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SCENE155 生きるか死ぬか

ー/ー



 ふぅ、まさか樹海ダンジョンのボスが少女型のモンスターとはな。
 しかも、ラティナやセイレーンの名前を知っているときた。これは確認してみるしかあるまい。
 私は互いに攻撃しないという条件をみんなに納得させて、瞬へと電話をかけてみる。

『衣織お姉さん?』

「ああ、瞬。悪いがラティナを呼んでくれないか?」

『ラティナさんを? ちょっと待ってね』

 瞬はすぐに対応してくれるみたいだ。後ろでラティナと話す声が聞こえてくる。

『はい、お電話代わりました。衣織様、どうかなさいましたでしょうか』

 ラティナが出てきた。これで、アルカナと名乗る少女と話をさせればいいな。

「すまない。今、樹海ダンジョンに来ていてな。そこのボスがどうもラティナと知り合いみたいなんだ。話を聞いてやってくれ」

『えっ? わ、分かりました』

 ラティナは驚いていたが、おとなしく話を聞いてくれた。
 私はアルカナに携帯電話を渡す。

「私が使っていたように、顔に近付けて話をすればいい。終わったら、私に返してくれ」

「ええ、そうするわ」

 私から電話を受け取ると、アルカナはどうしていいのか困っているようだ。使い方がよく分からないんだろうな。

「ラティナ、声を聞かせてやってくれ」

『わわっ、そうですね。というか、どなたなのですか?』

「ああ、ラティナ様の声だわ。あたくしですわよ、アルカナですわ」

 ラティナの声を聞いたアルカナが喋り出す。おやおや、同族同士だとそういうしゃべり方になるのか。貴族だからかな、これは。
 様子を見ていると、だいぶ話が盛り上がっているようだ。廃鉱山ダンジョンのボスであるラティナの父親の話によれば、十年は離れ離れみたいだからな。懐かしさに話も弾むだろう。
 しかし、あんまり話を長くさせていてもいけない。

「アルカナ、再び代わってくれ」

「えっ、もうですの?」

「ああ、ここからが重要なんだ。私らはこのダンジョンを攻略しに来たが、ラティナの知り合いとなると、正直殺したくない。向こうの世界に戻った時に知り合いがいないとなると、悲しむだろう?」

「そ、そうね……」

 私の話を聞いて、アルカナはずいぶんと考え込んでいるようだった。

「ラティナ、私だ。このアルカナを死なせずにこのダンジョンを消滅させたいんだが、どうにかできるか?」

『ちょっと待って下さい。わたくしではどうしていいのやら……。ば、バトラー様、何かいい案はございませんか?』

『ラティナ様? どういうことなのですか、落ち着いて下され』

 ラティナは困ってバトラーに助けを求めているな。ならば、その流れに乗るのがいいだろう。

「バトラー、ラティナと代わってくれ」

 声をかければ、ラティナは素直にバトラーと代わっている。
 事情を説明すれば、バトラーはすぐに案を出してくれた。

『ラティナ様と同じように、核となる宝石があるはずでございます。リッチモンド侯爵家はアンデッドの一族ですからな。その宝石を外し、アルカナ様を一時的に仮死状態にします。そうすれば、ラティナ様と同じようにダンジョンの外に連れ出せるはずです』

「ほうほう、なるほど」

『ただ、アルカナ様がダンジョンマスターということですので、もしかすると失敗するかもしれません。ダンジョンコアを壊せばダンジョンは消えますが、同時にダンジョンマスターも死にますからな』

「つまり、純粋に賭けになるというわけだな。なるほど、ロックウェル伯爵といったか、彼も躊躇するわけだ」

『そうですな』

 なんとも危険な賭けだが、やってみる価値はあるだろう。成功すれば、ラティナの友人を死なせずに済むのだからな。
 だが、同時にこんなことを仕掛けた連中に対して、はらわたが煮えくり返ってくるというものだ。友人たちであってもこんな形で引き裂かれるとは、あってはならないというものだ。

