第34話_後継者候補
ー/ーきさらぎは、数秒の沈黙の後、肩を震わせた。
「……あは」
そして、声を上げて笑う。
「あははははっ……!」
鋼鉄の扇子で口元を隠しながら、肩を揺らす。
「冗談よね?こんな頼りない子に、駅を継がせる?」
視線はつきのみやに向けられているが、その奥には嘲りが混じっていた。
「大胆すぎるわ……嫌いじゃないけど」
くすくすと笑う。
だが――
つきのみやは、笑わない。
微動だにしない。
その沈黙が、きさらぎの笑いをゆっくりと止めた。
「……え?」
白と黒の瞳が、わずかに細くなる。
「まさか……本気で言ってる?」
「本気だ」
即答だった。
一切の揺らぎもなく。
燈の心臓が、どくん、と跳ねる。
(え……本気……?)
きさらぎの視線が、ゆっくりと燈へ落ちる。
「でもさぁ……」
扇子を閉じ、顎に当てる。
「その子、明らかに動揺していたわよ?」
視線が燈の揺れる瞳を捉える。
「今、とっさに決めた……まさかそんな訳ないわよね?」
空気が、ぴり、と張り詰める。
つきのみやの肩が、わずかに動いた。
その瞬間、彼女は振り返り、燈の元へゆっくりと歩み寄る。
そして、真正面から、燈の顔を捉える。
近い。
「燈」
低く、真っ直ぐな声。
「……継ぎたいよな」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「え……?」
つきのみやはさらに距離を詰める。
「私の駅を、継ぎたいよな」
問いかけというより、もはや誘導だ。
燈の喉が鳴る。
(え……待って……それ、どういう……)
頭が追いつかない。
さっきまで殺されかけていたのに、今度は駅の後継者を強要された。
目まぐるしく移り変わる状況に、思考が追い付かない。
きさらぎが、ゆるく首を傾げる。
「ちょっとぉ」
くすり、と笑う。
「それ、脅しにしか見えないけど?」
つきのみやの眉が、ぴくりと動く。
だが、視線は燈から逸らさない。
「私が、こいつを選んだ」
「こいつになら任せてもいい……私はそう思った」
きさらぎは面白そうに目を細める。
「そう……」
ゆっくり頷く。
「ならいいんじゃない?」
次の瞬間。
口元が、妖しく歪んだ。
「ま、あたしは許可しないけどね♡」
燈の背筋に、冷たいものが走る。
きさらぎの視線が、再び燈へ突き刺さる。
「気に入らないのよ、その子」
扇子が、燈を指す。
「意思が弱い」
「心も弱い」
そして、淡々と告げた。
「殺したほうが価値あるんじゃない?」
空気が、凍る。
つきのみやの目が、鋭く光った。
「馬鹿にするな……きさらぎ」
怒りを押し殺した低い声。
きさらぎは肩をすくめる。
「なぁに殺気ビンビンにしちゃって……」
白黒の瞳が細くなる。
「ヤる気?」
空気が張り詰める。
ほんのわずかな動きで、戦闘が始まりそうな緊張。
その時――
「お二人とも」
静かで、澄んだ声が割って入った。
白い羽をゆるやかに揺らし、ひつかが二人の間へ歩み出る。
「これは、お二人のみで決める問題ではありません」
碧色の瞳が、順に二人を見る。
「後継者の選定は、八駅全体に関わる重大事項です」
「ならば――」
小さく一礼する。
「会合にて、正式に判断してはいかがでしょう」
理にかなった提案。
きさらぎは、目を細める。
「会合で、ねぇ……」
少し考える素振りを見せ、やがて微笑む。
「いいわ」
視線を燈へ戻す。
「皆の前で、審議しましょう?」
扇子で、燈の胸元を軽くつつく。
つきのみやが睨む。
だが、きさらぎはもう背を向けていた。
紅白の着物が、ゆらりと揺れる。
「楽しみにしてるわ、『後継者候補』さん」
その姿は、闇へ溶けるように消えていった。
「……あは」
そして、声を上げて笑う。
「あははははっ……!」
鋼鉄の扇子で口元を隠しながら、肩を揺らす。
「冗談よね?こんな頼りない子に、駅を継がせる?」
視線はつきのみやに向けられているが、その奥には嘲りが混じっていた。
「大胆すぎるわ……嫌いじゃないけど」
くすくすと笑う。
だが――
つきのみやは、笑わない。
微動だにしない。
その沈黙が、きさらぎの笑いをゆっくりと止めた。
「……え?」
白と黒の瞳が、わずかに細くなる。
「まさか……本気で言ってる?」
「本気だ」
即答だった。
一切の揺らぎもなく。
燈の心臓が、どくん、と跳ねる。
(え……本気……?)
