか、攻撃が通じなかったのか?
 ただでさえ、今の一撃でかなり体力を使ったというのに、これで壊せないとなったらどうしたらいいというんだ。

「くそっ……!」

 私は諦めない。太刀が通じないというのなら、槍だ。
 私は装備を太刀から槍に切り替えて、疲労困憊の中、しっかりと構える。

「絶対に、ダンジョンブレイクを防ぎ、あいつらを会わせるという約束を……守る!」

 持てるだけの力を籠め、私は槍を振り上げる。

「だから、お前はここで破壊する!」

 渾身の力で、槍をダンジョンコアの水晶にぶつける。

 バキッ……。

「くっ! 私の槍が!」

 なんてことだ。太刀は無事だったが、槍が砕けるとはな……。
 しかし、今回も確かな手ごたえがある。さあ、お前も、砕け散るんだよ……。
 私は、片膝をついて、砕けた槍で体を支える。
 あまりにも変化のないダンジョンコアに、私は業を煮やす。

「どうせならば、お前も道連れだ! 最後の一撃を受けてみろ!」

 やけくそになった私は、砕けた槍で再びダンジョンコアへと突きを繰り出す。
 槍の柄がダンジョンコアの水晶を捉える。

 次の瞬間だった。

 パリパリパリ……。

 ついにダンジョンコアにひびが入る。
 だが、これではまだ不十分だ。その機能を保っているし、なんならそのひびを修復にかかっている。
 くそ……。もう体が限界だ。

「この際、なんだっていい。こいつを壊してくれ」

 追い込まれた私は叫ぶと、とあることを思い出した。
 そうだ。ここのダンジョンはアンデッドのアルカナがマスターだったな……。ということは、もしかすると。
 ポケットに入っている、瞬のうろこを取り出す。ラミアプリンセスのうろこは、魔法に対して強い耐性を持っている。そして、このうろこを持った状態だと、ゴースト系やウィスプ系も物理攻撃が通っていた。ならば、もしかすると……。
 ええい、迷っている場合じゃない。物は試しだ!

(頼む、瞬。君の力を借りるぞ)

 うろこを持つ手にわずかに力が入る。

「うおおおおおっ! これで本当に、最後だ!」

 私は、ひびが消えつつあるダンジョンコアに、瞬のうろこを叩きつける。
 ビンゴだった。
 ダンジョンコアの修復が止まり、逆にひびが広がっていく。

「ははっ、ざまーみろ……」

 ダンジョンコア全体にひびが広がると、思わずつぶやいてしまう。
 私が完全にその場に座り込むと同時に、ひびの入ったダンジョンコアは砕け散ってしまった。
 これで、しばらくすればこの場所を覆っていたマナも消えていくはずだ。そうなれば、ここはただの樹海に戻る。

「ふっ……。今回のダンジョン攻略は、瞬に助けられてばかりだった、な……」

 ダンジョンコアを破壊し、ダンジョンブレイクを防ぐというミッションを完遂した私は、そのまま森の中で倒れてしまった。
 緑のじゅうたんとなったダンジョンのボス部屋だった場所で、私は森の木々を見上げながら寝そべっている。
 もう、しばらく動けない。
 限界まで力を使い果たした私は、剛力さんたちが戻ってくるのを、ただひたすらと待つことしかできなかった。


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次のエピソードへ進む SCENE157 復活のための場所


