第四百三話
ー/ー『――洗脳されたことはよく思っている。だけど、武器を持つ手も震えている、そんな貴方を傷付けるってのは……今のアタシでも心が痛むわ。なんせ……』
そう御託を並べながらも、四肢の包帯は丙良の首を全力で締めにかかっていた。血液がうっ滞し、生命の導線が断ち切られようとしていたのだ。これまで優しさの滲んでいた新香であったはずが、洗脳行為によって増進された残虐な心が表面化。これまでにないほど歪んだ笑みで丙良の苦悶の表情を眺めるのだった。
『――なんせ、多くの人気を得た貴方を殺してしまうことは、世間の損失のように思えるんだもの。そんな損失を生み出したアタシは――気持ちよくなってしまうもの』
反論する気力もない。多量の出血や骨の派手な損壊によって、一切思考が定まらないのだ。
こんな場で殺されることに、不満が無いわけではない。しかし、手も足も、一切言うことを聞かない現状はどうしようもないことでしかなかった。
しかし。丙良はある言葉を聞いた瞬間に――その体を奮い立たせるエネルギーを爆発させるのだった。
『そうそう。例の貴方の先輩と後輩が殺された事件、あるじゃアないの? それについて、カルマ様から伝言貰ってて。アレ、神奈川支部の例の子嗾けたの――カルマ様だって話。実行犯があの子であることは変わりないけれど……計画犯はカルマ様自身よ』
突如として、内に眠るはずの出し殻ほどの魔力が、爆発的に増加。しかも、それは自分自身の魔力を媒体とした回復行為だなんてものでは無く、深く淀んだどす黒い魔力を帯びていたのだ。
『――成程。カルマ様はこれを狙っていたわけ。真に心を圧し折るのなら――貴女様自身の手を下した上で、無力感を刷り込ませるってこと。よりにもよって、カルマ様の魔力自身で手を下させることで――『自分は何も出来なかった存在』だ、ってことを刷り込ませるために』
急激に膨れ上がる魔力。本人の周囲の空間すら、軽く捻じ曲がって見えるほどの膨大な魔力量。しかし、デメリットが無いわけではない。体中の血管が耐えきれずに、何か所からか血液が噴出。マグマのように湧き立つ怒りが、後悔が、苦しみが、丙良をここまでの羅刹にさせたのだ。
「……」
『――ものは喋れないって訳? まあ、アタシもこの状態で居る時は、厳密には喋っているというより、喉の孔から空気を振るわせて声のように認知させている訳だけど』
すぐさま包帯を伸縮させ、丙良に這い寄らせる。しかし、その攻撃たちは魔力による障壁を一切破れないままに燃えカスとなってしまう。
瞬時に再生をしつつ、今度は接近戦を仕掛けにかかろうと踏ん張った瞬間。漆黒の魔力に染まったロック・バスターが、新香の顔面を思い切り弾き飛ばしたのだ。
頭部による衝撃にて吹き飛んでいく中で、何とか宙で態勢を整え一転攻勢の攻撃を仕掛けようとするも、思考を巡らせた瞬間に丙良は傍にいるのだ。
思い切り、頭部をわしづかみにし、地面に叩きつけ、実に荒っぽいブレーキを掛ける。
しかもそれだけではなく、まるで赤子が玩具を乱暴に扱うかのように、その場に何度も何度も叩きつけるのだ。
当人の意思など関係なし。どこまでも悪意は伝染していくのだ。
『――ああ、アタシはカルマ様に『死んで来い』『復讐は代理人が果たす』と言われた矢先、命を諦めていた節はあるけれど……ちょっと好き放題させ過ぎかな……ァッ!!』
これまでの『暴力』を咎めるべく、一矢報いようと現状からドロップキックを叩き込もうとしていたのだが――怪人のそれを『膝』で完全に受け止めたのだった。
『う、嘘でしょ――変身もしていないのに、ここまでの差が……!?』
遂に抵抗を許さない漆黒の意志一つだけがその場に存在する丙良は、首を片手で締めにかかり、そのまま容赦なく右手で新香の顔面を一切の躊躇なしに殴り飛ばし始めたのだ。
しかも、それはただ殴り飛ばしているだけではない。その力が異常であったのだ。
普通、人間がマウントポジションで人間を殴りつける場合、鼻の骨を折るか頬骨を折るか罅を入れる程度で済むだろう。腕の立つ者がやればもっと酷いけがを与えることも出来るだろうが、それは所詮人間が人間に対し暴力を振るっているだけ。
相手が怪人の状況でありながら、変身をもしていない状況で、顔が変形し、その後ろに控えている地面が一撃ごとに陥没していくほどの衝撃であったのだ。そんなこと、重機を数台用意して掘削でもしない限り、叶わないことのはず。
カルマの魔力に中てられた丙良が、そんな異常な光景を作り出す、生き証人となっていたのだ。
