心の落とし物掲示板
ー/ー 駅の片隅、薄暗い通路の奥に、小さな掲示板がひっそりと立っている。
人通りの波に飲まれ、誰も気に留めない場所だ。管理人は年老いた男性で、帽子の影に沈む目は静かに優しい光を宿している。
ここは、目に見えない「忘れ物」を預かる場所だ。
言えなかった言葉、
抱えきれなかった後悔、
触れられずに置き去りにした小さな思い。
誰も気づかずに忘れてしまった心のかけらを、人々は知らずにこの掲示板に託していく。
今日も、若い女性が紙片をそっと貼った。
「初めての恋を、うまく終われなかった私へ」と書かれている。
管理人は目を細め、紙を静かに手に取り、胸の奥に抱いた。
目には見えなくても、重みは確かに伝わる。
電車の轟音が通り過ぎる中、管理人は忘れ物を整理する。
掲示板は、日々溢れる小さな後悔や切なさを抱きしめ、光に透ける紙片が微かに揺れる。
誰も責めず、誰も傷つけず、
ただそっと預かる。
それだけで、駅の片隅に静かな救いの時間が流れるのだ。
帰り際、掲示板を振り返ると、新しい紙片が一枚、光に透けて揺れている。
管理人は微笑み、また次の訪問者を待つ。誰も知らぬ場所で、忘れ物は静かに守られている。
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