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 どのくらい経っただろうか。
(ふぅ……、ダンジョンコアを壊すのは久しぶりだな)
 剛力さんからの連絡を待ち、私はダンジョンコアを前にして大きく深呼吸をする。
 私が脱出を待っている理由は、アルカナをこのダンジョンの影響下から引き離す必要があるからだ。ダンジョン内にその体が残っていれば、ダンジョンコアの崩壊とともに影響を受けてしまい、ダンジョンマスターは死を迎える。それは絶対に阻止しなければならないからだ。
(ラティナと約束したからな。必ず会わせると)
 私は太刀を構えたまま、ずっとその時を待っている。
 ピリリリリ……。
 私の携帯電話が鳴り響く。
「はい、衣織です」
『おう、待たせたな』
 剛力さんの声が聞こえてきた。
「ずいぶんと時間がかかっていましたね」
『ああ、思った以上にダンジョンの拡大が速まっている。それに、アルカナとかいうダンジョンマスターをダンジョンから脱出させるのに、ちょっと手間取ってな』
「何があったんですか」
 剛力さんの話を聞いて、私はつい問いかけてしまう。
 だが、剛力さんは答えなかった。
『早くコアを壊してくれ。このままじゃ、延々とダンジョンから逃げ続けないといけない』
「……分かりました。それじゃ、今から壊すので、通話を切りますね」
『ああ、頼むぞ』
 かなり緊迫した状況のようだ。私は通話を終了させる。
 どうやら、外は大変なことになっているらしい。のんびりしている時間はないので、私はすぐさま太刀を構え直す。
 目を閉じて一度深呼吸をすると、私は改めて目を見開く。
「一撃で決める。これ以上、ダンジョンは広げさせない!」
 身体強化を施し、大きく振りかぶる。
「閃っ!」
 思い切り太刀を振り下ろす。ダンジョンコアを台座ごと壊すためだ。
 私の振り下ろした太刀は、地面へと突き刺さる。確かな手ごたえがあったのは間違いない。
「はあ、はあ……」
 たった一撃だというのに、私の呼吸はかなり乱れている。それだけ、ダンジョンコアを斬ることに力を注いだということだ。
 確かな手ごたえはあったというのに、ダンジョンコアはまったく変化がない。
 まさか、攻撃が通じなかったのか?
 ただでさえ、今の一撃でかなり体力を使ったというのに、これで壊せないとなったらどうしたらいいというんだ。
「くそっ……!」
 私は諦めない。太刀が通じないというのなら、槍だ。
 私は装備を太刀から槍に切り替えて、疲労困憊の中、しっかりと構える。
「絶対に、ダンジョンブレイクを防ぎ、あいつらを会わせるという約束を……守る!」
 持てるだけの力を籠め、私は槍を振り上げる。
「だから、お前はここで破壊する!」
 渾身の力で、槍をダンジョンコアの水晶にぶつける。
 バキッ……。
「くっ! 私の槍が!」
 なんてことだ。太刀は無事だったが、槍が砕けるとはな……。
 しかし、今回も確かな手ごたえがある。さあ、お前も、砕け散るんだよ……。
 私は、片膝をついて、砕けた槍で体を支える。
 あまりにも変化のないダンジョンコアに、私は業を煮やす。
「どうせならば、お前も道連れだ! 最後の一撃を受けてみろ!」
 やけくそになった私は、砕けた槍で再びダンジョンコアへと突きを繰り出す。
 槍の柄がダンジョンコアの水晶を捉える。
 次の瞬間だった。
 パリパリパリ……。
 ついにダンジョンコアにひびが入る。
 だが、これではまだ不十分だ。その機能を保っているし、なんならそのひびを修復にかかっている。
 くそ……。もう体が限界だ。
「この際、なんだっていい。こいつを壊してくれ」
 追い込まれた私は叫ぶと、とあることを思い出した。
 そうだ。ここのダンジョンはアンデッドのアルカナがマスターだったな……。ということは、もしかすると。
 ポケットに入っている、瞬のうろこを取り出す。ラミアプリンセスのうろこは、魔法に対して強い耐性を持っている。そして、このうろこを持った状態だと、ゴースト系やウィスプ系も物理攻撃が通っていた。ならば、もしかすると……。
 ええい、迷っている場合じゃない。物は試しだ!
(頼む、瞬。君の力を借りるぞ)
 うろこを持つ手にわずかに力が入る。
「うおおおおおっ! これで本当に、最後だ!」
 私は、ひびが消えつつあるダンジョンコアに、瞬のうろこを叩きつける。
 ビンゴだった。
 ダンジョンコアの修復が止まり、逆にひびが広がっていく。
「ははっ、ざまーみろ……」
 ダンジョンコア全体にひびが広がると、思わずつぶやいてしまう。
 私が完全にその場に座り込むと同時に、ひびの入ったダンジョンコアは砕け散ってしまった。
 これで、しばらくすればこの場所を覆っていたマナも消えていくはずだ。そうなれば、ここはただの樹海に戻る。
「ふっ……。今回のダンジョン攻略は、瞬に助けられてばかりだった、な……」
 ダンジョンコアを破壊し、ダンジョンブレイクを防ぐというミッションを完遂した私は、そのまま森の中で倒れてしまった。
 緑のじゅうたんとなったダンジョンのボス部屋だった場所で、私は森の木々を見上げながら寝そべっている。
 もう、しばらく動けない。
 限界まで力を使い果たした私は、剛力さんたちが戻ってくるのを、ただひたすらと待つことしかできなかった。