第四百四話
ー/ー『抵抗できない相手に対しての暴力は楽しいだろう?』
『これまでの異常な出力で放つ技の数々は非常に心地いいものだろう?』
『セーブしながらの戦いは、内に秘められた英雄に申し訳ないものだろう??』
『それもこれも、全部、全部全部全部全部、『自分が弱いから』、そして『私が助力したおかげ』でそうなっているんだろう??』
心の内に、カルマの悪心が増殖していく。増えれば増えるほど、振るう拳に威力と勢いが増す。それを立ち去らせる術を持ち合わせていない上に、自分自身そう思う節もあったためであった。
『ならさ、委ねちゃえよ』
『ならさ、捨てちゃえよ』
『ならさ、壊しちゃえよ』
『ならさ、殺しちゃえよ』
『『『クソほど邪魔な理性も、己の下らない限界値も、へこへこするつまらない自制心も、そして――――』』』
『その果てに残った残りかす同然の君を『玩具に』する、私に……君を壊させて』
人一倍拳を握り締めた上で、新香の顔面に叩き込む、漆黒の魔力を伴った、全力の拳。その瞬間に、数十から百トンクラスの一撃を耐えうる耐久性を持ち合わせた怪人ですら、頭部が完全に爆散。
温かな血液が、脳の破片が、当人の砕けた骨の欠片が、辺りに蒸発しながら飛び散っていく。
自らの尊厳を傷つけた存在が、一時の気持ちの揺らぎによって、そこにあったはずの命が砕け散ったのだ。
当人が死亡したため、装着していたドライバーが完全に灰となって崩れ去る。何かしらの重要参考人にでもなれただろうに、それを理性を無くした丙良が――明確に『殺した』のだった。
丙良自身の体から、漆黒の魔力が霧散していく。それと同時に、漆黒の魔力を運用する中で新品同様の肉体になった彼自身が、まるで寝起きのように姿を現すのだった。
これまで、理性の無くなった自分がしでかしたことを、徐々に実感していく。
頭部だけ綺麗に『なぜか』無くなった死体の上に、自分は跨っている。
拳には、脳の破片やら血液やらが、そう簡単に洗い落とせないほど焼け付きこびり付いている。
軋む体中の筋肉断裂の痛みなど、実に可愛いもののように思えるほどの惨劇、それを生み出したのは――正しく自分であると自覚したのだ。
悲鳴も出ない。かといって絶叫もしない。そして発狂もしない。ただ、一時の感情に全てを委ねた自分が、たまらなく許せなかったのだ。
人間はどこまでも醜く、浅ましく、どうしようもなく堅実な『未来』よりも快楽ベースの『刹那』を重要視したがる節がある。未来をどれほど溝に捨て去ろうと、一時の快楽と言う背徳に、心を寄せたくなる瞬間が存在する。
丙良自身、そんな快楽主義をどうもよく思っていなかった。貯金は計画的にすべき、贅沢は御褒美と言えるタイミングで、そんな節制の権化のような堅実な男であるのだが――こうなったのは自分を捨て、どす黒い感情に身を委ねたから。他でもなく、カルマの残留思念に。
「僕が、僕が弱かったから――僕が……弱かったから……」
死体から後退りながら、自分を徹底的に追い詰める。頭を抱え、ロック・バスターに身を寄せながら……理由や立場上、そして法律上『仕方ないこと』と処理されるであろう『許された殺人』を行った事実に、心から戦慄していたのだ。
初めて誰かを『殺した』と言う事実は、そう簡単に消えることはなく、どこまで状況が落ち着こうと、心の中に『殺人』と言う原初の『業』は巣食い続ける。死んだ瞬間の表情であったり、状況証拠や物的証拠であったり。今まさに頭を抱え続ける右手には、余程熱心に洗い落とさない限り匂いも現物もこびり付き続ける。
弱かったから、こうなった。
だから、自分の親友一人、悪の道に堕ちる前に救えない。
だから、矜持やら誇りやら、そういった物をかなぐり捨てて、大いなる力に身を委ね新香を惨たらしく殺した。
「全部……全部全部全部全部……『僕のせい』じゃアないか」
丙良は、心の底から、自分自身に絶望したのだった。
これにより、英雄学園英雄科二年一組所属・丙良慎介対、教会栃木支部幹部・新香由紀の戦いは、カルマの齎した傷から混入した魔力によって翻弄された丙良が終始劣勢であったものの、昔の事件の新事実を突きつけられたことにより怒りとカルマの残留魔力が爆発、本人の殺意と激情によって突き動かされた丙良が、自分の弱さを証明するように新香を殺したことですべて決着がついた。
初めての殺しは、最高に苦く、心地の悪いものであった。
