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SCENE154 アルカナ・リッチモンド

ー/ー



「な、なんなのさ、こいつら……」

 樹海ダンジョンを預かるあたくしは、マナの力を捻じ曲げて作った部屋に隠れている。
 ダンジョンコアの力で様子をずっと確認しているけれど、今回の侵入者たちは、あたくしの可愛い部下たちを次々となぎ倒していっていた。

「どうして、ゴーストたちに物理攻撃が効いているの?! こんなこと、聞いたことないんだけど!」

 スケルトンやゾンビといった物体を持つモンスターなら分かるのだけど、ゴーストやウィスプ、レヴナントといった体を持たないモンスターも、斧や太刀でぶった切られていっている。なんて非常識なの。
 あまりの衝撃映像に、あたくしは思わず悲鳴を上げてしまう。

「ミギー?」

「ダリー……」

 取り乱すあたくしを、眷属の人形であるミギーとダリーが慰めてくれている。
 あたくしが小さい頃から一緒にいる人形だけれど、あたくしの魔力を受けることでこのように動くことができるようになった。今では、あたくしの良きパートナーだわ。

「し、心配は要らないわよ。ここは……ここは絶対大丈夫だから」

 二体の眷属を相手に、あたくしは自分に言い聞かせるように声をかけている。

 ところが、そんなあたくしの希望を打ち砕くように、部屋の空間に亀裂が入る。
 バリバリという大きな音を立てて、この部屋を隠しているマナが斬り裂かれようとしていた。

「う、うそでしょーっ?!」

 あたくしは悲鳴を上げてしまう。
 次の瞬間、部屋の中に五つの人影が踏み入ってきたことが分かった。
 嫌だわ。こんなところで死ぬなんて、絶対に嫌。
 あたくしはダンジョンマスター。必ずや侵入者を血祭りにあげてやるわ。

「ここがダンジョンのボス部屋か」

「あっ、あそこに人影がありますよ!」

 侵入者たちの声が聞こえてくる。
 ここまで無傷でやってくるなんて、なんて連中なの。でも、あたくしはやらなければならない。

「侵入者どもめ! このアルカナ・リッチモンドが皆殺しにしてあげるわ!」

「うん? 女の子の声?」

 あたくしは自分の名前を叫ぶと、侵入者へと向かっていく。手には一族の宝である鎌を握りしめ、ダンジョンマスターとしての責務を果たすのよ。

 ガキンッ!

 でも、あたくしの攻撃は簡単に受け止められてしまった。

「なっ!?」

「攻撃が軽い。君がこのダンジョンのマスターかな?」

「だとしたら?」

 攻撃を受け止めた女が問い掛けてくるので、あたくしは挑発して返す。

「そうか。なら、悪いけれど、倒させてもらう。このダンジョンをブレイクさせるわけにはいかないからね」

「いやよ! ミギー! ダリー!」

「ミギーッ!」

「ダーリッ!」

 あたくしの声に応じて、ミギーとダリーが侵入者たちに飛び掛かっていく。
 だけど、周りにいた連中の攻撃によって、二体とも無残に真っ二つにされてしまった。

「う……そ……」

 あたしは愕然とした。
 子どもの頃から一緒だった二体の人形が、あっさりと真っ二つにされてしまったんだから。

「嫌よ、ミギー、ダリー! 絶対に許さない!」

 あたくしは、至近距離から女に魔法を使う。だけど、直撃したはずなのに、女はまったくの無傷だった。

「なんで……、なんで通じないのよ」

「ああ、悪い。このうろこのおかげかも知れないな。瞬のおかげだ」

 女はそういうと、あたくしの前にうろこをちらつかせていた。

「ラミアのうろこ?」

「ああ。魔法に対して強くなるってやつみたいでな。それはそれとして、君みたいな子どもがダンジョンマスターとは驚いたな」

「子どもで、悪いの?」

 女の言葉に、あたくしは睨みつけながら答える。

「悪いとは言っていないが、こんな危険なことに子どもを駆り出すとは、異界というところはなかなかにひどい場所のようだな。セイレーンやラティナも文句を言っていたくらいにな」

 女の口から出てきた言葉に、あたくしは目を丸くしてしまう。懐かしい名前が出てきたからだ。

「ちょっと待って。セイレーン様やラティナ様もいらっしゃってるの?」

「ああ、セイレーンはダンジョンマスターをしているらしい。ラティナはうちの瞬のダンジョンで居候をしている。というか、二人の知り合いなのか?」

「ええ、そうよ。あたくしはリッチモンド侯爵家のアルカナ。セイレーン様やラティナ様とは、幼い頃からの友人だわ」

「そうか……。なら、気が変わった。ダンジョンブレイクは防がないといけないが、君を殺しては、二人が悲しむだろう」

「お、おい、衣織……」

 女が態度を変えると、周りにいる連中がうろたえ始めた。
 なんだか空気が変わったことに、あたくしも驚かされてしまう。

「なあ、ちょっと悪いが、頼んでもいいかな?」

「な、何よ……」

「ちょっとラティナと話をしたいんでな、このダンジョンのマナの状態を安定させてほしい。このままだと電話が通じないからな」

「わ、分かったわ……」

 なんだかよく分からないけれど、このダンジョンはあたくしの気持ちひとつでどうとでもいじれるわ。だから、あたくしは女の要求通りにマナを安定させることにした。
 だって、従わないと殺されそうな雰囲気なんだもの。生き残るためにはしょうがないのよ。
 安定させると、ダンジョンの雰囲気が一気に変わる。
 変化したことを感じ取った女は、服の中から薄い板を取り出していた。一体何をする気だというのよ。
 あたくしは、その様子を黙って見守るしかなかった。


