表示設定
表示設定
目次 目次




第三百九十三話

ー/ー



 『人工因子(じんこういんし)』。その能力や詳細は、これまでの因子とは異なるものである。
 元々、因子持ちが覚醒した時に、その英雄の正体やベース能力が明らかになるのだが、人工因子はその過程で意図的に突然変異を起こすのだ。
 当人に対しては、酷い副作用として苦痛や体調不良、適合できなければそのまま死に至ることもあるが、あくまでまだ教会の実験の領域。これの実用レベルが上がれば、教会の総力は大きく向上する。チーティングドライバーの時点でデバイスドライバーを超える出力を発揮できるのにも拘らず、そこに人工因子による発展性を加えたら……並の英雄では手の付けられない存在になるためである。
 そしてその効果は――他でもなく『他属性をも操れる力』。本来備わっているベース能力とは別ベクトルの、その因子に見合ったもう一つの能力が開眼する。本来のものよりも制度は多少甘くなるが、まず二属性を扱える時点で常軌を逸している。通常の因子ならば有り得ない進化を遂げることによって、より英雄に負けない怪人へと成り果てるのだ。

『我々、栃木支部の幹部は……今回はカルマ様の意向に従った。和氣に関しては……私はいまだに信じられないのだがな。そもそもの傍若無人っぷりが度を越えていたために、肩を持つ気はないのでね』

(クッソ……思考がいまいち定まらねェ……!! 高熱出してぶっ倒れたような感覚がずーっと続いてやがる……!!)

『――私は、本当なら貴様だって……君だって殺したくはない。何故なら、君には恨みが一切ない。ペルシャ人の男や、ラウルほどの恨みは一切ない。ただ――逆恨みのようには思うが……肝心な時に君ら英雄(ヒーロー)は……居ないんだよ、どこにも』

 高野は、酷く暗い表情のまま、身の上を語り始めたのだ。それは勝ちを確信したが故の行動であるのだろうが、そして信玄はその隙を突くべきだと考えるのだが、彼の闇を少しでも受け止めるべきなのだろうと、思いとどまる。こんなに気分が悪い状況ながらも、その闇には親しみを覚えていたからだった。
 その信玄の心に気付いてか、毒を弱めた上で、しみじみと語り部を演じる高野。これまでの経験上、そんな役回りになるだなんてことはなかったが、実にその風貌に違和感はなかったのだった。


『――今日この場で語るは、ある男の悲愴に満ちた、血みどろに溢れた復讐のお話。実に心が痛むでしょうが……この場にいる皆には、どうか心して聞いて欲しいんですよ。高野涼音(わたし)という男が――どうしてここまで『狂えてしまった』のか、を』



スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 『|人工因子《じんこういんし》』。その能力や詳細は、これまでの因子とは異なるものである。
 元々、因子持ちが覚醒した時に、その英雄の正体やベース能力が明らかになるのだが、人工因子はその過程で意図的に突然変異を起こすのだ。
 当人に対しては、酷い副作用として苦痛や体調不良、適合できなければそのまま死に至ることもあるが、あくまでまだ教会の実験の領域。これの実用レベルが上がれば、教会の総力は大きく向上する。チーティングドライバーの時点でデバイスドライバーを超える出力を発揮できるのにも拘らず、そこに人工因子による発展性を加えたら……並の英雄では手の付けられない存在になるためである。
 そしてその効果は――他でもなく『他属性をも操れる力』。本来備わっているベース能力とは別ベクトルの、その因子に見合ったもう一つの能力が開眼する。本来のものよりも制度は多少甘くなるが、まず二属性を扱える時点で常軌を逸している。通常の因子ならば有り得ない進化を遂げることによって、より英雄に負けない怪人へと成り果てるのだ。
『我々、栃木支部の幹部は……今回はカルマ様の意向に従った。和氣に関しては……私はいまだに信じられないのだがな。そもそもの傍若無人っぷりが度を越えていたために、肩を持つ気はないのでね』
(クッソ……思考がいまいち定まらねェ……!! 高熱出してぶっ倒れたような感覚がずーっと続いてやがる……!!)
『――私は、本当なら貴様だって……君だって殺したくはない。何故なら、君には恨みが一切ない。ペルシャ人の男や、ラウルほどの恨みは一切ない。ただ――逆恨みのようには思うが……肝心な時に君ら|英雄《ヒーロー》は……居ないんだよ、どこにも』
 高野は、酷く暗い表情のまま、身の上を語り始めたのだ。それは勝ちを確信したが故の行動であるのだろうが、そして信玄はその隙を突くべきだと考えるのだが、彼の闇を少しでも受け止めるべきなのだろうと、思いとどまる。こんなに気分が悪い状況ながらも、その闇には親しみを覚えていたからだった。
 その信玄の心に気付いてか、毒を弱めた上で、しみじみと語り部を演じる高野。これまでの経験上、そんな役回りになるだなんてことはなかったが、実にその風貌に違和感はなかったのだった。
『――今日この場で語るは、ある男の悲愴に満ちた、血みどろに溢れた復讐のお話。実に心が痛むでしょうが……この場にいる皆には、どうか心して聞いて欲しいんですよ。|高野涼音《わたし》という男が――どうしてここまで『狂えてしまった』のか、を』