そう御託を並べながらも、四肢の包帯は丙良の首を全力で締めにかかっていた。血液がうっ滞し、生命の導線が断ち切られようとしていたのだ。これまで優しさの滲んでいた新香であったはずが、洗脳行為によって増進された残虐な心が表面化。これまでにないほど歪んだ笑みで丙良の苦悶の表情を眺めるのだった。
『――なんせ、多くの人気を得た貴方を殺してしまうことは、世間の損失のように思えるんだもの。そんな損失を生み出したアタシは――気持ちよくなってしまうもの』
反論する気力もない。多量の出血や骨の派手な損壊によって、一切思考が定まらないのだ。
こんな場で殺されることに、不満が無いわけではない。しかし、手も足も、一切言うことを聞かない現状はどうしようもないことでしかなかった。
しかし。丙良はある言葉を聞いた瞬間に――その体を奮い立たせるエネルギーを爆発させるのだった。
『そうそう。例の貴方の先輩と後輩が殺された事件、あるじゃアないの? それについて、カルマ様から伝言貰ってて。アレ、神奈川支部の例の子嗾けたの――カルマ様だって話。実行犯があの子であることは変わりないけれど……計画犯はカルマ様自身よ』
突如として、内に眠るはずの出し殻ほどの魔力が、爆発的に増加。しかも、それは自分自身の魔力を媒体とした回復行為だなんてものでは無く、深く淀んだどす黒い魔力を帯びていたのだ。
『――成程。カルマ様はこれを狙っていたわけ。真に心を圧し折るのなら――貴女様自身の手を下した上で、無力感を刷り込ませるってこと。よりにもよって、カルマ様の魔力自身で手を下させることで――『自分は何も出来なかった存在』だ、ってことを刷り込ませるために』
急激に膨れ上がる魔力。本人の周囲の空間すら、軽く捻じ曲がって見えるほどの膨大な魔力量。しかし、デメリットが無いわけではない。体中の血管が耐えきれずに、何か所からか血液が噴出。マグマのように湧き立つ怒りが、後悔が、苦しみが、丙良をここまでの羅刹にさせたのだ。
「……」
『――ものは喋れないって訳? まあ、アタシもこの状態で居る時は、厳密には喋っているというより、喉の孔から空気を振るわせて声のように認知させている訳だけど』
すぐさま包帯を伸縮させ、丙良に這い寄らせる。しかし、その攻撃たちは魔力による障壁を一切破れないままに燃えカスとなってしまう。
瞬時に再生をしつつ、今度は接近戦を仕掛けにかかろうと踏ん張った瞬間。漆黒の魔力に染まったロック・バスターが、新香の顔面を思い切り弾き飛ばしたのだ。
頭部による衝撃にて吹き飛んでいく中で、何とか宙で態勢を整え一転攻勢の攻撃を仕掛けようとするも、思考を巡らせた瞬間に丙良は傍にいるのだ。
思い切り、頭部をわしづかみにし、地面に叩きつけ、実に荒っぽいブレーキを掛ける。
しかもそれだけではなく、まるで赤子が玩具を乱暴に扱うかのように、その場に何度も何度も叩きつけるのだ。
当人の意思など関係なし。どこまでも悪意は伝染していくのだ。
『――ああ、アタシはカルマ様に『死んで来い』『復讐は代理人が果たす』と言われた矢先、命を諦めていた節はあるけれど……ちょっと好き放題させ過ぎかな……ァッ!!』
これまでの『暴力』を咎めるべく、一矢報いようと現状からドロップキックを叩き込もうとしていたのだが――怪人のそれを『膝』で完全に受け止めたのだった。
『う、嘘でしょ――変身もしていないのに、ここまでの差が……!?』
遂に抵抗を許さない漆黒の意志一つだけがその場に存在する丙良は、首を片手で締めにかかり、そのまま容赦なく右手で新香の顔面を一切の躊躇なしに殴り飛ばし始めたのだ。
しかも、それはただ殴り飛ばしているだけではない。その力が異常であったのだ。
普通、人間がマウントポジションで人間を殴りつける場合、鼻の骨を折るか頬骨を折るか罅を入れる程度で済むだろう。腕の立つ者がやればもっと酷いけがを与えることも出来るだろうが、それは所詮人間が人間に対し暴力を振るっているだけ。
相手が怪人の状況でありながら、変身をもしていない状況で、顔が変形し、その後ろに控えている地面が一撃ごとに陥没していくほどの衝撃であったのだ。そんなこと、重機を数台用意して掘削でもしない限り、叶わないことのはず。
カルマの魔力に中てられた丙良が、そんな異常な光景を作り出す、生き証人となっていたのだ。
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