第27話_騒音
ー/ー轟音とともに、改札の奥から何かが弾き出されるように飛び出してきた。
空気を切り裂く圧と振動が、床を伝って足元にまで届く。
それは明らかに、人影ではなかった。
「ひゃっほぉおおおい!!」
軽快で、耳に突き抜ける声。
現れたのは――機械仕掛けの大型バイク。
藁のような装飾が施された極太のマフラーからは白煙が噴き上がり、
熱を帯びた陽炎が、駅構内の空気を歪ませていた。
それを操るのは、ゴスロリ衣装の少女。
フリルの裾をはためかせ、工業用ゴーグルで目を覆っていた。
左腕は義腕――同じく機械仕掛けで、無骨な関節がむき出しだ。
口元からは、高揚を隠す気もない高笑いがこぼれ続けている。
後部座席には、もう一人。
ブラウンカラーの髪を風に揺らす女性が、キャスケット帽を片手で押さえながら必死に掴まっていた。
だがその表情は、恐怖ではない。
むしろ、楽しさを抑えきれない笑顔で満ちている。
アイボリーのトレンチコートが翻り、
どこか懐かしさと気品を併せ持つ姿は、周囲の喧騒の中でも不思議と浮いて見えた。
キィィィ――ッ!!
鋭い摩擦音。
ドリフトによって床を削りながら、バイクは二人の前で華麗に停止する。
ゴーグルがぐいっと持ち上げられ、そこから現れたのは琥珀色の瞳。
「おっひさー!!つっきーとひつかっち!!」
一瞬の沈黙が流れる。
つきのみやの目は、まったく笑っていなかった。
「おい、『とこわ』……」
低く、抑えた声。
「その乗り物は……なんだ」
とこわは肩をすくめ、口角を吊り上げる。
「いやバイクだけど?知らないの?」
つきのみやのこめかみがぴくりと動く。
「……お前、馬鹿にしてるのか?」
「ここは駅構内だ。バイクは乗り入れ禁止――」
一切聞く耳を持たない。
「いいじゃーん別に!!」
とこわは楽しげに叫び、スロットルを回して空ぶかしを始める。
ヴゥゥンッ!!
重低音が脳に響き、床のタイルが震える。
見かねたひつかが、静かに一歩前へ出る。
羽を整え、穏やかな声で告げた。
「お久しぶりです、とこわ様。確かに素晴らしいデザインですね」
一瞬、とこわの表情が得意げになる。
だが、ひつかは続ける。
「ただ、ここの床はタイル張りです」
「滑って怪我をされてしまう可能性もありますので……どうか危険な運転はお控えください」
忠告に対し、とこわは一瞬だけ唇を尖らせる。
「むーー……ひつかっちがそこまで言うなら、仕方ないなぁ」
若干不満げではあったが、エンジンを切り、二人はバイクから降りる。
その瞬間――
「……え?」
とこわが首を傾げ、マフラーを見下ろす。
「な、なんか付いてるんだけど……」
極太マフラーに、見知らぬ藁の塊がしがみついていた。
「んん~~あったかいのだ~~幸せなのだ~~」
蓑を纏った、ミノムシのような生物。
完全にマフラーを抱き枕にし、身を委ねている。
「なんだコイツ!?は、離れろぉ!!」
とこわは必死に引き剥がそうとするが、その力は見た目に反して異様に強い。
「嫌なのだ!ここあったかいのだ!!」
その光景を前に、つきのみやとひつかは顔色一つ変えず、同時に口を開く。
「『はいじま』か」
「『はいじま』様ですね」
様子を伺いつつ、後部座席にいた女性が、少し申し訳なさそうに声をかける。
「あ、二人ともお久しぶりです。なんだか……お騒がせしてしまってすみません」
ひつかはすぐに姿勢を正し、丁寧に一礼する。
「お久しぶりです、あまがたき様」
つきのみやは肩の力を少し抜き、鼻で息を吐く。
「元気そうだな」
そしてちらりととこわを見る。
「というか……何さらっと後ろ乗ってんだ。ちゃんとあいつ止めないとダメだろ」
あまがたきは髪をくるりと指でねじり、苦笑する。
「あはは……とこわちゃん楽しそうだったから、止めるの申し訳ないかなって……」
つきのみやは小さく肩をすくめる。
「気をつけろよ――あいつは……ただの機械馬鹿だからな」
とこわはまだマフラーにしがみつくはいじまと格闘していた。
駅構内に、小さな喧騒が広がる。
空気を切り裂く圧と振動が、床を伝って足元にまで届く。
それは明らかに、人影ではなかった。
「ひゃっほぉおおおい!!」
軽快で、耳に突き抜ける声。
現れたのは――機械仕掛けの大型バイク。
藁のような装飾が施された極太のマフラーからは白煙が噴き上がり、
熱を帯びた陽炎が、駅構内の空気を歪ませていた。
それを操るのは、ゴスロリ衣装の少女。
フリルの裾をはためかせ、工業用ゴーグルで目を覆っていた。
左腕は義腕――同じく機械仕掛けで、無骨な関節がむき出しだ。
口元からは、高揚を隠す気もない高笑いがこぼれ続けている。
後部座席には、もう一人。
ブラウンカラーの髪を風に揺らす女性が、キャスケット帽を片手で押さえながら必死に掴まっていた。
だがその表情は、恐怖ではない。
むしろ、楽しさを抑えきれない笑顔で満ちている。
アイボリーのトレンチコートが翻り、
どこか懐かしさと気品を併せ持つ姿は、周囲の喧騒の中でも不思議と浮いて見えた。
キィィィ――ッ!!
