第三百九十二話
ー/ー 数十秒の睨み合い。その後に、互いに消えたように速度を上げ向かいながら、互いに斬りかかる。
信玄は念剣、高野は細剣。
そこまで破壊力のある存在同士ではないため、そこまで大きな音は鳴らないものの、重圧同士がぶつかり合ってせめぎ合う。常人は正気を保っているので精一杯なほど、手練れであっても泡を吹く寸前までのものであった。
「細剣でそこまで力込められるとか、本当怪人って馬鹿力の集合体だな!」
『貴方こそ! 元々この念剣は折られたもの、そう聞いておりますがッ……!』
互いに歯を食いしばりながら、そのせめぎあいに勝とうと一歩も引かずに力を籠め合う。
しかし、その拮抗はものの数秒で終わりを迎える。高野がほんの少し力の向きを変えたことで、信玄のバランスが多少崩れたのだ。
その瞬間を見咎めることはなく、すぐさま高速の剣戟をミリ単位で叩き込んでいく。
だが、それら全てにしっかり適応しながら、念剣の刀身で真正面から受けていく。武器破壊のリスクをケアするために、一辺倒で防御することは決してないように。
すぐさま踏み込んで、人間が反応できない速度での突きを繰り出す。
それを同じような構えになりながら念剣の切っ先で拮抗させる。同じように踏み込んだうえで繰り出したために、分は念剣の方にあった。
予想外のカウンターに驚愕する高野であったが、宙に放り出された細剣を気にする間もなく、すぐに信玄の手元を、中華武術を思わせるような流麗な体捌きで弾き、念剣自体を遠くに弾き飛ばすのだった。
ほんの一瞬の静寂。互いの目を見た瞬間に、ハイキックが交差する。
怪人と英雄、それぞれ異次元のパワフルさを保有しているために、これまで鳴り響くことのなかった轟音が、病院前広場にこだまする。
「――本当、ただの舞台俳優にしては馬鹿みたいに強くないかね!?」
『こちらも、動揺の一切ない攻撃群に辟易としているんですがね!』
信玄はそのハイキックによる硬直を解くべく、残された左足で地を蹴って胴回し蹴りを叩き込む。そのままバランスを崩し地に倒れる信玄であったが、そこを狙うであろう目論見は分かり切っていたために、拳による追撃を回避しながら、ブレイクダンスの一種であるウインドミルにてアクロバティックに蹴りを繰り出す。
すぐさま後方に退避する高野を、再び地を蹴って追及。今度は両足で力一杯踏み込んだがために、宙で何十回転も横に回りながら、守る腕を容赦なく蹴り壊し、念力の推進力を生かし顔面に足刀蹴りを叩き込んだ。
ガードを崩されてしまったための、クリーンヒット。しかし、そうして飛ばされた先には、信玄の念剣が落下していたのだ。
「げ、マッズ」
痛みの残る頬を擦りながら、念剣を携える高野。情報を仕入れた、と言うことは、自ずと転換方法も知っている、と言うこと。
すぐさま念銃の形態へ切り替え、愕然としている信玄に銃撃を開始。所持者と勘違いするほどの精密射撃で、信玄を追及していく。
「馬鹿野郎!! こんなもん公平もクソもねェじゃあねえか!!」
「貴方の武器が『そういう』武器なのがいけないんですよ」
銃撃の雨を何とか回避しつつ、スライディングの体勢で細剣を手に取る信玄。しかし、信玄に真っ向から戦う術は少ない。それに、細剣の扱い方など、一切勉強していない。自分に関係のない武器である以上、日々の手入れくらいの情報しか持ち合わせていないのだ。
しかし、ここで妙案を一瞬にして閃く信玄。非常に悪い笑顔を湛えながら、すぐさま細剣を手に走り向かっていくのだ。
『何を血迷ったか……分が悪いと踏んで猪突猛進になったのですか』
「分が悪いのは認めるが大部分が違うっつーの!!」
念力による巨大な掌を二つ生成し、その場から大跳躍。太陽を背にしながら、細剣に手をかざす。
「一発限りの大技だ、見て驚け感じて驚け、んでもって俺の武器返せ!!」
細剣の刃部分を圧し折って、空間同士を急激に引っ張り合って、圧力を高めた状態で細剣の刃部分を空気中に設置。
その後、まるで弾丸のように高速射出。
しかも、念力によるコーティングを重ねたことで、『光にすら反射しない』超口径即席長距離狙撃弾、一発限りの大技の出来上がりであった。
『太陽を背にしたのは、どこからやってくるか見えないようにする策のため、ですか――!』
「その通り! 悪いが、俺は王道も邪道も扱える、両刀使いなんだわ! 英雄らしくない戦い方、とか言う固定観念は全部ぶっ壊してやんのよ!!」
何とか風の動きで探知した高野は弾を認識し、それを念剣で斬り割くも――――それは念力のコーティングを斬り飛ばしただけであったのだ。
「一か八かの賭けは、上手く行ったな」
そのまま、細剣の刃部分は高野の肩口を容赦なく貫き、そのまま念剣を取り落す。地面に落ちる寸前、念力によって生成した腕によって掴み取り、そのまま空中に居る信玄に投げ飛ばす。
「アンタは随分戦闘慣れしているようだが……俺はその上を行く! 『信之』が傍にいる限り、俺に負けは無ェのよ!!」
トリガーを押しこんで、魔力を急激にブーストさせる。刃を三倍以上に伸長させ、無法者のように斬りかかるのだった。
しかし、高野はただで終わるタマではなかったのだ。
『――『人工因子』の力よ、私に力を!!』
そう叫んだ瞬間に、魔力が急激に増幅。膨大な魔力は、やがて黒く淀み濁った水へ姿を変え、これまでにないほどの勢いと量によって信玄の勢いを殺し、信玄を包み込んだのだった。
「嘘だろ、ここにきて訳分からねえ新概念かよ……教会の技術力にはびっくりだよ全く! チーティングドライバーだってまだ謎だらけだってのに!」
なぜか局所的な空間のみ、黒く淀んだ水が満たされていくのに疑問を抱いた信玄は、そのまま多くの水に呑まれていく。
(――ってことは……奴の人工因子とやらは……本当に『オペラ座の怪人・エリック』ってことかよ。音楽フェスのために仕方なく音楽の勉強していた時に、偶然琴音と見た奴だ――ッたく、寄り道とは言え勉強は我が身を助けてくれるな全く!!)