『これまでの異常な出力で放つ技の数々は非常に心地いいものだろう?』
『セーブしながらの戦いは、内に秘められた英雄に申し訳ないものだろう??』
『それもこれも、全部、全部全部全部全部、『自分が弱いから』、そして『私が助力したおかげ』でそうなっているんだろう??』
心の内に、カルマの悪心が増殖していく。増えれば増えるほど、振るう拳に威力と勢いが増す。それを立ち去らせる術を持ち合わせていない上に、自分自身そう思う節もあったためであった。
『ならさ、委ねちゃえよ』
『ならさ、捨てちゃえよ』
『ならさ、壊しちゃえよ』
『ならさ、殺しちゃえよ』
『『『クソほど邪魔な理性も、己の下らない限界値も、へこへこするつまらない自制心も、そして――――』』』
『その果てに残った残りかす同然の君を『玩具に』する、私に……君を壊させて』
人一倍拳を握り締めた上で、新香の顔面に叩き込む、漆黒の魔力を伴った、全力の拳。その瞬間に、数十から百トンクラスの一撃を耐えうる耐久性を持ち合わせた怪人ですら、頭部が完全に爆散。
温かな血液が、脳の破片が、当人の砕けた骨の欠片が、辺りに蒸発しながら飛び散っていく。
自らの尊厳を傷つけた存在が、一時の気持ちの揺らぎによって、そこにあったはずの命が砕け散ったのだ。
当人が死亡したため、装着していたドライバーが完全に灰となって崩れ去る。何かしらの重要参考人にでもなれただろうに、それを理性を無くした丙良が――明確に『殺した』のだった。
丙良自身の体から、漆黒の魔力が霧散していく。それと同時に、漆黒の魔力を運用する中で新品同様の肉体になった彼自身が、まるで寝起きのように姿を現すのだった。
これまで、理性の無くなった自分がしでかしたことを、徐々に実感していく。
頭部だけ綺麗に『なぜか』無くなった死体の上に、自分は跨っている。
拳には、脳の破片やら血液やらが、そう簡単に洗い落とせないほど焼け付きこびり付いている。
軋む体中の筋肉断裂の痛みなど、実に可愛いもののように思えるほどの惨劇、それを生み出したのは――正しく自分であると自覚したのだ。
悲鳴も出ない。かといって絶叫もしない。そして発狂もしない。ただ、一時の感情に全てを委ねた自分が、たまらなく許せなかったのだ。
人間はどこまでも醜く、浅ましく、どうしようもなく堅実な『未来』よりも快楽ベースの『刹那』を重要視したがる節がある。未来をどれほど溝に捨て去ろうと、一時の快楽と言う背徳に、心を寄せたくなる瞬間が存在する。
丙良自身、そんな快楽主義をどうもよく思っていなかった。貯金は計画的にすべき、贅沢は御褒美と言えるタイミングで、そんな節制の権化のような堅実な男であるのだが――こうなったのは自分を捨て、どす黒い感情に身を委ねたから。他でもなく、カルマの残留思念に。
「僕が、僕が弱かったから――僕が……弱かったから……」
死体から後退りながら、自分を徹底的に追い詰める。頭を抱え、ロック・バスターに身を寄せながら……理由や立場上、そして法律上『仕方ないこと』と処理されるであろう『許された殺人』を行った事実に、心から戦慄していたのだ。
初めて誰かを『殺した』と言う事実は、そう簡単に消えることはなく、どこまで状況が落ち着こうと、心の中に『殺人』と言う原初の『業』は巣食い続ける。死んだ瞬間の表情であったり、状況証拠や物的証拠であったり。今まさに頭を抱え続ける右手には、余程熱心に洗い落とさない限り匂いも現物もこびり付き続ける。
弱かったから、こうなった。
だから、自分の親友一人、悪の道に堕ちる前に救えない。
だから、矜持やら誇りやら、そういった物をかなぐり捨てて、大いなる力に身を委ね新香を惨たらしく殺した。
「全部……全部全部全部全部……『僕のせい』じゃアないか」
丙良は、心の底から、自分自身に絶望したのだった。
これにより、英雄学園英雄科二年一組所属・丙良慎介対、教会栃木支部幹部・新香由紀の戦いは、カルマの齎した傷から混入した魔力によって翻弄された丙良が終始劣勢であったものの、昔の事件の新事実を突きつけられたことにより怒りとカルマの残留魔力が爆発、本人の殺意と激情によって突き動かされた丙良が、自分の弱さを証明するように新香を殺したことですべて決着がついた。
初めての殺しは、最高に苦く、心地の悪いものであった。
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