鋭い摩擦音。
ドリフトによって床を削りながら、バイクは二人の前で華麗に停止する。
ゴーグルがぐいっと持ち上げられ、そこから現れたのは琥珀色の瞳。
「おっひさー!!つっきーとひつかっち!!」
一瞬の沈黙が流れる。
つきのみやの目は、まったく笑っていなかった。
「おい、『とこわ』……」
低く、抑えた声。
「その乗り物は……なんだ」
とこわは肩をすくめ、口角を吊り上げる。
「いやバイクだけど?知らないの?」
つきのみやのこめかみがぴくりと動く。
「……お前、馬鹿にしてるのか?」
「ここは駅構内だ。バイクは乗り入れ禁止――」
一切聞く耳を持たない。
「いいじゃーん別に!!」
とこわは楽しげに叫び、スロットルを回して空ぶかしを始める。
ヴゥゥンッ!!
重低音が脳に響き、床のタイルが震える。
見かねたひつかが、静かに一歩前へ出る。
羽を整え、穏やかな声で告げた。
「お久しぶりです、とこわ様。確かに素晴らしいデザインですね」
一瞬、とこわの表情が得意げになる。
だが、ひつかは続ける。
「ただ、ここの床はタイル張りです」
「滑って怪我をされてしまう可能性もありますので……どうか危険な運転はお控えください」
忠告に対し、とこわは一瞬だけ唇を尖らせる。
「むーー……ひつかっちがそこまで言うなら、仕方ないなぁ」
若干不満げではあったが、エンジンを切り、二人はバイクから降りる。
その瞬間――
「……え?」
とこわが首を傾げ、マフラーを見下ろす。
「な、なんか付いてるんだけど……」
極太マフラーに、見知らぬ藁の塊がしがみついていた。
「んん~~あったかいのだ~~幸せなのだ~~」
蓑を纏った、ミノムシのような生物。
完全にマフラーを抱き枕にし、身を委ねている。
「なんだコイツ!?は、離れろぉ!!」
とこわは必死に引き剥がそうとするが、その力は見た目に反して異様に強い。
「嫌なのだ!ここあったかいのだ!!」
その光景を前に、つきのみやとひつかは顔色一つ変えず、同時に口を開く。
「『はいじま』か」
「『はいじま』様ですね」
様子を伺いつつ、後部座席にいた女性が、少し申し訳なさそうに声をかける。
「あ、二人ともお久しぶりです。なんだか……お騒がせしてしまってすみません」
ひつかはすぐに姿勢を正し、丁寧に一礼する。
「お久しぶりです、あまがたき様」
つきのみやは肩の力を少し抜き、鼻で息を吐く。
「元気そうだな」
そしてちらりととこわを見る。
「というか……何さらっと後ろ乗ってんだ。ちゃんとあいつ止めないとダメだろ」
あまがたきは髪をくるりと指でねじり、苦笑する。
「あはは……とこわちゃん楽しそうだったから、止めるの申し訳ないかなって……」
つきのみやは小さく肩をすくめる。
「気をつけろよ――あいつは……ただの機械馬鹿だからな」
とこわはまだマフラーにしがみつくはいじまと格闘していた。
駅構内に、小さな喧騒が広がる。
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