「分かった、それでいってみよう。ダンジョンブレイクをすれば、この辺り一帯は一気に人が住めない環境になってしまう。私たちはこっちの世界を守らなければならないからな」

 私は通話を終わらせる。

「話は聞いていたな?」

「ええ、怖いけれど、その賭けに乗ってあげるわ。今のあたくしの力ではあなたたちには勝てないし、だからといってまだ死にたくなんてないもの。なんとしても生き延びるわ」

 アルカナは覚悟を決めたらしく、自分の命の源である宝石を外そうとする。

「ちょっと待った」

「えっ?」

「まだやることがある。君の体を持った彼らが、すんなりこのダンジョンから出られないといけないし、脱出をした上でこのダンジョンを消滅させないといけない。出口までの道を作ってくれた上で、ダンジョンコアを出していってくれないか」

 私の要求に、アルカナはしばらく黙り込んでしまう。
 ぎゅっと胸の前で拳を握りしめると、私の方へと顔を向けてきた。

「ラティナ様が信頼されている方です。あたくしも信頼しましょう。どちら側に道を作ればいいのかしら」

「ああ、北の方向に頼む」

「分かりましたわ」

 アルカナはボス部屋から一直線に光を放つ。
 なんだ、すごい力を持っているじゃないか。アルカナの力を見た瞬間、私は思わずぞくぞくしてしまう。
 道を作ると、アルカナは地面から水晶のような球体が置かれた柱を出現させる。間違いない、瞬のダンジョンでも見たダンジョンコアだ。

「あたくしの命、預けますわ」

 アルカナはそういうと、胸部に浮かんでいるひし形の宝石を外して、私に託す。同時にがくんと力が抜けたように崩れ落ちる。

「おっと」

 私は体を受け止めると、剛力さんたちにアルカナのことを託す。

「外に出たら電話して欲しい。そしたら、コアを破壊する」

「ああ、この子のことは俺たちに任せてくれ」

 剛力さんたちは、真っ二つになっている人形も拾い上げると、私を残してダンジョンから脱出していく。
 一度深呼吸をした私は、ただその時を待ち続ける。


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次のエピソードへ進む SCENE156 樹海ダンジョンのコア