オペラ座の怪人、その後半の場面において。消火用水によって爆薬を消火する流れになるのだが、その水はエリックの用意した拷問部屋に全て流れ込む算段になっている。ペルシャ人とラウルが邪魔になった結果殺そうとしたが、その計画は文字通りラウルの恋人であり、エリックが恋に落ちたクリスティーヌの行動によって頓挫する流れが存在する。
今は、正しくその状況以上のもの。既に決められた空間内は、水没しきっているため、魔力を流し込んだ装甲による酸素のサポートが切れた瞬間に……信玄は事切れることとなる。
(……なら、だ。エリックがその高野に備わった人工因子とやらの正体なら……代名詞である『あの』シーンを模った能力も存在するってことだよな? だが……それはベース能力の範疇を超えるぞ??)
そんな心配をよそに、どこからか美しく透き通るような歌声が響き渡る。しかし、それを少しでも聴いた瞬間に、信玄の五感と脳の認識能力全てが歪み始めたのだ。異常なほどこみ上げる嘔気に、苦しみ始めたのだ。
(馬鹿野郎……俺の心配や悪い事は綺麗に全部的中かよ……!! この能力は洗脳……いや、能力吹っ掛ける対象を惑わせる……幻……推定だが、念のベース能力の発展形の一つ、『毒』だ……!!)
信玄は念剣、高野は細剣。
そこまで破壊力のある存在同士ではないため、そこまで大きな音は鳴らないものの、重圧同士がぶつかり合ってせめぎ合う。常人は正気を保っているので精一杯なほど、手練れであっても泡を吹く寸前までのものであった。
「細剣でそこまで力込められるとか、本当怪人って馬鹿力の集合体だな!」
『貴方こそ! 元々この念剣は折られたもの、そう聞いておりますがッ……!』
互いに歯を食いしばりながら、そのせめぎあいに勝とうと一歩も引かずに力を籠め合う。
しかし、その拮抗はものの数秒で終わりを迎える。高野がほんの少し力の向きを変えたことで、信玄のバランスが多少崩れたのだ。
その瞬間を見咎めることはなく、すぐさま高速の剣戟をミリ単位で叩き込んでいく。
だが、それら全てにしっかり適応しながら、念剣の刀身で真正面から受けていく。武器破壊のリスクをケアするために、一辺倒で防御することは決してないように。
すぐさま踏み込んで、人間が反応できない速度での突きを繰り出す。
それを同じような構えになりながら念剣の切っ先で拮抗させる。同じように踏み込んだうえで繰り出したために、分は念剣の方にあった。
予想外のカウンターに驚愕する高野であったが、宙に放り出された細剣を気にする間もなく、すぐに信玄の手元を、中華武術を思わせるような流麗な体捌きで弾き、念剣自体を遠くに弾き飛ばすのだった。
ほんの一瞬の静寂。互いの目を見た瞬間に、ハイキックが交差する。
怪人と英雄、それぞれ異次元のパワフルさを保有しているために、これまで鳴り響くことのなかった轟音が、病院前広場にこだまする。
「――本当、ただの舞台俳優にしては馬鹿みたいに強くないかね!?」
『こちらも、動揺の一切ない攻撃群に辟易としているんですがね!』
信玄はそのハイキックによる硬直を解くべく、残された左足で地を蹴って胴回し蹴りを叩き込む。そのままバランスを崩し地に倒れる信玄であったが、そこを狙うであろう目論見は分かり切っていたために、拳による追撃を回避しながら、ブレイクダンスの一種であるウインドミルにてアクロバティックに蹴りを繰り出す。
すぐさま後方に退避する高野を、再び地を蹴って追及。今度は両足で力一杯踏み込んだがために、宙で何十回転も横に回りながら、守る腕を容赦なく蹴り壊し、念力の推進力を生かし顔面に足刀蹴りを叩き込んだ。
ガードを崩されてしまったための、クリーンヒット。しかし、そうして飛ばされた先には、信玄の念剣が落下していたのだ。
「げ、マッズ」
痛みの残る頬を擦りながら、念剣を携える高野。情報を仕入れた、と言うことは、自ずと転換方法も知っている、と言うこと。
すぐさま念銃の形態へ切り替え、愕然としている信玄に銃撃を開始。所持者と勘違いするほどの精密射撃で、信玄を追及していく。
「馬鹿野郎!! こんなもん公平もクソもねェじゃあねえか!!」
「貴方の武器が『そういう』武器なのがいけないんですよ」
