モヒカン蚊帳の外

ー/ー



 何が「なぜ?」だ、とみんなにツッこまれても理由がわからない。
 一人、モヒカンだけ蚊帳の外だ。
 「次行きます。ゴホン…… ヒュウマネ、『KちゃんてOLさんなんだ。スーツ姿が目に浮かぶよ。早く会いたいなぁ』ハート3つ」
 「きも――――っ」
 「やだぁ――――っ」
 都が叫ぶ。怜子はテーブル叩いて大喜びだ。
 ……というやり取りを何度も繰り返し、そろそろ笑いすぎて腹が痛くなってきた和真だ。
 「で、今度はどこの駅指定したのこの馬鹿」
 と届いたアタリメを咬みながら怜子が促す。
 「ここ、()()()の西口」
 都は、伸ばした膝を両手で叩いて大はしゃぎだ。笑いすぎて涙がにじんでいる。
 「小池さん、まだやります?」
 もう、僕お腹痛いです笑い死にしそうです、と訴える和真の眼にも涙がにじんでいた。
 「あと何人居るの」
 スマホをのぞき込む。
 「こうくん、あんたやっぱやる気ないっしょ。端から声かけてどうするのよ。しかも全滅って」
 Lineで5人、アプリだと、何人だ……数えたくないわ、と都にもスマホを見せる。
「おじさん弾けすぎれす、それ。槍珍かパパ認定でつぅ。もうヒュウマネのエッチ――」
「何で、そうなるのさっ」
 そろそろハイボールと焼酎が回ってきたようだ。孔明の眼のふちが赤くなってきた。
 これはこれで、妙に色っぽいから目のやり場に困るのだが。
「違うよ。その子埼玉だし、都合いいはずなんだよ。終電までに帰れるように考えてんだから、これでも」
 手持ち無沙汰なのか、孔明は都が逆立てた髪をさらに逆立て指先で毛先をつまんではひねっている。
「西口は、一歩間違えたらホテル街じゃん、こうくん分かってる? しかもホームグラウンドが昔と一緒って、救いがたいよ君は。昔と今じゃ目的違うでしょ」
「ボクは昔も今も、初めて会った子とそんないかがわしい事はしません」
 モヒカンいじりながら、真顔で言うな、だ。
「あたりまえれす」
 都がレモンの搾りかすを投げた。
「む――っ。全滅の原因って、駅指定したから? メッセージ交換めちゃ楽しかったのに。Line交換も向こうから誘ってくれたんだよ。最近の女の子って分らん……」
「目的地分からん状態で駅前言われても不安れつよ。どこ連れて行く気なんらって。しかも指定駅がホテル街か歓楽街……もうナイわ~っ」
 え? そういうもんなのと孔明がつぶやいた。
「ああ! ウチのチームの子も言ってましたよ、そういえば」
 イケメンで口が巧けりゃみんなヤリモクでしょって、警戒されるんですよ、と和真が言う。
「だから待ち合わせに駅前指定してきたら、即ブロックだって」
 こっちもソレが目的なら即オッケーでしょうけど、まぁ無いですよねと言いながら残りのジョッキを空けた。
 新宿と池袋はアウトっしょ。アルタ前は許せても、東口はナイわ~、と女性陣はかまびすしい。
「ええ~っ! これじゃ……ホテルに連れ込もうとしてるおっさんにしか見えないじゃん」
 恥ずかしいっと、両手で顔を覆う頬が赤くなる。
 ようやく孔明は自分がズレていたことに気が付いた、ようだ。
「やっと気づいたか。ヤリモクってそーゆーことよ。まぁ、若い子ならヤリタイ盛りだからねってなるけど。こうくんの年齢はないわぁ。そろそろ落ち着こうかって歳でしょ」
「れすねぇ~。おじさん発言、控えた方がイイかもれすよ~。今どきツラらけじゃだめなんれす」
 へへへ、と都がお代わりしたピーチジンジャーをクイっと呑んだ。
「だって、みんな20代だから、10歳以上離れてんだよ。十分おじさんじゃん」
「年齢じゃなくて、発言れすよ。そもそも、ヒュウマネ元カノと別れたのいつれすか」
 帰国したのが5年前だから……とぶつぶつ言いながら指を折り計算する。
「5年かな」
「現地妻っすか」
 和真が顔をあげて、食い気味で聞いて来た。なんだか羨ましそうだな、おい。
「金髪碧眼って意味なら、まぁそうかな」
 言いながら、孔明の目が泳いでいる。
「声かけられて、そのままってパターンでしょ。どうせ自分から口説きになんか行かないんだから」
「レイちゃん、鋭い」
 と怜子を指さす。動きにキレが無くなってるぞ。
 孔明はあははと大げさに笑い、テーブルの端をトントンと指で叩く。
「男なら、今度はちゃんと自分で口説け」
「駅前以外で?」
「そこから直せっつってんだろがっ!」
 と怜子に一喝され、はい、そうしますと首を垂れスマホを受け取った孔明だった。