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 ふぅ、まさか樹海ダンジョンのボスが少女型のモンスターとはな。
 しかも、ラティナやセイレーンの名前を知っているときた。これは確認してみるしかあるまい。
 私は互いに攻撃しないという条件をみんなに納得させて、瞬へと電話をかけてみる。
『衣織お姉さん?』
「ああ、瞬。悪いがラティナを呼んでくれないか?」
『ラティナさんを? ちょっと待ってね』
 瞬はすぐに対応してくれるみたいだ。後ろでラティナと話す声が聞こえてくる。
『はい、お電話代わりました。衣織様、どうかなさいましたでしょうか』
 ラティナが出てきた。これで、アルカナと名乗る少女と話をさせればいいな。
「すまない。今、樹海ダンジョンに来ていてな。そこのボスがどうもラティナと知り合いみたいなんだ。話を聞いてやってくれ」
『えっ? わ、分かりました』
 ラティナは驚いていたが、おとなしく話を聞いてくれた。
 私はアルカナに携帯電話を渡す。
「私が使っていたように、顔に近付けて話をすればいい。終わったら、私に返してくれ」
「ええ、そうするわ」
 私から電話を受け取ると、アルカナはどうしていいのか困っているようだ。使い方がよく分からないんだろうな。
「ラティナ、声を聞かせてやってくれ」
『わわっ、そうですね。というか、どなたなのですか?』
「ああ、ラティナ様の声だわ。あたくしですわよ、アルカナですわ」
 ラティナの声を聞いたアルカナが喋り出す。おやおや、同族同士だとそういうしゃべり方になるのか。貴族だからかな、これは。
 様子を見ていると、だいぶ話が盛り上がっているようだ。廃鉱山ダンジョンのボスであるラティナの父親の話によれば、十年は離れ離れみたいだからな。懐かしさに話も弾むだろう。
 しかし、あんまり話を長くさせていてもいけない。
「アルカナ、再び代わってくれ」
「えっ、もうですの?」
「ああ、ここからが重要なんだ。私らはこのダンジョンを攻略しに来たが、ラティナの知り合いとなると、正直殺したくない。向こうの世界に戻った時に知り合いがいないとなると、悲しむだろう?」
「そ、そうね……」
 私の話を聞いて、アルカナはずいぶんと考え込んでいるようだった。
「ラティナ、私だ。このアルカナを死なせずにこのダンジョンを消滅させたいんだが、どうにかできるか?」
『ちょっと待って下さい。わたくしではどうしていいのやら……。ば、バトラー様、何かいい案はございませんか?』
『ラティナ様? どういうことなのですか、落ち着いて下され』
 ラティナは困ってバトラーに助けを求めているな。ならば、その流れに乗るのがいいだろう。
「バトラー、ラティナと代わってくれ」
 声をかければ、ラティナは素直にバトラーと代わっている。
 事情を説明すれば、バトラーはすぐに案を出してくれた。
『ラティナ様と同じように、核となる宝石があるはずでございます。リッチモンド侯爵家はアンデッドの一族ですからな。その宝石を外し、アルカナ様を一時的に仮死状態にします。そうすれば、ラティナ様と同じようにダンジョンの外に連れ出せるはずです』
「ほうほう、なるほど」
『ただ、アルカナ様がダンジョンマスターということですので、もしかすると失敗するかもしれません。ダンジョンコアを壊せばダンジョンは消えますが、同時にダンジョンマスターも死にますからな』
「つまり、純粋に賭けになるというわけだな。なるほど、ロックウェル伯爵といったか、彼も躊躇するわけだ」
『そうですな』
 なんとも危険な賭けだが、やってみる価値はあるだろう。成功すれば、ラティナの友人を死なせずに済むのだからな。
 だが、同時にこんなことを仕掛けた連中に対して、はらわたが煮えくり返ってくるというものだ。友人たちであってもこんな形で引き裂かれるとは、あってはならないというものだ。
「分かった、それでいってみよう。ダンジョンブレイクをすれば、この辺り一帯は一気に人が住めない環境になってしまう。私たちはこっちの世界を守らなければならないからな」
 私は通話を終わらせる。
「話は聞いていたな?」
「ええ、怖いけれど、その賭けに乗ってあげるわ。今のあたくしの力ではあなたたちには勝てないし、だからといってまだ死にたくなんてないもの。なんとしても生き延びるわ」
 アルカナは覚悟を決めたらしく、自分の命の源である宝石を外そうとする。
「ちょっと待った」
「えっ?」
「まだやることがある。君の体を持った彼らが、すんなりこのダンジョンから出られないといけないし、脱出をした上でこのダンジョンを消滅させないといけない。出口までの道を作ってくれた上で、ダンジョンコアを出していってくれないか」
 私の要求に、アルカナはしばらく黙り込んでしまう。
 ぎゅっと胸の前で拳を握りしめると、私の方へと顔を向けてきた。
「ラティナ様が信頼されている方です。あたくしも信頼しましょう。どちら側に道を作ればいいのかしら」
「ああ、北の方向に頼む」
「分かりましたわ」
 アルカナはボス部屋から一直線に光を放つ。
 なんだ、すごい力を持っているじゃないか。アルカナの力を見た瞬間、私は思わずぞくぞくしてしまう。
 道を作ると、アルカナは地面から水晶のような球体が置かれた柱を出現させる。間違いない、瞬のダンジョンでも見たダンジョンコアだ。
「あたくしの命、預けますわ」
 アルカナはそういうと、胸部に浮かんでいるひし形の宝石を外して、私に託す。同時にがくんと力が抜けたように崩れ落ちる。
「おっと」
 私は体を受け止めると、剛力さんたちにアルカナのことを託す。
「外に出たら電話して欲しい。そしたら、コアを破壊する」
「ああ、この子のことは俺たちに任せてくれ」
 剛力さんたちは、真っ二つになっている人形も拾い上げると、私を残してダンジョンから脱出していく。
 一度深呼吸をした私は、ただその時を待ち続ける。