銃撃の雨を何とか回避しつつ、スライディングの体勢で細剣を手に取る信玄。しかし、信玄に真っ向から戦う術は少ない。それに、細剣の扱い方など、一切勉強していない。自分に関係のない武器である以上、日々の手入れくらいの情報しか持ち合わせていないのだ。
しかし、ここで妙案を一瞬にして閃く信玄。非常に悪い笑顔を湛えながら、すぐさま細剣を手に走り向かっていくのだ。
『何を血迷ったか……分が悪いと踏んで猪突猛進になったのですか』
「分が悪いのは認めるが大部分が違うっつーの!!」
念力による巨大な掌を二つ生成し、その場から大跳躍。太陽を背にしながら、細剣に手をかざす。
「一発限りの大技だ、見て驚け感じて驚け、んでもって俺の武器返せ!!」
細剣の刃部分を圧し折って、空間同士を急激に引っ張り合って、圧力を高めた状態で細剣の刃部分を空気中に設置。
その後、まるで弾丸のように高速射出。
しかも、念力によるコーティングを重ねたことで、『光にすら反射しない』超口径即席長距離狙撃弾、一発限りの大技の出来上がりであった。
『太陽を背にしたのは、どこからやってくるか見えないようにする策のため、ですか――!』
「その通り! 悪いが、俺は王道も邪道も扱える、両刀使いなんだわ! 英雄らしくない戦い方、とか言う固定観念は全部ぶっ壊してやんのよ!!」
何とか風の動きで探知した高野は弾を認識し、それを念剣で斬り割くも――――それは念力のコーティングを斬り飛ばしただけであったのだ。
「一か八かの賭けは、上手く行ったな」
そのまま、細剣の刃部分は高野の肩口を容赦なく貫き、そのまま念剣を取り落す。地面に落ちる寸前、念力によって生成した腕によって掴み取り、そのまま空中に居る信玄に投げ飛ばす。
「アンタは随分戦闘慣れしているようだが……俺はその上を行く! 『信之』が傍にいる限り、俺に負けは無ェのよ!!」
トリガーを押しこんで、魔力を急激にブーストさせる。刃を三倍以上に伸長させ、無法者のように斬りかかるのだった。
しかし、高野はただで終わるタマではなかったのだ。
『――『人工因子』の力よ、私に力を!!』
そう叫んだ瞬間に、魔力が急激に増幅。膨大な魔力は、やがて黒く淀み濁った水へ姿を変え、これまでにないほどの勢いと量によって信玄の勢いを殺し、信玄を包み込んだのだった。
「嘘だろ、ここにきて訳分からねえ新概念かよ……教会の技術力にはびっくりだよ全く! チーティングドライバーだってまだ謎だらけだってのに!」
なぜか局所的な空間のみ、黒く淀んだ水が満たされていくのに疑問を抱いた信玄は、そのまま多くの水に呑まれていく。
(――ってことは……奴の人工因子とやらは……本当に『オペラ座の怪人・エリック』ってことかよ。音楽フェスのために仕方なく音楽の勉強していた時に、偶然琴音と見た奴だ――ッたく、寄り道とは言え勉強は我が身を助けてくれるな全く!!)
オペラ座の怪人、その後半の場面において。消火用水によって爆薬を消火する流れになるのだが、その水はエリックの用意した拷問部屋に全て流れ込む算段になっている。ペルシャ人とラウルが邪魔になった結果殺そうとしたが、その計画は文字通りラウルの恋人であり、エリックが恋に落ちたクリスティーヌの行動によって頓挫する流れが存在する。
今は、正しくその状況以上のもの。既に決められた空間内は、水没しきっているため、魔力を流し込んだ装甲による酸素のサポートが切れた瞬間に……信玄は事切れることとなる。
(……なら、だ。エリックがその高野に備わった人工因子とやらの正体なら……代名詞である『あの』シーンを模った能力も存在するってことだよな? だが……それはベース能力の範疇を超えるぞ??)
そんな心配をよそに、どこからか美しく透き通るような歌声が響き渡る。しかし、それを少しでも聴いた瞬間に、信玄の五感と脳の認識能力全てが歪み始めたのだ。異常なほどこみ上げる嘔気に、苦しみ始めたのだ。
(馬鹿野郎……俺の心配や悪い事は綺麗に全部的中かよ……!! この能力は洗脳……いや、能力吹っ掛ける対象を惑わせる……幻……推定だが、念のベース能力の発展形の一つ、『毒』だ……!!)
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