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 何が「なぜ?」だ、とみんなにツッこまれても理由がわからない。
 一人、モヒカンだけ蚊帳の外だ。
 「次行きます。ゴホン…… ヒュウマネ、『KちゃんてOLさんなんだ。スーツ姿が目に浮かぶよ。早く会いたいなぁ』ハート3つ」
 「きも――――っ」
 「やだぁ――――っ」
 都が叫ぶ。怜子はテーブル叩いて大喜びだ。
 ……というやり取りを何度も繰り返し、そろそろ笑いすぎて腹が痛くなってきた和真だ。
 「で、今度はどこの駅指定したのこの馬鹿」
 と届いたアタリメを咬みながら怜子が促す。
 「ここ、|ブ《・》|ク《・》|ロ《・》の西口」
 都は、伸ばした膝を両手で叩いて大はしゃぎだ。笑いすぎて涙がにじんでいる。
 「小池さん、まだやります?」
 もう、僕お腹痛いです笑い死にしそうです、と訴える和真の眼にも涙がにじんでいた。
 「あと何人居るの」
 スマホをのぞき込む。
 「こうくん、あんたやっぱやる気ないっしょ。端から声かけてどうするのよ。しかも全滅って」
 Lineで5人、アプリだと、何人だ……数えたくないわ、と都にもスマホを見せる。
「おじさん弾けすぎれす、それ。槍珍かパパ認定でつぅ。もうヒュウマネのエッチ――」
「何で、そうなるのさっ」
 そろそろハイボールと焼酎が回ってきたようだ。孔明の眼のふちが赤くなってきた。
 これはこれで、妙に色っぽいから目のやり場に困るのだが。
「違うよ。その子埼玉だし、都合いいはずなんだよ。終電までに帰れるように考えてんだから、これでも」
 手持ち無沙汰なのか、孔明は都が逆立てた髪をさらに逆立て指先で毛先をつまんではひねっている。
「西口は、一歩間違えたらホテル街じゃん、こうくん分かってる? しかもホームグラウンドが昔と一緒って、救いがたいよ君は。昔と今じゃ目的違うでしょ」
「ボクは昔も今も、初めて会った子とそんないかがわしい事はしません」
 モヒカンいじりながら、真顔で言うな、だ。
「あたりまえれす」
 都がレモンの搾りかすを投げた。
「む――っ。全滅の原因って、駅指定したから? メッセージ交換めちゃ楽しかったのに。Line交換も向こうから誘ってくれたんだよ。最近の女の子って分らん……」
「目的地分からん状態で駅前言われても不安れつよ。どこ連れて行く気なんらって。しかも指定駅がホテル街か歓楽街……もうナイわ~っ」
 え? そういうもんなのと孔明がつぶやいた。
「ああ! ウチのチームの子も言ってましたよ、そういえば」
 イケメンで口が巧けりゃみんなヤリモクでしょって、警戒されるんですよ、と和真が言う。
「だから待ち合わせに駅前指定してきたら、即ブロックだって」
 こっちもソレが目的なら即オッケーでしょうけど、まぁ無いですよねと言いながら残りのジョッキを空けた。
 新宿と池袋はアウトっしょ。アルタ前は許せても、東口はナイわ~、と女性陣はかまびすしい。
「ええ~っ! これじゃ……ホテルに連れ込もうとしてるおっさんにしか見えないじゃん」
 恥ずかしいっと、両手で顔を覆う頬が赤くなる。
 ようやく孔明は自分がズレていたことに気が付いた、ようだ。
「やっと気づいたか。ヤリモクってそーゆーことよ。まぁ、若い子ならヤリタイ盛りだからねってなるけど。こうくんの年齢はないわぁ。そろそろ落ち着こうかって歳でしょ」
「れすねぇ~。おじさん発言、控えた方がイイかもれすよ~。今どきツラらけじゃだめなんれす」
 へへへ、と都がお代わりしたピーチジンジャーをクイっと呑んだ。
「だって、みんな20代だから、10歳以上離れてんだよ。十分おじさんじゃん」
「年齢じゃなくて、発言れすよ。そもそも、ヒュウマネ元カノと別れたのいつれすか」
 帰国したのが5年前だから……とぶつぶつ言いながら指を折り計算する。
「5年かな」
「現地妻っすか」
 和真が顔をあげて、食い気味で聞いて来た。なんだか羨ましそうだな、おい。
「金髪碧眼って意味なら、まぁそうかな」
 言いながら、孔明の目が泳いでいる。
「声かけられて、そのままってパターンでしょ。どうせ自分から口説きになんか行かないんだから」
「レイちゃん、鋭い」
 と怜子を指さす。動きにキレが無くなってるぞ。
 孔明はあははと大げさに笑い、テーブルの端をトントンと指で叩く。
「男なら、今度はちゃんと自分で口説け」
「駅前以外で?」
「そこから直せっつってんだろがっ!」
 と怜子に一喝され、はい、そうしますと首を垂れスマホを受け取った孔明だった。