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「な、なんなのさ、こいつら……」
 樹海ダンジョンを預かるあたくしは、マナの力を捻じ曲げて作った部屋に隠れている。
 ダンジョンコアの力で様子をずっと確認しているけれど、今回の侵入者たちは、あたくしの可愛い部下たちを次々となぎ倒していっていた。
「どうして、ゴーストたちに物理攻撃が効いているの?! こんなこと、聞いたことないんだけど!」
 スケルトンやゾンビといった物体を持つモンスターなら分かるのだけど、ゴーストやウィスプ、レヴナントといった体を持たないモンスターも、斧や太刀でぶった切られていっている。なんて非常識なの。
 あまりの衝撃映像に、あたくしは思わず悲鳴を上げてしまう。
「ミギー?」
「ダリー……」
 取り乱すあたくしを、眷属の人形であるミギーとダリーが慰めてくれている。
 あたくしが小さい頃から一緒にいる人形だけれど、あたくしの魔力を受けることでこのように動くことができるようになった。今では、あたくしの良きパートナーだわ。
「し、心配は要らないわよ。ここは……ここは絶対大丈夫だから」
 二体の眷属を相手に、あたくしは自分に言い聞かせるように声をかけている。
 ところが、そんなあたくしの希望を打ち砕くように、部屋の空間に亀裂が入る。
 バリバリという大きな音を立てて、この部屋を隠しているマナが斬り裂かれようとしていた。
「う、うそでしょーっ?!」
 あたくしは悲鳴を上げてしまう。
 次の瞬間、部屋の中に五つの人影が踏み入ってきたことが分かった。
 嫌だわ。こんなところで死ぬなんて、絶対に嫌。
 あたくしはダンジョンマスター。必ずや侵入者を血祭りにあげてやるわ。
「ここがダンジョンのボス部屋か」
「あっ、あそこに人影がありますよ!」
 侵入者たちの声が聞こえてくる。
 ここまで無傷でやってくるなんて、なんて連中なの。でも、あたくしはやらなければならない。
「侵入者どもめ! このアルカナ・リッチモンドが皆殺しにしてあげるわ!」
「うん? 女の子の声?」
 あたくしは自分の名前を叫ぶと、侵入者へと向かっていく。手には一族の宝である鎌を握りしめ、ダンジョンマスターとしての責務を果たすのよ。
 ガキンッ!
 でも、あたくしの攻撃は簡単に受け止められてしまった。
「なっ!?」
「攻撃が軽い。君がこのダンジョンのマスターかな?」
「だとしたら?」
 攻撃を受け止めた女が問い掛けてくるので、あたくしは挑発して返す。
「そうか。なら、悪いけれど、倒させてもらう。このダンジョンをブレイクさせるわけにはいかないからね」
「いやよ! ミギー! ダリー!」
「ミギーッ!」
「ダーリッ!」
 あたくしの声に応じて、ミギーとダリーが侵入者たちに飛び掛かっていく。
 だけど、周りにいた連中の攻撃によって、二体とも無残に真っ二つにされてしまった。
「う……そ……」
 あたしは愕然とした。
 子どもの頃から一緒だった二体の人形が、あっさりと真っ二つにされてしまったんだから。
「嫌よ、ミギー、ダリー! 絶対に許さない!」
 あたくしは、至近距離から女に魔法を使う。だけど、直撃したはずなのに、女はまったくの無傷だった。
「なんで……、なんで通じないのよ」
「ああ、悪い。このうろこのおかげかも知れないな。瞬のおかげだ」
 女はそういうと、あたくしの前にうろこをちらつかせていた。
「ラミアのうろこ?」
「ああ。魔法に対して強くなるってやつみたいでな。それはそれとして、君みたいな子どもがダンジョンマスターとは驚いたな」
「子どもで、悪いの?」
 女の言葉に、あたくしは睨みつけながら答える。
「悪いとは言っていないが、こんな危険なことに子どもを駆り出すとは、異界というところはなかなかにひどい場所のようだな。セイレーンやラティナも文句を言っていたくらいにな」
 女の口から出てきた言葉に、あたくしは目を丸くしてしまう。懐かしい名前が出てきたからだ。
「ちょっと待って。セイレーン様やラティナ様もいらっしゃってるの?」
「ああ、セイレーンはダンジョンマスターをしているらしい。ラティナはうちの瞬のダンジョンで居候をしている。というか、二人の知り合いなのか?」
「ええ、そうよ。あたくしはリッチモンド侯爵家のアルカナ。セイレーン様やラティナ様とは、幼い頃からの友人だわ」
「そうか……。なら、気が変わった。ダンジョンブレイクは防がないといけないが、君を殺しては、二人が悲しむだろう」
「お、おい、衣織……」
 女が態度を変えると、周りにいる連中がうろたえ始めた。
 なんだか空気が変わったことに、あたくしも驚かされてしまう。
「なあ、ちょっと悪いが、頼んでもいいかな?」
「な、何よ……」
「ちょっとラティナと話をしたいんでな、このダンジョンのマナの状態を安定させてほしい。このままだと電話が通じないからな」
「わ、分かったわ……」
 なんだかよく分からないけれど、このダンジョンはあたくしの気持ちひとつでどうとでもいじれるわ。だから、あたくしは女の要求通りにマナを安定させることにした。
 だって、従わないと殺されそうな雰囲気なんだもの。生き残るためにはしょうがないのよ。
 安定させると、ダンジョンの雰囲気が一気に変わる。
 変化したことを感じ取った女は、服の中から薄い板を取り出していた。一体何をする気だというのよ。
 あたくしは、その様子を黙って見守るしかなかった。