きさらぎの視線が、ゆっくりと燈へ落ちる。
「でもさぁ……」
扇子を閉じ、顎に当てる。
「その子、明らかに動揺していたわよ?」
視線が燈の揺れる瞳を捉える。
「今、とっさに決めた……まさかそんな訳ないわよね?」
空気が、ぴり、と張り詰める。
つきのみやの肩が、わずかに動いた。
その瞬間、彼女は振り返り、燈の元へゆっくりと歩み寄る。
そして、真正面から、燈の顔を捉える。
近い。
「燈」
低く、真っ直ぐな声。
「……継ぎたいよな」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「え……?」
つきのみやはさらに距離を詰める。
「私の駅を、継ぎたいよな」
問いかけというより、もはや誘導だ。
燈の喉が鳴る。
(え……待って……それ、どういう……)
頭が追いつかない。
さっきまで殺されかけていたのに、今度は駅の後継者を強要された。
目まぐるしく移り変わる状況に、思考が追い付かない。
きさらぎが、ゆるく首を傾げる。
「ちょっとぉ」
くすり、と笑う。
「それ、脅しにしか見えないけど?」
つきのみやの眉が、ぴくりと動く。
だが、視線は燈から逸らさない。
「私が、こいつを選んだ」
「こいつになら任せてもいい……私はそう思った」
きさらぎは面白そうに目を細める。
「そう……」
ゆっくり頷く。
「ならいいんじゃない?」
次の瞬間。
口元が、妖しく歪んだ。
「ま、あたしは許可しないけどね♡」
燈の背筋に、冷たいものが走る。
きさらぎの視線が、再び燈へ突き刺さる。
「気に入らないのよ、その子」
扇子が、燈を指す。
「意思が弱い」
「心も弱い」
そして、淡々と告げた。
「殺したほうが価値あるんじゃない?」
空気が、凍る。
つきのみやの目が、鋭く光った。
「馬鹿にするな……きさらぎ」
怒りを押し殺した低い声。
きさらぎは肩をすくめる。
「なぁに殺気ビンビンにしちゃって……」
白黒の瞳が細くなる。
「ヤる気?」
空気が張り詰める。
ほんのわずかな動きで、戦闘が始まりそうな緊張。
その時――
「お二人とも」
静かで、澄んだ声が割って入った。
白い羽をゆるやかに揺らし、ひつかが二人の間へ歩み出る。
「これは、お二人のみで決める問題ではありません」
碧色の瞳が、順に二人を見る。
「後継者の選定は、八駅全体に関わる重大事項です」
「ならば――」
小さく一礼する。
「会合にて、正式に判断してはいかがでしょう」
理にかなった提案。
きさらぎは、目を細める。
「会合で、ねぇ……」
少し考える素振りを見せ、やがて微笑む。
「いいわ」
視線を燈へ戻す。
「皆の前で、審議しましょう?」
扇子で、燈の胸元を軽くつつく。
つきのみやが睨む。
だが、きさらぎはもう背を向けていた。
紅白の着物が、ゆらりと揺れる。
「楽しみにしてるわ、『後継者候補』さん」
その姿は、闇へ溶けるように消えていった。
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